2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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大前創希氏(以下、大前創希):皆さま、今日は長いことこちらのほうに勉強されに来てるんじゃないかと思いますけれども、ここから先、私と父になります大前研一です。
この2人、実は初めて登壇というか対談になるわけですけれども、今日はこの場所で、「2035年、その時デベロッパーはどう生きるか」をテーマに話していきたいと思います。よろしくお願いします。
大前研一氏(以下、大前研一):はいどうも、よろしく。
(会場拍手)
大前創希:「茶の間の雰囲気で」と言われているので、いつもの大前家の茶の間の雰囲気で話をしたいと思うんですが、そうすることによって普段とは違う口を滑らす大前研一を、私は引き出していきたいと思いますので、よろしくお願いいたしします。
それではさっそくなんですけれども、2035年、その時デベロッパーはどう生きるかの前に、いま2015年を見ていきたいと思うんですけれども。
2015年、大前創希と大前研一、だいたい先月ぐらいに撮った写真なので、お互い合ってるかなと思うんですけれども、私20年後を見てみようと思って、あるツールで20年後を見てみました。年でいうと61歳と92歳で、92歳、まだご存命でしょうかね。
大前研一:もちろん。母親が96で元気ですから、まだバイクに乗ってると思います。
大前創希:はい。私もそうあっていただきたいと思ってまして、ガッツリ毎週のように遊んでますので、たぶん92、100歳近くまでいくんじゃないのかなと、私もだいぶ長いこと、70歳ぐらいまで一生懸命サポートしなければいけない部分があるんじゃないのかなと思って、覚悟しております。実は顔を見てみました。お父さんのほうは、あまり変わらないですね。
大前研一:(笑)。
大前創希:私はだいぶシワが深くなりましたけれども、こんな感じになるんじゃないかなということで、20年後、皆さんもきっとシワが深くなって、けっこう年取ったなとなるんじゃないかと思うんですが。
そもそもこの20年後の世界を想像してみると、どんなニュースが流れそうなのか想像してみました。あるのか、ないのか、お父さんにつっこんでほしいんですけれども、まず1つ目。年金受給年齢80歳に引き上げ、あり得ますかね。
大前研一:そうね、それか年金、まったくもらえないかどっちかですね。
大前創希:私たぶん、もらえない可能性があるんじゃないかなと。
大前研一:いまの若い人はもらえないですね。1000兆の借金。このグラフはやっぱり超重要で、デモグラフィーだけは50年後までわかりますので、こんな感じですから、払う人がほとんどいなくなる。
日本の場合には、貯めたお金をもらうんじゃなくて、現役世代が負担したやつをもらうので、あれだけ就業人口が細ってきちゃうと、そうすると、こんなでかい高齢者には払えないと。若い人は諦めてもらうということ。そうするといま、怒らなきゃいけないんですけども、「ああ、そう」って感じだから。
日本という国は、恐らく世代間の抗争が勃発して、高齢者はもう切り捨て。かつてスウェーデンがそうなりましたけど、そうなるんじゃないかと思います。怖いグラフです。
大前創希:そうですよね、非常に怖いグラフですね。私も年金を払ってますよ、もちろん。ここでオフィシャルなんで言っておきますけれども、ちゃんと年金払っております。が、たぶん自分には来ないんだろうなと思いながら、普段生活をしております。
その次のニュース。アジア近隣地域から、移民の受け入れ枠を拡大。もう移民を受け入れちゃった想定ですけれども、これあり得ますかね。
大前研一:これはしないと、アジアだけじゃなくてもいいんですけども、だいたい年間80万人ぐらいが就業人口から落ちているので。
