2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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孫正義氏:じゃあソフトバンクのこのIoTに対する成長戦略を、少し披露したいと思います。
先ほどから言っておりますように、私はソフトバンクグループの中核中の中核になる会社、これはARMだと思っております。
このARMについて、ちょっと聞いてみましょうね。この月曜日、我々が発表する前、ARMという会社のことを知ってた、という人手を挙げてください。
(会場挙手)
はい、流石であります。ね、さっきからシンギュラリティに関しても多くの人の手が挙がりましたが、この会場で聞けば4割くらいの人が手を挙げました。6割くらいの人、全然知らなかったという人はですね、ぜひこのシンギュラリティのキーカンパニーになるIoT、キーカンパニーになるARM、このARMについて少し私が解説しますので、一緒に見ていただきたいと思います。
知ってたという人、ARMという会社のことを知ってたという人も、もう少し深くなぜ私がこの会社に着目しているのかということについて解説をさせていただきたいと思います。
ARMという会社は、チップを製造しているわけでありません。設計をしている会社であります。このチップのプロセッサの研究開発をし、設計をしてそしてこれを世界中のさまざまなチップのメーカーに、ライセンスを提供すると。設計図を渡すわけです。
設計図を渡して、ライセンスを提供する。で、その世界中のさまざまなチップメーカー、日本でいえばルネサスさんですね、世界中でいえばテキサスインスツルメンツだとかクアルコムだとかAppleだとかサムスンだとかいろんな会社があります。Mediatekとかですね。
これらにARMのコアの設計図を提供しています。彼らはそれに周辺のですね、メモリだとかグラフィックスだとか、さまざまな周辺の機能を追加していきます。クアルコムさんはモデム、通信のものが得意なので、そこをより強化したものを入れますね。
ということで、さまざまなチップのメーカー、この上に書いてあるような会社に、ARMは設計図を提供するわけです。で、彼らはそれをチップの最終製品として、システム・オン・チップ、あとで写真をお見せしますけどね、我々が20年前、30年前にパソコンを開いたら、パソコンにマザーボードが出てきます。
マザーボードには、インテルさんのCPUがあって、そしてメモリチップだ、IOチップだというのがいっぱいそこに乗っかっておりました。まさにそのPCのマザーボードの状態が、いまやワンチップになっているわけでありますね。
このシステム・オン・チップという風に呼びますけれども、ここの上の会社ですね、NXP、Spreadtrum、Mediatekと。
Huawei、NVIDIAですね、彼らがシステム・オン・チップとして、チップの完成品を設計し、それを台湾のですねTSMCのような会社が製造し、そしてさまざまな最終製品としての自動車、携帯電話、スマホですね、家電、そういうようなものに提供していくというかたちになります。
さてこのARM社が一体いくつくらい、先ほど20年間くらいでですね、約1兆個のチップをARMはばらまくことになるということを、私は推論として申し上げましたけれども、去年1年間で148億個、ARMベースにしたチップが出荷されてます。
人類は、人々は、この地球上に約70億人住んでるわけですから、この地球上に現在生きている人類の数の、1人あたり2個、ARMはそのチップを世の中に提供していることになります。
すべての地球上の人々、1人あたり2個。年間ですよ? 年間1人あたり2個、ばらまいていることになります。これがいま二次曲線的に伸びています。
ARMのマーケットシェアがどのくらい、どの分野にあるのかということですけども、スマホでは95パーセントを超えている。97パーセントくらいじゃないかと思いますけれど。あとタブレット、ウェアラブル、ストレージ。
さまざまなところにですね、自動車とか、ARMは非常に高いマーケットシェアをすでに持っている。
先ほど、ARMについて知らなかったという人も、インテルという会社のことはほぼ全員が知っていると思います。「インテル、入ってる」ということでございます。
パソコンのなかに入ってるわけですね。でもインテルのCPUの出荷の数の、約10倍くらい、ARMはいま現在すでに出荷していると。正確な倍数は計算してませんから、あとで誰か正確なものを計算してもらいたいと思いますけれども。
ともかく、桁が1つ違う、10倍とかそういうレベルでARMは出荷されているわけですけれども、それを多くの人は知らなかった。
おそらく会場内で、ARMというものを月曜日より前に知っていらっしゃった方、と聞けば、1パーセント未満だと思いますよ。
