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八楽・坂西優氏(全1記事)

Web翻訳は「誤訳だらけ」で「高コスト」 ユーザーの不満を解消した機械×人の力

機械翻訳と人間翻訳が両立したWeb翻訳サービス「YarakuZen」を提供している、八楽株式会社・坂西優氏のインタビュー。坂西氏は、Web翻訳サービスの課題となる「品質」「スピード」「コスト」を改善した同社のサービスの強みを紹介しました。※このログは(アマテラスの起業家対談)を転載したものに、ログミー編集部で見出し等を追加して作成しています。

Web翻訳サービスの課題は「品質」「スピード」「コスト」

──現在の八楽さんの事業内容をお聞かせ下さい。

坂西優氏(以下、坂西):「YarakuZen」という翻訳Webサービスを提供しています。翻訳サービスは品質とスピードとコスト、この3つのどれか1つ欠けても満足いただけないビジネスなのですが、一般的にWeb翻訳サービスだと品質、翻訳会社や人に頼むと、スピード、コストで難があります。

品質がいいまま、スピードとコストを改善したもの、Web翻訳サービスと人間の良さをハイブリッドさせたシステムが「YarakuZen」です。

例えば、「配送は午前中の見込みです」の「見込み」という単語を翻訳したいとき、自動的に「見込み」を用いたジーニアス辞書の例文が出てきます。例文を見て、参照しながら作業ができます。

また、ユーザーごとに翻訳のデータベースが割り当てられ、それを元に機械翻訳をして、最後に人が修正します。この修正したデータを自動でフィードバックして機械学習させることで、品質がよくなり、コストとスピードが改善されます。

つまり、同じような文章を翻訳するとき、修正したデータはデータベースのフレーズ集に自動的に溜まっていくので、利用するほどシステムが学習して快適に利用できるようなります。

次に、翻訳を人に依頼する場合のお話をします。翻訳依頼のボタンを押すと注文画面が出てきて、「YarakuZen」に登録している4万人の翻訳者さんに文単位で修正を依頼することができます。一方で、機密事項の高い文章はきちんとNDA(秘密保持契約)を結んだ翻訳者さんに注文をすることもできます。

料金に関しては、無料の場合と有料の場合があります。修正を人に依頼する場合、1文字レベルによって3円から12円まで幅があります。Googleなどにある無料の翻訳ツールもありますが、ご存知のとおり誤訳だらけで、現状では使えるサービスではありません。

一方で、翻訳会社に頼むと少しの分量でも数万円かかるなど高コストです。しかし「YarakuZen」は、無料の機械翻訳に学習機能が付いており、翻訳依頼のコストも翻訳会社の10分の1程度に抑えることができます。

また有料の場合ですと、個人ごとに割り当てられる翻訳データベースを会社全体で共有できるようになります。自分が修正したデータを他の人も管理できることから、用法を統一して品質を向上したり、プロジェクト管理ができるようになります。

このように、機械と人間をハイブリッドさせたシステムが「YarakuZen」です。

競合サービスと企業ユーザー

──御社の競合サービスにはどのような企業があるのでしょうか。

坂西:海外にはありますが、日本ではあまりないですね。翻訳管理システムはまり知られていないので、どうしてもGoogle翻訳やYahoo!翻訳と比べられてしまいます。ですので、ユーザーからするとGoogle翻訳、Yahoo!翻訳、Excite翻訳がライバルになってるんですね。

──企業ユーザーはどのくらいの規模感の会社が多いのですか。

坂西:大企業や中小企業、業種で言えばIT企業からレストランなど、さまざまな会社があります。

多いのが、オリンピックに向けての多言語対応です。外国人観光客のためにポップ広告の翻訳や、メニュー翻訳など、基本的には外国人観光客のインバウンド対応ですね。

アメリカ→日本→インドへと渡って、進化したサービス

──2013年にインタビューさせていただいたときには、「World Jumper」という翻訳サービスを運営していましたが「YarakuZen」に移行した背景を教えてください。

坂西:サービスを移行した背景ですが、起業時から追って説明します。

まずアメリカから日本に帰ってきて、自動翻訳機能が入った多言語掲示板を作りました。当初は何でも掲示板だったのですが、横浜のビジネスグランプリで優勝して投資を得られたので、ビジネスとして成功させるために、まずはアニメの掲示板に特化して世界中のアニメファンを集めて、彼らにECでアニメグッズを売るというサービスをやっていました。

当時日本から直接海外向けにアニメグッズを売る会社がほとんどなくて、ユーザー数はすごく増えました。ところが、ユーザー数がどんどん増えていくにも関わらず、売上がぜんぜん伸びなかったんです。

その後、システムをアプリに転用するなど試行錯誤したのですが、また売上が伸び悩んで、なんとかしようとなぜかインドへ行きました(笑)。すると、縁あって元マイクロソフトの研究員と名門のインド工科大学の教授にお会いすることができました。

そこで、機械翻訳をそのまま使うのではなくて、「機械翻訳は人の生産性を上げるためのサポートとして使ったほうがいい」とのアドバイスをいただきました。その話をもとに、Webサイト翻訳サービスに転用しました、これが当初の「WorldJumper」です。

