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人工知能時代に向けた、金融ビジネスと人の進化(全2記事)

AIの勝ち馬予想はどこまで正確? 楽天技術研究所代表が語る、人工知能時代のビジネス・人の変化

2016年10月4日〜7日の3日間にわたって、「CEATEC JAPAN 2016」が開催されました。カンファレンス「FinTech 最前線〜CPS/IoTで変わる金融の世界〜」に登壇した、楽天株式会社・森正弥氏は、「人工知能時代に向けた、金融ビジネスと人の進化」をテーマにプレゼンテーションを行いました。

人工知能時代に向けた、金融ビジネスと人の進化

森正弥氏:みなさん、こんにちは。こんなに多くの方にいらっしゃっていただいて、とてもありがたいことだと思っています。楽天の森でございます。

本日は、人工知能時代に向けた、さまざまな本質的な変化についてお話しできればと思っております。

「人工知能を活用していく」という話はすごくいっぱいありますよね。もう今、AIの話ばっかりなんです。本講演では、私のほうから他では聞けないお話をお持ち帰りいただけるようにできればなと思っております。

ところで、AIが便利だという話はすごくいっぱいあるんですけど、「なぜAIを使わなければいけないのか」という話はあまり言及されてないと思います。

そこにつながる話として、1つのビデオをお見せできればと思います。今から流すビデオは、私が統括している楽天技術研究所という組織で5年くらい前に開発した「AR-HITOKE」というAR技術を使った新しい購買体験の技術です。では、ビデオをよろしくお願いします。

(映像が流れる)

例えば、お土産屋や物産展みたいなものをイメージしていただきまして、そこで我々が持っている「AR-HITOKE」というシステムを持っていると。

そのアプリケーション越しに覗きますと、わーっとヒトが集まってくる。これはなにかと申しますと、実際にこの商品を買った購買者でございます。このヒトが多いと、実際に商品を買った人が多い。

このヒトには色があって、青色は男性、赤色は女性。色の濃さがあって、それぞれ世代を表しております。

例えば、赤色のヒトがいっぱい集まったものが女性に人気の商品であることがわかりますし、青色のヒトだと、男性に人気の商品であることがわかります。

それだけではなく、吹き出しがございます。この吹き出しはなにかと申しますと、実際にこの商品を買って使った人のレビューだったり、あるいはTwitterやFacebookでみなさんと距離の近い人、ソーシャル間で距離の近い人がこの商品を使った感想などが書いてある。

なので、お店に行ってスマートフォンをかざすだけで、いったい男性、女性、どの世代に売れているのか。あるいは使った感想はどうなのか。こういうふうにズームアップするとどの商品が人気なのか、ということが、ひと目でわかるようになっています。

これがなぜAIに関係してくるのかという話は、のちほど話したいと思います。

人工知能で競馬予想は可能?

いきなりアイスブレークなのですが。楽天の事業の話をします。楽天は70近くビジネスをやっていまして、そのうちの1つに競馬事業というのがございます。

地方競馬の馬券を購入できるシステムを構築したりしているんですけれど、競馬事業のほうで、若い方々、学生や若いエンジニアの方々と一緒にハッカソンをしたんですね。

そのハッカソンで、地方競馬を盛り上げるシステムを考えましょうということで、こちら(のスライド)にありますように、競馬新聞や競馬雑誌のプロの方々に来ていただいて、盛り上げる施策がハッカソンでどうみなされているか見ようということをやっていました。

さまざまなアプリケーションが出てきたわけでございます。

例えば一番人気だったのは、ソーシャルパーティアプリみたいなもの。みんなが集まって、ソーシャルアプリを使って盛り上がりながら、地方競馬を楽しもうというようなもの。

例えば、自分の顔とよく似た馬を選んでその馬を応援するとか。あるいは、もっと詳細な騎手の方の情報を集めるとか。やはり、そういうパーティアプリというは非常に人気があって、プレゼンもよく、専門の方の評価も高くて、それが選ばれたという話なんですけれど。

1つ、ハッカソンのイベントの中であまり評価されなかったアプリケーションがありました。

その競馬ハッカソンが終わった後にみんなで大井競馬場に移動しまして、せっかくなので競馬を観戦しましょうと。

そのなかで、チームの中に、勝ち馬を予測するというAIのアプリを作ったチームがいたんですね。せっかくだから、予測してみた。ちなみに競馬プロフェッショナルの方々も予想して、その予想とはちがったんですが。

彼らが作ったアプリが、まず第1レースの1位を予測したんです。もう答えが出ていましたけれども。第2レースは彼らが予測したものが1位にならなかったんです。でも、僅差で2位だったんです。第3レースは彼らが選んだやつが1位になったんです。

