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テクノロジーが変えるビジネスの未来(全5記事)

「経営力か、技術領域か」インターネットが成熟しきった時代の戦い方

2015年11月23日、次世代のリーダーを担う大学生・大学院生を対象とした「G1カレッジ2015」が開催されました。第3部分科会D「テクノロジーが変えるビジネスの未来」にヤフー・小澤隆生氏、メタップス・佐藤航陽氏、フォトクリエイト・大澤朋陸氏の3名が登壇しました。ディスカッション後の質疑応答では、ツールとしてのテクノロジーを有効に活用する方法について語り合いました。

写真におけるアナログとデジタルの境界

岩瀬大輔氏(以下、岩瀬):そのほかどうでしょう? 後ろの方、どうぞ。

質問者7:慶應大学の○○と申します。大澤さんに質問です。僕は月にアナログで1万枚ぐらい写真を撮っていて、多いときではフィルムでも数百枚とか撮るんですけど、印刷をすることがすごく怖いんですよ。

先ほどデジタルとアナログのお客さんがいて、デジタルのほうが少ないという話があったり、大会とかで定点のカメラで動画を撮って、写真を切り出せばいいみたいな。

テクノロジーと人間、僕は人間が勝ってほしいと思うんですけど、それはたぶん自分のエゴで、もしかしたらテクノロジーのほうがいい写真を撮れるかもしれないなという怖さがあります。

それでも人間はずっとアナログで残していきたいと思うんですけど、僕は動画で切り取られた写真はデータだと思っていて、人間が人間の目線で撮った写真は写真であると思っています。

その質感の違いであるとか、アナログとデジタルの境界、写真においての境界について、どのような差があるのかというのを、うかがいたいと思います。

大澤朋陸氏(以下、大澤):だいぶデジタルが近づいてきていると思います。(動画からの)自動切り出しだったり、そういったものが画質的には変わらないんですね。

おっしゃるように、その瞬間をどう切り取るかというアート的な部分はまだまだ追いつかないだろうなと思っていて、そこが一番の違いかなと思っています。

ただ「技術的には、もうできるだろう」というのは、ずっと前から言われていることで、我々も研究して、ずっとやっているんですけれども、なかなかできないというのが現状です。その差は最後まで縮まらないんじゃないかなと思っていたりします。

なので、そこのテクノロジーを追いかけると同時に、カメラマンの育成にもけっこうお金をかけて、そっちを作っていっているんですね。そこがなくならないと思っているから。

ただ、そこを補完するものとして、人の自動シャッターみたいなもので押さえられる写真というものも出てくると思います。だから、そこを組み合わせてその人のストーリーを作っていくようなものが将来アルバムになったり、そういったものとして持っていけるんじゃないかなみたいな。

だから、両方追っていく、合わせることによって味わい深いものができるんじゃないかなと考えています。

岩瀬:ありがとうございます。写真を通じて、人間とデジタルの境目みたいな話が聞けて、興味深かったです。じゃあ次、どうでしょうか?

資本主義の仕組みが縮小した次の世界

質問者8:慶應義塾大学の○○と申します。佐藤さんに1点質問です。先ほど、テクノロジーが世の中の既存の枠組みを陳腐化させていくというお話があったんですが、ある意味このテクノロジーという言葉もすごく陳腐化しているのかなというお話もあります。

先ほどの質問にもあった、資本主義がこれからどんどん多様になったり、変化していくというお話、次のオペレーションシステムを探るみたいな話は、今の世の中の流れとしてあるのかなと思っています。

逆に、世の中の9割9分の人は気づいてないけど、佐藤さんだけが気づいている、世の中の次の当たり前が何であるかと考えていらっしゃるのか、おうかがいしたいです。

佐藤航陽氏(以下、佐藤):これは難しいですね(笑)。次の当たり前ですか。1点あるとしたら、経済ってやっぱり情報の非対称性というんですかね、「あの人は知っているんだけど、僕は知らない」とか、「あいつは知っているんだけど、僕は知らない」とか、差がけっこういろんなところにあるんですよね。

なので今後、全員がリアルタイムで世界中の情報を知ることができて、誰でも使えるとなってくると、この差を作るのがものすごく難しくなってくるんですよね。

昔はタイムマシン経営とか言われていて、アメリカのものを日本に持ってくるとか、中国に持っていくとか、その差で利益を稼げたんですけども。やっぱりリアルタイムで全員知っているので、利益が出なくなってくるんですよね。

