2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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藤岡清高氏(以下、藤岡):コンセプトを出すことが重要というお話ですが、谷口さんが創造性を発揮するためにふだん心がけていることはありますか?
谷口恒氏(以下、谷口):昔からアート好きですので、美術館にはよく行きますね。たまには芸術家、クリエイターと話をしたりしています。事業家と芸術家には共通するところがあると思います。
僕は絵は描けないんですけども、僕が芸術家と共通しているのは全体で考えたイメージ、構想を絵にしていくところです。芸術家はそこから自分で筆を取って絵を描いていくわけですけど、僕は技術を使って製品を創っていく。
構想力を養うには異業種の人と会って、「あいつおもしろい考え方しているよね」とか「そういう考え方あるんだ」とか、感じることは重要だと思います。そして、僕にも新しい思考回路が1つ増えていく。
藤岡:創造性を発揮するにはZMPさんのようにいい風景のオフィスにいることも関係ありそうですね。
谷口:あっ、それはありますね。このオフィスに来てから急に発想が増えましたけどね。すぐ目の前にある小石川植物園は東京ドーム4個分もあり、ここからくるマイナスイオンのおかげだと思いますね。
窓を開けると本当にすごい量のマイナスイオンで、敏感な人はマイナスイオンの量に気づくくらいです。
藤岡:谷口さんのロボット技術にかける強い想いを感じますが、モチベーションの源泉、谷口さんを駆り立てるものは何なのでしょうか?
谷口:ほとんど好奇心ですね。もともと自分の好奇心は自分のライフスタイルにしかなかったんですよ。自分が欲しいものを作ろうみたいな。自分の勝手なね。
例えば、家でいつでも聞きたい音楽を聞けたらなぁという想いから自分の側に寄ってきて音楽をかけてくれる音楽ロボット(写真下)などを創ってきました。
今も好奇心は強くて、その好奇心からロボットカーを創りはじめてから関心が音楽など家庭の中のことから家庭の外に出たというのはあるかもしれないです。
ロボットカーに関わり、広い社会と関わることになって事故を減らすとか人の命を救うとか意識や関心が外に向かってきて、広い意味で人々のライフスタイルというのが想像できるようになったんですよ。
未来のライフスタイルを考えたときに、すごくドキドキするんです。物流ロボットを考えたときもそうでした。物流会社で人が作業しているのを見ながら「これをロボットでやるとこんなに楽だよ」と思ったときに、すごくウキウキするんですね。
そのような発想が浮かぶのは散歩しているときとか、会社に来るときとか、朝とかに多いのですが、アイデアが浮かんだら早く事務所行って企画を考えて「よしやろう!」とすぐに関係する人に声かけて。「ちょっとこんなん作らない?」とか言って。自分しかその想像、絵が見えないので自分1人で企画書は創ります。
デザイナーに綺麗に絵を描いてもらったりすればいいかもしれないですけど、自分の好奇心からスタートしていろんなイメージができて、構想ができたときがやっぱり一番うれしいんですよね。
以前はアイデアを1つ出すと、その実現に2年、3年の時間をかけていました。音楽ロボットを創ったときなどはまさにそうでした。アイデアを出してからはその実現に自分も携わって集中して。今はその周期が短くなっています。いろんなアイデアを考えては、実現に携わる部分は社員に振って、自分はまた新しいアイデアを考えてと。
過去、当たらないアイデアをいっぱい作ってきたおかげで経験を積んで、筋の悪いアイデアがわかるようになってきて、当たるようになってきました。
本当にこれは経験ですね。経営コンサルタントも同じだと思いますが累積経験値が増えてくると直感の正確性が増してくる。
谷口:まずロボット技術を使った産業を自分たちで作っていくというのが僕の大きな目標にあります。産業と言えるようになるには、一定の売り上げ、最低でも1,000億円程度の規模になることが必要と考えていますので、僕らはいろんな事業を打ちまくるつもりです。それで2017年に100億円、2020年には1,000億を目指しています。新産業を創るのでしたらそれぐらいにならないとだめだと思います。
まず100億いったら倍増して増殖していきます。ロボット技術は組合せですので、できたロボットモジュール同士が組み合わさってボコボコ製品を生み出すのが特徴です。
自動車事業でも200〜300億くらいの売上にいってほしいですし、ヘルスケアでも200〜300億くらいいってほしいです。物流はどこまでいくかわからないですけども、数百億くらいいって欲しいですよね。
藤岡:目標を実現するにあたり、御社の経営課題についても教えていただけますか?