いまは本当は定年になった人もまだ働いてるんで、実際30万人だけ減ってるんですけど、そのうちにこらえられなくって、40〜50万人ずつ減ってきますから、そうすると年間それだけ入れないといけない。
大前創希:はい。
大前研一:そうすると、石原慎太郎的に言うと、「すべて新大久保みたいになっていいのか。1人も許すな」なんて言ってますけど、そうは言っていられなくなると。消防署に人がいなくなる。ましてや自衛隊にもいなくなるので、移民はもう避けられないと思ったほうがいいですね。どうやって入れるか工夫しないといけないと思います。
大前創希:私のほうで1つ、今の現状でもやはりアービトラージといいますか、仕事は安いほう安いほうへ流れていってるところを、やはり皆さんと共有したいと思ってこちらの図をお持ちしたんですが。
すでにペーパーワークなんかとか、ITワークに関してはインドに渡って、さらに安いフィリピンなんかに渡るという現象もあったりします。こういった現象というのは、もっと拡大していくんでしょうかね。
大前研一:そうですね、アメリカの電話会社なんかは、ファシリティーごとインドに行っちゃって、インフォシスとかウィプロとか、ああいう会社にどんどん移ってっちゃって、アメリカのほうは、もう電話会社の中身は建物ごとインドに行っちゃうという時代ですね。
だから世界的にコストの安いほうにネットを通じていくと。最初の現象はアイルランドにアメリカの仕事が移っていった。そういうときがいまから20数年前にあったんですけども、これは世界的に知的ワークも平準化するということですね。
フィリピンがいまインドよりは廉価になってますけども、コールセンターはほとんどフィリピンにいま集まってます。英語のコールセンターは。
理屈はインドのコールセンターの人はアクセントが強くて、アメリカの銀行のコールセンターで、インド人のアクセントだと「どう言ってるんだ?」と非常に怒り出す。フィリピンだとアメリカじゃないことに気が付かないので、いまマニラのマカティというところに、すごい数のコールセンターの人が集まってきてますね。
大前創希:5年前か、6〜7年ぐらい前に「フィリピンのマカティがいいぞ」と大前家の茶の間で話をしていまして、私は3年ぐらい前にマカティにオフィスを立ち上げたんですけれども、よく見たらビジネス・ブレークスルーの英会話と近いところに立ち上げまして、ニアミスですけれども。
大前研一:(笑)。
大前創希:そういった会話が普段行われてます。なので今日みたいな会話も、普段の中で話してたものをまとめた形の内容になってます。わりとディベート、ディスカッションの多い家庭ですね。
次なんですけど、これ私が勝手に想像したニュースです。国土交通省、高速道路における人の運転を全面禁止に。あり得ますかね。
大前研一:これは、もう遅いかもしれないけど、こうなるでしょうね。全部自動運転のところの中に1人だけ人がいると、変な追い越しをしたりして、邪魔だから、あれはだめだと。事故を起こしたのはあいつのせいだとなっちゃうんじゃないかな。いい線いってる、これ。
大前創希:はい。私も、こうしていただけると非常に高速道路での運転、スムーズになるんじゃないかなと感じますね。
大前研一:ただ、僕みたいに周りを見て警察がいないと、シューッと行って、パッと行く。
大前創希:そこで止めてといてください、その話は(笑)。
大前研一:はい。
大前創希:オフィシャルには、できない話かもしれません。
大前研一:はい、すいません。
大前創希:そうですよね、車を運転するのが好きな方は、自動運転にならないほうがいいのかなという話でした。その次ですね。なんとiPhone 26、ワトソンによる自動SMS返信機能を実装。あり得ますかね。
大前研一:あるね。僕は、うちの奥様との会話も、これでやっていただくとありがたいなと思ってます。
大前創希:ワトソンが(笑)。
