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クラウドワークスの今(全2記事)

クラウドワークス吉田社長が語る、上場後のターニングポイント

IVS 2015 Springの本セッションを前に行われた特別インタビューに、クラウドワークス・吉田浩一郎氏が登壇。モデレーターを務めるANRI General Partner・佐俣アンリ氏と「クラウドワークスの今」について意見を交わしました。本パートでは、2014年11月7日に東京証券取引所マザーズ市場への上場を発表した吉田氏が、上場後の会社の変化と現在向き合っている組織としての課題を語りました。

IVS特別番組「クラウドワークスの今」

佐俣アンリ氏(以下、佐俣):こちらのインタビューでは「クラウドワークスの今」というテーマで、クラウドワークス代表取締役の吉田浩一郎さんにお話を伺っていきたいと思います。吉田さんよろしくお願いします。

吉田浩一郎氏(以下、吉田):よろしくお願いします。

佐俣:はじめに簡単に自己紹介いただいてもよろしいでしょうか?

吉田:はい、クラウドワークスはクラウドソーシングというサービスを展開しておりまして、企業が日本中、世界中の個人に対して外注ができるというようなサービスをやっています。

現在9万社を超えるクライアントが使っていて、60万人の働き手である「クラウドワーカー」がいらっしゃって、今は政府6省、経済産業省、外務省、国土交通省など6省、地方の行政20団体にお使いいただいてるという、まさに企業から個人まで全部の働き方を変える、「働き方革命」を打ち出しております。

佐俣:なるほど、ありがとうございます。吉田さんと「クラウドワークスの今」について伺っていきたいんですけど、クラウドワークスさんはすごい注目企業で、いろんなインタビューに出ることが多いので……すごくフレッシュな情報を伺っていければと思っております(笑)。

マザーズ上場後の変化

佐俣:私はベンチャーキャピタリストとして吉田さんのクラウドワークスにご出資させていただいて、去年マザーズに上場されました。マザーズ上場されて何ヵ月くらい経ってるんですかね?

吉田:そうですね。間もなく半年くらいですね。

佐俣:半年経って、今は第2クォーターは締まって……。

吉田:そうですね。上半期は締まって。

佐俣:上半期は締まった状態ですと。では、そんなときにクラウドワークスに何が起こってるのかと。

一応IR上で出ている数字では、すごい急激に成長、売り上げも伸びていて、人もすごい増えてますってところが出ていて。何となく外から見ると「わあ、お祭りモードになってるのかな」みたいなイメージがあるんですけど、実際は今どんな感じなんですか?

吉田:まあお祭りといえばお祭りかもしれませんけど(笑)。確かに第2クォーターの数字がYonYといって、対前年同四半期比で97パー成長ということで倍になったわけですね。

佐俣:すごい勢いですよね。

吉田:はい(笑)。ありがとうございます。去年の期末が29名に対して、今期末1年で、1年後で130名を予定していて、今すでに100名くらいになってますので、この半年でだいたい70名くらい入ったと。

佐俣:ほぼ最近入った人……。

吉田:はい、第2創業みたいな、もう1回スタートアップやってるみたいな。再度ゼロからもう1回会社つくってるみたいな感覚。

佐俣:そうですね。

吉田:いろいろな入ってきた人たちの想いや熱気がスープのように混ざり合ってるみたいな状況ですね。

佐俣:創業期のカオスというか、混乱期みたいのがもう一回きたなと……。

会社をスケールさせるための決断

吉田:まあ、良い意味で変動している時期ですね。やっぱり私10年前にドリコムの営業担当役員で上場して、上場後何が起きるかということをある程度経験しているので、実はそこに対しては1つひとつ手を打ってます。

去年の期末までのところは、私自身が営業に関わっていて、けっこう数字づくりもトップ営業でやっていたんですけれども。

これは社長がずっとやっていったら仕組み化されず、スケールしないので、上場した時に決めていたのは、この第2クォーター、1月、3月の数字は「私は一切関わらない」というふうに宣言をして……。

佐俣:「見ない」っていうのはおかしいですけど……。

吉田:営業に関しては、ですね。

佐俣:営業とかは、もう。

吉田:「自分たちでやってくれ」ということで、4月1日で副社長になった成田に全部まかせました。まずは組織をつくるっていうことが第一優先、中長期の成長で居抜くためにですね。

そういう中で1月、3月がきっちり達成できたんです。

佐俣:なるほど。

吉田:ところがですね、4〜9月までの下半期ですね、また急拡大していくわけですね。去年の仕事が発注された総契約額が14億というところに対して、今期が34億というところで非常にストレッチしていく形になりますので。

