2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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奥田浩美氏(以下、奥田):今日のテーマが「経営者としての経験の積み方」なのですけれども。事業を立ち上げようとしたときに意識したこと、どうやって経験を積んでいこうかというときに、次の世代の人たちへ与えられるメッセージみたいなものってありますか。
いろんな人を参考にしたという方もいらっしゃいますし、何も考えず目の前のことを(やっていったなど)それぞれあると思うのですけど。
平尾丈氏(以下、平尾):今と私が10年前やっていたときと、変わっているところもあると思うのですが。私はたまたま学生だったので、時間があり、こんなキャラですが友達にも恵まれていました。優秀な友達が多かったと思います。
あとはお金。人、物、金というリソース、情報なんかも入れて経営のリソースとかありますけど、その中でいうと、お金以外は全てあったのです。
優秀かどうかは、学生の中で優秀なのでどうかというのはあるのですが、時間でカバーしたり、若さでカバーしたりできたので、やってみようと思ったことはかなりできました。
平尾:大学4年で立ち上げて失敗した事業の数でいうとインターネット以外がほとんどなんですけど、百数十ぐらい。いっぱい失敗しまして、事業の何がダメだったのかというPDCAを回せたのがすごいよかったのと、その失敗を先輩方にお持ちすると、「何がダメだよ」とか、ご指摘いただけるんですよ。
構想だけで事業をやっていない方と比べると、やっているほうが起業家の先輩方もかわいがってくださるので、先輩に話を聞きに行って、「いいね」と言っていただいたり、助言をいただいたりして、勉強していきました。
私は当時、ITではなくリアルの事業からやっていったので、組織論であったり相談する内容はちょっとアナログな話ですが。
「メンバーが全然言うこと聞いてくれない」とか、「平尾さんは何を言っているかわかんないと言われる」とか。今もよく言われますけども(笑)。
いろいろご相談できたというのはよかったですし、いきなり非連続にズバッと伸びたというところもあるのですけど、ここまで積み上げてインテグラルして、積分していくような感覚を自分はもっていて。
奥田:次元を超えて。
平尾:次元を超えて……ありがとうございます。次元を超えていく瞬間がたまにある。このサイクルが自分の中では、成長実感みたいのがありましたね。
奥田:失敗を繰り返して成長した。よくインタビューでお聞きするのですけど。一方で、失敗っていうのがなくても一気に進んできたイメージのある佐藤さん。
佐藤光紀氏(以下、佐藤):自分の場合は、小さく失敗を繰り返して、これだって勝負を決めて立ち上げるもの自体は、幸運なことに外したことがないかもしれません。外さないように、必ず勝負どころは当てる。
勝負どころがくるまでの普段の過ごし方でいうと、ものすごい数の小さなトライ&エラーで失敗をして、「これは上手くはまるな」とか「はまらないな」というのを繰り返しています。
奥田:今のですごく腹落ちしました。以前のインタビューで、大きな失敗談競争みたいな経営者のインタビューがあったときに。
佐藤:失敗自慢ですか。
奥田:失敗自慢があったときに佐藤さんが、「僕は失敗を振られると困るんだよね」みたいなことをおっしゃっていて。それで今日お話を伺うと、やっぱり大きな失敗自慢というより、ちっちゃなことをとにかく回していってという。
「一番最初に立ち上げた事業は何でしたか」と聞いたときに、「今と一緒です」とおっしゃったのもすごいなと思いました。
佐藤:当時の話をすると、15年くらい前に想像した15年後と今って、そんなに大きく変わらないんです。例えばインターネット業界でも、何が流行るか、どのサービスが流行るか、どんなデバイスが流行るかって、当てるのがものすごく大変なんですけど。