しかし「World Jumper」は、いろんなテクノロジーが混在していて、予想以上にバグが多かったことやEコマースサイトとかコニュニティサイトに使えなかったんです。コストもぜんぜん合いませんでした。

ユーザーからは社内ドキュメントやマニュアル、Eメール翻訳に使いたいというリクエストが多かったので、ブランド名を「World Jumper」から「YarakuZen」に変えて、Webサイト翻訳からドキュメント翻訳のかたちに転用して、2015年10月に公開しました。それから発展して今に至っています。

多国籍のチームを率いる方法

──この2年半の間に組織も大きくなりましたが、できなかったことからできることに変わったことなど、御社の変化について教えてください。

坂西:個人ユーザーサイドで言うと、企業向けしかサービスを扱っていなかったので、個人の方に勧めることができませんでした。

今では誰でも困っている人に勧められるようになったことです。会社サイドで言うと、人数が増えたことで段々チームとしてでき上がってきて、効率的にいろんな開発ができるようになってきたことですね。

──坂西さん自身の変化はありましたか。

坂西:昔に比べたら、いろんな人のサポートをするようになりました。チームが大きくなると、チームごとに分かれます。なかでも、エンジニアは外国人が多くて、営業マーケティングは日本人が多いので、自分がなるべく間に入って橋渡しするような仕事もするようになりました。

──最初から多国籍な社員で構成されているのは、八楽さんの特徴だと思います。多国籍社員のマネジメントで難しいことや気をつけていることがあれば教えて下さい。

坂西:私自身これで会社設立が2社目でして、1社目は20代のときにニューヨークで起業しました。そのときアメリカ人を最初に雇って会社を経営していたので、外国人と働くのに慣れているんです。

逆に日本人とあまり仕事をしたことがなかったので、日本に帰ってきたとき、外国人を雇うことが自然な流れでした。

多国籍の社員で一番気をつけているのは採用ですね。パッと見完璧なバックグラウンド、完璧なコミュニケーション力があっても、後で亀裂ができてきたり、ほかのいいサービスが出てきたと言って突然辞められたりなど、よくある話です。

すごく気が合って、楽しく呑みに行けるようになっても突然辞められてしまうことはあります。極端な話ですが、時給1000円貰っていたとして、隣に時給1050円の会社ができたら次の日からスイッチするのが当たり前な国はあるわけです。

それを責めるのはお門違いで、その国の考え、その人の考えなので、採用の時点で本当にその人がうちに感じている魅力、入りたい動機は何かをしっかりと見定めて採用します。

なので最初の見極めには相当時間をかけます。自分1人では無理です。いろんな社員が面談して多角的、総合的に評価するしかないですね。本当に今すぐ必要なポジションであっても、最後まで納得できないと採用しないです。

八楽のビジネスに興味を持っている訳ではなく、日本で働きたい、給料がいいなど、見えなかった本当の目的と、我々が提供したい、我々が感じて欲しい価値にズレがないかどうか。それが一致しないと採用はしません。

未来先行型より演繹型

──やはり理念や共感は大事で、それは国籍が違っても変わらないんですね。

坂西:そうですね。将来こういう世の中になって、このような会社が上場しそうだからここにジョインしようと考える未来先行型の人より、商品や一緒に働いている人が好きだから、一生懸命、今できることを積み上げて、最終的に素敵な世界を作るといったような演繹型の人、そういう人を優先して採ります。

今まで何度もビジネスモデルを変えてきたので、未来先行型の人は、軌道修正する度に離れてしまいます。

──外国人社員のモチベーションを上げるためにはどんなことをされていますか。

坂西:好奇心ですね。目の前にこのような機能を作ったらどんなことが起こるかとか、これしたらユーザーが喜ぶか喜ばないかとか、とにかく好奇心を刺激するような質問をずっと投げかけます。サッカーが好きだから、サッカーをやる。同様にサービスを作りたいからサービスを作る、そういう環境を大切にしています。

──今後、八楽さんが注力していく取り組みは何かありますか。

坂西:我々のサービスは、デスクトップで使われることが多いんですね。ですので用途を特化して、しっかりと何がユーザーに刺さるのか見極めた上でモバイル対応していくように考えています。

八楽の経営課題と参画する魅力

──八楽さんの経営課題についても教えてください。

坂西:人材採用ですね。ここが一番大事だと思います。結局我々IT系って、人件費が支出のほとんどです。主な支出は人件費かマーケティング費で、ほとんどが人件費です。

これからもっとチームを増やしていく上で、どういうチーム編成にするのか、どういうふうにマネジメントするのか、どういうふうに採用していくのか、成長期に向けてアクセルを踏む時に、どのように対応をしてどのようなマネジメントしていくかが重要ですね。

サービスの課題に関しては、早急にユーザーに「YarakuZen」という商品を理解していただくことです。

新しいサービスということもありますが、コンセプトや使い方を理解してもらうのが意外と時間かかります。そこをいかにスピードを上げていけるかが課題です。

──今、八楽さんに参画する魅力を教えて下さい。

坂西:まだまだ未熟な会社だからこそ、会社を一緒に作っていくステージに参加できるところです。そこが魅力ですね。逆に、成長期に入ってある程度会社ができてきて、安定したポジション、成長するのが見えているポジションに入りたい人は合わないですね。

──坂西さん、ありがとうございました。

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