2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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小野裕史氏(以下、小野):ミドリムシから始まった今回のIVSなんですけれども、今度はさらに思いっきり未来の話ですね。「IoTロボティックスの先にある世界」というテーマで締めくくりたいと思います。
今日は実は登壇者お二人の予定だったんですが………。みなさまから見える範囲では今3名いるんですけども、実はもう1人、本来ここに登壇する予定だった「現代の魔術師」と呼ばれている落合陽一さんがフライトの都合で物理的にここに来ることができなくなったんですけども、実は今、北京からSkypeでつながっております。
落合さん、聞こえますでしょうか?
落合陽一氏(以下、落合):はい、聞こえます。今、落合は北京にいます。すごく宮崎に行きたかったんですけれども、ちょっと航空会社の都合により北京で足止めを食らっています。まだ日本に行く便も取れていないので、たぶん空港の廊下で夜を明かすことになるんじゃないかと思うんですけど………。
小野:そんなところにいるんですね(笑)。
落合:プレゼンの動画自体はイタリアの空港で作成してお送りしたので、まずそちらを見てもらおうと思うんですが、ひとまずよろしくお願いします。
小野:ありがとうございます。じゃあいったん映像は切らせていただきますね。僕も北京は出張でしょうっちゅう行くんですけど、非常に回線の悪い北京でよくぞあそこまでつながったなと結構驚きですね。
今から、落合さんが北京に辿り着く前に、イタリアで事前録画されたプレゼンテーションをご覧いただければと思います。
(映像開始)
落合:こんにちは、落合です。航空会社の手違いでトランジットをミスりまして、IVSのある宮崎まで行くことができなくなってしまいました。大変申し訳ございません。今、僕はイタリアにいるんですが、今日話そうと思っていた話を軽く話そうと思います。
今から北京に飛ぶんですが、ビデオ会議が可能ならばそちらに参加することができるかもしれないですが、もし北京でWi-Fiがつながらなかったりしたらたぶん参加できないだろうと思いましたので、ビデオでプレゼンテーションを作ることにしました。
僕は普段、メディアアーティストをしています。ちなみに出張の時はMacBookを2台持ち歩いています。普段はメディアアーティストと名乗っていることが多いですが、筑波大学でデジタルネイチャー研究室という研究室をやっていて、他にはPixie Dust Technologiesというアメリカ法人の会社の社長をやっています。
あとは、今日もOculusのパルマーさんの発表があったように、いろいろ盛り上がっていると思うんですけども、そういうバーチャルリアリティ技術をどうやって使っていくか、どうやって普及させていくかということを考えて実践していく、社団法人のバーチャルリアリティコンソーシアムというところの理事をやったりしています。
大学に入ったのが2007年で、大学卒業後2015年から教員をやっています。意外と若い27歳です。Facebookはいつでも歓迎していますので、いつでも申請をください。
では一体、僕が何の研究をしているかというと、例えばこの動画(三次元音響浮揚)はネットでバズって有名になったんですけど、現実にある物体をどうやってコンピュータを使ってコントロールするか、みたいなことをやっています。これは超音波の力を使って物体を浮かせて物体を操るというものなんですけど、こういうものを作ったり研究したりしています。
そもそも何でこんなことをしているかといえば、1960年代や1970年代に可能だった物理学というのは、「どうやったら物が動くか」とか「どうやったら物が浮くか」という、シングルな現象をどうやって「記述」するのかがメインだったと思います。
そうじゃなくて、今は「どうやったら物を動かせるか」とか「どうやったら振り回せるか」とか「コンピュータがシミュレーションしたとおりに、どうやって物理場を形成できるか」みたいなのが、今のコンピュータを使った物理の応用先・世の中の技術というところの特長だと思います。
そうすることで、例えば空中に物を浮かせるだけじゃなくて、自由に動かすということを研究しています。そうすると、今までロボティックスで物を動かしていたものが、ロボティックスじゃなくても物が動いたりだとか、さまざまな応用の可能性があると思うんですけど、そういう使い道を考えています。
この研究を始めたのがちょうど2013年のことで、僕の研究は1年に1回、1年遅れで論文が通ってという感じなので、今年はもう2015年なのでこれを社会実装しようということで会社を始めました。
