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「ヒカ☆ラボ」クリエイティブカンパニーNAKED Inc.がクリエイティブを支えるテクニカルの秘話を大公開!(全3記事)

『ソードアート・オンライン』の世界が現実に 近未来体験の裏側をエンジニアが解説

6月28日、レバレジーズが主催するIT業界向けイベント「ヒカ☆ラボ」が開催されました。NAKED Inc.、面白法人カヤックに続き、ワン・トゥー・テン・デザインのエンジニア・坪倉輝明氏が登壇。ヒットアニメ『ソードアート・オンライン』を現実の世界で体験できるキャンペーンなど、テクノロジーを活かしたさまざまな体験の裏側について語りました。

電子工作やフィジカルコンピューティングなどを担当

中村文豪氏:株式会社ワン・トゥー・テン・デザインの坪倉さんです。では、みなさん拍手でお願いします。

(会場拍手)

坪倉輝明氏:よろしくお願いします。ワン・トゥー・テン・デザインの坪倉と申します。今回、ネイキッドさんにお誘いいただいて、こういう機会をいただきました。

弊社もわりとカヤックさんやネイキッドさんと同じような感じなんですけど、先に自己紹介させていただきますと、ワン・トゥー・テン・デザインのインスタレーションデベロッパーをやっております坪倉輝明と申します。今は入社4年半ぐらい経っていて、基本的にはプログラマとして動いたり、あとは電子工作とかフィジカルコンピューティングをいろいろやっています。

弊社ワン・トゥー・テン・デザインなんですけども、カヤックさん、NAKEDさんとわりと近い位置にいると思っていて、インタラクティブスタジオと名乗ってはいますが、デジタルプロモーションとかの全般の企画制作をやっております。

もともとは京都に本社があるWebの会社でして、そこから、だんだんとイベントものだったりとか、エンターテイメントの分野にいろいろ手を広げて進んできたような感じになります。

それで、ワン・トゥー・テン・ホールディングスという、ホールディングス体系をとっております。私が所属するワン・トゥー・テン・デザインと、あと、ワン・トゥー・テン・ドライブがIoTだったりとか、ものを実際に開発するようなところで、ワン・トゥー・テン・ロボティクスがPepperなどの開発にかかわっていたり、ロボット全般をやっています。

今、社員数で言うと、京都本社50人、東京50人で、だいたい100人近くになってきております。

『ソードアート・オンライン』を現実に

さっそく、弊社の実績を紹介させていただきます。最近、お仕事でさせていただいたもので、『ソードアート・オンライン ザ・ビギニング』という施策がありまして。

『ソードアート・オンライン』っていうアニメがけっこう人気のアニメで、そのアニメがバーチャルリアリティ、先ほどカヤックさんのお話でもありましたけど、VRがテーマになっていて、主人公たちがそのVRの世界に入ってしまって、その世界のなかで死ぬと本当に死んじゃうみたいな感じのなかで、サバイバルをしていくみたいな、ざっくりと言えばそんな感じなんですけど。

そのIBMさんのキャンペーンというかプロモーションとしてやらせていただきまして、こういうアニメですね。

これVRの世界のなかのお話なんですけど、それを実際の世界で再現するという感じになっています。

これはIBMさんのクラウドサービス、クラウドサーバーのプロモーションイベントで、そのサーバーを使わせていただいて、プレーヤー、お客さんの体を全身スキャンして、その姿のままバーチャルリアリティのゲームのなかにダイブできるというゲームになっています。

なかに入ると手が見えるとか、ほかのスキャンした人のモデルが街を歩いていたりとか、というゲームになっていまして、これ、実際に手を動かして、武器を持って、自分の足で動いて、モンスターと戦うみたいなところまでやりました。

これはMMORPGでして、ネットゲームを題材にしているので、実際にネットゲームとしてプレイができるように作りこんでいます。最大4人まで同時にプレーヤーがなかにダイブすることができて、この時もイベントをさせていただいたんですけど、4人同時プレイで協力しあってゲームをクリアしていくという、ボスを倒すという流れになっています。全体の紹介ですが、IBMさんの制作協力で、弊社が企画・制作をしました。

全身をスキャンしてすぐにゲーム内に反映できるシステム

それで、これ設計がすごく上手いなあと思ったんですけど、まあ、弊社で企画しているんですけど(笑)。このアニメ自体が、2022年にこのゲームが完成してβテストがスタートするみたいな話だったので、それが開発されているとしたら現実世界なら2016年ぐらいだねみたいな感じで、そこから「αテスト」と題してゲームを開発したという感じになります。

