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次の成長機会をどのように創るか(全6記事)

ただの大企業になるのはつまらない--ヤフー、LINE、DeNAの組織活性化

2015年6月11日に開催されたIVS 2015 Springの本セッションに、DeNA・守安功氏、LINE・出澤剛氏、ヤフー・川邊健太郎氏が登壇。モデレーターを務めるプロノバ・岡島悦子氏の進行で「次の成長機会をどう創るか」をテーマにディスカッションをしました。IT業界で大きな成長を遂げて「メガベンチャー」と言われる3社は経営の意思決定において何を考えているのか。本パートでは、成長ステージに入ったベンチャー企業に見受けられる「大企業化」や「組織の停滞化」を防ぐために、ヤフー、LINE、DeNAが行っている取り組みを紹介します。

成長ステージのベンチャーの停滞化

岡島悦子氏(以下、岡島):ありがとうございます。1個みなさんにすごい伺いたいことがあって。

ベンチャー企業が成長ステージに上がって大きくなっていくと、多くの企業さん、だんだん大企業っぽくなっていくように見えるんですよ。

そうするとイノベーションって言ったときにオペレーションの効率化とかイノベーションというのはたくさん起きてくるんですけど、

ちょっとスピードが落ちてきたり、サラリーマンっぽい人がたくさん出てきたりして、なんとなく成長が停滞してくる。あるいはマインドセットも停滞してくる。

Aみたいな人たちは、すごく効率はやっていく。一方で、多分もともとベンチャーの人たちってこういう破壊的な人たちの集まりなんだけども、だんだんAになってくる。

3社さんを拝見していると、やっぱりBの状況を保つためにちょっと揺らぎを入れたり、例えばアクハイヤーしたりとか、M&Aやったりとか、いろんな大企業と組んでみたりとか、そういうことをやってらっしゃるように思うんですけど。

それは偶然なのか、「何か揺らぎ起こしていかないとやべーな」と思ってやってらっしゃるのか、その辺がもしあれば教えていただきたいんですけど。

というのも、アメリカの人と話してたら、GM(ゼネラルモーターズ)を潰したのは、GMは複雑系の組織設計を理解できる組織になっていなかったからで、グーグルが一番最初に複雑系の組織設計をやった会社だと。

「いつも揺らぎが起きるような形にしてるから、あの会社はこれからもずっと伸びていく」みたいな話を聞いたりするので、その辺みなさんはどうなんでしょう?

人をうまく新しいとこに移していったりとか、アクハイヤーしたりとか。川邊さん、どうですか?

チーム・組織を活性化させる「ナマズ」社員

川邊健太郎氏(以下、川邊):すごい難しい話ですよね。結果的にそうなってたっていうことのほうが多いでしょうね。

意識してそれをやるというよりかは、我々の場合は「やること」が重要なんで、「こういうことをしよう」とか「こういうWhyを達成しよう」とか、それをやっていく過程の中で結果的に揺らぎが生じるようになってたっていうことが多いと思います。

ただ、やっぱり大組織化するっていうのは仕方ないところではあるんで、ある種の社会的責任を担ってくるので、多分そのために上場したりとか。そういうリスクを社会的に減らすためにJ-SOXとか出てきたりするんで、ある種しょうがないかなと。

本当にならず者みたいな組織をつくる場合は、やっぱり別組織でやるのがもう究極のところ。

それ以外はチームの中に、我々はヤフー・ソフトバンク用語で「ナマズ」って呼んでますけど。その静かな人のチームの中に1人だけ……。

岡島:鯉の池にナマズを入れるんですよね。

川邊:そうそう。ナマズを入れて何とか活性したりとか。

岡島:ピリッとするみたいな。

川邊:だから今日来てるうちの社員も、ナマズみたいな人しか来てないですよね。

岡島:そういう、今「ナマズみたいな」って言われたような方々を中に入れてらっしゃるっていうのは、組織がちゃんと活性化していくっていう。

川邊:もちろん、結果的にはしますよね。

岡島:今おっしゃっていたように、結果的にそうなってきたっていう感じなんですけど、次に何かやっていくときには恣意的にやることもありますか?

