2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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孫正義氏(以下、孫):では、先ほど言いましたように、すでに私は公表しました。ソフトバンク創業以来、私の最大の難関、最大の疑問……それは、私の後継者は見つけることができるのか、ふさわしい人物がいるのだろうかということ。
やっとその答えを見つけた喜びでいっぱいであります。私の信じる男、ニケシュを紹介したいと思います。
(会場拍手)
ナレーション:ソフトバンクグループ株式会社代表取締役副社長・ニケシュ・アローラをご紹介いたします。
インドの空軍将校の家に生まれ、大学卒業後、ノースイースタン州立大学で経営管理学修士号を取得、2004年にグーグルへ入社して10年間働いたのち、2014年7月シニアバイスプレジデントとチーフビジネスオフィサーの地位にあったグーグルを退職、2014年現ソフトバンクグループ株式会社バイスチェアマンとして入社し、現在は代表取締役副社長として事業を牽引しております。
孫:このような形で2人で話ができるのがうれしいです。こんな日が来るとは思いませんでした。非常にうれしく思ってます。
初めてニケシュにお目にかかったとき、すごく頭がいいなと感じました。もちろんグーグルですから、世界でも最も有力な尊敬されるインターネット会社ですし、その会社を実際に運営していた人ですから。
我々は最初は、特にヤフージャパンとグーグルのサーチに関しての取引について交渉し始めましたね。誰かと交渉するときというのは、もっとその相手のことを知るようになります。そうですよね?
ニケシュ・アローラ氏(以下、ニケシュ):まったくその通りだと思います。人を知るという2ヵ所のうちの1つが交渉の場だと思います。
孫:その能力であったり、聡明さであったりを、交渉の中で徐々に尊敬するようになり、人として人格を尊敬するようになりました。交渉の中で、実際に人が出るんですよね。
ニケシュ:お互いにだと思います。私は、言葉に力を持っていて、言葉に信念がある方だと思いました。
孫:なので、このような機会が得られたことを、今日ここに2人で対談できることをうれしく思います。では、シンギュラリティ(技術的特異点)について話しましょう。
ニケシュ:先週私はインドに行きまして、そこで母校を訪ねる機会がありました。そこで思い出したんです。1988年、当時コンピューターセンターという場所がありまして、そこで私は最初のプログラムを手書きでつくったんです。それを別の人に渡して、パンチカードにタイピングしてもらったんですね。
パンチカードをコンピューターセンターへ自転車で届けたんですね。そして、そのパンチカードをオペレーターの人に「明日来るからね」と託していきました。
そして、次の日、2ページ分のプログラムができていました。3番目のページに数字がありました。7桁の計算を自分で24時間でしなければなりませんでした。
当時、コンピューターは、今あるコンピューターの10000万倍高かったと思うんですけれども、能力は今のコンピューターの10000分の1くらいしかなかったと思うんです。1兆倍のパフォーマンスということになりますね。でも、将来的にはそういうことが起こるだろうと思っていました。
先ほど、孫社長がコンピューターのIQが10000に達するだろうと言っていて、それは恐るべきことでもあると思うんですけど。
では、「シンギュラリティとは何か?」という話になった場合に、そのIQ10000を持つコンピューターを誰がコントロールできるんでしょうか? 私たちはコントロールできるでしょうか?
孫:私たちはコンピューターをプログラミングする必要はないんです。というのも、コンピューター自身がディープラーニングを通じて学んでいくことができるからなんです。ということで、コントロールするとかの話ではないんです。コンピューター自身がコントロールできるんです。
ニケシュ:コンピューターが私たちをコントロールすることはあるのでしょうか?
孫:いやいや、それはないと思います。人間は人間の自由を享受できますから。犬だってそうでしょう?
ニケシュ:私たちはコンピューターにとっては犬のようなものということですか?
孫:そういうことじゃないですよ。まあ別に、私の飼ってる犬たちはいつも楽しそうですよ(笑)。
ニケシュ:自分たちは、将来幸せな犬になるということですか?(笑)
ニケシュ:冗談はさておき、コンピューターというのは、私たちにとっては、良いことなのか悪いことなのか。
歴史を見ても、やはり情報を多く持っている人が持っていない人を支配しているわけです。そういう傾向が続くんでしょうか? 向こう30年後はどうなるんでしょうか? 情報を持つ人が勝つんでしょうか?