大前研一:ワトソンが非常に賢くなってね、言い訳も全部考えてくれて、「言い訳の通じる家庭がいいわけないよ」なんて、そういうジョークまで入れてくれると、いいんじゃないですかね。
大前創希:だいぶ家庭の雰囲気に近づいてきたようですね。では次に、人類最後の野球審判、本日引退。これあり得ますかね。
大前研一:これ、いい点だね。僕はテニスなんかはもう。いまアメリカのベースボールはいちゃもんをつけるとビデオ判定になって、半分ぐらい覆ってますね。だから審判の人は神聖であるというのが、全然神聖じゃなかったってばれてきて、統計的にも半分以上だめだったとわかってきた。
大前創希:申請すると覆ると。
大前研一:そうですね。いいジョークです。それで僕はこれはもっと早く起こると思う。テニスもそうですね。オブジェクションするとだいたい覆る。
大前創希:はい。これらのニュース、実は大元になるところはどこから考えたのかをお伝えしますと、前にニュースなりました「今後20年間で、すべての仕事の47パーセントが自動化される可能性がある」という話。仕事の5割が消滅するという衝撃的なニュースとして、ネット界隈をかけめぐった話ではあるんですけれども。
その中で失われるであろう、人間がやらなくなるであろう仕事の大きいところ、代替される可能性が高い仕事、こんなことがあるというリストがありました。これ一部なんですけど、例えば受付、レジ係。これすでにペッパー君に取って代わられるんじゃないかという不安があるわけなんですが、いかがでしょうか。
大前研一:そうね、受付はやっぱり、かわいい女の子がいたほうがいいと思うな。
大前創希:ペッパー君が、かわいくなるということですかね。
大前研一:余計な話をしても、ちゃんと答えてくれるのがね。いま派遣の人っていうのは顔つっぱっちゃって、こんなになっちゃうからね。某会社の社長さんが受付行ったら、わからない人が聞いて、ここに(名前を)書いてくださいって言われて、僕も一緒にいたんだけど、自分の会社でも書かないと入れなかったっていう。そういう派遣の人が来てるぐらいだったら、ペッパーのほうがいいですよ。
大前創希:はい。ペッパー君のほうが、顔を覚えてくれるかもしれないですね。
大前研一:覚えると思います。
大前創希:そのあと融資担当者とか保険鑑定士、ここら辺はどうでしょうね。
大前研一:そうだね。これも全部できる。そのとおりだと思います。これオックスフォードのデータ?
大前創希:はい、そうです。
大前研一:オックスフォードね、だいたいこんなもんじゃないですか。
大前創希:はい。オーダーを組み立てあげるスタッフとか、ラインスタッフも、これ鴻海では、すでに始まってますよね。
大前研一:それで、この中でおもしろいのは、やっぱり税務申告、会計士、その他。いまエストニアに行くと、イーガバメントの中で進んでて、結局全部イーバンクとカードを通じてやっているために、年間終わるとチャリーン、税金いくらって来ちゃうんで、税理士がいらなくなっちゃった。
それで税理士の協会とか、会計士の協会から文句が出なかったのかと聞いたら、そういう頭のいい人は、もっとほかに仕事が我が国ではいっぱいありますので、業界が動くことはありませんでしたって言ってて、もういまはすでに仕事がないんだよね。
その話を、この前税理士の集まるところで言ったら、ものすごい嫌がってたな。日本の場合には抵抗があるんじゃないかな。そういう意味では、ここには書いていないけど、お医者さんもかなりの部分、いわゆる診断は、こういうのを使ってやっちゃうようになると思いますね。
大前創希:はい。ここまでが現状、想像し得る話で、いまお話をさせていただきました。2035年、その時デベロッパーどう生きるかの前に、実はこのセッションの中では、少し20年前をさかのぼってみようということを、テーマとしてお持ちいたしました。
実は、お父さんすごいなと、私はお父さん先見の目があるなと、すごく尊敬してるんですが、なんと1995年に『インターネット革命』という本を書いてるんですね。
