2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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代蔵巧氏(以下、代蔵):あとフィリピンだと褒めるとか、叱責しないみたいなのって重要だったんじゃないかと……。
尾崎良樹氏(以下、尾崎):ああ、そうですね。人前で怒っちゃいけないっていうのはフィリピン人に対応するときに絶対守らなきゃいけないルール。あとは褒めたら結構単純なので喜ぶっていうのがあるんですけど(笑)。それはたぶんどこの国も同じだと思うんですけど。
相川直視氏(以下、相川):僕ら結構困っていることがあって。海外オフィスというよりは海外のクライアントに近いのかもしれないですけど、英語をどこまで話せるのかとか、どこまで相手が自分の英語をわかっているのか。
もしかしたら僕らより英語わかってない可能性があるじゃないですか。そういう部分とかどういうふうに考えてるのかなと。
尾崎:英語わかんなかったら「Sorry?」って普通に聞かれるので、そのときは全く伝わらなかったんだなと思って。あっちの人は正直なので。たぶんわかってるフリしてることはない……と思うんですけどね。僕の経験上。
相川:だから、できる人しか雇ってないってことですか?
尾崎:社内ではそうですね。英語はリクワイアメントのひとつですね。英語のテストを自分たちでつくってやってます。特にインドネシアとかベトナムの人たちは日本の英語のレベルと同じようなものなので。最初にそれである程度できる人しか取らないっていうのはやってますね。
相川:僕らも現地で営業のサポートの人になるような人を雇いたいなと思ってるんですけど、それのアドバイスみたいなのとかって……。
尾崎:僕らは、インドネシアとかベトナムではそれこそカスタマーサポートとか、あと翻訳補助の人とか、そんなにたぶんレベルとしてはハイスペックではない人なんですけど。募集出すと結構来るので、100人とか200人とか見てその中から1人選ぶ、みたいなことは結構やってて。
そのときにフィルタリングでいいのは英語のテストと、あとはIQテストみたいな感じで簡単な中学校の算数みたいなのとか「この玉をこういう規則で回転させたら次の図形はどうなりますか?」みたいな。そういうのを自分たちでつくってそれでフィルタリングして、そのあと面接してっていう感じで結構見てますね。時間かけて取ると、質は結構良いっていう。
相川:基本的なテストが効くんですね。
尾崎:効きます、全然。Quipperさんのシステムつかったらいいんじゃないですか?(笑)。宿題みたいな感じで。
長永健介氏(以下、長永):そういうの得意なので(笑)。
カン・スニ氏(以下、カン):多国籍という観点だと、例えば祝日が違うとか、そういうのも結構あると思うんですね。インドネシアだったらラマダン期間中は、日が出ている間はご飯を食べないとか。あとクリスマスがある国だと年末年始働かないとか。そのへんの苦労話とかあります?
長永:例えばロンドンだとイースターで5月の頭に休みがあったりとか。そういうのは結構わりとなんとかなるというか。前もってスケジュールを知っておくことが重要で。
特にクリスマス、みんな一斉に休むみたいなときは、その時期に日本だと一応お正月はあるんですけど、逆に年末って駆け込み時というかラストスパートみたいな感じで頑張ろうとなり得るんですが、フィリピン人は当然絶対働かないので。
お正月みたいなものですから。そういうこともあって、この2週間稼働しないと見越して早めにやっておこうとか。早めにロンドンとか東京で巻き取るようにリソースの配慮をやっておこうとか。
そういうのはエンジニアのリソースを考える人とか、ビジネスデベロップメントの人とか、どの時期にエンジニアにやってもらえるのかということは、特にキャンペーン打ったりとか新機能をこの月の頭に出さなきゃいけないみたいなデッドラインがある場合は結構しっかり考えてやらないと、というのはあったりしますね。
祝日が挟まったりというのは「今日静かだな、チャットルーム」と思ったら「あ、休みだった」みたいな(笑)。それはたぶんお互い様で。向こうとしても日本の開発者が祝日で週の真ん中で休んでたりすると「ああ、なんだ。今日は返事もらえないのか」みたいなのはおそらくあるんだろうなと思います。
