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孫正義×ニケシュ・アローラ(全6記事)

孫正義氏「人間はロボットと共存できる」ソフトバンクアカデミア特別講義

2015年10月22日に開催されたソフトバンクアカデミア特別講義において、孫正義氏とニケシュ・アローラ氏が対談を行いました。冒頭で孫氏は「ロボットの知能が人間を超える日」をテーマに、コンピューターの能力と人間の能力のクロスポイントとなるシンギュラリティ(技術的特異点)についてAI、知的ロボット、IoTの3つのテクノロジーをもとに解説しました。

孫正義×ニケシュ・アローラ ソフトバンクアカデミア特別講義

孫正義氏(以下、孫氏):みなさん、こんばんは。今日は、ソフトバンクアカデミア特別講義ということで、ソフトバンクアカデミアの現役のメンバーのみなさんと、そしてソフトバンクの幹部のみなさん、一部関係者の方に集まっていただきました。

私の後継者として、すでに公表させていただきましたニケシュを、アカデミアのメンバーのみなさんに私自身が直接紹介したいと。

せっかくそういう機会であれば、単に普通のソフトバンクアカデミアのソフトバンクの部屋で紹介するよりは、これからソフトバンクはどういうビジョンで物事を考えていくのか。

またニケシュがどんな考えを持っている人物なのか、その一端に触れてもらうためにも少し大きな機会を設けたいなと思いましたので、今日はこのような特別講義といたしました。

まずアカデミアのみなさんに聞きたいと思います。それ以外に会場に集まっている人、誰でもみんな、考えて、答えてください。

Singularity(シンギュラリティ)。シンギュラリティという言葉。映りますか? この言葉の意味を知っている人、手を挙げてくれますか?

(会場挙手)

さすがソフトバンクアカデミアのみなさん、7割くらいの人が知っていました。後ろのほうにはソフトバンクアカデミアでない人もいますけれど、挙がった手の比率は少なかった。

同じ質問を今まで、何回か行ったことがあります。同じ質問をしてだいたい2〜3%の人が知っていると答えていました。もちろん聞くオーディエンスによっても違いますけれど。

おそらく一般で街を歩いている人たちに聞くと、1%未満だと思いますね。我々の業界にいる人で、5〜10%だろうと思いますが、アカデミアの諸君は7割以上の人が知っていました。

シンギュラリティ(技術的特異点)がもたらす未来

さて、このシンギュラリティという言葉。これが何を意味するのか、どれほどの意味を我々の未来にもたらすのかということについて少し私なりの想いを語ってみたいと思います。

シンギュラリティという言葉の意味は、「技術的特異点」。あるクロスポイントをもって、何か大きなことが起きるという意味です。

特にここで言うシンギュラリティというのは、「コンピューターのアーティフィシャルインテリジェンスが人間の知能を超える日」ということを意味しています。コンピューターの知能が人間の知能を超える。これは何を意味するのかということですね。

地球の歴史が、仮に40億年とかあったとするならば、その地球上の歴史の中で、最も高度な知能を持っているとされているのが人類であります。

あらゆる種族、種類のものが生きている、その中で最も知的な行為を行っている、知的な能力を持っていると言われているのが人類であります。

その人類を初めて超えるモノが地球上に生まれるということですね。今までコンピューターはモノを記憶するとか、計算をするとか、検索とか、そういうような点においてはすでに人間を上回っていますね。

しかし、人間は考えることができる、予測することができる、クリエイティビティを持っている、感情を持っている。そのような意味で人間の知能はコンピューターを上回っていると我々人間は今まで思っていました。

ほとんど多くの人はまだ、このコンピューターが人間の知的能力を上回る日が来るということを信じていない人も多いと思いますし、信じたくない人も多いと思います。

しかし、私はこのシンギュラリティ、コンピューターの知的能力が人類を超える日がかなり近い将来、少なくとも30年以内にやってくると思っています。300年後でもなくて、100年後でもなくて、30年以内にはやってくるだろうと思っています。

