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今後のスマホ・ビジネスの主戦場はどこか(全5記事)

Amebaの強みを活かせるか--サイバーエージェントの成長戦略

IVS 2015 Springの本セッションにLINE・舛田淳氏、メルカリ・山田進太郎氏、スマートニュース・鈴木健氏、サイバーエージェント・宮﨑聡氏の4名が登壇しました。モデレーターを務めるIVP・小林雅氏の進行で「今後のスマホ・ビジネスの主戦場はどこか」をテーマに意見を交わしました。本パートでは、宮﨑氏が動画や音楽配信サービスなど、エンタメ領域に注力するサイバーエージェントの成長戦略を紹介します。また、新世代トークアプリ「755」の今後の展開についても議論が交わされました。

サイバーエージェントの成長戦略

小林雅氏(以下、小林):ありがとうございました。では、宮﨑さんよろしくお願いします。

宮﨑聡氏(以下、宮崎):よろしくお願いします。

小林:もうピッタシ、時間を計ったかのように登場されましたね。山田さんがサイバーエージェントに聞きたいことがあるみたいですが、まずはスライドにいきましょうか。

宮﨑:今うちは、成長分野を「エンタメ領域」に張っていまして、その注力サービスの1つは755という著名人の近況を知れるトークアプリです。今日もLINE MUSICが出ていましたけど、音楽ではエイベックス・デジタルさんと合弁でAWAというサービスをリリースしていて、昨日100万ダウンロードの突破を発表しました。

動画では、テレビ朝日さんと合弁でAbemaTV(アベマティーヴィー)というスマートデバイス向け多チャンネル動画配信プラットフォーム事業を年内のオープンに向けて準備をしているところです。それ以外にも、動画はかなり幅広くやっています。「総張り戦略」というところですね。メディアやコミュニティから広告やアドテクまで幅広い分野で、たくさんの子会社や事業部をつくって展開しています。

音楽に関しては、このAWAが現在数百万曲提供なんですけども、年内に3,000万曲配信までもっていく予定です、我々は960円の「Standardプラン」と、360円で一部制限付きの「Liteプラン」を用意しています。

利用開始から90日間は無料ということで、とりあえずプレイリストをつくってもらったり、まずはたくさん視聴してハマってもらって、マネタイズは後からというところです。

755に関しては、570万ダウンロードを突破しました。755はTwitterとブログのちょうど中間の様なログ系サービスを、スマホの使われ方に最適化して発明し直している最中です。ブログというのは記事タイトルや更新時間の設定が必要など、ユーザーが求める「スマホでサクサク手軽に投稿できる」というトレンドには合わなくなってきています。

755は、トーク開設者がとにかく気軽に簡単に近況を更新できることに重きをおいています。それを利用者が覗きに来るのですが、気になる投稿があれば「リトーク」して自分のトークに簡単に引用できるし、「やじコメ」したら、取り上げてもらえてトークに登場できることもある。ラジオのDJにもハガキを出したりするじゃないですか?

あれと同じで、「ピックアップしてもらえるとうれしい」みたいな体験を大切にしながらサービスを提供しています。

動画の総張りは、ユーザー向けのサービスから広告主向けのソリューションまで今年けっこう出していきます。ユーザー向けのサービスはいくつかありまして、Amebaの生放送アプリ「AmebaFRESH!」やスマホの縦画面配信に振り切ったライブ配信アプリ「宅スタ」、タレント特化型ライブ動画アプリ「アメスタ」と続々出す予定です。

一方、広告主向けのソリューションとしては、「渋谷クリップクリエイト」や「CAtchy!」など、ゲーム実況主に特化した動画インフルエンサーネットワーク事業や、スマホでゲームをしているところを録画したり、実況できるOPENRECというSDKをアプリ開発者向けに提供しています。

その他、動画の広告代理店やゲーム動画広告のアドネットワークなどAppliPromotionやLODEOやCyberBullなど様々なプロダクトがあります。ということで、まさに「動画の総張り」を全社で進めているところですね。

小林:どうもありがとうございました。宮﨑さんは最初の話を聞けなかったと思うんですけれども、ディスカッションに移りたいと思います。それでは、山田さんの質問からまいりましょうか?