川邊:組織編成ではやったりしますよね。

岡島:移動させたりとか。

川邊:だけどやっぱり、それをやったってWhyが刺激的じゃなければみんなでジトッとしちゃいますよね。

だからやっぱり上はそのWhyを、とにかくsomething newとか、何かを変えるんだとか、こっちをやらないとダメで。別に僕自身ができてるとは思わないですけど。

そうじゃなきゃ、eコマースに100億ぶん投げたりとか、Pepperっていう珍妙なロボットつくったりとかしないですよね。ああいうことすべきだと思いますよ。

岡島:カオスが必ずあるっていう。

川邊:そっちのWhyのほうが重要だと思います。

LINE、DeNAの組織設計

岡島:なるほど。LINEさんも何か因果応報というか、だんだん大きくなって来られると……まだAには多分なられてないんだと思うんですけど。

出澤剛氏(以下、出澤):結構キーワードはBが近いですね。現場にかなり権限委譲して、「現場でだいたいのことを判断して決めてつくっていけ」っていう感じですし。

岡島:森川さんもしょっちゅう、野球型じゃなくてサッカー型とか言ってますよね。

出澤:人事制度もすごくシンプルにしているので、一生懸命Bをキープしようという感じですね。

グローバルで海外の社員も増えていて、全体で3000人くらいになってきているので、その中でどうしてもAになってきがちなところを、いかにBをその規模でもキープできるかっていうのが、今一生懸命やっているところですね。

岡島:一方でDeNAさんは、Aになりそうなんだけどならないっていうか。

守安:そうですね。ちょっとこの辺のキーワードとはズレるかもしれないんですけど、これまで意識してやってきて比較的うまくいってるなと思ってるのは、組織を硬直化させないようにっていうのは意識をしていて。

具体的に言うと、さっきのエースを抜いて違うとこに持っていくっていうのもそうですけども、その役職単位で報酬も、例えば部長になったから上がるとか、そういうのもしてなくて。

一度部長になっても、違うとこに持っていくときは平社員にしたりとかっていうのをかなりやってるので、そういう意味ではポジションにみんなそんなにこだわらないっていうのもあって、そうすると組織を柔軟に設計しやすい。

ポジションによって報酬も決まって、みんな上だけをやっちゃうと、多分ガチガチで、どこにも持っていけなくなって……っていうふうになると思うんですけれども。

組織が硬直化しないようにしてるっていうのは、いろいろうまく回ってるところはあるんだろうなと思いますね。

岡島:意識してやってらっしゃる感じですかね。

守安:そうですね。

岡島:iemoさんとかペロリさんみたいな買収も、村田マリちゃんみたいなチャレンジ精神とかベンチャースピリッツがすごいある人を入れてきて、揺らいでるんじゃないかなと思ってたりするんですけど。

守安:そこら辺はどっちかというと、もがいてる感じですね。買収しにいったりとか、どっかと組むみたいな。どっちかというともがきながら「何が当たるかな」っていう感じですけど。

さっきの組織設計みたいなところっていうのは、これまであんまり変わらずにやってきてるかなと思ってます。

スタートアップブームによる人材流出

岡島:川邊さん、すごい読書家でいらっしゃるんであれなんですけど。よく世の中ではyoung and small alwaysみたいなこと言われるじゃないですか?

川邊:ちょっと英語が苦手なんですけど……。

岡島:今日もスタートアップの人たちたくさんいると思うんですけど、次々と若い人たちや小さい組織がやってきて、そっちに人を抜かれたりとか、そっちがどんどん席巻していったりっていう、因果応報な感じがあって。

でも3社を拝見してると、それぞれのやり方でそれを阻止するというか、中におもしろい場をつくっておられるように思うんですけど、その辺は何か思われるところありますか?

川邊:それもすごい難しい話で、やっぱりパーソナルコンピューターとインターネット、あるいはクラウドみたいのが出てきちゃうと、時代は明らかに個人とかスモール組織のほうにいってるんだと思うんですよね。

多分そのネットワークでかなり大きなことができてしまう世の中で、じゃあなんで5000人くらいの従業員がミッドタウンとかヒカリエとかに集まってやってるのかっていうのは、正直ちょっとわからないところがありますよね(笑)。

ただやっぱり現時点でいうと、まず例えば100億へこますことができるわけですよね。あるいは、本当に赤字にする覚悟があれば2000億へこまして何か勝負することはできるわけですよね。

あと多分どの会社もそうですけど、一応その名前を信じて入ってきてくれる優秀な従業員がいて、そういうのを見出して何か任せると結構すごいことができたりするわけで。

何かそういうところで頑張りたいなと。時代がこっちにいってるのはわかってるんだけど、頑張りたいし、何か価値を見出したいなと思ってますけどね。

岡島:やっぱりでもリソースがあることでしかできないこともたくさんあるんですよね。どうですか?

