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次の成長機会をどのように創るか(全6記事)

ベンチャー経営はこの2冊で十分--ヤフー・川邊氏が語る必読書

2015年6月11日に開催されたIVS 2015 Springの本セッションに、DeNA・守安功氏、LINE・出澤剛氏、ヤフー・川邊健太郎氏が登壇。モデレーターを務めるプロノバ・岡島悦子氏の進行で「次の成長機会をどう創るか」をテーマにディスカッションをしました。IT業界で大きな成長を遂げて「メガベンチャー」と言われる3社は経営の意思決定において何を考えているのか。本パートでは、各社がグローバル展開をする際に気をつけていることや、新規事業をはじめるタイミングについて語りました。登壇者同士の質問タイムでは、ヤフー・川邊氏がベンチャー経営者が絶対読むべき2冊を紹介します。

グローバル展開の成功パターン

岡島悦子氏(以下、岡島):ありがとうございます。まだまだ伺いたいんですが、いったん会場に振らせていただいて、ご質問をいくつか取りたいと思います。

質問者:海外展開展開していく際に、日本での成功パターンを変えていく必要があったところとか、新しく発見した成功パターンとか、そのあたりのお話を聞かせていただきたいです。

出澤剛氏(以下、出澤):メッセンジャーアプリに限った話でいうと、やっぱりスマートフォンの各国のシェアが10~20パーセントくらいに上がるタイミングで参入してそこで目立つっていうのが一番効率がいいんですよ。ユーザーがどんどん自然発生的に増えていくっていう環境になるので。

ただ、もうその時代は世界各国でほとんど終わっているので、いかにローカライズできるかっていうのが肝になってきています。

欧米のサービスだと1つのプロダクトをつくって「これを全部世界統一だ」という感じが多いんですけど、我々はすごい丁寧にそれぞれのマーケットで、機能レベルのローカライズをやっています。

残念ながら、そこに共通した成功の法則ってなかなかなくて、それを1つひとつ戦略を立てながら、刺さったものに対してリソースを追加投入していくみたいな感じでやってます。

中央でコントロールするかローカルに任せるか

守安功氏(以下、守安):グローバル展開の仕方として、大きく2つ手法があると思っています。

1つが中央でコントロールして、開発とかマーケティングを中央のやり方でドカーンとやってくという中央集権的なやり方。

あるいは、そのローカルにチームをつくってやり方も任せてしまって、「ローカルで戦ってくれ」という2パターンあるかと思っています。どっちがいいということもないと思うんですけど。

ウチの場合、あんまりうまくいかなかったのは、その中間みたいな感じでやろうとすると、「コントロールもしようとするんだけど(ローカルに)任せて」っていう感じでやると、やっぱりコミュニケーションも難しい。

日本だとある程度阿吽の呼吸で、ここまではここで考えて、あとは現場でやってという(ことができる)。

そのいわゆるボトムアップ型とある程度トップで決めるところが、海外に展開していくとなかなかうまくいかなかったですね。

ウチだとそれをかなりローカルに寄せて任せるようにしています。今、中国とかうまくいき始めてるんですけど、このあたりもやっぱりプロダクトのタイプというか……。

Facebookとかもそうかもしれないですけど、ワンプロダクトでいけそうなもの、ローカライズがそこまで重要じゃないものであれば、ワンプロダクトでドカーンといったほうがいいでしょうし。

それがゲームのコンテンツによって、カルチャーとか遊び方とかが国によって違うものが多いのであれば、もうローカルに任せちゃったほうがいい。

そのあたりはプロダクトの質によって違うんでしょうけども、中央集権的にやるのか、ローカルにほぼ任せてやるのか。そこはやっぱり決めておかないとうまくいかないと思います。

川邊健太郎氏(以下、川邊):ウチはライセンスを受けて日本でやってるドメスティックな会社ですので、特にないです。

中国はとにかく自動翻訳を使わないことですね。大変なことになりますんで、自動翻訳は使わないようにしてください。そんな感じです(笑)。

岡島:ありがとうございます。

次の事業をつくりはじめるタイミング

質問者:先ほどヤフーさんのお話の中で、「親子関係」というお話がありまして、荒ぶる父と優しい母と、共感できる比喩でイメージが湧きやすかったです。

LINEさんについても同じような形で、親子関係について出澤社長からお伺いすることはできないでしょうか?

出澤:はい(笑)。常日頃からお答えしてるんですけど、基本的には事業展開というのは日本のボードで決めているので、先ほどの例えでいうと優しいお父さんで、よしよしと見守ってもらってるという感じです。

もちろんファイナンスとかいろいろなことを、大きな意思決定に関しては当然100パーセント子会社なんで相談してやってますけど、事業展開に関してはLINEで決めてやってるっていう感じです。

川邊:優しそうな人だよね、あの人ね。1回ご飯食べたけど、本当に優しそうで羨ましかったなあと思いました。でも、信念強そうだよね。

(会場笑)

岡島:よろしいでしょうか? じゃあ、後ろお願いします。

質問者:次のビジネスへの1手を決めるタイミングについてお伺いしたいです。

私たちベンチャーは人、物、金もかなり限られてる中で、「1つのプロダクトをどれだけ磨き上げるか」みたいなところに専念すべきだと思うんです。

少しずつ安定稼働してくる中で、次に投資しなきゃいけないタイミングもおそらく来ると思います。その見極めのタイミングをぜひ教えていただければと思います。

川邊:これはスターフェスティバルの岸田(祐介)社長に直接言ったことがあって、やっぱり今の事業が一番うまくいってると実感した時に、他の事業をつくり始めたほうがいいと思います。

岡島:それはなぜかっていうのもちょっとだけ。

川邊:やっぱりそれを拡大していくことに、うまくいけばいくほどいっちゃうんですけど、いつかはそれがほころぶ時がきますから。

ポートフォリオっていうか、それがうまくいかない時に次の事業がある程度収益化していないと、ガタンって収益が落ちる時がくるので。

やっぱり「今一番うまくいってる。楽しい!」って思った時に一番のホラーシナリオを考えて、新しいものをつくり出したほうがいい。

岡島:カジノとかでも勝ち続けてるときって降りられないじゃないですか? そういう時にこそいく?