1パーセント未満の人しか、ARMという会社のことは知らなかった。でも、みんな使ってるわけです。知らないけども、みんな使ってる。
じゃあこのARMはどんな製品をつくっているのかというと、3つです。CortexのA、CortexのR、CortexのMでございます。
Aはアプリケーションプロセッサ。これがスマホだとか、より高度な製品に使われています。
Rはリアルタイム性を要求されるもの。つまり、スピードを要求されるものですね。これらに使われています。
Mは、マイクロコントローラーのMです。つまり組み込み型ですね。より小さな、いわゆるマイコンの世界。ここに出荷されています。
じゃあ具体的に、iPhone、多くのみなさん使っていると思います。一番人気のiPhone。世界でもいちばん、1社から発売されているスマホではiPhoneが開拓者であり、ナンバーワンであります。
このiPhoneに入っているCPU、これはApple社が自らつくっています。ただ、そのApple社がつくっているCPU、これはA9というプロセッサですけれども、このA9のなかに入っているコアがやはりARMであります。
Apple社は、システムオンチップという立場で、ARMのコアを使って。パソコンで言えば、インテルに相当する部分をARMから得て、そこにグラフィックスの機能を入れています。
(ARMのコアの画像が表示される)写真の真ん中下ですね、白いところのすぐ上の真横の真ん中、あそこにキャッシュのメモリがあります。半導体の専門の人はこの写真を見ただけで、ああどこになにがあるなということがぱっと連想できるわけですけれども。
まさにiPhoneのCPU、A9にはこのARMが使われている。64bitのARMが2個使われています。Snapdragon、これはクアルコムですね。クアルコムのチップが、iPhone以外の一番多くのスマホに使われています。Androidで一番たくさん使われているのがクアルコムです。
クアルコムのチップのなかにも、この右上に白く囲ってあります。A57が4個、そして A53が4個、合計8個のARMのコア、CPUが入っています。NVIDIAにも合計8個入っています。
これはビッグ&リトルというコンセプトですけれども、大きなコアが4個、小さなコアが4個入っています。A57とA53ですね。
ということで、さらにサムスンのスマホにはA57とA53が4個ずつ、ビッグ&リトルというコンセプトで入っています。
つまり8個のコアがそれぞれ違った役割をしながら、よりパワフルな演算処理をして、少ししか演算処理をしなくていいとき、例えば待ち受けのときというのは、待ち受けをするわけですから、なにも8個同時に使う必要はないわけですね。8個あるというのは、より省電力でもあるというわけです。
1個の小さいやつだけ生かしておけばいいと。そういうときは、全部使わなくていいから電池はより長持ちになると。8コアのほうが電池が長く持つと。おもしろいですね。1個しか使わなくていい、残り7個を眠らせておいていいからそうなるわけです。
ということで、ビッグ&リトルと。より大きなパワーと持ったコアと小さなコアが4個ずつというかたちでやっています。
Huawei、これも8個でやっています。TI、これも今度はMが2個とAが2個というかたちで入っています。ルネサス、A9が1コアの事例であります。インフィニオンもこういうかたちで入ってます。M4が1コアと。
つまり用途によって……まさにPCとマザーボードですね。真ん中に(拡張)バスがあって、このバスの上下にさまざまにメモリーだとかグラフィックスだとか、そのほかいろんな必要なチップのコンポーネンツを足していくと。
これ1枚が、かつてのパソコンのマザーボード。ワンチップにシステムオンチップというかたちで入っているわけです。NXPもこのようなかたちになりますね。
ということで、用途によってAだったりRだったり、MであったりというARMのコアを使ってその周辺にシステムオンチップというかたちで載っけていっているわけですね。
このようなものが、今スマホのなかには、ARMのコアをベースにしたチップが1個ではなくて複数入っているわけです。5個も10個も入っているわけです。
しかもメインのCPUのところには、アプリケーションプロセッサーには4個とか8個のARMのコアが入っているわけです。
ということで、2009年と比べてたった6~7年間で、GPUの能力は300倍になって、通信性能は20倍、画像は24倍、処理性能は100倍、センサー数は5倍というふうに、たった6~7年でこんなに進化しているわけです。
そうすると、5年×5年×5年というふうに、これの3乗倍。そうやって考えていくと、100万倍というのがあっというまにやってくるというのがわかりますよね。2の20乗、倍々ということを20回繰り返せば、100万倍になると。倍々ゲームを20回、2の20乗、つまり20回倍々ゲームを繰り返せれば100万倍になるということであります。
