2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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南場智子氏(以下、南場):さっきの堀江さんの話に戻るんだけれども、18歳のときに進路を大きく変えた。この道にやってきた。今いくつ?
堀江裕介氏(以下、堀江):23です。
南場:若いね(笑)。23にして、1つビジネスを失敗する経験もして、今の事業はうまくいっているんだって?
堀江:今月やっと黒字になりました。
南場:立派! 合法的なことをやっているんだよね?
堀江:合法です!(笑)
南場:秘密なんだ。よし、あとでバックステージでお話を聞くとして。両親はどう思っているのかというのを聞きたいんです。
昨日、すごく頑張っているサンノゼ・ステートの日本人の学生に会って、彼はまだ両親から許されていない。
ものすごい進学校から、高校3年生の前期に、「こういう受験勉強をやっていても世の中に対するインパクトがない」と思ったらしいんですよ。あるとき突然、進路を変えて、自分は留学すると。ところが、親はもう京都大学しか大学だと思っていない!
そういう個人情報、どうですかね? 言い過ぎですよね(笑)。まあ、そういう親御さんだったので、金銭的なサポートがないということで、一番授業料の現実的なところを検索してですですね……。
ステート・ユニバーシティでも州の外の人には高いじゃない? それで、すごく頑張って検索して、サンノゼ・ステートに行って、いまだに両親から許しを得てない。
でも、どうもお母さんがLINEのスタンプを送って来てくれるようになって、その既読マークが付いたことにより生存を確認してるらしいんだよね(笑)。
そんな状態なんだけどさ、20歳過ぎたら大人だけど、まだ23歳だとさ、家族の期待とか少し離れてきてるじゃない? そのへんはどうだったんだろう?
堀江:18以降に一人で東京に来ちゃってて、もうだいぶ離れてるんですけど。起業してからは、「結果を残すまではあんまり地元にも帰りたくない」というのがあって。
僕も同じで生存確認の連絡が来るんですけど、それを返すのもいまだにちょっと、「まだ成功してないのに、親と仲良くしてられねぇ!」みたいなプライドがあり(笑)。10通に1回くらい、ガチで死んでるかどうかっていう安否確認だけ返します。
南場:そうなの(笑)。君たち2人のほうがよっぽどビジネスをしっかりやっているから、ビジネス上のアドバイスはないけれども。
親はいつまでも生きてるわけじゃないので、感謝の気持ちは表現しておいたほうがいいかなと。それくらいですかね。
南場:あと2回目のビジネスっていうのは、まだここでは公に言えないけれども、成功していると。息ができる状態になるだけですばらしいことだと思うんだけれども、1回目にやった失敗が活きている部分というのはある?
堀江:事業選択が最初の間違いだと思ったので、「何をやるか」というところは非常によく考えて、1回失敗して世の中からスッて引かれるのがなんとなくわかった瞬間があったので、絶対勝つためにはどういう事業を選ばなければいけないのか、成功確率の高いものと今後も成長する分野のど真ん中で戦おうというのを決めていて。
南場:自分の経験とすごく重なってしまうんだけれども、堀江くんにバイブルがあるんだよね! 大事にしている何回も読み返している本がありまして、それは何ですか?(笑)
堀江:『不恰好経営』という本を毎日読んでいて、つらいときとか、起業する前も読んでいたんですけど……これは本当です(笑)。
(会場笑)
南場:さっきステージの裏で聞いて、「この話はぜひして!」って言って、でもなかなかしてくれないから自分から聞きだしちゃったっていうね(笑)。
(会場笑)
南場:なぜ重なるかというと、堀江くんは私よりうんと賢いので、1年半で辞めたよね? 最初のビジネスモデルは勝たないビジネスモデルだと。
まあ競合だよね。LINEとかの競合が出てきて、こんな状態では勝てないなと思って、速やかに賢くピボッティングと言うんでしょうか? 変えたわけですよね。
私はオークションをやっていて、ヤフオクと4年間ズタボロで戦って、4年後にピボッティングをしたので……しかも20数億すりましたからね。そこは全く出来が違うんですね。
私の椅子だけふかふかしちゃってさ(笑)。本当は逆だよね! 本当申し訳ないんだけれども。
年数は違うけれども、やっぱり掘るところを間違うというのは、CEOの責任なんだよね。エグゼキューション・エクセレンスって言うんですか。オペレーションとか頑張るというのは現場の功績で、それでもうまくいかないのは、CEOがここ掘れって言ったところを間違っているということなので。
そこを2人が肝に命じて正しいスポットを掘ってほしいなと思うんだよね。それを2人がやっててくれるとうれしいと思うんだけど。細谷さんも(『不恰好経営』)読んだ?
