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スタートアップ・ピッチ3 FiNC(全1記事)

元銀行常務からベンチャーへ FiNC副社長・乗松氏がモバイルヘルス事業で得た成長実感

2015年6月26・27日の2日間にわたって、起業やスタートアップへの関心が高い大学生に向けて、起業家の生の声を届ける「IVS SEEDS 2015 Summer」が開催されました。初日のスタートアップ・ピッチに登壇した、FiNC・溝口勇児氏と乗松文夫氏は、元トレーナーと元銀行常務という、お互いの全く異なるライフヒストリーとモバイルヘルスに特化したFiNCの会社をはじめるまでを紹介します。代表取締役社長の溝口氏は、主にFiNCの事業と「健康寿命」に関する課題と未来構想を、副社長の乗松氏は60歳半ばを過ぎてからベンチャー企業に飛び込んだ自身の体験から、スタートアップで働くことの魅力について語りました。

ヤンキーみたいな両親から生まれたサラブレッド

溝口勇児氏(以下、溝口):みなさん、こんにちは。株式会社FiNCの溝口です。今日は共同代表の乗松(文夫)と2人でお話させていただければと思っております。よろしくお願いいたします。

まず我々のことをご紹介させていただきますと、モバイルヘルスに特化したテクノロジーベンチャーでございまして、常勤の医師、薬剤師、トレーナー、管理栄養士といった予防領域、ヘルスケアのプロフェッショナルと、エンジニアやデザイナーで構成された集団でございます。

我々が戦うモバイルヘルスの市場は、今世界で5000~6000億円と言われてるんですね。ですが、たった3年で3兆円弱まで伸びると言われている、そんな市場で勝負している会社です。

簡単に私のことを紹介させていただきますと、起業して3年で、今30歳を迎えています。それから、今日登壇されている方はピカピカな方が多いんですけども、私も負けずに非凡な才を持つ両親のもとに生まれています。

こんなですね……ちょっとヤンキーみたいなんですけども(笑)。(写真の)左、私の父は実は孤児院生まれで両親も親戚もゼロです。母は高校を退学させられていて、ある意味悪すぎて親戚がいないみたいな。そんな2人のもとに生まれまして、ある意味サラブレットでございます。

(会場笑)溝口:こういう両親のもとですから、すごく貧乏で、3歳のときに離婚してしまいましたので、やさぐれた少年時代を送りました。そういうこともあって、大学進学というのを全く考えたことがなく、高校在学中からスポーツだけはできたので、トレーナーの道を志して、今に至ります。

日本で最も年齢差のある共同代表

溝口:そこから起業に至った経緯は、大きな挫折が23、24歳のときにありまして。1つの大きなスポーツクラブ、フィットネスクラブの経営を任されて、そこが結果として潰れて、社員を20名くらいリストラした。

それが1つの引き金になって、「力がなければ何も変えられない」と。力を得る1つの形として起業の道を選んだと。そんな背景でございます。

隣にいる乗松に関しては、20世紀前半生まれでして、現在66歳の前期高齢者でございます(笑)。

(会場笑)

溝口:みなさん、ここにいらっしゃる方はけっこう多いと思うんですけど、慶應(義塾大学)の大先輩です。さらに興銀からみずほ銀行の常務、営業部門統括をして、その後、けっこう大きな会社の経営者を歴任されて、東北の復興に勤しんだ後にFiNCと。これだけ見ると、すごいなと思うんですけども、普段一緒にいると何も思わないです(笑)。

(会場笑)

溝口:その差36歳で、けっこうユニークな二人が共同代表を務める会社でございます。多分、日本の会社の中で最も年齢差のある代表取締役二人じゃないかなと思います。

日本の課題は「健康寿命」が伸びていないこと

溝口:みなさん、ここにいらっしゃる方で「健康寿命」という言葉をご存知の方いらっしゃいますか? あ、けっこう増えてきましたね。

この言葉の定義は、人の支えがなければ生きられなくなってしまう、そんな年齢のことを言うんです。動画をご用意したので、ぜひご覧ください。

(映像が流れる)

この動画は、人のラスト10年を描いたものです。左は健康な状態でのラスト10年です。右は不健康な状態でのラスト10年です。

今、日本をはじめとした主要先進国の課題は……寿命は延びています。ですが、健康寿命、つまり人の支えがなければ生きられない寿命は、それに比例して延びていないという問題があります。

では、この問題をどう解決していくのか? これは、正しい運動習慣と栄養習慣を身につけることが一番なんですね。実際、日本人の平均でなんと11年もの間こうした不健康な期間が存在しているんです。

ですから我々は、11年にも及ぶ不健康期間や体型にコンプレックスを抱えながらの日々、あとは腰痛とか肩こり、ひざ痛、あるいは片頭痛といった不定愁訴に悩みながら生きる日々をゼロにしたい、そこから解放したいと思って事業をやっています。

