2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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本田哲也氏(以下、本田):みなさん、こんにちは。今日は満員御礼な感じでありがとうございます。(このセッションは)イベントの最後のスロットだと思いますので、昨日今日と参加されてお疲れの方もいらっしゃると思いますが、どうぞお付き合いください。
このセッションでは「バズサイエンス」と題しまして、メディアの話をします。今、メディアのなかでもいろんなキーワードがあると思いますけれど、まさに今日はBuzzFeedの古田さんもいらっしゃいますが「バズ」ということと、あとは「ジャーナリズム」という考え方、この2点でちょっと大げさに言うと“メディアの未来”みたいなところを、あまり時間はないんですけれど話していけたらと思います。
申し遅れましたが、モデレーターをさせていただきます、ブルーカレントの本田です。よろしくお願いします。
(会場拍手)
本田:では、簡単に自己紹介を。古田さんからお願いします。
古田大輔氏(以下、古田):どうも、「BuzzFeed Japan」の創刊編集長をしております古田大輔と申します。簡単に経歴だけ言うと、もともと朝日新聞社で13年間記者をした後に、去年BuzzFeedの日本進出に伴ってそちらに移って、今は創刊編集長をしております。よろしくお願いします。
(会場拍手)
山田俊浩氏(以下、山田):こんにちは。「東洋経済オンライン」編集長の山田と申します。さっき話していたんですが、古田さんはすごく姿勢がいいんですけど、実は腰を痛めているそうで。古田さんは「withnews」の時もそうですし、バンコクの支局におられた時も、まさに現場を走り回る記者だったんですけれど、今はデスクワークが多いみたいで腰を痛めているそうです。
私はもうここ2年ほどずっと腰を痛めているので、もう慢性化してますけれど(笑)。大丈夫ですか? お気をつけください。今日はよろしくお願いいたします。
(会場拍手)
本田:というわけで、若干腰痛を抱えていらっしゃる古田さんと一緒にやっていきたいと思うんですけど(笑)。
みなさんご存知のように、今、注目のメディアのお2人ですが、お2人が揃って登壇するのって初めてなんですね? 光栄です。貴重な場だと思います。
まず、いろいろと議論する前に、「BuzzFeedとは」、あるいは「東洋経済オンラインとは」というところをお2人からご紹介いただきたいと思います。古田さんからよろしいですか?
古田:はい。それではBuzzFeedの説明をさせていただきたいと思います。BuzzFeedを見たことがあるという方、どれぐらいいらっしゃいますか?
(会場挙手多数)
ありがとうございます! BuzzFeedというのは2006年に立ち上がるんですが、最初は3人で始めて、今、現在は従業員が世界で1,300人、そのうち500人が編集部員です。
特徴的なのは、エンジニアを200人抱えていること、それからロサンゼルスのハリウッドに動画制作部隊として300人を抱えています。そして世界に12のエディションがあって、いちばん新しいのが今年1月にオープンした日本版ということになります。
3つのキーワードに絞ってお話ししたいと思います。1つ目は「ニュース&エンターテイメント」。どういうことかというと、我々は“なんでもあり”なんですよね。BuzzFeedというと、どうしてもエンターテイメントコンテンツ、猫ちゃんとかそういったものが有名ですけど、それがすべてではないと。
「ドレスの色は何色?」というコンテンツを覚えている方が多くいらっしゃると思うんですけれど、あれを最初に書いたのはBuzzFeedでした。
その横はアイスクリーム。料理のレシピ動画でFacebookで早回しで見るようなやつですね。あの分野でもっとも大きいのはBuzzFeedが配信している「Tasty」です。
その横は、BBCと一緒に調査報道をした「テニスのトッププレーヤーの間で八百長が蔓延していた」という調査報道。
斜め下は、オバマ大統領への単独インタビューです。これはすでに2回やっているんですが、世界のネットメディアで初めてオバマ大統領に単独インタビューしました。
ここまではUSのコンテンツですが、日本は1月にオープンしてどういうコンテンツを作ってきたのか? 例えばこれは初日に出したコンテンツです。福島第一原発の構内は今どうなっているのか。記者を派遣して現地をルポしたり、熊本で地震が起こった際もイチ早く記者を現地に入れて、今、熊本で何が起こっているのかを伝えました。
ただし、新聞社やテレビ局がやるようなコンテンツを僕らが一緒にやってもしょうがないので、僕らは新聞やテレビの報道からはどうしても漏れてしまう現実を取材しました。
例えば、僕が現地に行って書いた記事。「南阿蘇村の被害が激しい」という報道がいっぱい出ましたけれど、実は南阿蘇村って東西にすごく長くて、東側は被害がほとんどなかった。そこの人たちは観光客に来てほしいと思っているという記事を書きました。