細谷智規氏(以下、細谷):図書館で借りて読みました。
南場:買ってよ〜(笑)。
細谷:今度買います(笑)。
(会場笑)
南場:堀江さんが一番最初に掘った穴っていうのが、勝てるところではなかったので「次は!」ということで、勝てるところを掘ったと。
南場:細谷さんはどうですか? 掘った穴が悪かったわけではなくて、フォーメーションが悪かった。自分のCEOシップというか、リーダーシップの構図が悪かったので。
細谷:1つ目のビジネスに関していうと、それがビジネスとしてちゃんと回るかという検証をする前に、それが難しかったかなという判断をしたので、そういう意味ではフォーメーションとビジネスの掘ったところもそんなに勘は良くなかったのかなというのが実感としてあって。
ただ、2回目に関していうと、重厚長大なインダストリー、今ちょうど旅行というところでチャレンジしてるんですけど、だからこそトラディショナルな部分がすごく大きくて、テクノロジーが十分に入っていない領域ってすごくあるので。
そこをうまく掘り下げていくと今までの非効率性が効率的になったり、ユーザーとかあるいはサプライヤー、ホテルオーナーだったりが、もっとハッピーな形でサービスを提供できるんじゃないかなということで手応えを感じています。
南場:2人ともまだ若いんだけれども、例えば日本のアントレプレナーシップについて思うところとか、海外も見ているだろうから、同じような迷いを持っている人たちに対して、伝えたいことってあるかしら?
細谷:先ほど言ったように、僕は1回アメリカでうまくいかなくて、会社も最後はすごい泣きながらたたんで、よく日本で「1回失敗するとなかなかもう1回やるチャンスが与えられない」とかっていうんですけど。
僕、日本に帰ってきて、次のビジネスプランのときも個人投資家さんから投資をいただけたんですね。なぜなら僕は、全額MBAで使っちゃって1円も持ってなかったから。出資をいただいたと。
そのときに、赤裸々に自分はこういうミスもしたし、こういうふうにうまくいかなかった。それで、今はこういうビジネスアイデアを持ってますよというのを正直に伝えたんですけど、失敗したことに対して責める方とかはいらっしゃらなかったし、純粋に僕の考えたビジネスモデルとか自分の人間性とかを評価していただいて、今なんとかやらせていただいていると思うので。
今回テーマが「失敗」ですけど、あんまり失敗とか、そこを気にする必要はないのかなと思います。
南場:ただ、はっきり言って人間関係とか悩んだでしょ? 正直その時は、すごい嫌な気持ちもしたでしょ?
細谷:はい。それはありましたね。
南場:情けない気持ちと……なんて言うんだろう。こう、今すぐにでも解決したいっていうような気持ちってあったよね?
細谷:ありました。
南場:事業で負ける、競合に負けるという、その気持ちもすごくつらいんだけれども、身近なチームというのは心をすごく乱してしまうので、戦略とか作戦とかオペレーションとか大事なところへの時間とエネルギーをものすごく削いでしまうんですよね。だからそこを通ってきたということで、ずいぶん強くなったと思います。堀江くんは何かアドバイスある?
堀江:事業を1回たたんだ後に思ったのが、半年くらいにだいたい見切りをつけたんですけど、半年前まで戻っても、間違いなく超つらかったけど、たぶんもう1回やるなあと思っていて。
それはなぜかというと、僕が学生で学校で学んで普通に生活しているよりは、明らかに成長したというのもわかるし。その分精神もすり減りましたけど、それ以上に得ることが本当に大きくて。
例えば僕みたいに間違った事業を選んだ人に対しても、やっぱり日本は厳しいとはいえ、助けてくれる人がたくさんいたり、先輩経営者の方々がアドバイスをくれたりだとか、そういう失敗の経験ってチャレンジした人だけに与えられる権利だと思っていて。その点でいうと、本当に何回ミスってもやり続けるなっていうのはありますね。
南場:そうだよね。成功するまでやってれば、必ず成功するから!
今日は本当に私自身も勉強になったし、陳腐な言葉だけれど「ファイティング・スピリッツ」を感じられてすごくよかったと思います。
今2人が言ったように、やっぱり挑戦をしなければ何も得られない。だから動かない人と比べてどれだけすばらしいか。
テキストブックの成功・失敗ではなくて、自分でやった失敗からは、すごくたくさんのものを学んでいると思うので、尊い2人だと思う。
この日本において、起業するとか進路を多くの人の価値観から逸れたところに持っていって、試合をするというのはものすごい勇気と自分のしっかりとした胆力があるということだと思うんですね。
こういう人が増えてくれたらうれしいなと思うし、今話を聞いてもこの2人はスーパーグレイトだけど、将来は何も保証されていない。どうなっているかわからない。
本当に運の力もいれば、周りのサポートも必要なんだけれども、ここにせっかく出てきたので、みんなで注目して、可能な限りサポートというか、つながっていきたいなと思います。
今日は、どうもありがとうございました!
(会場拍手)
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