2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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林信行氏(以下、林):ヘルスケア系の分野で言うと、もう販売終わっちゃったみたいなんですけれども、NIKE+TRAININGというのを使うと、右足・左足がどういった体重バランスかというのがわかるので、正しくトレーニングできているかわかる。ジャンプで何センチぐらい飛んだかという記録も取れる、こういったものもあります。
あるいはアディダスさんはサッカーボールにセンサーを埋め込んでしまって、蹴った瞬間にスピードと回転速度がわかるようなものを出しています。これは、蹴った瞬間にスマホで状況がわかるので、修正がかけやすいという、そういうものもあります。
IVSの参加者だとむしろこっちのほうが興味あるかもしれませんけれども、ゴルフのグローブに付けるセンサーで、スイングが3Dで解析できる。
今回WWDCで、AppleさんがApple Watchでこれと同じようなことができるようになるということを発表してたので、もしかしたらこういったものも、これからは人気スマートフォン、人気ウェアラブルのアプリだけで実現するようになっているのかもしれません。
人だけじゃなくて植物の健康管理をしようということで、Parrot(パロット)社は植物のためのセンサーを作って、それを今度は植木鉢と一体化させて、水やりを1ヵ月は自動でやってくれる製品を出してきます。本当にありとあらゆる連携が始まってますね。
その中でも今後大きくなってくるのが、車との連携なんじゃないかなと思ったりもします。
それからもう1つ、身体との連携というのもあって、この映像はタッチバイオニクス社のi-Limbという筋電義手で、筋肉に力を込めると握ったりできる義手なんですが、細かい指示というのは筋電だけではできないので、そういった部分をiPhoneで「フォークを強く握る」「ナイフを強く握る」といったボタンを押して行えるようになっています。
筋電義手は何百万円もしてしまって高いので、これを普及させようということでDMM.make AKIBAさんに入居しているexiii(エクシー)という会社は、handiii(ハンディ)とい筋電義手をわずか数万円で作ってしまった。そんなものも出てきています。
ただ、この2つの筋電義手はネットワークが繋がっていないので、あんまりインターネットじゃないなと思うかもしれないんですけれども、ちゃんとインターネットに繋がる義手・義足も出てきています。
それはアメリカの「galileo(ガリレオ)」というもので、どういった物かというと、義足で階段を上るときはどういう角度が良いとか、椅子に座るときはどういう角度が良いかということを全部センサーで拾って、本社のほうにフィードバックするんですね。それを使って今後のガリレオをもっとインテリジェントにしていこうという感じでやっています。義足もこんなものが出てきています。
林信行氏(以下、林):最近ヘルスケア系も大きな注目を集めています。体重・体組成計から、体温計、血圧計、心拍計、糖尿病の方のグルコースメーター、血糖値を計れるものとかも出てきたりするんですけれども。
究極は、先ほどの伊佐山さんのスライドにもちょっと出てたんですけれども、プロテウスというところ。これは、飲み込むと唾液でスイッチが入って、体内のケミカルな状態を通信し続けてスマホで(記録が)取れるというものです。
これを使って新薬の開発を助けたり、手術の術後の経過を見たりできます。ここまでは、健康を保つヘルスケアの話でしたが、医療では薬事法改正が大きな話題です。
これまで日本の薬事法だとハードとソフトがセットになって薬事法の認可を受けていたので、ソフトウェアのバージョンアップをすると、新たに全部ハードごと買い直ししないといけないような変な状況になっていたのが、ようやくソフトウェア単位でも薬事法、というか法律の名前そのものが「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に変わり、略称も「薬機法(やっきほう)」になりました。
ヘルスケア・医療分野で注目すべき動きはもう1つあります。これまでウェアラブル型の活動量計はナイキのもの、アディダスのものとか全部独自のアプリを使ってやっていたので、情報が分断してしまっていました。だから、製品を他社のものに切り替えた瞬間に、それまでのデーターが使えなくなってしまっていたんですね。
しかし、AppleがHealthKitを発表してその壁を取り払いました。このHealthKitが歩数の情報はここに入れましょう、消費カロリーはここに入れましょうと標準化してくれたのです。おかげで、ナイキからアディダスに乗り換えてもちゃんとデータが継承されるような仕組みができました。
病院にある機器と比べたら全然精度は低いかもしれないけれども、こういったIoTのもの、ヘルスケア系のものは24時間ずっとデータを取り続けているものが結構あるので、そういった部分では医療にも使えるんじゃないかと、病院の診断に使おうとする動きも出始めてきてます。
もちろんこれはAppleだけがやっても全然スタンダードにならないので、GoogleさんもGoogle Fitというもので同じような標準化をしてきています。
標準化というと、もう1つ大きいのは、さっきのスライドのようなホームオートメーション系、あるいは家のロックだったり、照明も今はLED電球とかスマホで調整できるものがあるんですけれども。こういったものをAppleがHomeKitというかたちで標準化しようとしていて。
iPhoneを通して、今自分がいるのが自宅なのか実家なのか、それとも会社にいるのかということを認識した上で、じゃあ自宅のどの部屋にいるのか、玄関なのかリビングなのか、寝室なのかということを認識して、「今帰ったよ」というふうにiPhoneのSiriに向かって言うと、鍵を開けてくれて家の照明が点く、こういったものをやろうとしています。
最近はWWDCのセッションも全部無料で、今年はWWDCのアプリを利用すればカンファレンスの直後から見れるので、ぜひみなさんも見てもらうといいと思うんですけれども。