孫:それは徐々に起きつつあることで、たった1日で状況が変わるということではないと思います。人間もどうすればコンピューターと共存できるかということを徐々に学んでいくと思いますし、逆もしかりだと思います。
コンピューターはさまざまな予測をするようになると思いますし、人間に対してアドバイスをしてくるようになるかもしれません。
もちろんアドバイスをもらったとしても、人間はそれを無視したっていいんです。そういう意味でコンピューターから私たちは支配されるわけではない。
でも、コンピューターが人にアドバイスをするようになってきたとしたら、おそらくそのアドバイスは非常に正確なものかもしれないし、人間が出す答えよりももっと効果的なものかもしれない。
それを発見した段階で、人間はコンピューターにもっと頼るようになるかもしれません。それを見て、コントロールされているとか、依存していると思うのか。
ニケシュ:たぶんコンピューターは私たちが幸せに暮らすためにいろんなことをしてくれるでしょうね。
孫:そうです。例えば今、さまざまな動物がいますが、それぞれの動物はそれぞれの動物なりに楽しい、幸せというのを持っていると思います。彼らそれぞれに基準があるわけです。
私たちも、美しい芸術を見ればそれで楽しいし、美しい自然を見たら幸せに思います。そういう幸せの基準があります。コンピューターにも別の基準があるでしょう。
コンピューターもいずれ感情を持つようになり、実際ペッパーにも感情を持たせているんですけど、そうなればコンピューターはコンピューターなりに自分たちの幸せを見い出すかもしれません。
ということで、私は、どちらかが支配するされるということではなくて、コンピューターと人間は共存できると思います。私たちもコンピューターをアドバイザーとして使っていけると思います。
ニケシュ:IQの高い人と数週間前にシリコンバレーで会ったんです。その方とディナーを共にしまして、彼はこう言ったんです。「ジーンズを3本持っています」と。
そのうちの2本は冷凍したそうなんです。「なんで冷凍するのか?」と問うと「冷凍すれば、バイ菌が殺菌されるじゃないか」「それを解凍すれば、もう洗う必要がないじゃないか」と。
例えば食べること、(人間には)カロリーが必要になりますが、ステーキだったり野菜だったりそれぞれカロリーがありますけれど、必要なカロリーを摂取するためには倍の食べ物を食べなければいけない。それはあまり効率的ではない。なので、シンギュラリティの時代になればもっと効率的にできるかもしれません。
つまり、食べ物を食べるということが贅沢になるかもしれないと。「将来、より効率的に栄養を取れるようになるので、錠剤を飲むだけでいいかもしれない。水を飲むだけでいいかもしれない」と彼は言っていたんですが、そういうことはあるでしょうか?
孫:そういうこともあるでしょうね。ないとは言いません。それでも、人間というのは美味しい食事を楽しむものなんだと思います。
それは単なる贅沢ではなくて、楽しみとして、食べ物を食べるということを楽しんでいくんだと思います。
ただ、たしかに効率的ではない、生産的ではないという話ですね。もしあなたがとても忙しくて、新しい仕事を始めたばかりで忙しいとか、そういうときであれば、時間を節約するためにそういった錠剤を飲んで栄養を取るということもできるでしょう。
ただ、生産性が大きく改善するようになれば、自由な時間も多くなるのではないでしょうか。そうした自由な時間は何をしますか? 楽しめばいいんです。好きなことをやればいいんです。
レジャーの時間が長くなる、ランチの時間ももっと長くなるかもしれませんね、生産性が高くなって時間が節約できれば。
あるいは友だちと過ごす時間がもっと長くなるかもしれません。ですからたぶん、2つの極端な方向に進むんだと思います。錠剤で済ますか、食べ物を楽しむか。
知性ですけど、そうしたAIやシンギュラリティを使って、それを良いこととして受けれていけば、人間の生産性はもっと高くなりますし、また知的作業の生産性もさらに上がると思います。
孫氏:私の聞いた話では、医師が行うアドバイスの85%はシンギュラリティの時代においてコンピューターができます。しかも医者よりもっといいアドバイスができるんです。
というのも、コンピューターはより多くの情報を持っていますし、DNAの情報、血液の情報をもとに、より的確なアドバイスができます。
ニケシュ:私が知っているCEOは、センサーを飲み込むと、それが血流の中に入り込んで血液のさまざまな内容を調べて、それを信号として戻してくれると。
なので、体の中に何か異変があると、そのセンサーが探知するんです。たとえば、食べ過ぎたとか、毒素を取り入れたとか。
孫:それはマイクロロボットのようなものですね
ニケシュ:そうです。人間の中に住むマイクロロボットのようなものですね。ですから、体内、体外にもロボットが存在する。でも彼らにコントロールされるようなことはないでしょうか?
孫:いやいや、やはりここは共存だと思います。
ニケシュ:孫社長は楽観的ですね。私は楽観的ではないんです(笑)。
孫:2人でバランスを取りあっているというんでしょうか。
ニケシュ:先ほど孫社長は、「車の事故はなくなる」と言っていましたが、それについてもまだ議論がありますね。
例えばドローンとか、自動運転車とか、さまざまな議論がありますが、交通の状況は将来どうなるでしょうか?
孫:まだ今後も4輪の車というのは残ると思います。でもこの4輪車というのは、人間が触らないほうが安全かもしれませんね。人間がコントロールしない。
ニケシュ:人はほとんどのことから離れていたほうがいいということでしょうか? スマートなものがすべてをやれ、ということですか?
孫:彼らにそれに任せて、彼らが生産性を上げていく。我々は一緒に彼らと楽しむという立場かと思います。
たとえばローマ時代、ローマの歴史で、ローマ人が王国を持っていた。ローマ帝国の市民は、より人生を楽しみ、すばらしいディナーを食べ、ワインを飲み、それぞれお互いに乾杯をし。
ニケシュ:乾杯を発明したのは彼らですからね。
孫:彼らの奴隷たちは生産性を上げるためにいた。何人くらいの奴隷がいるのかということによって、ローマの市民がどれだけ富んでいるかということを測る指標にもなっていた。どれだけの生産的なコンピューターがいるか。
ニケシュ:でも彼ら(コンピューター)は我々の奴隷ではないですよね。
孫:彼らは我々の生産性を助けるパートナーになれると思います。生産性という意味では、我々は彼らに頼めばいい。もしジョンがスマートロボットだとしましょう。「ジョン、あれやっといて」「ペッパー31。あれやっといて」
ニケシュ:ペッパーが部屋に来て、「社長、もう寝る時間ですよ」と言うかもしれませんね。「テレビ見るのやめなさい」とか。
孫:アドバイスはくれるかもしれませんが、無視してもいいわけですし。
ニケシュ:あまり強くないほうがいいですね。強いとやられちゃうので(笑)。
孫:私としては友達になれると思っています。
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