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Eコマースの今(全2記事)

キュレーションメディアや巨大SNSの参入によるEコマースの今後とは?

IVS 2015 Springの本セッションを前に行われた特別インタビューに、GMOペパボ・佐藤健太郎氏、BASE・鶴岡裕太氏が登壇。「Eコマースの今」というテーマのもと、ANRI General Partner・佐俣アンリ氏をモデレーターに、急激に数を増やしつつある「ECサイト」運営者の今後の課題や、キュレーションメディアやInstagram上での購買など、世界中で生まれつつある消費行動の変化について語りました。

ECサイトの購入者へのアプローチ

鶴岡裕太氏(以下、鶴岡):ECの流れでいうと、BASEはジャンルに限らないじゃないですか。そう考えると、何もしなくても伸びる感はあると思います。店舗の数に関していうと。あとは「購入者とどう出会ってもらうか」というのが、次のテーマだと思ってて。minneとかもそうだと思うんですけど、店舗と購入者をいかにマッチングしていくかというトレンドに移ったというのはありますよね。

メルカリしかりFrilしかり、BASEもStores.jpもカラーミーもしかり、いわゆる出品者側のハードルは劇的に落ちてきている。あとはそういう商品をいかに見つけてもらうかというのが、ECの次のビッグトレンドかなと。

佐俣アンリ氏(以下、佐俣)さっき話してくれた「バーティカル」というのはすごくわかりやすいじゃないですか。「フリマ」とか「ハンドメイド」というのはわかりやすい。BASEの場合、どういうアプローチでやっていくといいかなと考えてるんですか?

鶴岡:現状のアプリのチャレンジは……一応検索を付けてて、検索なりウチのキュレーションなりでガーッと見るじゃないですか。例えばminneみたいなハンドメイド商品を選んだときに、その商品をキーにして関連するショップが無限に出てくるっていう設計にしていて。

一発目にTシャツをタップすると、それ以降はTシャツを売ってるショップがガーッと出てくるみたいな感じで。なんとなく、原宿とかをブラブラお買い物するみたいな……。

佐藤健太郎氏(以下、佐藤):ウィンドウショッピング?

鶴岡:そうですね。そういう世界観で作っていて、1回原宿に入ると原宿・裏原宿の通りがガーッと出てくるし、下北(下北沢)みたいな商品を選ぶと下北みたいなショップが出てくるし、ちっちゃいキュレーションでバーティカルのラインをバーッと作ってるっていう。

佐俣:BASEの中でも、サーチではないそういう世界観を作るということですね。

鶴岡:そうですね。基本的には検索じゃなくて、ずっとダラダラ見続けることができるというのは意識したりしてますね。

佐藤:細かい話ですけど、BASEのそれぞれの店舗って「このジャンルのお店です」みたいなカテゴリ分けはされてるんですか?

鶴岡:してないです。

佐藤:その店舗で売られている商品の特性とかジャンルは都度、商品情報を読んで判断、という感じですかね。

鶴岡:読んでですね。全部のショップの全商品を見てるので。

佐俣:手でタグを付けていく感じですか?

鶴岡:そうですね。大カテゴリだけ分けて。変な商品が売られていないかチェックしないといけないので、そのとき一緒に。なかなか大変なんですけど。

minneは作家と購入者とのコミュニケーションが楽しめる

佐俣:「脅威だな」と思ってるものとかあります?

佐藤:minneでいうとEtsyが一番怖いなと。日本に来たときに何されるのかなというのがありますね。

佐俣:メルカリが怖いとか、ヤフオクがこうしてきたら怖いとかってあるんですか?

佐藤:結構コミュニティの要素が重要だと思っていて。メルカリの場合って価格交渉とか短文のコミュニケーションでパパッと終われるじゃないですか。でもminneの場合は「この作品のこの部分を変えて、私の好みにアレンジしてくれませんか」みたいなこともコミュニケーションしてたりするんですよね。

佐俣:なるほど。ハンドメイドだから。

佐藤:購入までの流れでもそういうことは起こってるし、販売したあとも作家さんのほうからお手紙を送られることがあるんです。買う側もそういったことが好きで共感してるし、作家さんに対しての憧れとかもあるから、手紙にお返事したりもしている。コミュニティの要素が重要なんです。

フリマでのコミュニティとハンドメイドのコミュニティって結構別物かなと思ってるので、逆に作家さんがそこ(フリマ)には寄らないのかなというのはあります。なので、そんなに脅威とかコンペティターになるかというと、ないかなと思います。

