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2016年のドローン産業の展望(全5記事)

ドローン空撮でコンテンツはどう進化する? 総フライト1700回で得た経験とノウハウ

ドローンにとって画期的な1年となった2015年。この年に起こったさまざまな出来事は、ドローン業界にどのようなインパクトを与えたのでしょうか。また、今後ドローンにはどのような変化が起こるのでしょうか。 2015年12月4日、デジタルハリウッド ロボティクスアカデミーの主催で行われたシンポジウム「2016年のドローン産業の展望」。ドローンの第一人者である3人のプロフェッショナルが、今年1年を振り返りつつ、今後の展望を語ります。 3人目の登壇者はORSO代表・坂本義親氏。豊富なフライト経験を持つ坂本氏が、現場からの生の声を語ります。初めてドローンに触れた人が驚いたことは? 国宝を空撮する感触とは。ドローンでしか撮れない、魅力的な映像の数々をお届けします。

豊富なフライト経験を持つ指導者は貴重

高橋伸太郎氏(以下、高橋):ここからは、3人目の基調講演者として、ORSO代表でもある坂本さんにお願いします。セッティングに少し時間がかかるので、少々お待ちください。

今回、ORSOのチームのみなさんには、デジタルハリウッドロボティクスアカデミードローン専攻プログラムにおける、実技指導のところと、安全運航に関するケーススタディーのところを、それぞれお願いしているかたちになっています。

なぜ坂本さん及びORSOチームにお願いしたかというと、今年(2015年)の前半にあったイベントで、坂本さんの講演や映像作品を直接見たのがきっかけなんです。ここで重要になってくるのが、豊富なフライト経験なんです。

実際に学校として教えることを考えると、フライト経験もあって、かつ指導できる人は、日本国内だとまだまだ限られている状況です。そうしたなかで、いろんな検討をした結果、今回お願いしたという次第になっています。

では、準備が整いましたので、お願いいたします。

やってみないとわからない

坂本義親氏(以下、坂本):ORSO坂本でございます。先ほど高橋さんからご紹介にあずかったんですが、たくさんフライトを飛ばしているというので、今回ドローン専攻のゲスト講師として、「管理リスクアセスメントのケーススタディー」というお話を、我々のほうで担当させていただいております。

今日は、この後に空撮のコンテストの概要があるということで、空撮を中心にお話をさせていただければ、と思います。

そもそも私たちは、スマホのサービスの開発をやっている会社です。依頼主から依頼を受けて、顧客をスマホでつなげる、ということを主にやっております。

資産として、データであったり、画像であったり、音楽であったり、というようなものをアプリとかサイトに表現をする。必要な情報コンテンツを作って表現するところで、スマホサービスの企画開発・運用等をやっております。

今、表現というお話があったと思うんですけど……表現というお話は後でしましょうか。事例紹介としては、このようなことをやっています。

まずは、やってみないと何もわからないということで。「映像を撮りながらテスト飛行をさせよう」ということで、去年の7月あたりからドローンを飛ばさせてもらいまして、進めさせてもらっております。

「こんなに音がするんだ」

(スライドの)下のほう、実はどんどん追記させていただいていまして。上のほうには、うちで保有している機材が並んでいます。うちはスマホの会社なんですが、「やってみないとわからない」ので、表現の1つとしてドローンを飛ばして、まず、どのような映像が撮れるのかというところ(をやってみました)。

撮るにあたって、「どのようなことに気をつけて考えながら飛ばさなきゃいけないか」ということがだんだん増えてきました。当初は安全を第一に考え、「自分たちがされたら嫌なことはしない」ということを掲げていました。それから飛ばすにつれて、いろいろなことが追加されてきました。

例えばドローン撮影の際、「ハチの大群が飛行しているようなブロペラの音が出ます」というのは、説明しなくてもみなさんわかっているだろうなと思ったんです。しかし、ドローンを見たことがない方たちは、まず最初に音にびっくりする。

もうそろそろびっくりしないですよね、ここにいる方たちは。だけど去年の7月あたりだと「こんな音がするんだ」と。「聞くだけで怖い」という方たちもけっこういました。

風速、温度、湿度、高度計測等を行なったり、「5メートル以上の風(の日)は飛ばさない」等々、(条件を)積み上げてまいりました。総フライト数でいくと、今のところ1,700フライト以上。今、北海道の釧路湿原でいろいろ飛ばしていまして、さらに増えていると思います。

「自分の操縦とは何か」をまず把握する

続いて、総撮影スポット数としては大体80カ所以上。ドローン台数でいくと94台ほど、うちでは保有しております。

「なぜ94台なのか」というところだけ、ちょっと言わせてもらいたいんですけど。大きい系の機体、いわゆるDJIのInspire 1(インスパイアワン)とかPhantom 3pro(ファントムスリープロ)とかはもちろんあります。

あるんですけど、撮影に行ったときに冗長化しないと、結論的に飛ばないことがあるので、たくさん持っているところはあります。

あとはX8+(エックスエイトプラス)とかParrot(パロット)と、いろいろなところももちろん持っているんですけど、一番重要視したいと思っていたのは、「撮影の技術をどうやって担保するか」というところ。うちで小さいドローンをたくさん持っていまして、操縦技術についてはそちらで、どこでも、だれでもちゃんと確認ができる。