今日、この日があるんじゃないかと予見して、1995年に出版されて、すごいなと思ったわけですが、この本の中で。
大前研一:この本はインターネットが、それまではパソコン通信ぐらいしかなかった。そしてロータスの、いわゆるクローズなユーザーグループで、ずっと社内の会議とかデータ共有をやり始めた時ですよね。
その時にインターネット革命で、こんな世の中になるんじゃないの、仕事はこう変わるんじゃないのって書いたけど、30万部、この本は売れたんですね。
その時ほとんどの経営者は、「大前さん、僕たちが生きている間は、こうならないよね」と言っていたんだけど、Windows98が出てきてから、もうガクっと来て、生きている間どころか5年後には、まるでこの本自体がもう遅れてるとなった。革命的な時代でしたね。
Googleができたのが1998年ですから。そういうことを考えてみると、1995年と2000年の間が、ものすごい大きな転換点になってたと思います。
大前創希:そうですね。私この講演が決まってから、この本を読み直してみまして、ものすごいなと思ったんですが、20年前予見できてなかったことも、たくさんあるんだなと感じました。
例えば、VOD、ビデオオンデマンドの話が、この中でも書かれてるんですけれども、その中で、消費者におけるVOD、ビデオオンデマンドは、まだまだ時代が早いという話があったんですが、現状で例えばAWSを使ってるネットフリックスであったりとか、ビジネス・ブレークスルー大学というのはオンデマンド通信をやっていると。
そこにおいて、やはり20年前から予見できなかった今の時代というのは、どうお考えですか?
大前研一:スティーブ・ジョブズがiPodというのを出してダウンロードを1曲ずつやると。ミックジャガーに頼み込んでやったわけだけども、CDをつくってる人は「パッケージごと買ってくれないとだめだ」って抵抗した有名な話ですね。ソニーがここから遅れちゃった、致命的な遅れをしましたが、あれがダウンロードです。
そのダウンロードが、いまやストリーミングに置き換わって、そしてAppleでさえもストリーミングに遅れてしまって。つまりダウンロードで先行した。ソニーがそこでさらに遅れた。そのAppleがBeatsを買わなきゃいけなかった。
3400〜4500億円でBeatsを買わなきゃいけないと。それでパンドラとかがガンガン出てきちゃって。「あれっ?」ていうぐらいにストリーミング。だから、本は読み放題。Amazonなんて私から見たら嫌な会社ですよ。何しろ40万冊は読み放題で1か月同じ値段です。著者はどうなるのっていう感じですよね。書く意欲もわかないという。
そしてそれが、ネットフリックス。あと映画は見放題でこれだけOKと。音楽も聴き放題でパンドラでもBeatsでもどうぞと言われちゃったら、個々のクリエイターはどうすりゃいいのかという話になっちゃいますね。
私なんか、本の時代には、そこそこエンジョイできたけども、もうワンオブゼム、40万冊の中で1つ、「どうぞ」って。こういう寂しい時代になっちゃう。寂しいって言っちゃいけないんですけど、あっという間ですね。
だからあそこから、オンデマンドどころじゃなくて、ダウンロードどころじゃなくて、ストリーミングで好きなだけ聞けと。しかも、パンドラはずうずうしくて、しばらく聞いてるとAmazonの手法と同じ。「この音楽の好きな方は、こんな音楽も好きなはずです」って、リコメンデーションが来て、いつの間にか聞いてると、「大前ステーションをつくりましょう」って言って、自分のステーションになって、車に乗ってもずっと大前ステーションで、好きな曲だけ。
だけど僕みたいに、ベートーベンと八代亜紀が好きなんていうのは、頭がどうも判定できないらしくて、リコメンデーションに出てこないですよ(笑)。だから、まだ人間のほうがいいのかなと。
