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瀬戸際からの帰還:南場智子(全3記事)

DeNA南場氏が語る「学校の友達と起業するときの注意点」

2015年9月7日に開催された「Tech in Asia Tokyo 2015」にDeNA・南場智子氏が登壇。「瀬戸際からの帰還」をテーマに、ボーダー・細谷智規氏、dely・堀江裕介とディスカッションを行いました。本パートでは、共同創業者の友人との意見の対立による失敗を経験した細谷氏に対して、南場氏が個人同士、企業同士がひとつの会社を立ち上げる際の“最終意思決定者”の決め方についてアドバイスを贈りました。

「3.11」東日本大震災をきっかけに進路を変更

南場智子氏(以下、南場):さっきチラッと聞いたんだけど、もともと体育の先生になろうと思ってたんでしょ? それがね「3.11」で気持ちが変わっちゃったんですよね。それで慶應に行こうと。それがちょっと結びつかない。なんで「3.11」が慶應なのか。

堀江裕介氏(以下、堀江):人のためになる仕事で「教師」が、学生時代の僕の中で最上位のランクだったんです。一番人のためになる仕事だと思って、人の人生を変えられると思ってたんですけれども。

「3.11」で、僕受験の日に(震災を)くらったので、ホテルに1人でいて、誰も連絡がつながらず、実家の家族も生きてるかわからない状況で。

あのあとに孫(正義)さんがお金をポンって出したのを見て、「教師なんかよりカッコいい職業があった!」って自分の中でウワッて思って。それでしょうもないなって思っちゃって。

南場:なんで孫さんのところに行かずに慶應に行くのかな?

堀江:自分のバリューがなかったので(笑)。そのときも浅はかで、慶應に行けば何かあるはずだと思ったんですけど、そんな甘いものではなく……特になかったので。

南場:それで学校に行かずに事業を始めた?

堀江:最初はインターネットやパソコンもわからなかったので、「コーチユナイテッド」という習い事のマッチングプラットフォームをCtoCでやっている会社で働かせてもらって。

半年くらいですぐにやろうと思ったんですけど、お金もなく、プログラミングができるわけでもなく。

何もできないけど、自分より頭いい人が学校や世の中にたくさんいるっていうのはわかっていたので、始めたほうがアドバンテージになるかなと思って。

南場:アクションね! 立派だねぇ! 私、自分が同じ歳だったときに叶う気がしないね! うん、すごいね!

MBAが良かったのは10年前?

南場:細谷さんはどうやって起業したの? いわゆるシンクタンクにいて、どっちかっていうとビジネススクールなんかも行っちゃって、MBAなんかも取っちゃうってさ……いそうだよね? そういうタイプ。イヤじゃない〜?(笑)

(会場笑)

南場:あ、そんなこと言っちゃいけないんだ(笑)。今日はね、「私の不規則発言どれくらい気をつけたらいいかしら」って聞いたら、ウチの広報が「今日はテレビのカメラが入ってるから不規則発言気をつけてください」って言ってたんだけど。

(会場笑)

南場:でもMBAって「10年前」は良かったのかなぁ……なんて。今MBAってシリコンバレーでどう? 尊敬されてる?

細谷智規氏(以下、細谷):いや、たぶん今「MBAを雇うんだったら、エンジニアリングを2人雇え」というのが定説になっていて。

本当に「MBA自体が直にビジネスに役立つということではないんだろうな」というのが、僕も行ってみて感じたところはあります。

南場:ただ、そこで学んだこともあるだろうし、さっきの失敗もおもしろいから、何をどう学んで、今どうしてるのか聞きたいんだけど。

その前に、自分を起業に導いたのはUCLAのビジネススクールなのかな? アンダーソンで?

西海岸のスタートアップへの関心

細谷:そうですね。やっぱりアメリカ、しかも西海岸にいると、多くの人がスタートアップに関心を持っている。

自分がスタートアップをするか、働くか、というのがけっこう当たり前で、僕がいた学校も40パーセントくらいがアントレプレナーシップクラブに入ってるんですよね。

僕もそれに後ろからついて入っていったら、みんな毎日ビジネスの話をしていて、「起業するのが当たり前なのかな」という錯覚を得て。

アイデアを出すと、ビジネススクールに来てくれる投資家さんがいて、話すと「それいいね、やろうよ」みたいな感じで。

正直1回目のスタートというのはノリというか、レスポンシビリティも自分の中でちゃんと持ってない状態でスタートしたみたいなところがすごくありました。

南場:それで1800万出してくれるってすごいよね!