そういう意味では成田が中心で見るっていうのもすでにまた終わって、もっと先の組織をつくらなくてはいけないと。

一般社員の中から、責任者クラスをどんどん輩出していかないと、絶対に回らないという体制に……。

佐俣:そこは今まで経験されてることからも見えて、感覚的な……。

吉田:見えてたんですけど、思った以上に急激に変化のタイミングが来たなっていうのが感想でして。

組織としてのターニングポイント

吉田:自分のマイルストーンとしては、今期の期末くらいまでかけて組織をつくっていけば良いと思ってたんですが、今年の2月末くらいに1つ事件があって、上場までは我々実は正社員が最初3名しかいなくて、役員も全員誰も辞めずに上場してるので、非常に良い組織の状態だったんですね。

上場の2ヵ月後の2月に、2年くらい働いている派遣の方がいらっしゃって、その方がずっとクラウドワークスのファンで、週1日とか限られた日数しか働けないんだけれども、「この会社は本当にすばらしい会社だと思います」と。

ずーっと「ファンだ」と言っててくれた人が、2月に辞めるっていう話をしてきたんですね。それで聞いてみたら、クラウドワークスは非常に自由な社風で、みんなに任せてる、個人個人が自分たちの考えで自立的にやっているというような組織だったんですけど、いつしかそれぞれの共通言語がなくなっていってた。

一人ひとり派遣の方の上長が何人かいたんですけど、その人たちがお互い言ってることが全然違っていて、ぶつかるようになってしまっていた、というようなことが発生したんですね。

それを聞いて、じゃあ「上長の取締役、何をしていたんだ」というふうに聞いてみたら、取締役も「自由奔放にみんなに任すんだ」と言うだけで、一人ひとりの話を聞くっていうことをやってなかったんですね。

そのときに本当にターニングポイントが来たなと。要は今までの上場前のやり方の一人ひとり自由にやってもらうやり方、任せるやり方っていうところから、一気にリーダーシップをとってやると。

だいたいベンチャーって、始めはやることが何もないと。そこからいろんなことやっていこうと。増やしていくっていう活動は、自立的にできるんですけど、減らすことは実は自立的にはなかなかできないんですよね。

佐俣:減らすというのはどういうことでしょう?

会社のミッションに集中するために捨てたもの

吉田:例えばですね、その時あったのはユーザーサポートで、ユーザーさんのためを考えて電話をとったんですけども、上場から一気に知名度が増えて広告費もかけたので、電話の問い合わせ数も激増しました。

しかし、一人ひとりがばらばらにやってる中では、この電話量は多いけど何とかするしかないみたいな感じにしかならないんですよ。このとき、人の採用はもう追いついてないわけですね。

その時に結論何をしたかというと、いろんなヒアリングの末に、一時的でいいからいったん電話番号を閉じようと。このジャッジは自立的なだけの組織だとできないんですね。

佐俣:基本的にはもっとみんなで頑張ろうと。

吉田:そう、もっとみんなでいろいろ親切にやったほうが良いとか、絶対電話かけたいだろうから。

佐俣:やっぱり人間頑張ると頑張んなくていいとかだったら、頑張るってことですね。

吉田:やっぱりリーダーシップで上に立つ人がするっていうのは、業務がたくさん増えてきたときに、何が最も大切なのか、この会社はそもそも何を目指していて、そのためには何が大切なのか、それに集中できる体制をつくるために何をするべきなのか、だからこの業務は停止しましょうとか。

そのときに派遣の方が所属してたチームの全員と私が実際にヒアリングをして、「いったん考える時間をつくりましょう」と。

目の前の業務にすごい邁進してるんで、そもそもこのユーザーサポートの業務が何のためにあって、どこに向かっていくのか、そのためには何が大切なのかということを見直すために「いったん電話を控えるようにしよう」ということをやったわけですね。

佐俣:すごく乱暴に言ってしまうと、100人以上の組織になっていく中に、普通に週1くらいの派遣の人が辞めますって、あんまり大きくない事件のように感じるんですけど、吉田さんの中ではすごい大きなことだったんですか?

吉田:そうですね。彼女は特にクラウドワークスのファンだっていうことを公言してはばからない人間だったんで、その彼女が退社をするっていうのは何か組織としておかしいことが起きてるんだっていう、ひとつの危険信号のように感じたっていうのがひとつですね。

あともうひとつ、彼女にこだわった理由としては、これはメディアでけっこう話してますけれども、私自身が1回目の起業で失敗してひとりになったときに、本当に人がいないと何もできない。

だからこそやっぱり人に尽くして、人が毎日楽しいと思える環境をつくることに全力を尽くそうと。

みんないろんな忙しい人生がある中で、他の会社を辞めてうちの会社に関わってくださったわけですよね。

また時としては辞めるかもしれないですけど、辞める時に「ここにいて良かった」と思えるように全力を尽くすということが、これからの経営においては大切なのかなっていうことを思ったんですね。

