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Let's start up!(全3記事)

「1000万円集められないなら、起業はやめるべき」 nanapi古川氏、WiL伊佐山氏らが語る、スタートアップのリアル

日米ベンチャー業界に精通する3人の起業家とベンチャーキャピタリストが語る、スタートアップ論。シリコンバレーでの起業秘話、パートナーの選び方など、スタートアップ時の生々しい実体験を元にそのポイントを解説します(学生向けスタートアップイベント・IVS 2013 Winter Workshopより)。

3人のプロが認める有望ベンチャー企業は?

小野:後15分くらいですけど、たくさん質問したい人がいると思うんですが、これ聞いてみたいという方いますか?

質問者:今まで色んなベンチャーを見てこられたと思うのですが、これは良いなと思われたベンチャー企業と、その理由をお聞かせください。

伊佐山:ベンチャーが良いという定義は、個人的に良いという基準でいいでしょうか。

質問者:良いと思っている社名を教えてください。

小野:それは、投資している人だから、危険かもしれない。なぜそれを聞きたいのかな?

質問者:成功している御三方が良いと思われるようなベンチャーを知りたいと思ったので。

小野:成長中かもしれないですね。興味があったんですね。では、けんすうさんから。答えやすい所でどこかありますか。

古川:僕はイラスト共有SNSのpixiv(ピクシブ)さんが良いなと。アレの何が良いかというと、都市とベンチャーってすごい密接だと考えていて、都市の文脈があって企業が生まれると思ってます。柴田さんがシリコンバレーに行くというのはすごい合理的だと思っていて、シリコンバレーの文脈だから出来ることってあると思っていて。

pixivって東京という町の特殊性から生まれたサービスなので、これは世界にも通用しつつあります。東京って他の都市と違う所がいくつかありまして、オタク文化が強かったり、そういう目的よりも行為そのものを楽しむということがあるので、そこから生まれたベンチャーなので良いなと思っています。

小野:柴田さんは沢山のアプリの会社を見ていると思うのですが、どの会社が良いと思うか、その理由も含めてお願いします。

柴田:沢山アプリを見ているんですけど、最近これはすごいなと思ったのは、さっき伊佐山さんが仰ってたような、Lockitronという鍵の会社があるんですよ。鍵をアプリから管理出来るようにするという会社です。鍵って持ちたくないじゃないですか。ハードウェアが送られてきて鍵の所に自分のドアの所に置き換えて、それがWi-Fiに繋がるんですけど、そうするとiPhoneやAndroidのアプリから鍵を開け閉め出来るんです。

似たようなのに、エアコンの温度調節をiPhoneから出来るようにするという派生型があるんですけど。そういうのってすごいなと思っていて。鍵を持ちたくない、出来ればなくしたい、もうiPhoneかAndroidの携帯だけを持っていれば毎日生きられると良いかなと思います。

古川:22世紀に鉄で出来たアレだけって、超ダサいですよね! (会場笑)

柴田:しかもハックし放題でしょう! どうみても。どれだけ頑張っても。

伊佐山:簡単に開けられますよね。

新しい驚きをくれる会社は素晴らしい

伊佐山:僕も今考えていたんですけど、今不便に思っているものを解決してくれるという点でいうと鍵もそうですけど、お金もそうですよね。クレジットカードとか無くすと萎えるじゃないですか。まずパニックになって、やばい、使われるんじゃないかとなって。あの心配を忘れたいなと思うと、もうカード持ちたくないし現金も持ちたくない。

それをSquare(スクエア:スマートフォンに小さなリーダーを付けるだけでカード決済を可能にするサービス)とかの会社に持ち込むとか、それこそ今はスクエアどころか携帯で全てが出来るような世界になっているので、そういうベンチャーはすごく僕からすると楽ですね。携帯電話一本で、鍵も何も持たなくて良い。車の鍵も最近は手すらかざせば出来たりするんで。鍵がなくなる、ペーパーレスで紙幣がなくなる、お財布を持たなくて良いといったことが楽かな。要するに、貴重品だけ持っていてくださいという必ずクロークでのやり取りがあるじゃないですか、ああいう時に気にすること自体嫌だなと思っていて。

