2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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岡島悦子氏(以下、岡島):川邊さん、ヤフーさんはもう本当に大きくて、下手したら「大企業病になる」みたいなことが危惧されて。
そして体制がちょっと途中から変わられて、今いろんな提携をどんどんやってらっしゃる。つまり、非連続のイノベーションを起こしてらっしゃるように見えるんですけれども。
どんな経営体制、意思決定……ニケシュ(・アローラ)会長になってどうなのかすごい気になるんですけど。どういうふうに経営の意思決定してるかをお伺いしたい。
川邊健太郎氏(以下、川邊):僕はヤフーに入社して15年なんで、内幕を見てきました。どうやってるのかなって思ったら、イメージは家族会議ですね。
結局、我々は子供ですよ。まずソフトバンクっていう荒ぶる父親がいるんです。非常に優しくて理知的ですごい賢い、母たるヤフーインクがいるんですよ。これと子供と3人でゴニャゴニャ話をするんですよ。
ある時、お父さんがめちゃくちゃ怒って帰ってきて、「通信料金が高すぎるぞ、この請求書!」とか言って。
こういう場ですから企業名は出さないですけど、当時お父さんは企業名を言ってましたけどね。
「この通信会社が値段を高くしたままだからいけない!」「このままだと日本のインターネットに夜明けはない! 何かしよう!」みたいな感じで「じゃあ『Yahoo! BB』でもやりますか!」みたいな感じでやったりとか。
あとは2004年か2005年くらいにジェリー・ヤンが来たんですよ。それでまたゴニョゴニョ会議してたんですよ。「知ってるか? ソーシャルメディアというのが出てきてるんだぞ」と。
「コンテンツの担い手はプロからエンドユーザーに移るんだよ」と。「じゃあ何やったらいい?」って言うと、「アンサーみたいな、Q&Aが流行るぞ」とか言うから、「じゃあ早くやろう、名前何にするか?」とか言って「おばあちゃんの知恵袋がいいんじゃないか」みたいな感じで「Yahoo!知恵袋」ができたりとかして。
非常に他力本願な話なんですけれども、そうやって家族でゴニョゴニョ話してると、「お父さんがある時こういうこと言いました」「お母さんがこういうこと言いました」「子どもは何かこういうこと発見してきて言いました」って結構ゴニョゴニョ話してる。
最近だと中国の買い物好きの親戚が現れて(笑)。「中国ではこういう物の買い方をしてるんだよ、知ってるか? 日本でもこういう爆買いとかやったほうがいいんじゃないか?」とか言って、「中国のおじさんがそう言ってくれました」とか。
あと、インドからすごい目つきの悪い親戚のおじさんがやってきて、「このままだとお前ら死ぬぞ、病気だぞ」とか言われて「え?」とかっていう話をしたりとか(笑)。本当に家族会議ですね。
岡島:でも、言いたいことを言い合う会議なんですね。
川邊:そうそう。
岡島:そのうちお母さんは株を売りたいって……。
川邊:そうですよね。「見捨てないでね」って感じですよね。
岡島:お母さん、売り始めるみたいな噂もありますが(笑)。
川邊:日経さんが書きましたけど、あの話は結構恒例行事なんですよ。何年かに1回、必ず出てくるんで。
岡島:イベント。
川邊:イベントです。だからお母さん家出しちゃうみたいな。
(会場笑)
岡島:お父さんまた、インド人の人も連れてきちゃうしね。
川邊:インド人と毎朝電話してるみたいな。そんなラブラブなインド人の恋人みたいなの連れてきちゃうから、お母さんはたまに腐ると。
(会場笑)
岡島:……わかったような、わからないような(笑)。
川邊:おっしゃる通り本音やってるし、みんな「今が今のままあるわけないよね」という前提に立って議論してるし、お父さんに至っては口癖っていうんですか?「今のものを早く潰せ」っていう、そういうものを持ってるんで。だから揺らぎが起きて、数年に1回何かをやる。
岡島:そういう意味では金融事業やろうとか、それからカード、それからさっきの中国みたいな話も。それはお母さんが株売るみたいな話ともちょっと関係あるのかもしれないですけど……。
川邊:それは誤報ですから。
岡島:じゃあそれはちょっと置いといて。新しい領域に入っていくっていうことは、その喧々諤々やられた中でどうやって決まるんですか? 多数決? お父さんの力?
川邊:ずーっと議論してメチャクチャ言い合って、それでやるべきWhyだけ決まるんですよね。
「社会はこうなるべき」とか「こういう課題を解決すべき」とか、「もっとここのマーケットがネットによって大きくなるべき」とかWhyだけ決まってあとのWhatとHowはよくわからないまま現場にボーンと出されるみたいな。
だけど現場は「Whyが正しいからちょっとみんなでやってみようか」みたいになったりする。
岡島:そこはリソース振り、どうするんですか? 今までの仕事の上に「これ、あなたたちやってね」ってまた渡されるわけですよね?