大前創希:技術者の皆さん、いまの重要な課題ですよ。ベートーベンと八代亜紀が同時に聞けるというエンジニアリングを期待しているという話でございます。
大前研一:でも、それだけ20年前のインターネット革命は、いま私が読むと、「ああ、こんなこと言ってたのか」という面もあるし、当初の経営者は例外なく、自分たちの目の黒いうちはこういう時代が来ないと言ってた。だから、いかに経営者というのは時代に置き去られたかがわかりますね。
大前創希:この本の中で、もう1つポイントとして私が気になったところとしては、ネットワークによってヒエラルキーが崩壊すると、ちょうど村井(純)さんとの対談の中にあったんですけれども、これってもうすでに起きちゃってますよね。
大前研一:そうです。これは「誰が」というポジションのついた人が言ったかじゃなくて、「何を」言ったかが非常に重要になるというコンテクストの中の話ですけれども。そうなってくると、経験とかではなくて、その情報を持っており、その知識を持っている。あるいはそのことが言える判断力のある人の意見が非常に重要になってくる。
つまり個人が、組織の中のポジション、上にいるか下にいるかではなく非常に重要になってくると。これは世界中で今進行している現象ですが、日本の場合にはどうしても、「部長さんが言ってるから」とか、誰が言ってるかっていう「誰が」っていうところが非常にウェイトを持っていますが、それだけやっぱり、そのグループ、あるいはその会社は時代から遅れてしまう。
これが当時、特に私はロータスの新しいシステムを見て、こういう時代が来て、世界中のグループでディスカッションをしていく。これは非常に私にとっては、ジム・マンジーっていう当時のロータス会長はマッキンゼーの同僚だったので、彼からかなり細かいデモをしてもらって。
こういうことが、これから仕事のやり方になっていくんだなと。すごい衝撃を受けて、経営者の勉強会にもこれを紹介したんですけども。もういまは当たり前というかね。何の新しみもない、普通になってますけども。
私はまさにそういうコンセプトで大学を作ったので、存在しない大学ですよね。要するに、オールサイバーの大学をつくったわけですけども。大学院のほうは、ちょうど10年になりますけども。やっぱあの辺が原点で、構想の中に自然に入ってきたのは、これが理由ですね。
村井さんも慶應大学の藤沢キャンパスで、こういうことをリードしてやってましたけども、村井さんとの対談も、この中には入ってますけども。ある程度推測すれば、この中でネットの技術者がいつも言ってたのは、「ユビキタス」という言葉ですね。いまユビキタスというと、「あいつまだ、あんな古いこと言ってる」って言われるけど。
ようやくいまこういうところでユビキタスの社会になって、そしてパケット通信網が世界をだいたいカバーしてる。どこに行ってもつながる。こういう時代が来たのは、当時の我々から見ると、憧れのユビキタスですよ。
いつでもどこでも、誰とでもつながるというね。それがついに来た。その恩恵を十分に使いこなしてないところが企業には多いんですけれども、これから先はどんな田舎に行ってもだいたいパケット通信網だけはある。
だからVoIPでやれるもの、つまりネットはどこに行っても同じようなことができるようになる。
大前創希:私の娘、長女と、いわゆる孫との話の中でよく出てくるのが、iPhoneを触っていてネットが通じなくなると、やはり衝撃的にネットが通じない、ネットが通じないという話になりますが、やはりいまの世代の人たちはネットがつながって当たり前。
この時代は、ネットがつながらなくて当たり前だったんですよね。なんせ、一般回線が64kbpsみたいな時代だったので、そこからこの時代を見通すのは相当難しい話だったんじゃないのかなと思いますね。
大前研一:この頃、私は原稿を書いて出版社とのやりとりはファクシミリでした。それより前はテレックスでしたから。ですからファクシミリで夜起こされて、「原稿が届いてますので修正は明日の朝まで」なんて。いまはもう、そういうのまったくないからね。