今、会社の具体名でというとLINEのスタンプ。あれってすごい面白いなと思って。アメリカにいるとLINEって使わないんですよ、アメリカ人はまだLINEを使っていないから。絵文字とかはアメリカでも使われているんですけど。スタンプってアートの要素もあるじゃないですか。でかいし、送られた時のインパクトが結構すごくて、今まではスマイリーマークやハートなんかはあったけど、それを進化させると日本が強いといわれているアニメとか絵の強さがあるので。

外人の漫画ってダサいものが多くて、すごい絵もあるんですけど。それで初めて新しいコミュニケーションとして受け入れられたら面白いかなと思って。LINEはアジアとかは攻略していますけど、ヨーロッパも使われていますけど、アメリカはまだ残念ながらfacebookとかベタなSMSとかが強すぎてまだLINEがそこまで爆発していないんですけど、あれがアメリカ人でもいけるんじゃないかなと思っています。

小野:人それぞれあると思っていて。ないものを作ってくれる会社だとか新しい驚きをくれる会社という視点でそれぞれなのかなと、まとめさせていただきましたけど大丈夫でしょうか。

資金は身の回りから集めろ

小野:では次の方。

質問者:僕は京都大学にいながら起業をしているんですけど、仲間とアイデアと技術はそろっているんですけど、資金というかお金で今給料払えていないので、疲弊していっているんです。お話聞いたら、資金的なことは困られていないなと思ったんですけど。例えば、エンジェル投資家とかVCとかは怖いんです。あの人たちは怖いんです。お金を入れて色々口出しされるとかをよく聞くので、でもお金ないから何とかしたいと思っているんです。怖くてどこに行って良いかわからない。色々な人が色々言うので……。

小野:資金集めをしたいけど、どこに行って良いかわからないということですね。僕と伊佐山さんは入れる側の立場、怖い人なので、入れられる側、入れられた側の人に聞いてみましょう。

古川:今日もこの後講演される小澤さんという人、よくわかんないんですが、お金くれたんです。何百万か。上手くいったら株とかの話をしよう、上手くいかなかったらあげると言われて貰いました(笑)。

小野:かなり特殊な例ですけどね。

古川:投資だと思っている人はリターンを求めるんですけど、小澤さんというエンジェルの人が言うには「これは浪費だ」と。ポルシェ買うようなもんだからいいよという感じで。すごいなと思いました。

柴田:僕も小澤さんから投資という形で貰っています。その時言われた言葉があるんですが、彼は楽天に自分の企業を売却していて、かなりお金を持っているんですね。その中で俺は車を買っても良いし、高い服を買っても良いんだけど、お前に投資したら面白そうだから投資すると言われて。金額これだけやるから条件は自分で考えて後で契約書頂戴という形でした。条件言わないんだ、この人! みたいな(笑)。

古川:条件は任せると。言ったそれで良いという。

柴田:私は楽天で一緒だったので、全く知らない人ではなかったのですけど。他にうちの会社はまだVCとか大きい調達はまだ全然していないんですけど、最初に何千万か個人のエンジェルの人とシードファンド(ベンチャーキャピタル含む起業家向けの投資元)みたいな所でシリコンバレー半分、日本半分くらいで取っています。

一応僕がお金を投資してもらう相手を選ぶ時の条件がありまして、2年以上よく知っているか、半年以上一緒に仕事をしたことがある、かつ、この人5億円くらい資産持っているかなという人から500万円くらい貰おうと。1%なので最悪なくなってもごめんなさい! という感じです。2年以上よく知っているか、半年以上一緒に働いたことがあるというのは、僕の性格を良いとこも悪いとこもよく知っている人から貰わないと逆に怖いかなと。

たまたま僕は楽天という会社にいたんで、お金持ちの人がいっぱいいて、みんな数百万とかわりと簡単にくれるんですね。「お金出すよ。で、何するの?」みたいな感じで。「ちゃんと聞いてください。一応事業計画書もあります」みたいな感じです。