もう、その場はすごいことになりまして、競馬プロの方々は私と同じテーブルにいたのですが、はっと気付いたらいなくて、気がついたら彼らと名刺交換しているんです。「ちょっと一緒に仕事をしましょうよ」と(笑)。

ポイントは、このチームは競馬のことを知るのが初めてだったんです。このハッカソンで初めて知ったんです。

データをいろいろ見て、どういうAIのプログラムを出したいかいろいろ試してみようと。ぜんぜん(競馬の)知識がないのに、向いているロジックを選んだみたいな話です。

最終的にはランダムフォレストを活用して、非常に高精度なアメージングな予測を出した。決してこれはAIで競馬の勝ち馬を当てましょうということを推奨しているわけじゃなくて、ドメイン知識、プロの知識がなくても、データがあればAIで予測ができるという、すごい身近にある話なわけです。

楽天技術研究所の立ち位置

少し前後しますけど、楽天では執行役員として、主に技術を担当する役員をしております。主なミッションとして、楽天技術研究所という組織の統括をしております。

楽天技術研究所という組織はなにかと申しますと、主にコンピューターサイエンスの博士号をもったメンバーが、アカデミックな最先端の分野で研究されている領域というところに挑んで、実際に楽天のビジネスを使って研究し、その成果を楽天のビジネスに反映させていくということをミッションに活動をしております。

現在、東京、ニューヨーク、ボストン、パリ、シンガポールの5拠点がございまして、100名以上。

ポイントは、実は我々楽天技術研究所自体は、明確なロードマップを掲示しておりません。なんでかと申しますと、例えば、過去のWeb2.0、クラウド、ビッグデータ、ソーシャルコンピューティング、IoT。

実はこのタイミングでこの技術トレンドがくるということを正確に予測できた企業や団体は過去にあったのかというと、どこにもないんですね。

早すぎた予測というのはいっぱいありますが、「次のトレンドは何なのか」というところだと予測を外した企業・団体ばっかりです。

今私が申し上げたのは、すべてデストラクティブな、ビジネスや社会を変えてきたトレンドですけど、本当にそういう重大なトレンドを予測できないのであれば、ロードマップというのは意味がないのではないかと。つまるところ、「そもそも予測できないのではないか」というところに、我々の立ち位置があります。

まさにアカデミックで研究されているような領域を、ビジネスの場でどんどん試していき、仮に次のトレンドが予測を外れてきたとしても、我々は少なくともその種を持っている。即座にそれに対応できるという状況を作るという組織としています。

なので、明確なロードマップやプロジェクトを上意下達で渡してはおらず、研究者のやりたいことや個々の問題意識に基本的に基づいて遂行していく組織として活動をしております。

「人工知能を活用しなければ非常に難しい時代が来ている」

例えば、どのような成果があるかというと、先般世界で初めて実現した、「そら楽」というドローンの商用ビジネスでございます。

これは千葉大学の野波健蔵教授の自律制御システム研究所と共同でやらせていただいて、楽天技術研究所も主要メンバーとして、最初の段階から参画しました。

ドローンというのは機体制御の技術というのは非常に高度に発達してきたものなのですが、デリバリーという観点でいうと、まだ開発されていない部分があったりする。そういう箇所に関して、例えば楽天技術研究所が画像認識技術を適用して安全に着陸するという技術を付加する等して、実際にビジネス化を実現したみたいな話もあります。

これは先般リリースいたしました、「Rakuma」です。

CtoCアプリケーションにおける「もしコレ!」という機能ですが、例えばみなさんが出品して販売したい商品を画像に撮ってこの「もしコレ!」という機能にかけると、「この商品はこういうジャンルのものですよ」ということを画像認識して提示する。

これは弊社の三木谷の書籍ですが、きちんと認識してビジネス書籍として出す。いわゆるDeep Learningを適用しております。私もびっくりしたのですけれども、今までの画像認識ではすごく難しかった、例えばイヤホンと充電ケーブルみたいなものの識別を的確に行うと。

AI関係の技術研究は非常に進めておりまして、例えば、シンガポールやパリでAIの研究者を発見するためのデータチャレンジイベントを開催したり、シンガポール科学技術庁と現在進行系でやっていますが、AI人材育成プログラムをやっていたり、あるいはスタンフォード大

学とAI自然言語の研究をしていたり、あるいはもうすでに開始していますが、筑波大やMITとそれぞれAI関連の研究を行っていたりします。

なぜそこまでしているのかというと、冒頭に申し上げた、「人工知能を活用しなければ非常に難しい時代が来ている」というのが我々の認識であり、危機感であるということです。

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