川邊:だから困っちゃうんですけどね。だいたい安定稼働してるものが奪われていって、新しいものに付け替えられちゃう。全体のパイはこの3年間あまり増えてないので……。
だけど安定稼働してるものは今の半分の人数でできるんですよ。できるんですよって、社員が中継とか見てると「ふざけんな」とか言われるんですけど……(会場に)社員もいるし。だけど、できるんです。
岡島:できると。
川邊:安定稼働しているものはね。
岡島:2社さんにもちょっと伺いたいんですけど、やることをどうやって決めるかは伺ったんですけど、それぞれ「新しいサービスやるよ」「新しい領域やっていくよ」っていうときにはどんなリソース分けを……。
今の話なんですけど、経営リソースをどういう体制で実装していくのかみたいなのは、各社さんでだいぶ違うような気がするんですけど、出澤さんのところはどうですか?
出澤剛氏(以下、出澤):ウチはさっき言った3分の1の新しいことをやるチームが職種ごとにわりとプールされていて。
延々と企画を考えてるBiz Devみたいなチームと、デザインのチームとエンジニアのチームがいて、それが「何かやるぞ」って決まったらワーッて寄って集まって、うまくいったらそれを1から10にする人たちに引き継いで、成長させていく。ゼロイチのチームが常にキープされていてワーッてやるっていう感じです。
岡島:そうすると専門家軍団みたいな人たちがいろんなアドバイスをしていくっていう。
出澤:アドバイスっていうか、彼らが実装に入るっていう感じですね。
岡島:機能別にその人たちも入ってくるっていう感じですよね。一方、DeNAさんはすごい小さいチームで、ゼロイチをどんどん立ち上げていくみたいな。
守安功氏(以下、守安):そうですね。インターネットのサービスなんで、理想はエンジニアと企画者2人、ちょっと増やしても5人弱くらいのチームで新しいサービスをつくっていこうっていうのが一番いいですよね。そうじゃない立ち上げ方もいくつかやってるんですけど。
一番しっくりくるのは小さなチームで、スモールで立ち上げて「これいけるぞ」ってなったタイミングで人も増やして、マーケティングも投資してっていうのが一番いいかなと思います。
岡島:今おっしゃってるようなタイプの仕事っていうのは、「自分たちがこのサービスをつくりたい」みたいなことがあったときには、上はさっきのWhyを決めるみたいなことはやられるんですか?
守安:事業のつくり方はいくつかあって。それこそ、「こういう分野に張ってこう」って検討して分野も決めてドーンとやっていくものもあれば、投資も人数も少ないものは現場の中で勝手にやってくれって言ってるので。
どっかで決裁が上がってくるんじゃなくて、現場で知らぬ間につくってサービスが世の中に出てるというようなものもある。
岡島:知らぬ間にサービスが世の中に出ている?
守安:出ますよ。
岡島:それについて上はドキドキしないんですか?
守安:どっかで炎上したら「こんなもんやってんだな」くらいの感じであんまり。
岡島:ある程度ユーザーがついてきたところで、トラフィックがかなりになったところで。
守安:いけそうだってなったら部門つくるとか、人も充ててドーンと打ち出していく。
岡島:なるほどね。川邊さんのところはどういう体制で?
川邊:まずこの3年でいうと、本当のド新規みたいなのはちょっと……最初やってたんですけど、あんまりうまくいかなかったんで。途中eコマース革命くらいの時からデカイものをイノベーティブにやって、さらにでかくしようみたいな路線に変わりましたね。
そういう意味でいうと、結構もともとリソースいるものの中で考えを変えて、eコマース革命だったらロイヤリティ取るのやめて「いったん100億ドブに捨ててもやろう」みたいなそういうやり方ですね。
岡島:チームは変わってないと。
川邊:そうですね。例えば「Yahoo!カーナビ」とかは「つくっちゃってました」みたいな。VHSってそういう感じだったらしいですね。プロジェクトX見てる限り、ビクターが勝手につくっちゃってましたみたいな感じですね。それ以外は、かなり意識的に大きいところを。
岡島:既存のチームで回していかれると。DeNAさんはそうじゃないんですよね。
守安:既存のチームでも新しいことをやるというのは、普通にやらしている感じですね。
岡島:ただそこから「新しいことやるぞ」っていうところはひっこ抜いちゃってっていう。
何を伺いたいかって言うと、私もいろんな相談を受けるときには、新しいところにキレキレのリソース振りたいんだけど、今すっごい儲かってるところからは抜きたくないよねっていう。
このリソース配分の難しさっていうのは多分各社さん多様で、よくあるのは「一番いい人を抜いたら次の人が育つよね」っていう会社もあれば、「いやいや抜いたらボロボロになっちゃった」っていうケースもあると思うんですけど。
守安:ウチは基本的に抜きますね。何とかなるんですよ。
岡島:何とかなります?
川邊:安定稼働してれば。安定的に成長しているものであれば何とかなる。
岡島:LINEさんはどうですか?
出澤:ウチはさっき言った通りプールしちゃってるんで、そうやっていくと属人的に「こいつがいないとできない」とかになるので、そういう意味でプールしていて。
岡島:そういうふうにされた背景は、試行錯誤があった上なのか……。
出澤:やっぱり、どうしてもうまくいってるものにどんどん人が集まってくるし、それを壊していかなきゃいけないのも、1回1回壊すのも大変なので。
よくある事業部制がいいのか、職能組織がいいのかみたいな話で、1回職能で分けてプール化して。そうじゃないと速いスピードでぽんぽんスピード出せないっていうのがあって。今までだとそういうニーズが高かったっていう感じです。
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