結局、最終的には10万人以上が応募して、募集人数は208名だったので、500倍以上ぐらいの倍率になってしまったというものです(笑)。

技術的には、ここはエンジニアの方が多いと聞いているので説明させていただくと、Oculus Rift DK2、先ほどのカヤックさんと同じ構成ですね(笑)。カメラと指のトラッキングと、あとはこのヘルメットのなかにヘッドフォンとマイクが入っています。前のほうにキネクトがあり、全身のボーンを撮っていて、足に9軸センサーで足踏みとか進む方向を取っています。

それで、ここが弊社の開発したスキャンシステムなんですけど、スキャンシステムを使っていまして、これはガシャって一瞬で写真を撮ると、それが数分後にはいろいろデータの欠損処理とかボーン埋め込み、ローポリ化とか最適化して、ゲーム内で使えるデータにして書き出すというもので、スキャンすると数分後にはもうこんな感じで。

これは別のアプリなんですけど、自分が踊り出すみたいな感じの、ゲーム内にすぐ反映できるようなシステムを使っています。

私もこの開発に関わっていまして、VRの実装部分をUnityでやっています。開発中は、京都本社と東京支社でネットワーク連携プレイというか協力プレイをしながら、開発をしたりしていました。

いろいろと詰め込みまくったので、3Dスキャンからなにから(笑)。わりと最先端のVRになったと思います。いろいろ全世界から大きな注目を得られました。

“体験を作る”仕事

ほかの、次の事例です。こちらは東京モーターショー2015でさせていただいた、トヨタさんのコンセプトカーの施策です。去年の10月頃ですね。

ビッグサイトのなかに大きいドームを作りまして、プロジェクター計12台で、ドームと床面全部を投影して、プロジェクションマッピングみたいなことをして。さらに、僕らはテクノロジーを使って売りにしているので、床面と壁面を全部インタラクティブにしようということで、子供たちがその中で遊んで楽しめるようなものを作りました。

この「FCVプラス」っていう車が水素カーで、水素で発電して、それを例えば街とかにシェアしていけるというコンセプトだったので、それを見ている大人も学習できるように、例えば、うんちが飛び回っているんですけど(笑)、うんちを踏むとそこから水素が生まれますよとかいう、教育・知育みたいな感じになっています。

子供は水素の精みたいな感じで、街に電気をシェアしたりして、そのエネルギーの流れとかが、見ている大人も理解できるような仕組みになっています。壁をタッチすると、電気をシェアできるかたちですね。

このへんは時間もないので飛ばしますが、プロジェクター12台と、照明制御だったり、測域センサという足の位置を取るセンサーとか、タッチを取る接近センサ、赤外線カメラ、マイクで声を録ったりとか、いろいろやりました。Unityで開発しています。僕たちはこういう体験を作る仕事をしています。

それで、弊社のなかでも体験を作るチームというのがありまして、私も所属しているこのコミュニケーションテクノロジーセクション、「CT課」と呼ばれていますが、いろいろなエンジニアがいます。

インスタレーションエンジニア、フロント、もっと言えば表現寄りの、先ほどのドームとかの映像というか、インタラクティブなアプリを作ったり、あとバックエンド寄りの人、ハードウェアを作ったりする人もいたり、テクニカルディレクションを行う人とか、3Dに強い人だとか、いろいろ技術が大好きな変態が揃っています。

弊社の作業スペースはすごく汚いんですけど、いろいろ先ほど言っていたHTC Viveとか、VRのヘッドマウントディスプレイだったりとか、ロボットのPepperやらNAOやらというのがあったり、工作スペースがあったり、いろいろ機材が転がっている場所で作業しています。

それで、弊社ではエンジニア、結構いろんな人がいるんですけど、みんな得意分野が違って、「電子工作が得意だけど画像処理とかも僕いけるよ」みたいな人とか、「フロントエンドにすごく強いけどセンサーも触っちゃうよ」とか、「電子工作やっちゃうよ」とか、「Webだけどゲームエンジン使ってる」とか、けっこう複数のスキルを持っている人が活躍されているなという印象です。

もし、このなかにそういう人がいたらすぐ応募してくださいっていう感じで(笑)。弊社いろいろな職種があって、すごいわけわかんないぐらい多いんですけど、21職種ぐらい今、Wantedlyで募集していると思いますので、もし興味がある方は応募してください。

スマホでお葬式、お焼香も可能

で、まだ5分ぐらい余っているので、ここからは個人の話になるんですけど、いろいろお話ししたいと思います。

弊社は個人活動している方がけっこういらっしゃって、僕もメディアアーティストとして一応活動していたりします。

「魔法の美術館」という展示で、国内外、年間10ヵ所以上展示していたりとかして、こういうものを個人で作っていたりします。スクリーンの前に立つと、ゴミが自分の体にひっついてきて、ロボットみたいに動き出すみたいなものを作っています。