なぜ私が「30年後に100万倍」と言ったかというと大体1年半ごとに倍になっているというわけですね。おおむねですよ。1年半で倍ということは、30年で2の20乗倍になるということであります。
自動車にもたくさん入っています。今の自動車ですらこんだけ入っているんですよ。
今の自動車ですらこれだけARMのものがあちこちに入っているということは、この自動車が自動運転というようなかたちになると、どうなるのかということであります。
自動車はもはや走るスーパーコンピューターということになるでしょうし、自動車は走るスマートロボットということになっていくということであります。ロボットというのは必ずしもPepperのようにですね、手足がついているからロボットととは限らないわけです。
走るスーパーコンピューター、これは走るロボットだと。ロボット、その自動車の、超知性の走るロボットになり、事故を一切起こさない走るスーパーコンピューターになると。走るロボットになると。
事故が起きたら、「あ、それは人間が運転してたからじゃないの?」というかたちに将来はなるでしょう。
ということでARMのIoT、たった5年後にどうなるかということですけれども、スマートホームに16億個、スマートシティに15億個、そのほかのデバイスに11億個くらいいくんではないかというふうに予想されています。
年間平均の成長率は、60パーセント、50パーセント、40パーセントというかたちでどんどん伸びていくということですね。
パソコンの求められたかたちは、性能と価格でありました。ノートPC、それには電池寿命というのがありました。スマホになるとますますその電池、というのは重要な要素になりました。
みなさんスマホを使ってですね、「あぁ電池が切れそうだ」というと大体人間のストレスレベルがガーっと上がるそうです。
「電池が切れそう」というと自分の息が切れそうな感じに息苦しくなってくる、電池がなくなるとですね、突然誰ともコミュニケーションが、外にいる人ができなくなる、自分の活動がいろいろ……ということで消費電力というのはものすごく重要な要素になるわけですね。
人間にとっての酸素のように、スマホにとっての酸素、それが電池ということになるわけですけれども、ARMがなぜ強いのかというと、実はこの低消費電力ということでもっとも優れているんですね。
昨日、おとといか。真夜中の1時ごろに確かそのくらいの時間にですね、このARMの創業者、ARMの手前のAcornの創業者と電話で話をしました。「ところで」と。「どうやってAcorn始めたの」と。
なんでARM始めたのということを彼に電話で聞いてたんですね。彼はARMが、ソフトバンクの手に、日本の会社の手にイギリスの外に行ってしまうことは寂しいとつぶやいたみたいなんで、ちょっと待ってくれと。
寂しがらないでくれと。あんたの志を俺がガシっと受け止めるからということで、そもそもどういう志で、どういう気持ちで作ったんですかということを電話で話してて、もう大変意気投合しました。
で、彼が言ってたのは、いやAcornという会社を作ってね、と。その前の会社も作ったんだと。で、お金がなかったんだと。エンジニア、ARMを創業したときのその最高のプレゼントは、お金がなかったからエンジニア2人にしたということだと。
エンジニア2人しかいなくて、そこでリスクの、リデュースト・インストラクション・セットですね、このコンセプトを使ってつくった、イギリスでの最初のコンピュータがこのAcornのARMであったと。
しかもですね、最初に試作したものが、間違って電気につなぐピン……チップにはピン、足がついてますね、あのゲジゲジの足が。
この足が回路につながって色々な役割をするんですけれど、間違って電力回路につなぐピンをつなぎ忘れちゃったと。なのに、つなぎ忘れてたのに、動いてたと。
電気につなぐピンをつなぎ忘れてたのに、計算しちゃったと。なんで動いたんだ!? ということで非常に不思議になってよく調べたら、電力に対しての線はつながってなかったけど、漏れ電力で実は動いていた。
つまりARMのチップは、1個目の試作のときから大変な省電力で。回路つながってないのにピューッと念力のようにして漏れた電力で動いていた、と。
ARMは生まれた時から、間違ってこの省電力の性能を発見してしまった。
それ以来、インテルとはまったく別の進化系をつくっちゃったんですね。ガラパゴス。これがARMなんです。
だからARMはスマホの電池という、一番重要な、スマホにとっての酸素である低消費電力というものの設計につながったんだということであります。
これが今からのIoTに欠かせないカギになるわけです。電池1個で10年くらいもってほしいわけです。
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