私はトレーナーをやっていたんですが、やっぱり対面とかジムじゃ限界があるんですよ。提供できる人数もサービスも限界がある。

そんなときに、まさにスマートフォンが拡がっていった。これを使えば、これまで対面で提供していたレベルのサービスが、非対面でも十分提供可能だと。これに大きな可能性を感じたんです。

FiNCのサービスの4つの強み

それもあって、モバイルヘルスのサービスを起こしました。1つは、栄養士やトレーナーやインストラクターのクラウドソーシングです。こうした専門家は、なんと日本だけでも150万人くらいいます。 そして我々は、こうした専門家を活用して、オンラインでスマートフォンのアプリを使って、一度も会わずに栄養や運動を指導するサービスを運営しています。

さらに、そうしたサービスをその人にあったものにしたいと思いまして、DNA、血液や尿、生活習慣といった一人ひとりにあったサービスを提供できるよう、検査の時期も提供しています。さらにジムも、今は赤坂と銀座に運営しています。

さらに、これらのノウハウを使って、健康経営、ウェルネス経営の普及活動と、あとはヘルスケア業界の注目ニュースのまとめ読みサイトを運営しています。

我々の強みは4つです。こうした各種検査のノウハウ、さらには検査結果に合わせたサービス、ソリューションを提供できる点です。さらには予防領域の専門家を育成して、仕事を発注するといったプラットフォームを運営しているということ。

あと我が社には、CTOを他の会社でやったことのある人が3、4人、起業家・経営者だった人が7人くらいいます。ですから、そういった人材の質は極めて高いといった自負を持っています。

FiNCのこれまで

溝口:我々のこれまでです。2012年7月に検査サービスをリリースして、その1年後に赤坂にプライベートジムをオープンしました。

さらに、昨年3月にダイエット家庭教師サービスをリリースして、オンラインワークスを2ヵ月後にリリースしました。

そこからIVSに入賞させていただいて、Samurai Venture SummitのShout……これは僕じゃないんですけど、インターン生が出て優勝しました。

Teccrunchで優勝して、いろいろなところで評価をいただくところまで成長を果たすことができています。そんな会社でございます。

先ほどクラウドワークスの吉田(浩一郎)さんからもありましたけど、(「Softbank World 2015」で)私のもウェルネス経営と人工知能の2テーマでの登壇が決まっています。

銀行の常務からスタートアップ企業へ

溝口:これから、スタートアップで働くということで隣の乗松からお話しさせていただきます。

乗松文夫氏(以下、乗松):ということで、前期高齢者が登壇いたしました。私、66歳でございますけども、この慶應大学に通ったのははるか45年前です。バリケードに囲まれた通路、東大紛争のときでしたから、もう半世紀近く前ということでございます(笑)。

ということで、私がこのようなスタートアップの企業に昨年の7月からジョインしてるんですが、その時の経験というか、感想をみなさんに披露したいなということでございます。

私、銀行で常務を一応やっておりましたので、半沢直樹じゃないんですけど、こういう部屋に1人でぽつんと勤務しておりました。

朝になると黒塗りの車が自宅に迎えに来てくれます。

高額……それほどでもないんですけどね。金融危機で非常にカットされまして、役員賞与は1回ももらったことないんですけど、そこそこの収入だったということでございます。その後も何社かの社長を歴任した後、東北の復興のお手伝いをしていたんですが、何を思ったか、志の高さに惹かれて、昨年の7月にこのベンチャーに飛び込みました。

一転してわずかな報酬。これはいいんですよ、いいんです、ぜんぜん問題ないんです。昔に比べると、少し少ないかなという感じで。この部屋が昔1人でいたところに比べて3分の1くらい。人数を数えると、14人いるんですね。要するに人口密度が42倍。

(会場笑)

乗松:……のところに突然投げ込まれて、やっていると(笑)。ここ(画像の◯のところ)、決して「ク」が入るわけじゃないですよ。

(会場笑)

乗松:そういうわけじゃないですけど、非常にブ……ラッキー(Lucky)な日々と読んでいただければいいんですが、うちの従業員は本当に熱心に働いて、(この写真では)ほとんど起きている人がいないような状況ですけど(笑)。こういうのが日々見られる光景ということですね。そしてベンチャーですから……絶えざる重圧。

(会場笑)

乗松:銀行のときも、けっこう重圧だったんですよ。けど、ぜんぜん別の重圧が来ます。苦しときの神頼みで、昨年12月30日ですか。みんなでお参りして、「来年こそうまく頑張れますように」なんてお祈りをしております。この重圧感、すごいんですよ。そして、孤独との戦い。