Appleが去年のセッションで「スマートロック、監視カメラ、電球、電源のコントロール、温度調整、ここらへんは真っ先にやっていこう」と言っていて、それ以外にも家庭用ロボットなんかも、AppleはこのHomeKitで管理しようとしてるようです。
一昨日ぐらいに発表された中で大きかったのは、HomeKitで新たにiCloud、Appleのクラウドサービスを使って、遠隔でも操作できるようにするという。
今のHomeKitは家にいるときにしか家の物をコントロールできなかったのが、外出中に「玄関の明かりを消し忘れたから消す」と言うと消せるようになってくる。
HomeKitのもう1つの進化は「Scene」という考え方です。去年までのHomeKitだと一つひとつのIoTを個別に操作する考え方でした
しかし、Sceneでは、例えば「朝起きたよ」と言えば電球が点いて、トースターが(パンを)焼き始めるとか複数の機器を操作して、いつもの状態を再現できます。
「家を出たよ」と言う「Leave」、「家に帰ってきた」というシーン「Sleep」。この4つを基本シーンとして備えるほか、例えば「夕食のシーンにセットしてくれ」と言うと、照明がちょっと暗くなったりとか、そういったこともできるようになってきます。
Googleもこれと同じようなことをやろうとしていて、元AppleでiPodの生みの親のトニー・ファデルが中心になってこれをやってます。
まだ足りていないものがないかなと考えると、毎日使う習慣というものがなかなか見えていない部分があるんですけれども。ここらへんをAppleはデザインの力で、工業デザインじゃなくてどういう操作だったら日常生活に馴染むのかなというのを真剣にやってきているのが、今回のWWDCだったんじゃないかなと思います。
Apple Watchみたいなものをみんなが持つようになったら、わざわざポケットからスマホを出してくることもなく、腕に向かって「Hey Siri, ディナーシーンをセットしろ」と言うとディナーの風景ができあがる、こういうことをやって普及したらいいなというのが現状じゃないかなと思います。
玉川:林さん、ありがとうございます。いろいろおもしろい会社のユースケースをご紹介いただいて、最後にApple、Googleの紹介もあったんですけれども、個人的に気になってるのは特にHomeKit周り、スマートハウスのようなエリアというのは、AppleなのかGoogleなのか、どっちのプラットフォームが勝っていくのかですね。
まあGoogleだとNestを買収して、それを中心に据えてみたいな動きがあるんですけど、林さんはやっぱりApple派なんですかね?
林:というか、世の中が2つのスタンダードに集約されてるということがやっぱり大きいことで、そうなると結局両方とも対応すれば世界制覇できるじゃないですか。そういった意味ではIoTやってる人たちがみんな勝ち組ですね。
GoogleはIoTを作る側のOSみたいなものも今回発表してきてますし、そういったところでどんどん作りやすい環境が整ってきている。GoogleのIoT用OS、Brilloを使ってもHomeKitに対応できるようになれば、どんどん作りやすくなってくると思います。
これまでのスマホの流れもそうだったけれども、やっぱりGoogle側の動きって次から次へと突飛なものが出てきておもしろさはある。
でも、それがさっき伊佐山さんが言ってたような、「信頼できない、これ本当に1年後に残ってるの?」というものが多い気もします。それをじっくり観察した上で、本当に全部持って行っちゃうような、良質なモノはAppleがデザインしてくると思います。
Appleが利用スタイルを確立すると「あ、確かにこうなったら使いやすいな」というのを見て、Android側に普及するというサイクルが、これまでもいい循環を作ってたんじゃないかと僕は思いますね。
玉川:なるほど。伊佐山さんはアメリカに普段おられていて、近くで見られてると思うんですけれども、AppleやGoogleの最近の動向はどうですか?
伊佐山:日本のメディアとか、それこそ林さんのイベントの話だと、どっちかと言うと身の回りのパーソナルなものがすごく多い気がするんですけど。他方で住んでる人の話題って、車の話だったり今日も出てましたけどヘルスケアみたいな、ちょっと今までとは毛色が違うものにもApple、Googleが入り込んできて。まずいぞと騒いでいる人もいます。
たぶん車の大手メーカーはみんなパニックになっていると思っていて。身近なところだといろんなブログにも書かれていますけど、Appleが車を作る基地を作っていて、まだ1000人いないと思うんですけれども、もう数100人規模で自動車会社から、特にテスラからたぶん200人くらい採用してますけれども、車を作る動きをしているというのは誰の目から見ても明らかです。
まあ、電気自動車で洒落たのを作ると……iPhoneの1号が出た時に世界中がバカにしてましたけど、同じようなことが起きて激震が走るのかな、なんて思ってるんですけど。Nobiさん(林さん)、どんな印象ですか?
林:僕もね、Appleって結局デザイン中心の会社で、ジョニー・アイブという方も、最近チーフデザインオフィサーに昇格しちゃいましたけれども、すごく車好きとしても有名なんで、Appleは車をすごくやりたがってるなというのは思うけど、僕は逆に詳しい情報は全然持ってないですね。
でもやってきたらおもしろいというか。実はAppleは、iPhoneを作る前に携帯電話を作ってたんですよね。モトローラに作らせたら全然ろくでもないものができ上がってきて……ってモトローラの人に失礼ですね(笑)。
スティーブ・ジョブズはそう(ろくでもないと)思っていて、わざわざモトローラの「ROKR(ロッカー)」の発表の日にiPodの発表をぶつけてきたぐらいに「もう、あんなものを世に知らしめたくない」というかたちになっちゃって、その後iPhoneを自分たちで作る。
それで言うと、今CarPlayとかいろいろやってはいるんだけれども、それほどいい評判も聞かないということで言うと、自分たちでやりたいというのがふつふつと来てるんじゃないかな、とは思いますね。
玉川:なるほど、おもしろいですね。車のほうにも動きがあるということで目が話せないですね。
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