川邊:そうそう、それがいいと思いますよ。

岡島:守安さんはどうですか?

守安:今が一番っていうと、川邊さんの言い方なんですけど、2年後3年後、5年後かもしれないですけど、そこを見据えて勝ち筋が完全に見えて自信があったら、別に他のことをやる必要はないと思いますね。

ただ、そうじゃないかもしれないと思ったときには、次の成長をつくっていかなきゃいけないと思うので、そういう意味では、今が盤石かというよりは2年後3年後、5年後を見据えて勝てる自信があるのか。

川邊:それはおっしゃる通りで、今一番うまくいってる時に、「じゃあこれがほころぶとしたらどんなことが起こるだろう?」と想像してみて、起きれば何か考えたほうがいいだろうし、起きないんだったらおっしゃる通りもっとやったほうがいいでしょうね。

出澤:あんまり質問に対する答えにはなってないですけど、我々は本当にタイミングが全てだと思ってまして。

かなり頑張ってLINEつくったんですけども、ここまで伸びたのは外部環境がやっぱりすごく大きかったので、「世の中の状況」とか「規制がどうなる」とかそういった、始められようとするビジネスの外部環境みたいなことが多分一番重要かなと。

どのタイミングで入るかということに、まさに一番神経を集中するべきかなと思います。

岡島:そういうのも「ザ・オーナー」がいたりすると「次やっとかないとね」ってスパッと言える気がするんですけど、合議というか、多数決みたいな経営会議になっているとすごい難しいですよね。

みなさんその辺は誰かが決め切る、読み切るっていうことになっているのかな? お父さんがいるところはまたちょっと別かもしれないですけど。

川邊:合議?

岡島:多数決で決めようとすると、どこがピークなのかっていう読みって非常に難しいですよね。

川邊:それは納得するまで話し合うことですね。合議というよりは、みんなの納得感っていうことだと思います。

岡島:DeNAさんも相当話し合われるっていうことですよね。

守安:そうですね。南場(智子氏)が社長やってたときから何かを独断で決めるっていうことはなくて、かなり議論して決めています。そのやり方は今も変わらないと思います。

ベンチャー経営者が読むべき2冊

岡島:ありがとうございます。逆に「ここ、お互い聞いてみたかった」みたいなことはありますか?

「次の収益、成長をどのようにつくるか」っていう意味でですけど。ここでしか聞けないこともあると思うので。

川邊:とにかく森川(亮)さんの本は本当にすごいと思うんですよね。何回か前のIVSのお昼休みに2人で飯食って、森川さんが毒のようにすごいことを言っていたんですよ。

ニコニコしながら毒を吐いてたんですよ。その吐いてた毒を全部本(森川亮氏著『シンプルに考える』)に書いて世の中に提唱したんで、すごいなと思うんですけど。

シンプルに考える

あの本通りにLINEは運営されているのか、「いやいや現実はこういうこともありますよ」っていうことなのか、教えてほしいです。

出澤:エッセンスはそのままきてるんですけど、それほどシンプルじゃないっていうのが……(笑)。

多分3割くらい引いて見ていただくと。ただ、会社としてはすごくシンプルに、フラットにやっているのでだいたい合っています。

(会場笑)

川邊:あれ、ベンチャーの人が読むべきですよね。組織が大きくなっていっちゃうと、なかなかあれと合わないいろんなことが起きてくるけど、ベンチャーはあの通りストレートに、多分できるんじゃないかなと思うんです。

出澤:思います。スタートアップの若手、特にまじめで優秀な経営者の方こそ、すごくいろんな本を読んで、堅く、従業員に報いるために組織をつくられていく傾向があるように思うんですけど。

森川さんの本は目からうろこで……今の動きの速い状況だと、カッチリやったとしてもそれがみんなの幸せになるかっていうわけでもないので。

やっぱりああいう感じでラフにやって、成功をつくっていくほうが合ってるんじゃないかなと思います。

川邊:「何々しちゃいけない、何々しちゃいけない」ってずーっと書いてあるから、コーランみたいなんですよね(笑)。

だけど結構ベンチャーに対しては、あれはコーラン力あると思いますよ。あの通りやってみるといいかもしれないです。

岡島:一番できる人は、「サッカーのフロントに立ってとにかく点数入れることだけやってくれ」みたいな。

いわゆるコンサル的に言うと、今までやってきたことの全部逆にいくみたいな。でも、たぶんそれがすっごい正しいんだと思うんです。

川邊:そうそう。だから森川さんの本を読んで、実際に何が起こるかっていうのは南場さんの本(『不格好経営―チームDeNAの挑戦』)を読むとだいたいわかるっていう(笑)。ベンチャーはこの2冊で十分という気がします。

不格好経営―チームDeNAの挑戦

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