どんどん企業自体の収益が悪化していくので、見ていくと経済というのは縮小していく可能性があるなと感じました。でも、それは縮小しているんじゃなくて、今の既存のシステムが捉えられない価値がどこか違うところに存在しているということが起きているんじゃないかなとは思っています。

なので、次のパラダイムというのは、今の資本主義の仕組みが若干縮小していって、そこで扱われていた価値が違うシステムに移行していく。それがなんなのかというのは、私もまだ探っている途中です。

インターネットの発達で生じる不愉快さ

質問者9:ありがとうございます。京都大学法学部の○○と申します。小澤さんにおうかがいしたいと思います。

私は個人的にインターネットや技術の革新によって、今までにはなかった不愉快さというのも生じているなと思っています。Twitter上であったり、SNSが顕著だと思うんですが。

そういったネガティブなものが減るような取り組みが2つ行われうると感じています。1つは、Facebookがタグ付けの検索を誰でもできるようにしないというシステム側の取り組みと、リテラシーを高めるという個人の取り組みがあると思っています。

それぞれについて、誰がそういった新しい不愉快さを減らすための責任であるとか、アカウンタビリティみたいなものを負っていると思われているか、教えていただきたいです。

小澤:テクノロジーの発達によって快適さが増えると同時に、不自由さというか不愉快さが増えるというのは、長年繰り広げられたことです。例えば、車がなかったら交通事故なんて大したことはないかもしれないけど、人間の選択として、できるだけ早く効率的に移動する利便性を採用しているわけです。

なので、車は禁止されていない。でも、交通事故を防ぐためにテクノロジーがさらに開発されて、シートベルトであり、エアーバッグであり、エアーバッグも助手席、それからサイドというかたちで。

また、自動運転という不愉快さに対して、さらに技術で快適性を増すように更新をする。これが技術の進歩です。なので、基本は不愉快さが残っていて、その不愉快さが勝つようだったら、そもそもその技術、車は採用されないわけですね。

なので、Facebookのタグ付けの問題等々は、それが本当に嫌だったら、Facebook自体が廃れていきますので、そのクレームなり不愉快さを受けたFacebook自体、さらにサービスを提供する方々が、自助努力でしっかりやっていく。

もしくは、本当に嫌な人は車に乗らない、携帯電話を使わないという選択肢も当然ありえる。それは強制されたものではないわけですから。

基本的にはサービス、技術を提供する側が、しっかりと自助努力をしていて、最終的な進化論で言えば、51対49で「便利だな」と思う人が多いものが選択されていって、さらに不便なものは技術革新によって、さらにそれが補われていくというのが、例えば車だったり、携帯電話の歴史。

「車内での通話はお控えください」であったり、それが技術革新によって徐々に改善されていく傾向がありますので、その時点で切り取ったときの不便さというのは、その技術自体が正しい方向性であるかぎりは、その不便さも新たな技術で解消されていく。

それはサービスをプロバイドする側、技術をプロバイドしている側によって、提供されることが一般的には多いです。以上になります。

岩瀬:はい、ありがとうございます。最後の質問、ちょっと短めにお願いします。

経営力で勝負するか、技術領域で勝負するか

質問者10:デリー株式会社の堀江(裕介)と申します。先ほど佐藤さんがお話していて、僕も思ったんですけど、ソフトウェアとかに関していうと、技術の差別化がけっこう難しくなっているかなと思っています。

例えば、メルカリを作れる企業はたくさんあるけれども、それは最初に参入したメルカリさんが強いとか、そういうところがあると思います。

そのなかで、いろいろと考えていくなかで、むしろ技術そのものよりは戦略とか、経営に対して、どこで参入タイミングがあって、人と物とお金がどれぐらいあるからここを攻めるだとか、そういう戦略のほうが圧倒的に大事になっているのかなと思っています。

それを考えるうえで、もちろん経験も大事だと思うですけれども、こういう歴史上の人物を参考にしているとか、こういう考え方を自分のなかでしているとか、そういうのをお聞きしたいなと思いました。佐藤さん、お願いします。

佐藤:おっしゃるとおりで、どこで勝負するかという違いかなと思っていて、まだインターネットが、海のものとも山のものともわからない、本当にあやしい技術だったときというのは、技術そのものが競争優位性になったと思うんですよね。

ただ、今インターネットって誰でも使えて、別にオープンソースなんて腐るほどあるので、そういった意味では、もう技術では勝負できない。なので、今は経営力だったり、資金調達力だったり、プロモーション力だったりという、ネット以外のところに競争優位性が出ている。

