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IoTとAIによるビジネスと働き方の変化(全3記事)

AIは本当に仕事を奪うのか? クラウドワークス吉田氏が語る“現代のラッダイト運動”

IoTやAIといったワードが広く認知され始め、盛り上がりを見せていますが、実際のビジネスにはどのような影響があるのでしょうか。クラウドワークスCEO吉田浩一郎氏、neurowear加賀谷友典氏、電通クリエーティブ・ディレクター森直樹氏、ソフトバンク徳永和紀氏が登壇し、昨年から今年にかけて起こった変化についてパネルディスカッションを行いました。

人間の経済はどんどん楽になっていく

徳永和紀氏(以下、徳永):それでは、次は吉田さん、よろしくお願いいたします。

吉田浩一郎(以下、吉田):クラウドワークスの吉田と申します。本日はよろしくお願いいたします。

私のほうから、IoTやAIで生活はこう変わるということで5分ほどお話をさせていただきます。

前回のつながりなんですけれども、現在、20世紀と変わって、みなさんの個人の情報が行政や司法あるいは銀行・保険会社に溜まっていたものが、あらゆるインターネットサービスに水平統合でどんどん溜まっていってるということですね。

この前、象徴的だったのは、友達に言われたのですが、アメリカの税関で「怪しい場合はあなたのFacebook見るよ」と言われたわけですね。つまり、パスポート情報よりもFacebookのほうが、みなさんの考え方がわかるということです。

Googleだとみなさんの興味がわかりますし、Amazonはみなさんの購買データがわかりますし、クラウドワークスは個人が働いた利益がずっと残っていきますので。個人に関しては、おそらく銀行よりも信用情報を持つようになると考えています。

我々は個人のスキルを見える化して、企業が自由に使えるようにするということで、発注者で13万社、受注側で今まもなく100万人を突破するところでございます。

今13万社ということで、トヨタ、ホンダ、ソニー、パナソニック、あるいは三菱UFJ、あるいはJT、そういったあらゆる日本の大企業がもうすでに、このサービスを通して個人に発注をしている。こういうことが始まっています。企業対企業という取引はもはや古いわけですね。

そういうなかで、どういう課題が今生まれてるかというと、歴史的にみて、人間は楽な方向にしか行かないということは明確です。ルンバを導入した人は掃除をしない。多少はするかもしれないですけど。食洗機があれば皿をいちいち洗わない。ということになっていくと、もう基本的にはもうこの進化は止められないわけですね。

今、さらに「オンデマンド」という言葉がありますが、「ほしいものをほしいときにほしいだけ」ということで。本当にスマホのなかで自分の見たい動画を15分だけ見るとか、5分だけ見るみたいなかたちで、映画・ドラマを消費していく。人間の欲求を満たす方向にしか経済はいっていない。

それでどういうことが起きるかというと、どんどん手軽な体験が生まれ始めていっています。

最近ちょっと感じることがあるんですけど。アンコールワットとかに行って、がんばって朝早く行って角のほうからいい写真を撮ると、あとで見ると「あれ、これガイドブックで見た写真だな」みたいな感じになって。

じゃあ、これからの若い人たちが、VRで見れる、綺麗な4Kの画像が見れるというなかで、「じゃあ20万円貯金して10日間休んでナイアガラの滝を見に行きますか?」ということになると、だんだん本来の旅行は一部の富裕層と一部のクリエイターの人たちのものになっていくんじゃないか。それ以外はVRとかで体験できるんじゃないか。

あるいは、1,000円の寿司と1万円の寿司という話でいくと、1,000円の寿司ってけっこうおいしいわけですよね。じゃあ10回分のお金払って1万円の寿司食べますか? あるいは、ゴルフ1日仕事、「これ、めんどうくさい」っていって、友達と飲みながら2~3時間シミュレーションゴルフできたらいいじゃん。

こういうかたちで経済がどんどん手軽な方向になっていくと、そっちに待っているのはロボットによるリプレースなわけですね。

ホワイトカラーのラッダイト運動

先日AlphaGoの話がありましたが、もう記憶だけの世界であれば、もう人間はいらないわけですね。ロボットが優秀だと。だから、日本の学校教育で教えてるほとんどのことは、もうPepperのほうが優秀という時代になるわけです。

そういうなかでなにが起きるかというと、今日非常にホワイトカラー、白いシャツを着られてる方多いですけれども、実は製造業で起きてきた革命、いわゆる産業革命が、ホワイトカラーにこれから起きますよ、ということを感じています。

ホワイトカラーがブルーカラーと機械を束ねていたという20世紀から、21世紀はホワイトカラーと機械を束ねる、ネオホワイトカラーみたいな人たちが出てくると思っていて。今現在、起きている現象は、ホワイトカラーのラッダイト運動だなと。だから、今のホワイトカラーが抱えている現象は1810年のラッダイト運動。

あの時はブルーカラーが「機械が発展してきて、機械のせいで労働を奪われる」と言ってたんですけど。まったく同じ既視感がここに存在しているわけですね。だから、ここから10年~20年で働き方は圧倒的に変わってきます。