尾崎:一応1個細かいTipsとしては、グーグルカレンダーに各国の祝日カレンダーがあるのでそれを全部出しとく、みたいなのはやってます。
代蔵:僕まだ会社の人には報告というか相談してないんですけど、ほとんどがフィリピンにいるので「日本が祝日のときに休んでいいのかな?」とは悩むときがあって。でも、日本が祝日でもフィリピン人スタッフとかはみんな働いているので。結構連絡が来たりするので結局働くんです。
フィリピンが祝日だと何も動いていないので「どうしようかな?」と思って「まあでも働くか」と思って働いちゃうんですけど。あんまりおいしくないなと思って(笑)。
長永:うちの日本人の、フィリピンに長く出張でいるBizDevのスタッフはやはり同じ悩みを抱えていて。結局、日本の休日もフィリピンの休日も働いているそうです(笑)。
代蔵:やっぱそうなるんですね。
相川:うちもそうなっていて。本当に企業は動いていないので。営業のために行ってるのに。今後は絶対に祝日は向こうに合わせるほうが確実にいいのかなというのは学びとして(笑)。
カン:あとインドネシアだとお祈り部屋をつくらなきゃいけないとか。そういう配慮とかってありますか?
尾崎:うちは新しいオフィスに今週末引っ越すんですけど、そこではインドネシア人用に礼拝室、たぶんパーティションで区切るくらいだと思うんですけど、用意する予定になっています。いまも1日1回にまとめてやってるのかな? 家に1回帰って。5回やるところを、朝1回やってから来て昼の3回分とかを1回にまとめてやる、みたいな。そんな感じで彼女たちは乗り切ってますけど。
長永:Quipperだといま家庭の都合で日本に暮らしているインドネシアのスタッフがいて。彼女はインドネシアの仕事をしているんですけど。週1か2週に1回くらいのペースでオフィスに来ていて。その日は終日いるんですけど、やっぱり「ちょっとお祈りをするためにこのスペース使っていいか?」って普通に布を床に広げて。「そんなところでいいのか?」みたいな。
「席の後ろ、島の後ろだけどいいか?」「全然いいよ」みたいな。そう言うと、黙ってやってますね。「大丈夫なんだ、こんなところで」みたいな。逆にこっちが配慮できていない……たくましいな、というか。
カン:なるほど。ありがとうございます。では、拠点はそれぞれあるとはいえ海外に向けて日本から、もしくはマニラからロンドンから東京から、サービスを展開する苦労話。先ほど「インドネシア語だと長い」とかいろいろあったと思うんですが、ほかにも皆さんいろいろネタをお持ちだと思うんですよね。何か小話、裏話をお聞かせいただければと思うのですが、どうでしょう?
相川:僕のほうはやっぱりちゃんと返事をしないとか「いいよいいよ」「わかった、やるよ」って言ってもやらない、っていうのをどうしていくのかというのが一番難しいのかなと思ってますけどね。
長永:あるあるですね(笑)。フィリピンもインドネシアも、みんな非常に陽気な人たちなので(笑)。先生とか「お願いします」って言っても1回言っただけでは絶対やってくれないから、みたいなのは日本のマネージャー層はわかっていて。実際に営業というかカスタマーサポートで先生とフェイス・トゥ・フェイスだったり電話かけたりする人に「しつこく言え」っていう。
相川:あとは電話。うちの場合はほかのところと違ってお客さんだったりするので、電話を何回もかけてうざいって思われないのかな、とか。
日本だったら絶対うざいって思うけど。でもあいつらがやるって言ったことやらないからこれ普通のリマインドだしな、みたいな。そこの感覚が結構難しいなと思うのと。皆さんはデータ解析みたいなのとかはまだそんなにしていないんですか?
長永:データ解析は一応アプリケーションの中の行動ログというかイベントみたいなものを、いままでMixpanelに送っていたものを徐々にBigQueryに流すようにしていて。
BigQueryの中にデイリーやウィークリーでデータが入っている状態ですね。それを、クエリを書いてレポートをつくって、Googleスプレッドシートに毎日上げて。
相川:国ごとの違いって現れたりしますか?