守安:そういう意味で、今スタートアップのブームなんで、うちの会社の中でやっぱり「起業したい」と言って起業していく人たちがいるんですよね。

その中でも話をするのが、「うちの中でできないのか?」と。これだけリソースもあってお金もあってという中で、うまくいった場合にいろいろブーストしやすいじゃないかと。「何のために起業するんですか?」っていう話をしていて。

岡島:でも「起業したいんです」みたいな人もいますよね。

守安:だから「それは何のために?」っていう話をして(笑)。それがうちの中で実現できないことであれば「じゃあ頑張ってよ」と。ただ、「一緒にやっていけるんだとしたら一緒にやっていったほうがいいじゃん」という話はします。

出澤:同じですね。例えば今日のLINE MUSICなんかも、出た瞬間にかなり多くの方にダウンロードしていただいて、やっぱり自分がつくったサービスがすごいたくさんの人に使っていただいてるとか、世界中で使われるとかっていう経験ってなかなかできないので、そこはやる意味というのになると思います。

でもスタートアップやりたい人はもちろんチャレンジしたらいいと思います。それがすべてじゃないと思うので。

メガベンチャーで働くことのメリット

岡島:やっぱり川邊さんが言っているWhyみたいなことが大事なのかな。

川邊:Whyはメチャクチャ大事ですよね。「なぜこれをやるのか」という、その意義みたいなことは。

岡島:ビジョンっていう言葉かどうかは別として、社会の構造変革とか、よりユーザーさんに利便性が出てくるとかっていうことが、「どこだとやりやすいか」のWhyみたいな話もきっとあるんだと思うんですけど。

川邊:どこだとやりやすい?

岡島:Whyっていうのがあると、「これを成し遂げるためにはヤフーでやったほうがいいな」っていう話になってるっていうことですよね。

川邊:あとHowのところね。特にHow muchのところはやっぱり大組織のほうがやりやすい。いろいろ予算調整があって持っていくのは難しいんですけど、いざ持ってこようとなったときはドーンといきますし、繰り返しますけど、優秀な人材もいっぱいいるんで。

あと「何でやってんのかな」って今もしみじみ考えるんですけど、結構楽しいんですよ。

ヤフーの経営会議だって、うちの宮坂(学)もおもしろい人だし小澤(隆生)もいるし、宮澤(弦)や村上(臣)とかもいて、すごいわいわいやって楽しいし。

こないだ久しぶりに孫(正義)さんとしみじみ話してたんですね。しみじみといっても20分間だけなんですけど、「孫さん、今何がしたいんですか?」としつこく僕ととある人が聞いたら、「燃える情熱を持った世界一の起業家集団をつくりたい」と言ってたんですよ。

それがこないだの決算発表の「大企業なんかになり下がりたくない」って言ってるのと裏表の話だと思うんですけれども。

確かにそれはね、ソフトバンクの取締役は楽しいんですよ。ジャック・マーがいてニケシュ・アローラがいて、永守(重信)さんとか柳井(正)さんとかいて、ワーワー話すんですよ。

ベンチャーも楽しいですけど、そういうピカピカの(人材)がすごいいっぱいいるかというとそういうわけでもなくて。ああいうのが、「世界レベルで家族会議できるのが楽しくているのかな」とか。

まあベンチャーの人たちの前からすると「何を」っていう話なんですけども、楽しいと。

岡島:LINEの人たちは、そうすると何がWhyなんですかね?

出澤:やっぱり単純に、みなさんにLINEを使っていただいているとか、電車に乗った時に自分がつくったゲームをやっていただいてるとか、そういうユーザーと近いところがすごくモチベーションになると思いますよね。

守安:やっぱりそれこそサービスをつくるっていう時の、サービスに集中できるのかとか、例えば起業してやったとして人を集めるのも大変だし、お金も持っていくのも大変だし、うまくいきそうだけどPRもするっていっても伝手もないしっていう、全部やんなきゃいけないことって……それが好きな人はやればいいし。

サービスをつくってそれを伸ばすことに集中して、自分の得意なとこだけ集中して、あとはウチのリソースをいろいろ使いながらやるっていう、そういう立ち上げもやりたいのであればそっちでもいいしっていうことで。

岡島:成長の場がずっとある、成長が寝てこないっていうの大きいですよね。

守安:寝ちゃってもおもしろくないですからね。これから伸ばしますよ。

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