新聞やテレビだと災害が起こったら、「災害、災害、災害」となってしまうんですけれど、でも、そうじゃない側面もある、ということを我々が機敏に動いて報道するということです。
かと思えば、先日のオバマ大統領の広島訪問。これも私が自分で行ってきたんですが、ホワイトハウスの記者の同行団にBuzzFeed Japanとして加えてもらいました。なかなか新興のネットメディアが入るのは難しいんですけれど、オバマ大統領に直接インタビューしている実績があるので、入れてもらって、現地から報道しました。
というふうに真面目なものだけではなくて、僕らはエンターテイメントもとっても大切なものだと思っています。人を笑わせたり、人をあったかい気持ちにさせたり、感動させたりするすばらしいものだと思っています。ありとあらゆるバズコンテンツ、つまりエンターテイメントコンテンツを作っています。
上のでっかい岩が乗っているのは、「俺たち人間ってちっちゃい存在だよね」っていうのをあの手この手で紹介するコンテンツです。食べ物のことであったり、マンガ家を紹介したり、あらゆるエンターテイメントコンテンツを作っています。
次に、「分散型戦略」。これが今、メディアの世界でとても注目されています。つまり何か。
今までのネットメディアは、すべて自分たちのサイトに来てもらうことが戦略の中心にあった。けれども、我々はみなさんが使っているFacebook、Twitter、Pinterest、YouTube、なんでもいいからプラットフォームにひたすらコンテンツを投げ込んで、その先でみんなに見てもらう。それが今世界で月間70億CV(コンテンツビュー)、これはどんどん増えています。
それを図示したのがこれです。我々は編集部であったり、ネイティブアドを作るクリエイティブチーム、そして動画を作るBuzzFeedモーションピクチャーズ、それがあらゆるプラットフォームにこうやってコンテンツを出していると。
そのいちばん有名なものが冒頭で紹介した料理動画の「Tasty」。
今、1年足らずで5,600万フォロワーがついていて、こんな感じで伸びていっています。さっき70億って紹介しましたけれども、その後もどんどんものすごい勢いで急成長しているのがBuzzFeedです。
これもすごく特徴的で、我々はそうやってあらゆるところにコンテンツを自分たちで出していくので、みんなに探して来てもらっている量というのは実はすごく少なくて、検索での流入は2パーセントしかありません。
じゃあ、どうやってこういった戦略を支えているのか。それはテクノロジーです。我々には自分たちが出したコンテンツがどのように読まれているのかというのをトラッキングするテクノロジーがあります。
この青い部分が自分たちの自社サイトに直接見に来てくれた数で、赤い部分はソーシャルメディアやあらゆるプラットフォームを通じて見に来てくれた数。これをどこまでもトラッキングすることができる。
そういうことがなぜできるかというと、200人のエンジニアがいて、ほぼすべてのツールを内製しているからです。それで日々、現場のエディターたちと、よりよいツールを作るにはどうしたらいいか、よりよいツールを使ってよりよいコンテンツを作るためにはどうしたらいいのかという議論を続けています。
それらのベースになっているのが、理念。我々は、グローバルでクロスプラットフォームなネットワークを作ろうと。世界中のあらゆるエディション、ジャパンエディション、ドイツのエディション、オーストラリアのエディション、インドのエディション、ブラジルのエディション、みんなで協力してネットワークを作っていくと。
じゃあ、「何のためにやるの?」というと、我々はポジティブなものをやっていこうと。ポジティブな影響を与えていこうという哲学を共有した上でのテクノロジーであり、戦略であり。
そして、最終的に目指すのは、読者にとって楽しくて、信頼されて、シェアされるものです。ということで、我々BuzzFeedの紹介でした。駆け足でしたが、以上です。
本田:ありがとうございます。私もBuzzFeedが出てきた時に、結果論でバズるっていうのは今までいっぱいあったわけですけど、BuzzFeedのコンテンツというのは、ある程度、科学的にというか、エンジニアリングしながら作っているという印象を持ちました。やっぱりBuzzFeed Japanでもそんな感じなんですか?
古田:僕らは2種類考えていまして、1つは、狙ってバズを取りに行こうぜという考え方。それまでのデータから計測すると、こういう作り方をしたらバズるよねということをわかった上で作っていこうというのが1つ。
2つ目は、そういう規則を無視して作っていこうよという考え方です。過去のデータばっかり分析して作っていくと縮小再生産をやっちゃいがちなので。
それまでに当たったやり方を大事にするのと同時に、それまでに当たったやり方をまったく捨て去ったやり方にもどんどんチャレンジしよう、というのが僕らにとってのサイエンスですね。
本田:両方必要なんですね。なるほど。ありがとうございます。
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