だから、ロボットとどう共存していくか。ホワイトカラーの人たちは「人間にしかできないことはなんですか」。そういった発想とかクオリティコントロールとか、そういったことになると思いますけども。

ということで、私どものほうも実はクラウドソーシングという人間の知恵を使うサービスなんですけど、今Pepperと積極的に提携しています。Pepperのなかのいろんなコンテンツですね。会話の発話集とか、みせるプレゼンテーションとか、そういったものを我々のほうで作らせていただくというのをやっています。

ラッダイト運動をどう生き延びるかということで。まあ、個人でもう関係なくプログラミングを勉強できるわけですね。22歳で卒業して社会に入るということが必要ないわけです。小学校から勉強できる。小学校から世界とつながれる。あるいは、大学生から金融投資をして200億を稼げる。あるいは、個人から中学時代から発信して世界でアプリを作れる。

ということで、今のホワイトカラーの状況は圧倒的に変わるわけです。まあ、こうやってヒカキンが世界に発信できる。

そういったかたちで、20世紀は企業に入らないと社会的信用を積み重ねられなかったというなかで、クラウドワークスでやっているのは、評価があると企業からどんどんスカウトがきます。もう個人でも社会的信用をもって働ける時代がやってきてるわけですね。実際に今、もう個人で2,000万円、クラウドワークスでパソコン1つで稼げる時代がやってきているわけです。

そういった意味では、これからの世の中というのは「企業はできる。個人は信用できない」という考え方はもうなくなって、「企業は信用できる。個人も信用できる」世の中で、「どう個人としての信用を積み重ねていきますか?」「個人として働き方をデザインしていきますか?」という時代になると思っています。

これ最後に、スペインのコメディ劇場でPay Per Laughということで。入場無料で、座ると顔にセンサーがターゲットされまして、笑った分だけ課金されるという。けっこうおもしろい(笑)。でも、これからはこういったかたちで、もう先払いじゃなくて、すべての体験が後払い、気持ちが動いた分だけ課金していくというかたちで。

我々は気持ちを主体とした経済ということで、お金だけじゃなくて「ありがとうボタン」というのを作って。400万回ぐらい押されています。

これ、オフラインで集まった人たち、100万人の人たちが一部集まったんですけど、インターネットを通してまったく新しいコミュニティができ始めていると感じています。ありがとうございます。

徳永:吉田さん、ありがとうございました。

ビジネスモデルを今の延長線上で考えていたら淘汰される

ではディスカッションのほうに移っていきたいと思います。事前にこちらのみんなで、どういうことを話したらいいのかということで、まとめた内容なんですが。

吉田さんに最後お話いただいたことは、取り方によってはセンセーショナルな内容だったと思うんですが。その内容について、主に加賀谷さん、森さんのほうが討議をしてみたいということでした。

ホワイトカラーのラッダイト運動ですよね。我々がやってるような仕事って、自ら課題を見つけていく脳の使い方というか行動の仕方にシフトしていかなくちゃいけないということについてどう思いますか、という投げかけがあったんですが。加賀谷さん、森さん、この点はいかがでしょうか?

森直樹氏(以下、森):なかなか難しいテーマなので、私もAIに追いやられないようにと思ってるんですけれども。いわゆる職業観が変わるという視点で話せることって、僕はあまりないかなと思ってるんです。

ただ、ラッダイト運動って、拡大解釈して、結局AIとかテクノロジーが進展していくなかで、ビジネスモデルを企業が今までの延長線上で考えていたら、本当に淘汰される時代が来ているのかなと思っています。

例えば、Uberってテクノロジーの会社ですけれども、彼らによって、彼らが進出している都市に関しては、今までのタクシーというビジネスからUberという新しいビジネスモデルに変わってきていますと。彼らは、運行とかどこに車を配車すればいいのかというビッグデータを持って、今後たぶん運送業とかに進出していくかと思うんですけど。

どんどんテクノロジーが新しい働き方とか新しいビジネスモデルを作っていっているというところの1つに、ラッダイト運動みたいな考え方といいますか、対応しなきゃいけないことが含まれてくるんじゃないかなとは思います。

徳永:御社の業界について変化とか?

:あ、うちの業界ですか。

徳永:言いにくいかもしれないんですが(笑)。

:うちの業界でいいますと、将来はわからないですけれども、直近でいうとやっぱり広告配信、とくにデジタルはそうなんですけれども、どんどん自動化されています。自動のほうが、単に運用コストが下がるだけではなくて、ROIが上がっていく。いわゆる広告の配信効果が上がっていくということで。

そのために例えばマーケティングテクノロジーを導入したり。アドの世界でいえばアドテクノロジーによって、必要な人に必要なタイミングで、そのときに一番最適な金額で広告を配信するという技術がもう一般化してきています。

そこはほぼテクノロジーの世界なんですね。なんですけれども、かたや、まだそれを、実際にそういったものを導入しながら、人の手でアジャストしていく運用という世界が残っていて、共存している状態です。