長永:やっぱりそうですね。展開している国によって使われ方が結構違うとか。最近だとフィリピンがちょうど6月から新学期が始まったんですね。
そうすると利用傾向ではっきりと学校が終わった夜にピークが来るんですよ。学校で使っていないという。みんな家に帰ってか、ネットカフェとかでやっているらしくて。そういう傾向がすごくあったり。
逆にインドネシアだと日中にずっとコンスタントにあって。これは学校でずっと教室で使われているんだな、みたいな。そういうのが傾向として現れたりとか。まだそのレベルではありますね。
尾崎:私は全然別の視点で。海外のユーザーがどういう生活をしていて、どういう携帯の使い方をしているのかを把握するのが大事だなと思っていて。日本人は、フィリピンにいるものの結構安全なところで安全なものを食べて、みたいな感じで本当の現地の暮らしではないですよね。
本当に現地の暮らしを知ろうと思うと、通勤とかってバスで1時間2時間かけて。電車とかあまりないので結構渋滞もあるし、満員電車みたいな感じでぎゅうぎゅうだし。そんな中で1時間かけて来て、オフィスでやっとネット使えます、みたいな。家帰ったらまた不安定なネットで、とか。
そういう体験をするというのが大事だなって思っていて。従業員で、いわゆる典型的なフィリピン人の暮らしをしている人に協力してもらって『田舎に泊まろう!』じゃないですけど、家に行って実際に体験したほうがいいなという話はいましている。あと、実際にユーザーをその場に呼んでサービスを使ってもらうというのは結構やってますね。
相川:それは大事ですよね。うちとかも移動距離の問題がすごいあって。ウォンテッドリーは遊びに行くサービスなのに近くに遊びに行くって言ったってインドネシアだと2時間かかる、みたいな。東京とは全く違うところがあって。
そういう中でどういうふうに使ってもらうか。スカイプみたいなものを誘導してみる話とか。あとは位置関係をもうちょっとちゃんと把握するというところとかは結構大事だなと。
カン:途上国あるあるですと、フィリピン、インドネシアともにインフラがかなり貧弱じゃないですか。それって、業務する上でもお客さんがサービス使う上でもいろいろ大変だと思うんですけれども、何かそのあたりあります? そもそもデバイスがショボすぎて全然動かない、とか。
代蔵:それでいくと、Android開発がめちゃくちゃ面倒くさいというか大変でして。レゾリューションどれくらいの人がいるかなと思うと……ほとんどが480×800くらいの画面サイズで。
まあそんなに大きくはなくて。一番小さいのが240×320というすごい端末がいて。そういうのに対応しだすと大変というか。そういうのも多少意識してつくらないといけないんですけど。
ちょっとそれくらいになってくると、たぶんデザイン自体も変えたほうがいいかなと最近思ってるんですけど。まだそこまで手は回ってないんですけど。
あとスペックが著しく低いので、でっかくつくってるけど中身のスペック、メモリとかが少なかったりCPUがショボかったりして全然アプリが動かない。むしろFacebook自体も動かないみたいな端末があるのが、開発していて大変だなというところですね。
あと通信が常に貧弱なので、バックグラウンドで画像をダウンロードしたりとかあらかじめ取れるときにいっぱい取っておくみたいな実装にしているというのが、東南アジアでやっておく必要があるのかなというところですね。
長永:通信の貧弱さはわれわれも非常に苦労しているところで。アプリケーションはWebなんですけど、いわゆる普通のトラディショナルなボタンをクリックして次のページに進むというスタイルのものだと、日本とかロンドンの開発者がやる場合って1秒かからないくらい、パッとできるんですけど。
フィリピンの現地に行って現地の学校のパソコンとかでやると、もう本当平気で10秒20秒ワンクリックで待つみたいな感じがあって。
実際僕も出張で学校の見学に行かせてもらったことがあって。そうすると本当に冗談じゃなくBizDevの現地の人が「これじゃだめだから」と言ってるのが本当にだめだったという感じで(笑)。
なので、技術的にJavaScriptのシングルページアプリケーションにしてクリックしたときのインタラクションはその場でオフラインというか即座に出すようにして、低スペックなマシンのブラウザでも見かけ上のレスポンスを良くする代わりにサーバーとの通信等は非同期で行って。そういうふうにして速度と利便性を担保したりとか。そういった工夫をしていますね。