IQが10000を超える知的能力の誕生

人類の知的能力を測る指数として、IQというのが一般的によく使われますね。一般の人々の平均値を100という指数で捉えたときに、そのスタンダード・ディビエーションからどのくらい遠くにいるかということで、知能の優れた機能を測るわけですけれども。

アインシュタインやダヴィンチ、彼らは200くらいあったのではないかと言われているんですね。つまり、IQが200もあれば天才だということです。IQが300ある人というのは聞いたことがないです。200ある人で、普通の人が考えつかないくらい天才だと言われているわけです。

コンピューターの人口知能のIQは、30年後にはどのくらいになっているのか、ということを私なりに推測してみました。その推測値は、なんと10000、であります。100に対して200だったら天才。100に対して10000だったら、一体なんて呼んだらいいのかと(笑)。

100に対して300だったら、想像もつかない、今まで人類の歴史の中に存在してなかったと言われる能力ですよね。100に対して10000ということになったら、どれほど想像を絶する知的能力を持っているのかということであります。しかもそれが30年後くらいにやってくると想像したら、「もうこりゃ敵わん!」というくらいの差になるわけです。

もし、30年後に10000というIQが違ったとしましょう。違ったとしても、私は笑っています。なぜかと言うと、30年後じゃなくて40年後だったかもしれない、あ、10年違ったね、と。50年後だったかもしれない、20年ずれた、と。でも私に言わせれば、「それは誤差だ」ということなんですね。

人類がこの地球上に生まれて、いろんな人類の定義によって違いますけれども、2万年だとか、20万年だとか、経っていますよね。ほんの2000年前、西暦1年が始まったわけです。数千年前、たった2000年、4000年前、すでに中国ではいろんな文化、文明が発達し始めていたという状況ですね。つまり、これから1000年、2000年というのは人類にとって、あっという間に経っていくんですよ。

そのクロスポイントにおいて、20、30年の差は誤差だということであります。つまり、そのくらいの誤差の範囲の中で、IQが10000を超えるような知的能力を持った、知的活動をできるモノがこの地球上に生まれる。それは、今の我々からすると想像を絶するような時代が来るということであります。

コンピューターの能力が人間の能力を超えるとき

ちょうど20年くらい前に、私は、ハード屋的に、コンピューターの能力が人間の能力を超えるかということを推論しました。

人間の脳というのは2進法ですね。ニューロンがくっついた、離れたということで、ゼロイチの関係を表します。トランジスタも、くっついた離れたで、電流が流れる、流れないということで、物事を記憶したり計算したりします。人間の脳の働きとコンピューターのトランジスタの働きは、実は、どちらも全く同じで、どちらも2進法であるということですね。

「物理的にちょっと違う?」。それは誤差です。物理的なものじゃなくて、ロジックとして、2進法で人間の脳の記憶だとか計算とかが成り立っている。コンピューターのトランジスタも2進法で成り立っている。

だとすると、コンピューターのトランジスタの数、2進法のバイナリーの数が、人間の脳の脳細胞、ニューロンのくっついた離れたという数を越える物理的なクロスポイントの日はいつだろうかということを、20数年前に推論しました。

その年は2018年でした。20年以上前に、私はこれを推論して、4、5年前にもう一度検証しました。そうしたら、やはり2018年でした。ほぼピッタリだったということですね。

2018年に、300億個のトランジスタがワンチップのコンピューターの中に入るということです。つまり、物理的な2進法のハードウェアの能力として、ワンチップのコンピューターは人間の脳のハードウェアの2進法に数としては追いついてしまう。

追いついたあとに、それでもまだ人間の方が賢いという人がほとんどだと思いますが、それは僕に言わせれば、時差だ。まず、ハードウェアが追い越して、そのあとにソフトウェアがどんどん追い越していくと考えています。