(会場笑)

乗松:部屋の片隅で、もたれかかってパソコンをやるのが私です。誰も相手にしてくれません。椅子すらありません。こういう状態で。フリーチェアと言いますか、会社に朝出ますと席はみんなで奪い合いなので、下手に行くと座るところがないという状態で、こういうような勤務体系になっております(笑)。ここでめげちゃいけないですね。それで、成功の保証なし……。

(会場笑)

乗松:事業としては成功すると思うんですが、僕が生きている間に成功する保証がないということですね。

(会場笑)

乗松:「若者、頑張ってくれないと承知しないぞ。化けて出てやる」というのがこの画ですね。そんなところでですね、こういう姿をすぐ社長がFacebookに晒すもんですから、本当にとんでもない会社なんですが。こういう働き方をしているということなんです(笑)。

66歳になって感じる成長実感

乗松:ただし、このようなこの世の物とは思われない、人生ぜんぜん違うステージで働いていましても、私にとっても挑戦や努力の先には非常に楽しいなということがございます。一生の仲間や、誕生日にはケーキをぶつけられます。まさか私はそんなことないと思ったら、見事にぶつけられました。

若い人々に囲まれて、人生3回おいしい目にあったなと思うんですけども、いろいろな経験ができて、最後にこんなところに行きつけたのは幸せだなと思っております。(写真では)にこにこ笑っておりますけども、心の中で泣いてるんですよ、実はね。

非常に類まれな経験をしているということでございます。なかなか66歳になって、こんな経験ができることもないだろうということで、本当に類まれな経験です。

そして、確たる成長実感。さっき誰かの話に、「若いうち、まだ捨てるものはないだろう。何も失うものはないじゃないか」と。確かに30、40歳になると結婚したり、子供ができたり、失うものはあります。別の意味で、私の歳になるとほとんど失うものがなくてですね(笑)。子供も育ったし、家庭も円満だし、家内もいるし。ただ失うとしたら私の命くらいかなと思っているんですが。

(会場笑)

乗松:ただ、この歳になっても、大変な成長実感を持っております。日々、ちょっと油断していると何をやっているかわからなくなるという感じです。

これ、今年1月に(ニュース番組の)ワールドビジネスサテライトに出たときの映像ですけども、本当にやったなという感じです。テレビを観ながらみんな喜んでいるわけですね。

FiNCが求めている人材

乗松:FiNCはこういう会社ですけど、求めている人材です。小さな達成で自分の人生をよしとしない人、FiNCのビジョンや目標を理解・共感できる人等々、本当に大きな仕事をしてみたいと思っている人、大歓迎です。

(インターンを)募集しております。応募はWantedlyということで、役員秘書も求めております。もちろん、エンジニア、事業開発ですが、役員秘書ですと私なんかもお世話してもらいたいなという気持ちで書いてございます。

一流から学ぶことができる環境ということで、顧問、戦略顧問とも大変な(メンバーで)。元LINEの森川(亮)さんですとか、元ミクシィの朝倉(祐介)さんだとか、一流の企業経営者が日々ご指導くださっているという形でございます。

ということで、こんな会社でございますけれども、ぜひ我々の未来構想を最後に社長のほうから述べてもらいたいと思います。

溝口:けっこうやりがいがあって楽しいです。こんな2人でやってます。僕らですけども、創業時から、「次なるインフラを創る」と言い続けてきました。今までのインフラの変遷ですが、これも釈迦に説法ですけども、電気、ガス、水道。そこからですね、交通網が拡がって、さらに通信ですね。今インターネット、もう全国津々浦々開通していますね。

(ソフトバンク代表の孫正義氏が)「情報革命で人々を幸せに」と言っていますが、孫さん、ぜんぜん幸せになってないぞ。医療費も増え続けてる、自殺者も増えて、鬱病も増えている。

じゃあ、ここにですね、ピースが1つ足りないと僕は思ってるんです。それがパーソナルデータだと思っています。このパーソナルデータというのは、まさに生体情報とか位置情報とか、行動履歴とかそういうものです。これとICTを組み合わせて、一人ひとりにあったソリューションを提供できれば、孫さんの言葉を借りれば、まさに「情報革命で人々を幸せに」できるということですね。

だから、我々は決して楽な会社じゃないです。ベンチャーなんかどこもそうです。ですけど、かなり志を高く持っています。我々は、僕らでしか救えなかった人とか、ほかの会社では救えなかった人をどれだけ多く創るかが価値だと思ってるんですね。

ですから、興味のある方はピンクの服着てる人とかもいるので、それうちのスタッフです。あと、我々2人わかると思うんで、ぜひ声をかけてもらればうれしく思います。ご清聴ありがとうございました。

(会場拍手)

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