細谷:お金持ちはやっぱりいるんでしょうね(笑)。

南場:そういう人に1万人くらい出資してないとリターンがなさそうだよね(笑)。

細谷:もちろん我々も1人にアタックしてそのままうまくいったというよりは、いろんな人にピッチをしてそこで磨いて、Yコンとかも出しましたし、500(Startups)とかもやりましたし、そういう経験が活きたというのはあったと思います。

友達と起業するときに決めておくべきこと

南場:最初の失敗は友達と起業して、振り返ると、人選が悪かったのか、それとも立ち上げてから何かをしておけばよかったとか、もう1回歴史をリワインドして戻すことができたら、その事業・ベンチャーを救う目的に置いた場合、何を変えます?

細谷:先ほども言ったように、最初にやるべきだったのは、何をどうやって意思決定をしていくかとか、シェアの持ち方とか、事前になあなあでスタートするんじゃなくて、例えばこういう状況が起きたらその1人のメンバーを呼んで、その中で合意していこうとか。

南場:ちょっとコミュニケーション不足だよね? さっきの話では、途中からお互い「ちょっと方針と根本が違うな」と思ったら、細谷さんのほうが突っ込まなくなったっていう話が一番気になってね。

細谷:それも自分の悪いところだと思っていて、本当は会社のことを思ったら、コンフリクトが起きても突っ込むべきだったと思うんですけど、なんとなく遠慮している部分もあって。

あんまりエンジニアリングのこともわからないのに、偉そうに「これ、(お金)かかりすぎじゃない?」とか言うのも……みたいな感じで。そこは、ちょっと自分自身も未熟だったなと思います。

南場:合弁会社をつくるときもそうだけれども、企業と企業、個人と個人が集まって会社をつくりましょうというときも、最初はすごく盛り上がっているけれども、意見が対立したときの決着のつけ方というのは、気分の良いときにあらかじめ決めておくべきだと思うんですね。

だから50:50というところからして、おかしいかなというか……だよね? 後輩が会社をつくろうとしたら、どっちが最終意思決定者なのか、それだけはアドバイスするでしょ?

細谷:はい。少なくとも「ボーディングラインはつくったほうがいいよ」とアドバイスはすると思います。

企業向けの出張手配サービスを展開

南場:今の事業はどういう事業?

細谷:今は、さっき言ったトラベルプランニングからもっとB向けのサービスをしていて、いわゆる会社の出張手配をする部門が大きな会社さんにはあると思うんですけど、総務部門とか担当の秘書の方とかがいて。その部分をリプレイスする。いわゆるクラウドでソーシングできるような仕組みをして。

うちは世界中にある小さな旅行会社と提携しているんですね。彼らは10人とか20人とかのちっちゃな会社なんですけど、実は裏方でいっぱい手配をしていて、現地のことをすごくよくわかっている。

あるAという会社さんが「出張行きますよ」というと、現地のそのエリアを担当している会社さんに連絡がいって全部アレンジしてくれて。

南場:ランドオペーレーターみたいな?

細谷:そうですね。まさにランドオペレーターです。みなさん実感ないかもしれないですけど、1時間くらいかけて手配しているって言われるんですけど、彼らだと3分とか5分とかでササッとできちゃうんですよね。

「このエリアでこの金額だとココ!」とか。通訳必要だったら「はい、います」とか。

そうすると、まずセーブタイムができるのと、うちはそのプラットフォームをゼロ円で解放していて、なんでできるかというと、現地の旅行会社とブッキングすればマージンのキックバックがあるので、使用料とかいらないんですよね。

なのでゼロ円で解放して、バックオフィス用の出張手配プラットフォームをつくっているという感じです。

南場:出張用のプラットフォームをつくって、ランドオペレーターを束ねてるってことだよね。ウチのDeNAトラベルって知ってる?

細谷:もちろん。知ってます。

南場:お世話になってる?

細谷:いえいえ、もっと先のレイヤーですね。DeNAトラベルさんはもっと上のレイヤーで、現地の会社さんは次の。

南場:なるほどね〜。そうですか。今度は頑張らないとね! 家族持ちですから。

細谷:ありがとうございます(笑)。

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