ただ、今後そういった領域にAIとかが本格的にテクノロジーとして取り込まれていったときに、必要になってくるのは、いわゆる運用をする人たちなのか、データサイエンティストとか、テクノロジストなのか、というところはまだわからないです。

人のアジャストが効果を示す部分もあるんじゃないかなと思いつつ。でも、我々の業界でも、やはりテクノロジストとかデータサイエンティストは非常に重要になってきています。電通もそうですけど、競合さんもそうですし、そういった人材を囲いにいっています。

我々の競合って博報堂とかアサツーさんとかじゃなくて、アクセンチュアさんとかIBMさんとかも含めて、テクノロジーの世界の人たちも当然パートナーでもあり、競合としても入ってきてるので。そういった人たちが広告のところのROIを最大化するためにテクノロジー化すると、今までの文脈だけでやってきてる人は厳しくなる可能性はあるかなと思います。

ホワイトカラーは変革しなければならない

徳永:広告業界は基本的にいろんなメディアがあるんですが。結局それを運用する人がそのテクノロジーをそれぞれクライアントに応じてどう使い分けるのか、みたいなところは、ぶっちゃけて言うと属人化しておりまして、そこがいかに機械学習化されていくかみたいなところがキーであるという、森さんのお話。

あとは昨今のトレンドなんですが、アメリカだとほとんどそうなっているんですけど、コンサルティング・ファームさんと、デザイン会社さんと、広告会社の電通みたいなところは、昔はカニバリゼーションとかまったく起こしていなかったんですが、昨今のユーザー体験においてはいろいろ、パートナーでもあり、コンペティターでもあり、みたいなマーケット変化が起こっております。

そこにテクノロジーを持ってくるSIerさんも入ってくるというかたちになっているというのが、たぶん森さんがお話していただいていることの背景です。

:そうですね。

徳永:加賀谷さん、いかがでしょうか?

加賀谷:吉田さんに聞きたいというかディスカッションしたいなと思ったのは、ラッダイト運動が起こった時、あれ、機械壊しましたよね、職人たちが。

なんだけど、その一方で実は、綿とか布の価格が強烈に下がって、存在しなかったものが……。例えば機械化される前って下着をつける習慣ってなかったはずなんですよ。ところが、これによって価格がすごい下がったら、下着産業とか、別な産業が出てきて、そこがいろんな雇用をつくっていったという歴史がありますよね。

今回のがなんでやばいかというと、この雇用をつくらないんじゃないかという、そこですよね。

吉田:なるほど。

加賀谷:置き換わっちゃたら、さっきのルンバじゃないけど、もういらないよねってなっちゃう。労働力が本当にいらなくなっちゃたら、その余剰をどこが吸収するのかというのが、実はすごい問題になってるのかなと思っていて。そこについて、どういうふうに見ますか?

吉田:やばいですね(笑)。15分で話しきる……。めちゃくちゃ(笑)。

おっしゃるとおり、労働の総量自体は減っていくんだと思いますよね。去年、1年前に孫(正義)さんがプレゼンされてたときも、Pepperは24時間働くから8時間×3人の、人間3人分だと。しかも疲れないというような話をされていたので(笑)。労働の総量はおそらく落ちていく。

プラス、VR・AR、あるいはインターネット上でいろんなものが手軽に体験できるようになると、ネット上の消費が伸びて、リアルの消費が落ちてくるんだと思うんですよね。今サステイナブルとか低炭素社会とかって言われてるのは、要はリアルで人間が運動するなみたいな、活動するなみたいな世界の話ですので。

そういった意味だと、ネット上の消費は伸びていくんじゃないかなとは思ってますけどね。労働自体は意味がかなり変遷するはずで。

ただ、1810年で、さっき、市場が伸びた時になにが起きたかというと、あそこから富の偏在が起きたわけですよね。そこから機械を操る人と、機械とともに働くあるいは機械の下で働くという人たちとの富の偏在が起きたんですけど。

これからおそらく、ここに今いらっしゃる方、まさにホワイトカラーという白いシャツをみなさん着てらっしゃいますけど。たぶんそこに富の偏在がさらに生まれる。

加賀谷:それでいうと、やっぱりAIをどう自分の仕事のなかで使いこなしていくか、それによってより高いパフォーマンスを出していくというのがすごい大事になってくるのかなって。

吉田:そうですね。だからやっぱり、あそこの、ラッダイト運動の時に、例えばイギリスで荷物を降ろすだけの一族がいて。で、コンテナというガントリークレーンが導入された時に、俺たちの仕事を奪うなっていって労働闘争して勝って、イギリス政府は「あなたがたの給料を保証する」って。でも、今そんな仕事ないですよね。荷降ろしに仕事。

だから結局、一時的に抗ったとしても、たぶん基本的には淘汰されるので、逆にガントリークレーンとコンテナがある世の中で、じゃあ自分はどう変わるか。

だから、今ホワイトカラーは本当に変革をしなきゃいけない。ロボットと人間をどうマネージメントして新しいものづくりをするかということをデザインできるホワイトカラーの人間が期待されてるんだと思ってますね。

徳永:ありがとうございます。

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