Pixie Dust Technologiesというアメリカの法人で、僕と共同研究者の星(貴之)先生と、デザイナーの田子(學)さんの3人のメンバーでやっています。これは今紹介したような超音波などのホログラムテクノロジーを社会に普及するための会社です。
例えばそれを使うと、空中に非接触触覚を作り出したりだとか、あとは受粉に使ったりすることができる。つまり、植物工場でハタキで受粉させているところを、どうやったら超音波で受粉させられるかということをしていたり。
他にはこれを使って指向性音響を作り出すことで、誰かの手がスピーカーに変わるとか、ある一定のところしか音が聞こえないような音波を作り出したりとかですね。
信号機の周りにつけて、おばあちゃんには「早く歩いて」と言ったり、子どもには「もっとゆっくり歩きなさい」とか「止まれ」とか言ったりするようなスピーカーを作ったり、はたまた盲導犬をコントロールしたり。プログラムできる音にはそういういろいろな使い道があると思います。
他にも、僕自身は普段メディアアーティストを名乗っているのですが、海外のギャラリーで個展をしたり作品を作ったりすることも多くて、そういう技術開発と美学の間にあるものをコンピュータ的に考えるということをうちの研究室ではやっています。
過去にはTEDxTOKYOに出たりとかシーグラフに出たりとかMicrosoftリサーチでインターンをしていたり、いろんなところを飛び回っているので、検索してもらえば結構いろんなことが出てくると思うんですけど、好きなことをひたすらやる。そういう生き方をしています。
僕が研究室でどのようなものを作っているかというと、ビジョンは明確です。今あるコンピュータは二次元のパースペクティブに縛られていると思うんですね。例えばスマートフォンだったりとか、コンピュータディスプレイだったりするものが、イメージが二次元に落ちているし、三次元だって言っても三次元空間全体を自由に、というわけにはいかない。
つまりコンピュータが発明される前の世界は、もうちょっとなめらかな妄想力、なめらかな発想力を持っていて、例えばピーターパンの世界だったら「ピクシーダスト」という粉を撒くと自由に物が浮くし、鏡の国のアリスの世界だったらあらゆる物が人格を持って勝手に動く。
そんなふうに、世界全体をどうやったらコンピュータにしていけるかというのを、まじめに理系チックに考えようというのが僕の研究スタイルであり、アートのパラダイムでもあり、僕のビジネス方針です。
世界全体をプログラミングする、映像の時代を踏み超えるという方針に基づいて、そんなことをしています。
そのために、例えばコンピュータシミュレーションを使って物を動かして、それを空中ディスプレイに変えたりとか、そういうようなコンピュータのシミュレーションとアクチュエーションを混ぜたような世界の描き方。
物理とコンピュータが共に歩むといろんなことができる、哲学的な表現だとか、あとは人間が考えられる視覚イメージをどうやって更新していくかだということをコンピュータを使ってやっています。
そうすると、例えばSFで出てくる空中ディスプレイとかいうものも。これは近いうちに出てくるんですけど、フェムト秒レーザーで空中に触れるタッチディスプレイを作ったり、触れるタッチパネルを作るみたいな研究に使えるんじゃないかなと思います。
今まではプロジェクターというのは、対象物を規定して「影絵遊び」をしていたものなんですけど、そうじゃなくて、計算機ホログラムを使うことで三次元空間の自在な位置にイメージを空中表示させるみたいなことができるようになります。そういうことを使って、例えば触覚ディスプレイやタッチパネルを作ったり、いろいろなことをしています。
他にも、質感のディスプレイを作ったり、実物体に触った感じの質感を変えたり、人間がこの世界に対して持っている常識や物質性みたいなものをコンピュータを使ってどのように塗り替えていけるかというのがうちの研究室の表現スタンスです。
今日は15分ぐらいプレゼンの時間をいただいていたんですが、この格好(ビデオ通話)で長くやるのもあれなので、そろそろ締めたいと思うんですけども。僕が今こういう研究をしている理由の1つに、やがて人類は宇宙に出て、自分たちの持っている人間性というのをアップデートしていけると思うんですね。
それは例えば自分たちは三次元空間に適応するようになったら空も自由に飛べるし、いろんなところに行けると思うんですけど、宇宙船の中って物は勝手に浮いちゃうし動き回らない。地上と同じように宇宙で暮らすのは結構難しいことです。
重力がない場所でも、どうやったら我々はそういうポテンシャル的なエネルギーを集めたりして便利な生活ができるかと考えると、空間に見えない力場が発生するみたいなテクノロジーというのはすごい重要だと思います。そのために今使っているような浮遊テクノロジーとかを宇宙でも使えないだろうかというのがやりたいことですね。