誰もお金を出してくれないなら起業するタイミングじゃない

小野:ちょっと恵まれたケースかもしれないですね。では伊佐山さん、どう探すかなど視点を含めて教えてください。

伊佐山:探し方ということでは、アメリカのエンジェルってみんな小澤さんみたいな感じです。僕も個人でもやるんですけど話を聞いて、立ち話で500万あげるよみたいな、後で当初の計画と変わってしまったんで「返してもいいんだけどどうする?」って言っても、「ああもう良いよ、そのまま頑張って」というケースが多いです。さっきの話でそういうノリの人が何百といる所がシリコンバレーで、アメリカだったんです。

日本でやる時にそういう人が居ない、どうすれば良いですかという時に、まずはベタですけど身内ですね。友達のお父さんお母さんとか。自分の家にお金がなかったら、友達の中にはお金持ちの人もいるわけだし。今すごい恵まれているのは、15年前だとITベンチャーやるというと数億円必要だったんです。

サーバーを買うだけで数千万するし、サービスを始めてトラフィックが増えるととてつもなく高い通信料払わされてもう赤字ダラダラ流さなくちゃいけないんで、人も雇おうとすると1億2億というお金が必要だったんですけど、今では全部AWS(amazonが提供するクラウドサービス)でやって、給料を多少やったとしても1,000万あったら結構出来ちゃうんです。10分の1で出来る時代なんです。

1,000万だったら一人二人裕福な家庭の友達がいれば、その人の親にたかって出してください、金貸してくださいと言って出来る。出来ないんだったら、友達関係や人脈の作り方から見直さないといけない時だと思うんですけど、もしかすると、起業するのはそういう意味での信用が出来た時にやらなきゃいけないのかもしれないです。

外に出てみて一円も人が出してくれないようなことしかやっていないとしたら、まだ起業は早いということかもしれないので、そこは自分をある意味過大評価せず、自分が今世間からどう思われているのか、信用力があるかといったことをチェックするのは一番良いことだと思います。

アメリカだとFriends and Familyというのですけど、友達か家族に言って、そういう人が他にも紹介してくれるんです。俺お金入れるから、もっとお金持ちを紹介するからあいつの所にも行って1億円くらい出させちゃえよみたいな、手伝ってくれるんです。アメリカだとわらしべ長者的に色んな人に会って行って、気付いたらエンジェルからだけでウン億円くらい集まっちゃったみたいなことがあります。

古川:今日色んなお金持ちが登壇するので、そこからお金を貰えば良いんじゃないですか(一同爆笑)

小野:非常に良い視点でした。解決になったでしょうか?

質問者:例えば、受託で小銭を稼ぐのと、そうやって資金を入れるのと迷っているのですけど。

古川:僕は受託をやっていたんですけど、受託って超簡単にお金をもらえるんでお勧めです。すごい楽だなと思ってやっていました(笑)。

柴田:個人的に、ゴールがどういう所にあるかにもよるんですけど、世の中を変えるような大きなことをやるんだったら、受託はやんないほうが良いんじゃないですか。時間の無駄だと思うんです。そんなことしている暇があるんだったら資金調達して宣伝したほうが良いと思います。ただ、それも良くわからない何やったら良いかわからない状態であれば、日銭稼ぎとしては良いんじゃないかなと思います。

小野:じゃあラスト一人、一番奥の方。

起業はひとりでするな

質問者:先ほどのお話で誰とスタートアップするかという話が非常に興味深いなと思いました。あとあと人を雇うということではなくて、まず始める段階で仲間を見つけるというのは、そもそもなぜ誰かと一緒にやるのかと疑問に感じたので、聞いてみたいです。

伊佐山:なぜ一人でやらないのかということですね。

古川:一人より二人のほうがパワーが倍だからです。

伊佐山:あとは、例えば僕がこの講演のあと、バスに轢かれたらもう会社終わりじゃないですか。アメリカのベンチャーキャピタルって真面目にその可能性を考えるんです。チームで来ないと、一人の天才が来ても金を出さないんです。なぜかというと、その人が明日病気になって死んじゃったらそれで終わりだから。だけどチームでいれば、三人くらいいれば一人病気になっても残りの二人で耐えられる。次の年にもう一人が怪我しても他の二人が支えられる。