だから、もしまだ未開のエリアというか、ゲノムの領域とか、あとは宇宙の領域みたいな、技術そのものが競争優位性になる場合には、経営力というのは必要ないんですよね。

逆にコモディティ、誰でも使えるという、今のインターネットみたいな領域だと、経営力のほうが重要なので、自分がどちらのリソースを持っているかというところなのかなと。

経営に自信があるのであれば、ネットを選ぶといいですし、逆に経営に自信がないのであれば、みんながわからない技術の領域で勝負をすればいいと。

そこは自分の手持ちのカードと市場全体の状況というのを読んで、ポジションを決めるべきかなとは思っていて。とくにこれを参考にしているのはあんまりないですかね、歴史上っていうと。

岩瀬:小澤さんとか。

佐藤:ああ、なるほど。それはあるかもしれないですね(笑)。

(会場笑)

小澤:歴史じゃないよ、おれ!(笑)

(会場笑)

テクノロジーという道具をいかに使いこなすか

岩瀬:ありがとうございました。最後にお三方、学生さんに向けてなにかメッセージをお願いします。まずは大澤さんから。

大澤:何度も言っているかもしれないですけど、私はテクノロジーはツールでしかないと思っております。それを使ってなにをやりたいのか、なにを成し遂げたいのかということのほうが、大事なんじゃないかなと思っています。

なので、そこの部分を忘れないように、テクノロジーのほうばっかりにいかないようにしていただきたいなと思います。

(会場拍手)

佐藤:今日はテクノロジーの話ではあったんですけども、経済的に儲かるかどうかとか、社会に価値があるからみたいな話は置いておいて、個人の人生でいうと、やっぱりテクノロジーを活用することによって、今までほかの人たち、過去の人たちが100年とか200年かからないと得られなかった情報だったり、知見というのが得られるんです。

これはどんどん活用するべきだなと思っています。なので、学生を辞めて社会人になったあとも勉強は続けるべき。

かつ、テクノロジーを使って、極力、情報のスケーラビリティというんですかね、何倍もの人の情報というのを得られるので、そこで学習をして、また学んで、それをもとにまた試してみるというのを、本当に繰り返してみるべきだなと思っています。

岩瀬:小澤さん、残り4分半たっぷりお願いします。

(会場笑)

小澤:そんなに話さないですけど、みなさんありがとうございました。4つある分科会のうち、テクノロジーを選んだんですから、なにかしら技術だったり、ひょっとしたらビジネス。4つのなかで一番ビジネス色が強いですからね。そういうことにご興味があられる方だと思います。

今、佐藤さんがおっしゃっていましたけども、私自体も自分の人生において、先ほどもプロ野球チームの例を出させていただきましたけども、テクノロジーによって自分の仕事だったり、その結果、自分の人生というのが大きく切り開かれてきました。

冒頭で申し上げたとおり、人間の本質というのはそうそう変わらないなかで、テクノロジーの活用というものは、人生に対して大きな影響をおよぼすと。

テクノロジーの活用自体が重要なのではなくて、自分の人生において重要なことに、テクノロジーをいかに使いこなすか、新しいテクノロジーを開発ないし仕入れてきて、それを使うことで自分の目的がよりうまく達成できるようになるか。

やりたいことが効率的に、経済的に、非常によく達成できるようになるかというような、大澤さんがおっしゃっていた「手段」ですから。

ただ、なにかをする際に、道具を使うか、手でやるかという話なんですよ。道具です。テクノロジーである道具を、いいものを、上手に使いこなす。そのためには知ってなきゃならないから、勉強してくださいよということです。

みなさま方はこれからテクノロジーを使いこなすために、この場にいるわけじゃない。なにかを実現するために、テクノロジーというのはどういう位置づけにあるんだろうなというのを、今日知ってください。

あくまでも手段であり、その手段が自分たちの想像を超えて進化しています。その進化に追いつかないと。自分より上手に使う人が出てきて、それで世の中がよくなればいいけども、やっぱり自分が勝ちたいと。

その領域で、自分こそが成し遂げたいんだと思うのであれば、そのテクノロジーを上手に勉強して、上手に使いこなして、本当に自分のやりたいことにそのテクノロジーを生かすということだと思います。

なので、そのテクノロジー、先ほどご質問を東北大学の方がされていたけど、勉強するエンジニアなり研究者がいます。そういう人と、僕も友達になれてないけど、いち早く勉強のために友達になる(笑)。「いい技術を仕入れさせてくれ」ということも重要かもしれません。

みなさま方からすばらしいテクノロジー活用事例が出て、より良い社会が築けますことを、心よりお祈りしております。ありがとうございました。

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