ハードウェア的な能力が、2018年から30年後には、どのくらい人間の脳の機能を上回るかということですけど。

2018年にクロスポイントを越えるわけですけど。

そこから30年後には、100万倍になるということであります。つまり、ワンチップのコンピューターは、人間の脳細胞の100万倍のトランジスタの数を持つ。そうすると先ほどのIQ10000という話はなるほどもっともかもしれないと。ハードウェア的にはその能力ができるということであります。

今まで、プログラミングしていました。人間がコンピューターをプログラミングしているんだから、プログラミングしている人間にコンピューターがかなうはずがないということを多くの人は言います。

さて、我々は誰かが脳にプログラミングしていますか? 違いますね。人間の脳は、見るもの、聞くもの、触るもの、経験するもの、すべて徹底的に入れ込んでいく。徹底的に入れ込んで、それを自己学習していくわけですね。

ディープラーニングという手法が、最近、コンピューターの新しい人工知能の部分として出てきていますけれども、まさにこのディープラーニングという手法は、誰かがプログラミングするのではなくて、見たもの聞いたもの触れたものをすべてぶち込んでしまう。

そして、頭の中で勝手にリレーショナルデータベースができていき、経験値となって、それが推論に役立ったり、ものを考えたりすることに役立ったりするんですけど。

同じように、今まではチップの中に入っているトランジスタの数が少ないから、効率よくトランジスタを使うためにプログラミングしていた。でも効率よくする必要がない、もう余るほどトランジスタがあるとなったら、まさに人間の脳がやっているのと同じようにディープラーニングで勝手に見たもの聞いたもの触ったもの読んだもの、全部ぶちこむ。そして、全部ディープラーニングしてしまう。

人間がプログラミングしているわけではないですから、人間の能力を勝手に自分で読み込んで、自分でどんどん勝手に賢くなっていくということであります。ハードウェア的には100万倍の能力を持つようになる、ということです。

ありとあらゆるものがインターネットにつながる時代

次に、もうひとつの数字をあげたいと思います。今、この地球上に70億人くらいの人間が住んでいると言われておりますが、30年後には、おそらくこれが100億人くらいになるでしょう。

仮に100億人くらいの人類の数になっているとしましょう。私は、30年後にはロボットの数がクロスポイントすると思っています。ロボットの数が人類の数を越えていく。想像できますか? ペッパーみたいなものがそんな売れるわけがないとか、余計な心配をするかもしれませんけど(笑)。

ロボットというとペッパーみたいなものとは限らないわけです。車も全部ロボットになっているでしょう。つまり、自動操縦することができる。自動でいろんなことを考えることができるようになる。これはもうロボットだ。

走るロボット、イコール車。空飛ぶロボット、水の中を潜るロボット、大きなロボット、小さなロボット、マイクロロボット、足が100本のロボット。

ありとあらゆる形のロボットがこの地球上に生まれて、それが単なるロボットではなく、アーティフィシャルインテリジェンスを持つ、つまり、それがすべてインターネットにつながり、すべてクラウドにつながり、人間の知能をはるかに超えたようなスマートロボットとして、地球上にうじょうじょしている。そんな時代が来るかもしれないということであります。

もうひとつの数字をここで言いたいと思います。今、我々人類が、インターネットにつながるものを何台持ち運んでいるか。持っているか、何台つながっているか。インターネットオブシングス。

今はひとり平均2台くらいと言われていますね。iPhoneだとかiPadだとか、もちろんPCもインターネットにつながるわけですけど、平均すると人類1人あたり2台くらいだと。30年後には、それが1000個くらいになると。1人あたり。

そうするとこの地球上に、10兆個のインターネットオブシングスがあふれる。人類の数を1000倍越える。これは電化製品だけではなくて、靴もメガネもシャツもボールペンも、ありとあらゆるものがインターネットにつながる。当然冷蔵庫だとか、テレビだとか、それらもつながっていくでしょう。ありとあらゆるものが情報にクロスされていく、そんな時代が来る。