インターネットが世の中を変化させるとか、よりよくするとか、こういう大きなマクロの社会に与える影響って、そんなにブレずにある方向に進んでいると思っていて。それって昔、漫画で描かれた未来の社会で、実際はもうかなり未来社会化していると思うんです。
奥田:そうですね。
佐藤:例えば、20年前、30年前に描かれた、人間が想像した将来ってそれにもう近づいてきているわけですよ。人間の想像する将来というのは、わりと当たるんだろうなということで、だからほかの場でもよく言いますけど、とにかく歴史をたくさん勉強して、将来もその歴史の延長線で。
奥田:延長線にある。
佐藤:どうなるかと。
奥田:こうきた分を自分はこっちへ行くんだという。
佐藤:僕には、細かい枝がどうなるかというのは全くわからないのですけど、大きな幹として、どういうふうに世の中が進んでいくのかというのが、想像力を働かせると、ビジョンとして見えてくるというのはやっぱり(あります)。
奥田:自分も、スタートとして見るというよりは、今までの流れでこれがこっちにいくだろうなということを自分で描いて。
佐藤:例え話でいうと、木の中から仏像を彫るときに、中に仏像がいる状態を想像してくり抜いていく。だから、単純に外側から彫って仏像ができ上がるというよりは、中にあるものを彫り出す感覚というのが、僕にとっては一番自分の事業をつくるときの感覚に近い。
奥田:いい表現ですね。
佐藤:「この木の中にどんな仏像が埋まっているんだろう」というのを想像し切ったら、あとは彫るだけなんで。
奥田:経営者はそこをみんなに、ちゃんと想像させると。
佐藤:そうですね。
奥田:「幹の中にこれがあるんだ」「後でみんなで彫っていきましょう」と。
佐藤:だから感覚的には、今の状態ってある意味想像どおりなんです。細かいところは別にして、仏像が入っている状態というのは大体想像どおりなんですよ。
でも起業家の描く将来の想像って、言語化したからといって、周りの人たちに共感を得られるかというと、少し違っているというのは、経験を通じて学習したことです。25、26歳のときは「何でこれがわからないんだろう?」という感覚を味わうことが多かった。
「将来こうなるじゃないですか。だから、今こうしたほうがいいと思うんです」という仮説と今について話しても、将来の状態「仏像埋まっているじゃないですか」という状態に対して、なかなか共感されなかったんです。「はて?」と思って「何で仏像が埋まっていることがわからないんだろう」と。(周りが)わからないことがわからない。
奥田:インターネットの業界でもそれは感じました?
佐藤:感じました。当時そこはジレンマというか……。それは社内も社外も含めて、たくさんの仲間をつくって、いろんな人を巻き込んで大きな事業をしていこうと思ったときに「描いたビジョンというのは、全く同じレベルでの共感は生みにくいんだな」と。
「自分が描いているビジョンというのは、そんなに簡単に人に共感されるものではないんだ」と。だからそこに努力をしなきゃいけない。
奥田:すごくわかります。幹の中に見せるのだから、言葉で言っても、みんなが見えるものが何か違ったり。
佐藤:学びとしては2つあって、1つはそれでも誠心誠意伝え続ける。自分の言葉が足りなくて伝わらないこともたくさんあるので、とにかく言葉を大切にして語り尽くして、本当に仲間になってもらいたいとか、一緒にビジネスをしたいとか。ビジョンに向かって共感を生んでいくには、誠心誠意コミュニケーションを尽くすという努力。
もう1つは、わからないものはわからない。だから、結果でわかるようにしていく。つまり実際に彫っていって、片手ぐらい見えてくるとだんだん「あれ?これ中に何か入っているんじゃない?」というふうにわかってくるわけです。
例えば、インターネットの広告にしても、自分が始めたときってまだ500億円ぐらいの市場規模だった。今、数字でいうと1兆円ぐらいになっていて、まだまだアップサイドがある。この1兆円の状態を想像して、500億円のときに1兆円になるんですよと言っていることに近いんです。
でもそれは、自分たちで実績を上げて、経営のいろんな学びの中で、会社をよりよく成長させていくと、だんだん「あそこの仏像って本当に埋まっているっぽいね」というふうに共感していただける方がふえていくんです。