佐俣:コミュニティサイトっぽいんですね。

佐藤:たぶんコミュニケーションを楽しんでる作家さん、購入者が多いと思うんですね。CtoCにしてはすごくトラブルが少ないので。

佐俣:個人が作ったものだと起こりそうなイメージがありますけどね。

佐藤:それが、あまりないんですよね。

一番の脅威はキュレーションメディア

佐俣:鶴岡さんは「これはやばいな」っていうのは。

鶴岡:うーん。僕はコミュニケーションを取るECは苦手なんで……。

佐俣:ザクッと言いましたね(笑)。

鶴岡:お買いものする立場としてですよ?(笑)メルカリとかの10円50円を値切る文化って、主婦の方は絶対好きだと思うんですよ。僕の場合はAmazon派っていうか、サクッと買いたいほうなんで、そういうECのほうが好きなんですけど。今後のECは先ほどアンリさんがおっしゃった「バーティカル」と、「このアプリでしか買えない」というのがすごく大きなテーマだと思ってて。

minneなんてまさしく、minneでしか買えない(ものを売っている)。やっぱり、Amazonとか楽天で売ってる商品がminneとかBASEで売れるわけないんで。そういう意味では、そんなコンテンツをどれだけいっぱい持てるかだと思います。

一番僕の脅威に近いのはキュレーションメディア。それは比較的近いジャンルかなと思っていて、それこそMERYとかああいう系は露骨にマスに入っている。それがECに成り代わる時代って近いと思うんです。

さっき言ったみたいにダラダラ見るとか、ジャンルごとに切り分けるって意味ではああいう感じがアプローチとして絶対必要だと思ってるので。ウチとしてはあっち側が近いジャンルになるかなと。

佐俣:購入体験に文脈がくっついてくるって話だと、キュレーションメディアは強いんですよね。文脈を作って買ってもらうという。「調べてすぐ買う」じゃなくて「流れの中で買っていく」ということになると。僕もキュレーションメディアをたくさん投資しているので、明確にその意思はイメージしますよね。

鶴岡:そうですね。あとはコンテンツとの関連性、要するに自分たちでコンテンツを持ってるか否かというのと、現状だと他のECに誘導するっていう。他のECに誘導するっていうのは、僕はまだスマホコマースにはあんまり向いてないと思っていて。飛ばされるごとにアカウントを作って物を買うっていうのはイケてないし、電車の中でやりにくい行動じゃないですか。

極論、MERYが表にガンッと立って、僕らはコンテンツの供給者として割り切るっていう未来も当然ありえると思うんですけど、そのへんがどういう形になるのがマーチャントさんにとって一番幸せかというのは、プラットフォーマーとしては絶対見ないといけない。

キュレーションメディアみたいなのが今後どういう入り方をするかというのは、僕も大好きなんで興味を持って見たりしています。

Instagram上のEコマースが流行中

佐俣:購入体験がどうなっていくのかというのは、スマホになって世界中で大実験をしてますね。FabとかFANCYとか、壮絶に散ってる人たちもいる。ただ、今はPinterestが熱いんで。

鶴岡:buyable button(画像を見て直接購入できるシステム)。

佐俣:そう。buyできたりとか、いろんな国でInstagram上のECが流行ったりしています。

鶴岡:東南アジアとか。

佐俣:僕はトルコで投資してるんですけど、トルコだとInstagramの中でコマースをずっとくるくる回してたりするんですよね。

鶴岡:コメント欄とかでやり取りしてますもんね。

佐俣:そうそう。明らかに世界中で新しい流れが出てきていて、ある日僕らの競合にFacebookが現れたとか、Twitterが出てきたりとかする。乱世というか、突然怪物が同じ市場に現れるという。草野球にメジャーリーガーが来るみたいな。

鶴岡:実際、現状でTwitterの設定ボタンからクレジットカードを登録できますからね。あれはめちゃくちゃすごいですね。

佐俣:それどころか、AppleやGoogleのようなそのさらにインフラのレイヤーの人たちが「なんなら我々もやるけど?」みたいな気配を最近出すじゃないですか(笑)。