こんなのを考えています。そのために製品化してきたんですけど、つまりアクチュエーションのテクノロジーとか、新しい場を操作するテクノロジーというのは、例えばこれは本に貼り付けた付箋が勝手に動いてページを表示するというような例ですけども、この世界にどうやってコンピュータテクノロジーをもっと根付かせるか。
例えばこの動画は電子部品を探す手間なく、向こうから飛んできたらいいなというものを作った例なんですけど、こんなふうに物体と人間が関わりあえるような場を中心とした世界をどうやって作るかというのを考えていく時に、もっとも重要なテクノロジーかと思います。
音に限らず、さっきレーザープラズマとかも見せましたけども、ああいうようないろんなテクノロジーを使って、どうやってもっと理系的に、直接的に、もっと物質をアップデートするぐらいにハイテクなものを突っ込んで、いかにして自分たちの人間性をアップデートできるかということがポイントです。
僕は小さい頃からコンピュータグラフィックスに親しんでいたんですけど、今の子どもたちの世代は僕にとってのコンピュータグラフィックスを使う以上の、例えばこの世界を直接コントロールするみたいなのがベースになって、それを基準にこれからの体験というのができていくと思うので、自分たちがどうやってこの世界に対して責任を持てるのか、もっとおもしろいものを作っていけるのかというのが僕の研究のコアでもあるわけです。
例えばサイエンスとテクノロジーというのは、僕はもはやアートの一部だと思っています。人の心を豊かにするためのツールに過ぎない。最近はコンテンツっぽいアート作品は作っていなくて、単純に子どもたちが感動するような、原理的なサイエンスとテクノロジーに付随する美しさというのは、我々の心をアップデートして、かつ世界を震撼させ、世界に新たな感動を与えるためのツールなんじゃないかと思うんですよね。
それはひとつアートの一部なんじゃないかなと思うわけです。そんなふうにこの世界をどうやってアップデートするのかということをずっと考えています。
最後になりますが、僕が何で会社を始めたかというと、「リサーチ」「プロトタイプ」「マーケット」とあったときに、ここを一本綱でつなげるような研究ってあんまりないですよね。
ここに直接切り込んでいくにはデザインが必要だし、圧倒的な体験が必要だし、圧倒的なイノベーションが必要で、難しいテクノロジーを研究者が自ら表現や言葉やアプリケーションでラッピングしてしっかりマーケットに出していくというのはすごい大切なことなんじゃないかなと思うわけです。
僕が今相手にしてる場は、例えば光やradio frequency(高周波)、空気やサウンドやマグネットとか、いっぱいあるんですけど、こういうのを1個1個克服していって、やがては世界全体をどうやってよくしていくかというのを本気で考えています。
今日は行けなくて大変恐縮なんですけれど、もし運がよければWi-Fiがつながって遠隔でしゃべれると思うので、僕はまだ望みを捨てずに北京に行きます。ありがとうございます。
(映像終了)
小野:ということで、無事北京に辿り着いた落合さんをもう一度呼んでみたいと思います。
落合:はい、どうも落合です。ビデオ映ってますか?
小野:はい、ちょっと解像度は低いですが「モノ<場」という文字が映っていますね。
落合:はい。僕が今IoTと呼ばれるところで考えているのが、IoTをベースで作るための装置ということをベースに考えると、どうしても体験や空間というものがおろそかになっていくと思うんですね。そういうのを数理的にもコンピュータ的にも扱って、この世界をどうやってアップデートするかということをやっています。
小野:ありがとうございます。ぶっ飛び過ぎてて僕はあんまりフォローできないんですけど、ちょっとオーディエンスの方や初めて見た方にわかりやすいように……。
先ほどいろいろと物が浮いていたじゃないですか? いろんな「場」という話がありましたが、あれはいわゆる音響場、たくさんのスピーカーを使って音響場を動かしているという理解でよろしいでしょうか?
落合:あれは音響場で、その後に出てきたのが光、レーザープラズマ場みたいなものなんですけども。あとは磁場とか電場とか、いろんな場を扱っています。
小野:そういった場を扱うことで、物を動かすことを含めて体験に変えていく、作っていくという話ですね?
落合:そうです。体験のプログラミングをしていくという話です。
小野:ありがとうございます。天才的な27歳が今後の未来を作っていくということで、僕としてもとても楽しみでならない、北京からの落合さんからの映像です。このまま落合さんはつなげたまま、音声で絡みながら他の登壇者のお話も聞いていきたいと思います。
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