あとこれ、途上国ならではなのか……ちょっと違うかもしれないんですけど。ネットワークで非常に苦労した話が1個あって。
フィリピンの某通信キャリア、日本で言うとドコモとかKDDIみたいな、そういうのがあるんですが。そこの3G回線を使ってわれわれのサービスにアクセスしている人だけサイトが見れない、エラー画面が出てしまうというのが、ずっとCSとかエンドユーザーから報告があって。
ただ当然わからないですよね。わからないし、われわれだけじゃなくてフィリピンのオフィスで働いている開発者の環境でも再現しないですよ。本当に全く意味がわからないと言って。
あるときCTOがロンドンからマニラに出張へ行ったときに、実際に現地のBizDevの人とかが使っているモバイルルータを使ってやったら再現したんですね。
tracerouteとかネットワークの詳細をツールで見てみたら、そのキャリアのDNSサーバーが既に破棄されたサーバーのIPアドレスをずっとキャッチしていて、存在しないアドレスにそのドメインだといってしまうので……っていう事故があって。
相川:それ、どう解決するんですか?
長永:われわれは結局、www2みたいなドメインをつくりました。それがもともとherokuに直接いっていたので、herokuのSSLのエンドポイントをつくり変えたときに具体的にherokuが持っているElastic Load BalanceのIPが変わってしまったのがDNSキャッシュサーバに反映されないというのがトラブルだったんですね。
なので、われわれ自身がAWSに自分でドメインとNginxをひと揃いもって。herokuルーターの前にわれわれ自身のリバースプロキシサーバを中継で置いて、そこからHerokuにプロキシするっていうか。なので、そういう事故が起こったら、裏を変えれば大丈夫っていうようにして(笑)。ようやく最近www2みたいなやつを撤廃できました。
相川:うちはわりと全体を見たいなと思っているので、仕組みとしては通信の速度を測定するモジュールを入れるという方法でやって。
それによって、画像サーバーみたいなものを、事前に小さいサイトをつくっておくみたいなサーバーじゃなくて、そのリクエストのタイミングでNginxで1秒以内につくれるのでつくって、それでキャッシュするっていうものをつくって。
さらに、通信の速度によって返す画像の大きさを変えてあげるとか。あとはWebPっていうjpegとかpngじゃないやつだと、同じように見えて1/10くらいのサイズだったりするので。そこらへんはWebでやると「jpegでダウンロードしたい」って怒られたりするんですけど、モバイルだと結構大丈夫みたいな。WebPも海外だとそもそも端末が対応していないみたいな話もあるから、結構そこらへんは難しいなと。
カン:相川さん、ウォンテッドリーのインドネシア版のAndroidアプリがあったと思うんですけど、あれは結局いま……。
相川:いま出ていて。微増で。優秀なネットワーク環境がある人だけ使ってくれてるのかもしれないなと思っていて。
やっぱり日本と違うので、PCのところでデータとしても成果が出ているので。日本だと6割モバイルみたいな感じなんですよね。それが当たり前と思うか当たり前じゃないかわからないですけど。
同じものを提供しようとするとやっぱり難しいのかなと思っていて。そこまでのリソースを……別にアメリカとかだと起こらない問題だったりするわけで。そこをやるっていう判断はまだしないかなと思ってますね。
カン:そこは選択と集中という感じですか?
相川:選択と集中で。本当にスタックしてるところってどこなんだろうってことで、いいところを探すというのが立ち上げのところですごい大事で。だめなところを改善するみたいなことだとずっとだめなままなんですよね。
うまくいってるところで成功をつくって、そのいい方法を周りに広げてあげるっていうのがやっぱり立ち上げの部分で大事なのかなと思ってるので。失敗してるところは潔く切るっていうのが結構(笑)。本当にコアな部分だったらもうちょっと立ち向かってもいいかもしれないですけど。
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