これはどこにいても、絶海の孤島にいても、ネットが通じればできると。ありがたいことですけど、逆に仕事が追っかけてくる。そういう意味では、なかなか仕事と切れないという時代になってますね。
大前創希:この本書いたときに飛行機の中でジム・マンジーとお話をされたことが、本を書くきっかけになったんですが、いまはシンガポールに飛んでる間、インターネットずっとつながってますから。
大前研一:そうね。
大前創希:例えば、ヨーロッパに行くときもずっとつながってるんで、そういうシチュエーションがなくなりそうですね、逆に。
大前研一:そうですね、その時はネットを切って寝ます。ネットがない頃は一生懸命こうやって高い金払ってやってたけども、いま当たり前になってくるとね、もう切る。
大前創希:逆に切る。
大前研一:切って寝る。これが重要です。
大前創希:はい。もう1つ、1995年からいまを見ていくと重要なキーワード。「BG」と「AG」というのがあるんですが、これ何ですか。
大前研一:これ懐かしい言葉だね。Before GatesとAfter Gatesなんですよ。やっぱり、このおっさんが出てきて、我々、いわゆるコンピューター技術者でない人でもこういうことができるようになった。Before GatesとAfter Gatesで、企業の成長のスピードも10倍以上変わってきた。
「Before Christとanno Dominiぐらい大きな時代の変化があったんだよ」って言うときに、当時は世界中で講演するときにもこの言葉を使ってましたけども。そのマイクロフトが若干、時代からスッとスリップし始めてるのも、おもしろいところだと思いますね。
大前創希:はい。最後、これは1995年からいまを見比べてみたときに、その当時、このキーワード「Do More Better」というキーワードが1つ重要なキーワードだと思って取り上げました。
昔はやはり比較級で言えるモノ、コトっていうのが日本のチャンピオンの時代と。これはどういった意味なんでしょうか。
大前研一:20世紀っていうのは「日本の世紀」なんですね。20世紀の最後の頃、特に80年代はアメリカが「もう日本、勘弁してくれ」と、日米貿易戦争でも、いつも日本はやり過ぎるということで。
答えのある世界っていうのは日本は非常に得意で、「Do More Better Faster Smaller」と、全部比較級で言えて、日本ではこれを「軽薄短小」と呼んでたんですけども、同じもんだったら、要するに小さくて安くできると。軽薄短小の時代だと言われてたんですけども。
これがつまづき始めた。89年12月からずっと長期低迷に入るわけですけども、気が付いて21世紀に入ってみるとガラッと変わっちゃって、比較級じゃないんだよねと。方向そのものが間違ってると。日本って方向が違ってて、一生懸命昔のことやってるんで、Fasterだったら早く崖にぶつかるだけだという時代になっちゃったの。
だからつまり今のリーダーっていうのはDo More Betterをお尻叩きながらやってく、車座になってみんなで解決策を見つけるんじゃなくて、「お前こっちだよ。これやらなきゃだめだよ」という時代になった。
これはやっぱりもうリーダーの役割はガラッと変わったということですね。方向の示せないリーダーは、もうリーダーじゃなくなったわけです。
大前創希:はい。そうですね、いま2015年になりますけれども、ちょうど話に出たように、20世紀型の人材と21世紀型の人材の違いを、これも先週末、夜中10時半ぐらいから2時間にかけて2人でディスカッションをして、こんなところが人材の違いに当たるんじゃないのかなって出してみたのですが、まず20世紀型の人間、ケーススタディーを重要視するよと。21世紀型の人間は「RTOCS」をする。RTOCSって何ですか?