鶴岡:ニュースとかではそんな感じで聞きますもんね。そういう意味では消費者の消費行動はがっつり変わってくる。どこがキングになるかという話ですね。

クリエイティブなことをする人をインターネットで増やしたい

佐俣:でも健太郎さんの話を伺ってると、逆にリアルに近づいているというか。minneって要は、もともとそういうハンドメイドが好きだった人たち、コミュニティの集まり、バザーとかフリーマーケットに近づいているわけじゃないですか。値切るのが好きな人たちもいるし、毎週やってて「また来たね」ってコミュニケーションを好む人たちもいる。

なんか、新しくなったというよりはリアルに近づいていって、そういうものがネットで再現できるようになったのかなっていう。

佐藤:そうですね。インターネット化したというのはあるでしょうね、そういった今までの活動といったものが。コマースと関係ないですけど、ペパボが目指しているのは「クリエイティブなことをする人たちをインターネットで増やしたい」っていうところで。

一番最初、十数年前はレンタルサーバーを使ってホームページを作ること自体がカッコイイ、あこがれみたいなのがあって、それで個人が使いやすいサーバーを増やしていって。そのあとはWebのコマースサイトを作ることがクリエイティブだと思って、カラーミーショップを始めたり。

そこが一巡しちゃって、ネットで何かを作ることっていうよりは、リアルなものをインターネットで出して、誰かに見てもらったり知ってもらったり売買してもらうっていうのが、今の流れかなと思っていて。なので、今やってるのがハンドメイドなんですけど。

ハンドメイドの中でもminneが展開しているのは今はアクセサリーとかファッションなんですけど、将来的には、例えばジャムを作ってるおばちゃんの「別に売るつもりじゃないんだけど、私の作るジャムはおいしいからみんなにおすそわけしてるのよ」っていうのがプラットフォーム上に乗って、それを誰かが買ってくれるっていうところまで拡大できたらなと。

おばちゃんがジャムを作るのって、昔からあることだけど結構クリエイティブな活動だなと思っていて、そういうこともネットでどんどんできるんじゃないかなと思うんですけどね。

佐俣:先っぽに行くと田舎の街になっていくような感じですかね。

佐藤:無人販売もそうですよね。100円とかで野菜を売ってるけど、たぶんそんなに生活の足しになるようなものではない。けれどそれってクリエイティブだなって思ったりするんですよね。「自分だけのお店を持てる」みたいな感覚が。

佐俣:あれって要は地域のつながりに近いですもんね。なるほど。おもしろいですね。そろそろまとめの時間が近づいてきたんですけど、今後のコマースがどうなっていくかみたいなところをここで話してもらうとキリがなくて。当たってるか当たってないかがだんだんわかってきますからね(笑)。

佐藤・鶴岡:(笑)。

消費者の購買行動を変えるEコマースの今後

佐俣:僕、「来年はこうなる」って言ったのが4ヵ月後に出たことがあって。結構恥ずかしかったんですけど(笑)。最後に「日本のEコマースが今後こうなっていって、自分たちがこうする」っていうのを、カメラ目線で1分くらいずついただければと思います。

佐藤:コマースの今後ですか。やはり、さっき言ったようにバーティカルなアプリが主流になってきて、今までPCで起こっていた価格比較だとかスペック比較みたいなものはたぶんなくなっていくなと思います。こんなんでいいですか?

佐俣:ありがとうございます。鶴岡さんお願いします。

鶴岡:ECに関していうと、今までの世の中では考えられないくらいの商品がいっぱい出てくると思うし、質もそれなりに上がってくると思うので、消費者の方にとって良い時代が来るっていうのは間違いないと思います。

あとは、店舗オーナーさんにとって「どうやって出会ってもらうか」ということを、僕らプラットフォーマーがこれから試行錯誤しながらチャレンジするという感じなんでしょうけど……バーティカルみたいなのは何年も言われてますけど、さまざまな形に何かしら変化しながら消費者さんに浸透していくと。そういう時流を汲んでいくかなと思ってます。

佐俣:ありがとうございます。本当におもしろいタイミングでお話を伺えたなと思ってます。日本でもminneさん・BASEさんとか、他にもメルカリ、チケットキャンプみたいな「新しいコマースの形」を定義して一気に伸びていく会社が増えてきてるので、これがあと1年でどうなるかというのは、毎回IVSに来るごとにインタビューして答え合わせをすると楽しいのかな、ということで(笑)。

では「Eコマースの今」というテーマで、GMOペパボの佐藤健太郎さんとBASEの鶴岡さんにお話を伺いました。どうもありがとうございました!

佐藤・鶴岡:ありがとうございました。

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