機器云々ではなくて、まず「自分の操縦とは(何か)」「これが自分の操縦感覚である」というところについて、きちんと把握をしたい。というところで、ちょっと台数がふえていまして。94台といっても、別にPhantomシリーズ、Inspire 1が94台あるわけではないので、そこだけ補足をさせていただきます。

独自のテスト項目で、例えば「1機体の最高フライト数は120あたりを目安にしないと、いろんな機器が故障してしまうよね」等々を、1,700回のフライトのなかでいろいろ経験してきました。

独自の安全確認項目としては、「人の上では飛ばさない」と。落ちたときに危険であるとか、確認項目をきちんと設定しまして。今、「フライト時は2人体制でやる」というところも、今年の頭からやっています。これはEASAにきちんと言って、フライトをしている操縦者と、あとはそこで見守る人間が必要です。

あと第三者が寄ってくることがけっこうあるので、その方たちに「すみません、今飛ばしているので、申しわけないんですけど、ちょっとだけお話はご遠慮いただいて……」等々の人間を配置して、やってきております。

観光素材とFPVレース

(動画再生)

今日は空撮ということで、動画を2本持ってきていますので、見ていただければと思います。

こちらの動画は、大分県の観光素材として、今年の夏頃撮らせていただいた動画です。今日は空撮映像というお話なのですが、空撮映像以外のカメラで撮っているものもなかには入っています。

うちの動画のつくり方としては、緩急をつけたいと。表現としてより伝わりやすくして、見ていただきたい。長く、一番最後まで自分たちの思いを伝えたいということで、いろんな機材を使って映像を表現しています。

国宝の宇佐神宮で飛ばさせていただいたのが、ちょっと感動的でしたね。国宝のあたりで飛ばすと、やっぱり勇気が要るんですけど、無事に飛ばさせていただいて帰ってきたかたちです。

(別の動画)

こちらの映像は、Plan・Do・Seeさんという会社さんがありまして。結婚式などを展開している会社さんの、大阪市にある大阪市公館という施設。有名な建築家の先生が1950年代に建てられたものを、去年の夏に改装しました。そちらを結婚式場に使われるという際に、「ぜひ撮ってくれ」というので、けっこういい時期に、大阪で撮らせていただいたものです。

(別の動画)

あとは京都ですね。同じくPlan・Do・Seeさんの運営されている、ザ・ソウドウという、東山にあるところですが、そちらでも飛ばさせていただきました。Plan・Do・Seeさんの思いであったり、荘厳な風景だったりを表現するための1つとして、ドローンで撮影をさせていただきました。

(別の動画)

今日はもう1本動画を用意しまして。先日、千葉の香取市で開催された『ドローンインパクトチャレンジ』に、うちのほうで協賛させていただきました。初出しです。うちで公式動画を撮らせていただきまして、今日は特別に許可をいただいたので、先にお見せしたいなと思います。

「国内最大級のFPVレース」というかたちでやられていたと思います。うちでは公式映像として、いろんな角度から固定のカメラ、あるいはドローン等々で撮影をさせていただきました。躍動感であるとか、その場の雰囲気が伝わる動画を撮りたいな、と思いながらも、一生懸命やってこんな感じです。ちなみに、こちらはFPVの画面そのものがなかに数点入っています。本当に本邦初公開です。

「日本初の事業化」を目指して

我々としましては、動画、スマホ、ドローンの優位性ということで、まず1つが、動画という分野ですね。サービスの定着はしてきました。プラスAdobe(アドビ)さん。いろいろパッケージが変わってきまして、編集が容易になったり、あるいはスマホのなかで簡単に動画が編集できる環境になってきました。

もう1つ、スマホという部分で、昔に比べると再生環境が大分高画質化してきたと。そこに加えて、ドローンで新視点、あるいはアクション性、躍動感というところで、新しい表現ができるようになってきた。

そこの3つで、撮影・視聴環境がクリエイティブを変化させ、新たなコンテンツを促進していると、我々はとらえております。

我々の目指す先のビジネスは、「日本初の事業化」というのを分野ごとにやりたいな、と思っています。1,700フライトやってきた。それはあくまでもテストであると。いろんなところで飛ばして、いろいろな経験をして。安全についてどうなのか。コンテンツについてどうなのか。じゃあ、それを見ていただく方たちからどう見えるのか。というところをテストしてきました。

そのなかで飛行テストだったり、動画作成、フライト経験、許可の申請だったりというのをやってきて、この1,700フライトについていろいろなノウハウがありましたが、実はそこまでドキュメント化してこなかったんですね。

我々のなかで(会社ではなく)人に貯まっていたので、そちらの部分を、今回デジタルハリウッド大学さんと一緒に、ロボティクスアカデミーのなかでご協力させていただいて、入門編として説明をしたいな、と思っております。

我々としては、日本のドローン産業の成長を加速させるためには、「新しい事業やコンテンツの開発を行う人材の育成」をデジハリさんと一緒にやらせていただきたい。「ドローンに関する社会的な認知度の向上」もやはり重要でして。周りの方たちに、ドローンについて正しい理解をしてもらうことが重要だと思っています。

その2点について、内側で飛行テスト、スマホの動画クリエイティブのノウハウを提供させていただくことで、業界に対して貢献をしていきたいな、と思っています。

我々からは以上になります。ありがとうございました。

(会場拍手)

高橋:坂本さん、ありがとうございました。ここまで3人の方に講演をお願いしました。このあと、後半のパートではパネルディスカッション、質疑応答に移ります。このあとセッティングがありますので、少々お待ちいただければ幸いです。

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