大前研一:リアルタイムオンラインケーススタディ、つまりハーバード型のケーススタディーはビジネススクルールでやりますけども、ほとんどのケースはつくるのに半年かかって、それを4〜5年使うので、その会社がもう存在してない。
私もスタンフォード大学のビジネススクールで教えてたけども、生徒3人集まると、先生1人よりもすごい。だから何かケースをやり始めると、「先生、この会社もう潰れてるんですけど」とか、「その会社とこの会社はもう合併してないんですよ」と。
「え、すいません。今日はこのケースに書いてある通りだと思って、クラスのディスカッションを盛り上げてください」と言う。生徒のほうは「しらけるなぁ」と。「この先生、遅いぞ」という感じで。
つまり、ゲイツがちょうど光のスピードの経営と言ったんだけども、リアルタイムじゃないと。いま私がこの会社のトップだったら、どうするかということじゃないと、ケーススタディーをありがたくハーバードからもらってきて教えたら、ほとんどの場合はもうだめですよね。
「はい、ポラロイドとコダックの戦いについて」やってたって、ほとんど両方ともなくなっちゃったじゃん。何やってんの?っていう感じですよね。だから、私に言わせると、リアルタイムでものが考えられるかどうか。リアルタイムこそリアルなんですね。だから古い。
いかに名門バーバード、スタンフォードといえども、ケーススタディーはもう時代遅れ。ということは、先生という言葉、「teacher」がもし出てくるとすると、「teach」はデンマークで1993年か1994年に禁止された言葉です。
大前創希:デンマークではもう言えないんですか。「teaching」と言えないんですか。
大前研一:21世紀というのは、要するに答えのない世界だと。teachということは答えを前提にして教えること。したがって「答えのない世界に、何で先生が教えられんのよ」と。
中国ではもっとひどくて、先に生まれるって書いて先生という。「先に生まれたぐらいで、でかいこと言うな」というのが21世紀の方向。だから、ここのところにものすごい大きな断絶があって、結局我々の学校もteachという言葉を禁止して、Teaching Assistantもいなくて、ファシリテーター、そしてラーニングアドバイザーとして、皆さんがlearnするのをお手伝いしましょうと。
だからカフェテリアだよ。あんたが好きなやつを持っていけよと。つまり、うちのビジネス大学の広告にも「教えない大学」って書いてあるんです。いろいろなものは提供するけれども、習うのはあなたですよ。学校に行くときに、「先生の言うこと、よく聞いてね」なんて言って送り出す親はだめだよね。
「先生の言うことを全部聞いたら、あんたバカになるよ」ぐらいのことを言わなきゃいけないですよね。だから、「家に帰ってきたら宿題やりなさい」なんて、これもあきまへんわな。先生の回し者みたいな。だから、そういうことを考えると、このteachとlearnはものすごい大きな違い。
21世紀は教わる、習う、覚えるではやっていけない。20世紀と一番大きな違いが、これだと思います。だから、カンニングってあるじゃないですか。うちの学校はカンニングOKですから。だって世の中に出て、ビジネスをやろうと思ったら、いろいろな人の意見を聞いて、「僕はあれがいいと思う」。この判断力が重要なんですね。
だから、そういう能力を養おうと思ったら、ありとあらゆる人と相談して、「私は、こう思います」と言えるかどうかなんです。ということは、「カンニングはいけないよ」というのはわかるけども、うちの学校の場合には、「みんなと相談して集団知でやっていいんだよ」という試験があります。
ただし、それで論文を1200語で書かせた上で、今度は土曜日の午後2時。全世界に生徒がいますから、「土曜日の午後、パソコンの前にいろ」と。質問をこっちから送ると、一斉にみんな携帯電話で話し始めるんだけど、1人ずつ質問が違うんだよね。
だからカンニングしたところで始まらないので、そこから自分で2時間で800字。能力を試される局面もあるんだよね。私の場合はその両方やっています。
みんなで相談して、いい答えを引き出す能力と、それから自分だけで800字で、2時間の限られた時間で持ってこれるかどうか。この2つを試すことで、その間はできるだけみんなと相談してカンニングしてくださいと。
英語の本では、We are smarter than me。1人よりもWeのほうが頭いい。こういう言い方、集団知の考え方ですね。そういう本も出てますけど、我々はまさにそれを信じています。
大前創希:こういう父親に育てられてしまったので、私はどうしても上の方が言ってるのを信用できない人になってしまったのかなと、いまあらためて理解いたしました。
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