こういうことも個人の活動でやっているんですけど、一応これ、メッセージがあって、廃棄物は人間が出すもので、それを人のかたちで表現するとおもしろいよねとか、あと大量消費社会に対する問題提起とかっていうメッセージとかがあったり。

また、別の作品でこういう「インタラクティブお葬式」という変なものを作っていたりしますが。こういうロボ、メカとかを作って、今はお葬式って遠くに行かないといけないとか、わざわざ現地に行かないと参加できないので、スマホからボタンを押すとポクポクとかチーンとかできて、遺影もiPadで変えられるようにしとけばいいなとか。

(会場笑)

それとか、あとお焼香ですよね。お焼香って「参加した感」があるからやっぱりお焼香はあったほうがいいと思うんですけど、遠隔地からロボットアームでできたら便利だよねとか、いろいろ考えて。スマホからTwitter、Facebookアプリとしてログインして、お葬式会場のマシンを操作するみたいな。

というものを作っているんですけど、これもいろいろメッセージがあって、僕なんかはTwitterとかの友達が多いのに、「なんで、ネットの友達は呼べずに、リアルの友達しか呼べないのか」みたいな。とか、PayPalで金額を選択してネット決済、香典とかそれでいいんじゃないかみたいなのがあって作りました。これも、現状のお等式の仕組みに対する問題提起ですね。

あとは、「陣痛共有デバイス」。これは最近作ったんですけど、男の人は妊娠できないから、女性の気持ちがわからないというのがあって、奥さんの陣痛の痛みを旦那さんに転送するみたいな、そのまま。これも電気の筋電センサというものを使って痛みを取って、それを逆に電気信号で痛みを感じさせるみたいなものを作ったり。これも、その妊娠出産を取り巻くいろいろな環境に対する問題提起になっています。

「アーティスト脳」でまず課題を考える

こういうのを作っているんですけど、広告を作る感覚に近くて、いろいろと社会に存在する問題を見つけて、それを新しい見え方というか、気づきをもって解決するというか、テクノロジーだったりとかいろいろな方法でそれを解決する、というのを広告業界にいるからよく考えることが多いので、そういうのを考えながらやっています。

僕らはエンジニアなんで、やっぱり技術先行で、こういうすごい技術があるから使おうぜみたいな感じでやりがちなんですけど、そういうことだとあんまりいいものはできなくて、「アーティスト脳」というか、課題をまず考えて、それを解決する手段をいろいろ技術を使って、実現すると。という流れのほうがいいものができるというのを、最近感じています。

最後、もう時間がそろそろになるので、こういう技術とかに関わる方々にいろいろ知っておいてほしい現実があります。

技術って、いろいろ使ってみると想像と違ったり、この技術と干渉して使えないとか、いっぱいあるんですよね。「技術、テクノロジーってなんでもできるんでしょ?」みたいに思われている方がいると思いますが、そんなことはないと。

僕らのなかではもはやおなじみとなっている「コンセプトムービー詐欺」というものがありまして、いろいろありますと、はい(笑)。

僕が感じているのは、開発、実際に体験とか開発したことがない技術を提案しちゃうと、いろいろあとで痛い目に遭うよというのは思っていて。実際使ってみたりとか開発までやったらやっと、ほかの技術と干渉してここはダメだとか、いろいろいっぱいあるんですけど、そういうのがわかる。

1回開発しておけば例えば工数がどれぐらいかかる、開発とか予算がどれぐらいかかるとか見えてくるので、1回おもしろそうだなと思ったらぜひエンジニアの方は使ってみてください。

で、僕はこういう感じで、「Hack a Week」と題しまして、1週間に1個新しいデバイスを習得するという勉強法を個人的にやっています。あんまり買いすぎるとすごく高いんですけど、中国でAliExpressとかAlibabaとか、中国のサイトから買うと日本で2万円以上するものが10ドルとか(笑)、ぐらいで買えたりするんですよね。

おんなじ機能なのに、それを作っている元までたどればこれぐらい安く買えたりするんで、僕はそういうのを週1ぐらいで新しいのを買って、使えるまでこねくり回すというのをやっています。

ちなみに、これはイーサネットとシリアルケーブルをコンバーターで、なにができるかというと、プロジェクターを制御したりとか、LANとかでプロジェクターのオンオフとか、ソースを切り替えたりとかっていうのができるようなデバイスです。

というのを、ぜひエンジニアのみなさんはやっていただきたいなと思います。

いろいろ脱線しましたが、はい、ワン・トゥー・テン・デザインをよろしくお願いします。ありがとうございました。

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