新世代トークアプリ「755」の展開

山田進太郎氏(以下、山田):動画の総張りはわかったんですけど、755はどんな展開を考えているのかなと思っていまして。アメブロもある中で、それを全部持ってきたいのか、海外に展開するのか。どんなふうに発展させていくイメージなんですか?

宮﨑:うちのビジネスの強みになっているところでいうと、エンターテイメント領域の各社とのリレーションはうまく築けていると思っています。それを今までは、アメブロだけにしか活かせていなかったんですね。

今後はその強みを動画サービスに活かしていったり、755に活かしていったり、要はエンタメ領域に貯まっている資産を他のサービスにも展開していきます。セレブリティの人たちとのパイプというのは、国を跨ぐと難しいので、一旦は国内中心になると思います。

山田:普通に考えたらですけど、「コネクションが強い」というのはわかります。出口を押さえたいというのもわかるんですけど。僕の感覚だと、入り口と出口を押さえるのは、ほぼ不可能だと思っているんですね。

入り口の芸能界とのリレーションを活かして、いろいろマルチチャンネルでやっていくか。逆に、プラットフォームをやって、強いリレーションに頼らなくてもやっていけるような。どちらかにしないと、まずいんじゃないかと思っているんですけど。

小林:なるほど。「755まずいんじゃないか」ということですね。

山田:まずいというか、成功しないんじゃないかと思っているんですけど、それはどうですか?

宮﨑:最終的にはAmebaというプラットフォームに集約していくつもりです。Amebaをブログやピグが中心だったこれまでの生態系から、動画サービスや755など新しいトレンドサービスを中心としたプラットフォームにもう1回創り変えていくという構想です。

Amebaというプラットフォーム上にいろんなサービスが乗っかっているイメージで再構築していくことになるので、その挑戦はこれからというところです。

小林:鈴木さんが何か言いたそうな感じなんですけど、大丈夫ですか? 舛田さん、何かありますかね?

舛田:755についてですか?

小林:755でもプラットフォームについてでも。アメーバとLINEって、なんか似ているじゃないですか。

舛田:みなさんご存知かもしれませんが、アメブロが755へシフトしている間に、我々はLINE BLOGなるものを立ち上げたんです。そのブログはLINE公式アカウントとくっつけてやっています。宮﨑さんや藤田さんに「755はLINEの競合じゃない」となぜか会う度に言われるんですね(笑)。

競合じゃないかもしれませんが、おそらくファンの方やタレントの方が求めている「体験」というのは同じだと思うんですよね。

755の「やじコメ」とかおもしろいと思いますし。ただ「我々にはできないな」と思うのは、AKBさんとかE–girlsさんをものすごくフロントに立たせるじゃないですか? 我々プラットフォーマーとしては、あれはやれないんですよ。

「一属性のファンにグワーッと集まってこられると、プラットフォームは終わる」と思っているので。そのあたりはどうですか?

宮﨑:今はサービスとしてまだ「過渡期」なので、そういう捉えられ方をされるのかもしれませんが、最終的には著名人だけでなく一般利用者の皆さんが同じプラットフォームを利用して発信してくれるところを目指しています。

舛田:755はプラットフォームにするという考えですか?

宮﨑:そうですね。最終的にはそっちを目指していこうと思っているんですけど。

小林:なんか、宮﨑さんがいじめられている感じがするので(笑)。ちょっと反撃していただけますか

FacebookとAppleのニュース戦略

宮﨑:スマートニュースにお聞きしたいんですけど、最近Facebookのリリースがあったじゃないですか? あのリリースを経て、今後戦い方が変わってくるのかどうか聞いてみたいなと思ったんですけど、いかがですか?

舛田:合わせてAppleも「ニュース」って言ってるじゃないですか。FacebookとAppleという2大モンスターを相手にするってどんな状況ですかね?