ロボットと人間のあるべき関係

キーのテクノロジーを3つ表すとすれば、AI(アーティフィシャルインテリジェンス)、IQでいうと10000くらいのものなるということ。人間の脳細胞の数と比べると、100万倍くらいの脳細胞がワンチップの中に入っていて、しかもそれが全部インターネットで繋がっている。

そんな時代が来て、それらが全部入り込んだスマートロボットができあがり、また、スマートロボットだけではなくて、あらゆるものがインターネットにつながる、そんな時代が来る。

つまり、シンギュラリティ。コンピューターの知的能力が人類をはるかに超えていくクロスポイントがここからたった30年くらいでやってくる。そんな時代が来たときに、人々の生活、コンピューターと人間の関係性はどうあるべきか。ロボットと人間の関係性はどうあるべきか。

仮にこれが10年20年、うしろにずれたとしても、私に言わせれば、少なくとも300年かかることはありえないと。断言できる! 何を断言できるか。10年、20年ずれたとしても、30年、40年、50年であれ、誤差だと。300年かかるということだけは、絶対にありえない! ということだけは断言できる。ということであります。

冒頭で言った、シンギュラリティ、コンピューターの知能が人間の知能を超えていく。この日がやってくるということが、人類にとって、いいことなのか、悪いことなのか。それは我々人類にとっての、進化なのか、それとも破滅なのか。どうでしょうね、みなさん。よく考えてみてほしいと思います。

私は、性善説。私は楽観的なものを考える性格ですから。私は、それだけ知能を持ったコンピューターは人類にとって、きっとすばらしいものになると信じています。

人間がほんの1000年前、2000年前、3000年前、毎日のように殺しあって、男どもの仕事は相手の部族を殺すことというくらいの時代があったわけですけど、今はそんなことしなくてもいいですね。そんなことしなくてもコンビニに行けばすぐオニギリが買える、生きていけると。

社会がより進化することによって、人間は社会性を持ち、より理性を持ち、より助け合っている。いい方向に進化して、調和が取れてきている。社会性ができてきている。2000年前、4000年前の野蛮な時代よりは、よりよい時代になっている。

つまり、人間の知性・理性・社会性・モラル・エチケットというものが進化するように、我々をはるかに超えた知能の彼らは、無駄な馬鹿げたこの地球を破滅にもっていくようなことを自ら制御するだろうと、私は信じています。この知的ロボットと共存できると、私は信じたいと思います。

そういう時代が来たとき、今までは言葉が違うとコミュニケーションがしにくいことがありましたが、当然のことながら言葉のバリアなんてものは無くなるでしょう。

人々は未来を予測することも、今よりははるかにできるようになるでしょう。知的コンピューターを道具として使い、また彼らも我々人類と共存しながら一緒によりよい社会をつくっていくんだろうと思います。

事故のない車社会というのもできるでしょうし、人々は、30年後には無理ですけど、少なくとも300年後には、人々の平均寿命は200歳くらいになっていると。30年後には無理ですよ。300年後には、人々は平均200歳くらいで、しかも若々しく生きることができる時代が来ていると、私は思います。

この情報革命というのは、人類の未来にとって破滅ではなく、進化であり、調和である。シンギュラリティは悲しいことではなく、前向きにとらえて、新しいチャンスであると考える。

人類がこれまで解決することができなかったウイルスをやっつける方法だとか、大きな災害から我々を守ってくれる知恵と力を我々に提供してくれる。つまり、情報革命は人々をより幸せにしてくれると私は信じています。

ソフトバンクアカデミアのみなさん、今から300年後にソフトバンクアカデミアが続いているかわかりませんが、ぜひ僕は続けていきたい。

300年後のソフトバンクアカデミアの人には、「あぁ、300年前、孫正義はあんなことを言っていたな」と振り返ってみて、感想を述べてもらえると、きっと良い時代が来ていると。良い時代が来るようにその情報革命の一員としてぜひ貢献したい。情報革命は人々の幸せのためにあると信じています。

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