谷口:求める成長に対して人材が不足していることでしょうか。特にマネージメント人材の不足ですね。
ロボット技術者として優秀な人材は増えてきていているのですが、そのような技術者をまとめてリーダーシップを発揮して大きな製品を創っていくようなマネージャー層が足りない。あと、アルゴリズム考える人はたくさんいますけれどもそれを実装してまとめる人も不足している。
マネージャーになるにはやっぱり経験値が必要です。幅広いソフトの知識もあり、ハードのことも分かっていないといけない。このマネージャー層が足りないと、いい技術があっても製品化が進まないことになります。
社内でもマネージメント人材は育成していますが一人前になるまでに時間がかかりますし会社の成長速度に人材育成が追いついていないのが現状ですので中途採用で外部から採っていくつもりです。
藤岡:マネージメント人材の採用が急務ということですが具体的にどのような人材を求めているか教えていただけますか?
谷口:メカトロニクス系(機械・電気)メーカーや自動車メーカー、重工業、ロボットメーカーなどの技術部門でプロジェクトリーダーやプロジェクトマネジャーを経験されているような方ですね。機械、電気のことはもちろんですがソフトのこともわかっている人が望ましいですね。設計構想図とか仕様書を書ける人がいれば満足です。このようなポジションは優先的に採用を考えています。この階層の人が増えると、若手人材の育成スピードも早まります。マネージメント人材が増えた分だけ製品が生まれますから夢の実現が早まります。
あとZMPの社員に求めるマインド面ですが、僕の座右の銘にしてますけど“現状維持は後退に繋がる”と思っていて、現状からポジティブに自分を変えたいと思ってZMPに来ている人は合いますね。
今ZMPで人の何倍も働いて、何倍もパフォーマンスを上げている人がいますが、将来起業したいと思ってきた人です。ものすごく仕事しますし、仕事のスピードも早い。その人の大きな違いは責任感がぜんぜん違うところですね。ですので将来起業願望がある人も大歓迎です。
藤岡:ZMPさんのロボット技術人材の育成方法などについて教えてもらえますか?
谷口:ロボット技術は、インテグレーション、組み合わせ技術ですので、いろいろなものを集めて作っていく、その経験値が増えると強化されていきます。ロボット技術はソリューションビジネスでもありますからいろんなパターンを知って技術の引き出しが増えるほどいろんな問題を解決できるようになります。ですので、社員にはとにかくいろんなプロジェクトを経験させて引出しを多く持てるよう心がけています。
経験を積むと、ロボットカー以外にも物流ロボットなどにも技術を応用できるようになります。例えば、運転技術とピッキング技術という引出しを組み合わせて農業ロボットとかね。色んな方向に展開できるんです。
ZMPはいろんな挑戦をしてモノを作ってきました、センサー、コンピューター、モーターの組み合わせを何通りもやってきたわけです。
過去かなり投資をしてきましたので経営危機になったことはありますけども、なんとか潰さないで乗り切って、その後年々拡大できているのでこれから技術が溜まる一方だと思っています。
人材育成のためにとにかく社員にはいろんなことを経験させようと思っています。ZMPでは技術部長以外はみんなフラットなんです。年功に関係なく新入社員でもできる人はプロジェクトを任せますし、モノ作りの会社では珍しい自由な組織です。
とはいえ、モノ作りの仕事はやはり経験が必要なので、一人前になるにはどうしても時間はかかりますが自分が経験値をもっているのでどんどん若い人たちにチャンスを与えて経験を伝えています。小さい経験をどんどんさせて、若い人達の間で化学反応を起こして製品をボンボン出して一人前になるまでのスピードを速めていく。
ロボット技術の製品開発期間は長いと言われますが、それをしょうがないんだと甘んじていたらダメだと思うんです。言い訳はせずスピードを持ってできる仕組みを考えるしかない。普通なら製品化まで何年もかかるものを、協業をしたり、いろんなものを組合せることで半年、1年でできることもあります。
とにかく小さな技術をたくさん作っておくことが重要です。その技術自体がすぐに当らなくても浮遊していても役に立つことがある。重要なことは組み合わせ技術なのでうまく合わせれば小さい製品にはなっていく。小さい製品でヒットすれば、それをもうちょっと大きくしていくとか。
若い人にそういう経験をさせていきながら技術者として一人前にしていきますが、大企業では若くしてこのような経験はなかなかできないので喜ばれていると思います。
藤岡:2020年の売上1,000億円を見据えて、今から人事システム、教育システムを構築していると聞いています。
谷口:はい、そうです。社外役員に世界的な外資系人事コンサルティング会社の社長をしていた方に参画いただきZMPバリューの再定義や人材戦略など人事面を強化しており、できるだけ公平な評価ができ働きやすい環境になるよう努力しています。
6年後(2020年)には売上1,000億になっているので今から対応しなくてはいけませんので。どんな投資をしているんだと思われるかもしれないですけど(笑)。現在社員の半数以上を11か国から採用していますが、今後海外にオフィスが増えてグローバルカンパニー化していくので、世界標準の人事体系、昇給制度ができるようにGEみたいな人事システムを構築しているところです。
僕はやりたい製品アイデアがまだ100案くらいあるのでどんどん事業化していきたいですね。それぞれの事業で100億円くらいの規模になって、200人の雇用を創出するくらいのイメージですが段階的に取り組んでいきたいですね。
藤岡:社員としてZMPで働く魅力を教えてもらえますか?