奥田:経営者というのは、中に埋まっているものを言語化して見せられる、そして見えてきたものをさらに見える形にして、どんどん人を巻き込んでいく。そういうイメージということですね。
佐藤:そうですね。今、自分はちょうど2回目のスクラッチの事業立ち上げをしていて、今会社自体はたくさんの事業をしていますけど、自分がスクラッチで完全にビジョンを描いてつくっていく事業は今回が2回目です。
今回も同じような既視感があって、今言っていることは、まだ周りからすると「はて?」という状態で、そのクエスチョンがたくさん出る時期だと思っていて。でも以前の経験で学んだので、そこに対する焦りというのは全くない。
経験すると成熟してくるというか、「どうすればそのビジョンが実現するのか」ということを人にわかっていただけるかというので、(仮に)わかってもらえなくてもあまり孤独に感じない。それは当然であって、自分たちが成果を上げていく中で共感をいただければそれでいい。
奥田:平尾さんは経営者として、周りへの伝え方は何かありますか。
平尾:本当に勉強になるお話ですね。
仏像のお話とか非常にわかりやすかったのですけど、私はそういう経営をしてこなかったということにちょっと自己反省を感じていました。
「じげん」という会社のブランドも含めてやっていることですが、自分は「他(の会社)とどう違うのか」みたいなところにエッジを立てていく経営をよく考えていて。未だにそうなんですけど、昔からみんなと同じとかはすごい嫌いでした。
奥田:私もそうです。
平尾:今日のお話の中で2ついただいたなと思っていて、言語化するということ自体は我々もすごい頑張って、「次元を超えるってどういうことですか?」みたいなことを(質問で)よくいただくのですが。
佐藤:すごくいいキャッチコピーですね。
平尾:ありがとうございます。
佐藤:友情、愛情、平尾丈も。
奥田:残りますものね。
佐藤:ちょっとうらやましい。
平尾:言語化すること自体はやっていますが、上場を経てステークホルダーの幅がますます広がり、そこの共感軸を持つことについて、難しさを感じることもあります。
佐藤社長からもありましたけど、共感軸って未上場でやっているときって、株主の方というと、オーナーから自分も始まっていきましたので、どちらかというと自分主体で考えていたと思います。
「自分がこう思うからいいじゃないか」とか「じげんというのはこういう会社なんだからいいだろう」「こんな会社があったっていいだろう」というスタンスです。
それがいろんな方々に話していくと、「いろんなタイプの経営者を見ていらっしゃる方にはこう思われるんだ」とか、ご理解いただけない場合も出てきているのかなと思っています。「じげん」ってそのコンテクストがよくわからないんで。
例えば、「平尾さんパワーあるし会社もおもしろいし、いいことやっているし、伸びると思うのだけど、何で伸びるんだっけ」と言われることがあります。そういう幹の部分の共有をもっとやっていかないといけないと感じます。
会社の数っていっぱいある中で、ブランディングはエッジが立っているけど、エッジが崖の上だったみたいな話もあるわけです。家建て過ぎちゃって落ちてますみたいな。そこがやっぱり孤独というか、自分はむしろ孤独が格好いいという感覚は持っていたのかなと思っています。
「経営者は孤独である」みたいなテーマって、今日ぜひお聞きしたかったのですけど。
やっぱり相談相手というと、先輩の経営者もしくは同僚になりますよね。経営者って職業の方は中小企業の数を考えると300万人いることになるんですけど、同じ業界の方となると一気に少なくなってくるんです。事業が成長していけばいくほど少なくなります。
私もいろんな社長さんにお会いしているのですけど、「社長って幸せなんですか?」みたいな究極的なテーマがあったときに、そんなに幸せそうな社長にあまり出会ったことがなくて。
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