今の経営者に求められる姿勢

吉田:先日、メダリストの為末(大)さんとお話しさせていただいたときに、興味深いお話を聞いて。もともと英雄っていうのは、みんなの上に立つと結構傍若無人で乱暴を働く人っていうのがいたんだと。

それが紙と書くものが現れて記録されるようになると、英雄っていうのは紳士的になったらしいんですね。

要は、自分の声が記録されるのでまずいと。それがさらに進んだのがインターネットだっていう話になりました。

例えばブラック企業だとか、経営者の社員への態度などの情報は、すぐインターネットに挙がってくる形になってるじゃないですか。

そういった意味では今の時代って、20世紀よりはるかに経営者として社員一人ひとりに尽くすっていうことが求められてる時代だと私は思ってますし。

その社会背景と共に私自身が1回目の起業の経験から、本当に目の前にいる人に「関わってくれてありがとう」と。「うちの会社にいてくれてありがとう」ということで、一人ひとりに全力を尽くすことをやりたいなと思ってますね。

佐俣:なるほど。では今という軸でいくと、そういう組織をつくろうっていう中にも、そこのコアが大事というのと、とはいえ組織が大きくなるっていうのと闘ってる最中なんですね?

外部との付き合いを絶って社員と向き合う

吉田:そうですね。なので、4月1日から第2創業と打ち出して、社員の中からマネジメント層、事業を任せられる人物を明確に輩出すると。人数を決めて、それを私がコミットしたんですね。

そこから全部さっきの捨てるっていう選択をして、何を捨てたかっていうと、外交ですね。

外部の企業さんとのお付き合いとか夜の会食をなるべく断ち切って、今2ヵ月以上、社員とずっと話してますね。時によっては、1on1の30分枠で10本とか……そうするとヘロヘロになるんですけど。

社員がなぜここに来たのか、そして何がやりたいと思ってるのか。入ってみて良かったこと満足してることと、違和感を感じることって何ですかっていうのを、ずーっと聞いてますね。

佐俣:なるほど。じゃあ本当に外の会社と話すよりは社員ともっと時間を過ごしたいと。

吉田:そうですね。創業以来初めて私自身が中に集中してる。今まではみんなに任せて、みんなが実行してたんで、私は結構外交をやってたわけなんですけれども、第2創業の本当にマネジメント層を輩出しなければ、社員が不幸になってしまう。

要はさっきの2月に起きた事件ですね。個々の意見でやってるときにぶつかってしまうというのがあった時に、調整役はリーダーシップを発揮しないといけない。この人がいないと、この人たちは幸せにならないですね。

マネージメントでいくと、だいたい5人で1チームくらいのイメージで、それ以上になるとなかなか一人ひとりの状態がわからない、というような感じでグループをつくってリーダーを配置していくっていうのをずっとやっていますね。

佐俣:なるほど。本当に組織をつくるために中に向かってずっと。

吉田:私自身も今回本当に闘いなんです。私自身は人が全くついてこない人間だったわけですね(笑)。

佐俣:いろんな失敗談があったんですね。

吉田:ドリコムで30人採用したら、1年で25人辞めたとかですね。1回目の起業で3年間やってみたら、役員が取引先持って出て行ったとかですね。とにかく人がついてこなかった人間なんで、初めてこの100人という方々が一緒に働いていただける経験をしてるわけですよ。

すごい緊張感で、自分が今までかつて全くうまくいってないことをやろうとしており、私自身が4月1日からリーダーシップを発揮しようということで話をする中で、「なぜ組織化が必要か?」ということを一人ひとりに伝えています。

まず、私たちに組織化が必要かというと「今期34億の総契約額です」と話しています。まだ、34億円にしかならないので、実は働くインフラとしてはまだ未熟なんです。

企業に所属してなくても個人が安心して働けるインフラになるためには、おそらく総契約額を今期の少なくとも100倍、1000倍にしていかないと、全然話にならない。

我々が第2クォーターのIRでお話しさせていただいたように、基本的には総契約3兆円っていうのを目指しているわけなんですね。3兆円です。3兆円だと1000倍ですから。そこにいくためには、やっぱり組織が必要なんですよね。

「働くを通して人々に笑顔を」というミッションに基づいて事業を選択しましたと。これは21世紀の新しいワークスタイルを提供する事業を選択しましたと。この中でワークスタイルのインフラとなるためには、3兆円くらいの規模になっていきたい。

そのためには組織が必要ですっていう中では、このタイミングの9月末の段階で、そのマネジメント層っていうのをきちんと輩出していかないと、組織ってできていかないですよね。

その中の主役があなたなんです、ということを話してます。これけっこう内部の話しをしてますね。いいのかな(笑)。まあ実行力の問題ですからね。

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