谷口:大きく言って3つありまして、
1.自由な社風2.インターナショナルな社員構成3.最先端へのチャレンジ
になります。
自由な社風については、技術出身の理系の人が多いのですが基本的にはミッションは伝えますがあとはすべて自由に任せています。
先ほどオフィスを見ていただいたと思いますが、海外のラボのようだと言われますね。シリコンバレーの会社を取材した記者の人もそんなふうに言われたこともありました。
インターナショナルな社員構成については社員のうち外国人が半分以上を占めています。今は11ヵ国くらいです。そういう多様な人たちが自由に働いているので、仮に保守的な人であっても否が応でも自由になるんですね。派閥も何もなくて自由に交流して新しいものが生まれる、そういうところをうちの多くの外国人は誇りに思っています。
最先端へのチャレンジについては、ロボット技術の中でも常に新しいことを取り組んでいるので技術者にとってはおもしろいと思います。新しい技術情報が入ってくるし、新しい部品もいっぱい買いますから、新しいおもちゃですよね。
僕はよくおもちゃと言っていますが、ロボットカー自体おもちゃですしね。一緒に働く人たちが国内外の一流カーメーカーなど最先端のお客さんです。また、最先端の技術を持つ大学の研究者と一緒に仕事ができるというのは素晴らしい機会だと思います。そういうことは大企業にいたらなかなかないと思います。
藤岡:最後に谷口さんの夢をお聞かせください。
谷口:ロボット技術を使った産業を創るというのが大きな夢です。ZMPはロボット技術の総合会社になって、ロボット技術を活用したクルマ(自動運転車)、物流、ヘルスケアなど世界に事業を展開していく。
ロボット技術を活用すると省力化したり自動化されていろんなことが楽になりますが楽だけだとダメだと思います。
例えば洗濯機の発明で楽になりましたが楽しさを提供してない。楽しさを与えられるところが省かれる場合がありますが僕はその楽しさを提供できるノウハウというのを生み出したいんですね。製品に楽しさをまだ載せられていないと思っているのでここはチャレンジしていきたい。
最終的な夢は人生が楽しくて充実するとか、そう言うところまで自分たちの製品やサービスで関わりたいんですよ。
ロボットが普及しすぎると楽にはなるけどそこに幸せとか楽しさというのがなくなっちゃったりするじゃないですか? 車にあんまり乗ると運動しなくなって健康が悪くなったりします。便利さと幸せは相反してるんですよね。運動しなくなると楽しくなくなったり体調が悪くなりますから。
そうではなくて、楽になることと楽しさを両立するロボットを創る、それを僕は使命にしたいんです。人型ロボットや音楽ロボットを創ったときにユーザーが「なんだろう、このおもしろいやつは」と思ってくれたように。
最初にスーッと音を立てずに近寄ってくる音楽ロボットを創ったときは、「おもしろいよね、これ。よくそんなこと考えるよね」とか「どこで車輪動いているんですか?」とみんなの好奇心が集まって、本当に楽しさを提供できるんですよ。
そういう楽しさを提供できるロボットを量産してずっと販売していくことには何度か挑戦したけどまだ実現できていない。
でも自動車だったらできるかなと思っています。好きなところに移動できて新しい旅を体験できる、更にいうとプラスアルファができるんじゃないかと。それはまだ自分が探し当ててない夢ですね。まだこれから追い求めたいですね。
藤岡:谷口さん、素敵なお話ありがとうございました。
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