鈴木:楽しいですね! Facebookが「インスタント・アーティクルズ」というのを始めたんですが。今までもFacebookでニュースは読めていたんですけども、アメリカだとニュースのコンサンプションのほとんどがFacebookになっているんですね。

日本はそこまでじゃないんですが、アメリカではすでに「ニュースサイトにとって一番大きなトラフィックエンジン」はFacebookになっているんです。そういう現実がある中で、一昨年あたりかからFacebookはアルゴリズムを変えて、ニュースサイトに対してトラフィックを増やしたんです。

それが原因で、BuzzFeedのPVが加速してくるということが1年半くらい前に起きたわけですが、そういう中でFacebookにとって「ニュース」がすごい重要な存在になったと。

それでFacebookが10周年のときにPaperという、ニュースアプリみたいなものを出したんですね。AppleのUXを担当してきた、かなり有名なデザイナーが進めたもので、UXとしてすごい良くできているんです。

ただ、そのPaper自体は失敗したんです。それで、そのPaperのチームが次に取り組んだのが「インスタント・アーティクルズ」なんですね。フロントの部分はFacebookに任せて、独自のアプリではなくPaperのすばらしい記事閲覧体験のところだけを残したんです。

Facebookはコンテンツをキャッシュして、ニュースメディアはFacebookのフォーマットでコンテンツを提供するということをやっているわけです。それで「広告収益は100パーセントがメディアのもので、Faceboookの広告が載った場合は70パーセントバックしますよ」という試みなんですね。

でもこれは、スマートニュースがすでにやっていることでして「Smartモードに載った広告というのは、100パーセント広告主のものですよ」ということを我々はやっていて、我々が2年半前から取り組んできたところをFacebookも当然やってきたというところなんです。

本質的なところは「Facebookがニュースに参入してきた」というところではなくて、Facebook自体がニュースサイトにとって、ものすごく大きなトラフィックエンジンになっているところに、部分的な閲覧体験を提供した。

Webサイトがロードされるまでの待ち時間を削減するという目的で、スマートニュースでいうところのSmartモードを提供した。というのが「インスタント・アーティクルズ」なんです。

そういう意味では、これで大きく状況が変わるというものではなくて、Facebookが継続的に強化してきたニュースの戦略をしっかりとやり続けていると、我々は受け取っています。

Apple Newsのほうは、おそらく秋くらいにリリースされるiOS 9に標準で入ってくるアプリになると思います。このアプリは僕もまだ使っていません。インストールしても今のデベロッパー版には入ってこないので。

それで、WWDCの情報だけで見ている状況なんですけども。見た感じですと、やはりFlipboadに近いインターフェースと体験を目指していて、ビジュアル重視です。

スマートニュースは平日の忙しい通勤時間に使うことを想定しているんですが、Apple Newsは休日の時間があるときに見るような体験を目指しているのかなと思います。そういう意味では、使うシーンが異なるので「補完的な関係」だと思います。

Apple Newsが頑張っているところは、アメリカにはPrismaticというニュースアプリがあってですね、大変優秀な機械学習のチームで、UCバークレーで博士号を取った人たちがゴロゴロいるようなチームなんですけど。

Prismatic自体は残念なことに、まだユーザーをあまり獲得していないんですが。そこの元CTOが1年半くらい前にAppleに入って、シニアマネージャーになっているんですね。おそらく今回のApple Newsの機械学習は彼がやっているんじゃないかと思います。

2ヵ月くらい前にAppleを退職してはいるんですけども。そういう意味で僕はFlipboadとPrismaticがうまく合体したものになるんじゃないかなと見ています。すいません、マニアックな答えで。

小林:大丈夫ですよ(笑)。

宮﨑:もしかしたら、最初にもう話されたのかもしれないですけど海外でのスマートニュースは今どんな感じになっているんですか?

鈴木:海外のほうはアメリカを中心にやっているんですけども、今は80社くらいのパートナーが毎月10を超えるペースで増えていて、ロイターさんとかAP通信さんとか大手と組んでプロモーションを始めて、それによってグロースしている形になっています。

今は月間で100万MAUを超えるところまで来ています。まだまだですけれども、アメリカは大変市場が大きいので一生懸命頑張っていこうという感じです。

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