結局ビジネスって、ベンチャーってチーム戦なんです。個人でどんなにすごい人がいても、それだけじゃ大きなビジネスにはならないんです。個人的には全部自分で独占して一番目立って、一番金持ちになってというのもロジカルにはあるかもしれないんですけど、残念ながら世の中はそんなに甘くはなくて、チームでやったほうが、けんすうさんが言ったように楽しいし、パワーも当然あるし、リアルな話でいうと、僕が明日病気になった時に誰が明日まわすのという時に頼れる人がいるのはすごく大きいと思います。

柴田:シリコンバレーだとやっちゃいけないことの一つで、必ず出るのが一人で起業するなというのがあるんです。僕も自分で最初やってみて、一人で9ヶ月くらいやっていて、とにかく辛いです。さっき皆さんおっしゃっていましたけど、スタートアップってカッコいいかもしれないんですけど、大体100個トライして99個くらい失敗するんです。毎日。今日100個タスクがあって99個くらい失敗するんです。

本当に大企業にいた時より人がやっていないことをやるので、信じられないくらいとにかく失敗するんです。毎日毎日失敗してそれでも新しいことをやり続けないといけないんです。その時に一人でいると結構精神的に辛いです。なので、一緒に笑える人がいるというのもあると思いますけど、辛い時に一人で居るより二人のほうがポシャる可能性は少ないので、そういう意味でシリコンバレーの先人たちは一人で始めるなと言っているんだと思います。

起業してもしなくても、スタートアップマインドは必要

小野:ありがとうございます。そろそろ最後になりますので、皆さんがスタートアップして良かった、スタートアップするべきじゃないかという、自分なりのメッセージをこめて会場の皆さんへ締めの言葉にしてもらえればと思います。では、柴田さんからお願いします。

柴田:皆さん新しいことをやって少しでも世の中の役に立ちたいと思うのであれば、ぜひ新しいことにチャレンジしていただければと思います。大企業に行くのは決して悪いことではないんですけど、それは出来上がっているオペレーションの中の一部になるということなので、そうではなくて自分なりのユニークな問題を見つけて、世界の誰よりも上手に解けると思ったら是非スタートアップやってください。

小野:ありがとうございます、皆さん拍手をお願いします。(場内拍手)では、けんすうさん。

古川:僕は起業家の人が好きなのですけど、なんで好きかというと、何か問題があった時に文句を言うんじゃなく、これはどうやったら解決出来るかをみんな考えるんです。そうでない起業家の人って会ったことがなくて。もし、文句を言う側になりたいのなら、普通に生きると良いと思うんです。それを解決してワクワクしたり充実感を感じたい人は起業すると良いと思います。

小野:ありがとうございます、皆さん拍手をお願いします。(場内拍手)では、最後、伊佐山さんピシッとお願いします。

伊佐山:今回はベンチャーというテーマなのですけど、ここにいる人が全員スタートアップして起業しなくても良いと思います。大企業に行っても公務員やっても農業やっても、誰もがスタートアップマインド、ベンチャースピリットを持たないと日本はやっていけないんです。

ではそのスタートアップマインドって何かというと、現状に甘んじないことです。初めは誰もががむしゃらに目の前の仕事をしなくちゃいけないんですけど、多分ここにいる人たちは6ヶ月で仕事を覚えて楽になっちゃうんです。楽になった時に、これじゃあまずい今までと違ったやり方でやってみよう、違うことをやってみようということを、どこまで続けることが出来るかがスタートアップマインドにつきると思っていて、それが自分の組織の中で出来なくなったら自分の友達とやれば良い話しだし。

自分の組織で出来るなら、さっき古川さんが言ったように、大企業にはふんだんな金とふんだんなリソースがあるので、それを使ってガンガンやったほうがもしかしたら世の中のためになるかも知れない。みんながみんな有名なスタートアップで派手にやる必要はないと僕は思っているんで、ここにいる皆さんも無理してスタートアップに飛び出るのではなくて、スタートアップマインドはデフォルトで持っていなきゃいけなくて、それは色んなやり方があるんだよということで、今後の進路を決めていっていただきたいと思います。

小野:素晴らしいメッセージありがとうございました。最後に冒頭と同じように御三方にスタンディングオベーションで締めたいと思います。ありがとうございました。

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