2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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古川健介氏(以下、古川):今の3つの「ゲーム」「画像」「コミュニケーション」で特徴的だなと思ったのは、ユーザーさんがアクションするところを押さえようと思っていたのかな、と。
メディアって見るだけじゃないですか。『NAVERまとめ』でもおそらく99%が読むだけで、書く人は1%みたいな。こっちだとプラットフォームになれないみたいな、そういうのがあったのかなぁと今ちょっと思ったんですけど。
舛田淳氏(以下、舛田):まさにイメージとしてはそれがあって。メディアはいくらつなげていってもメディアにしかならない。
トラフィックは回せると思うんですが、そこに他のサービスを紐付けていくっていうのは、やっぱりユーザーがスティッキーではないので、そこが自分の居場所ではないですよね。中のコンテンツには依存すると思いますけど。
自分の居場所ではないので、やっぱりプラットフォームって、そのユーザーに対して一定の接触時間を多く持ってもらわなければならない。
例えば検索で言えば、1回あたりは短いけれども、何度も使うので、当然接触回数であるとか、最終的な接続時間って長くなるじゃないですか。だからGoogleはプラットフォームですし、Yahoo!もプラットフォームだと思うんですよね。
ただそうじゃなくて、単純にメディアだけだと、例えば新聞社のニュースサイトが「これはプラットフォームです」って言われたら、どうかなぁって。
ただニュースコンテンツのプラットフォームにはなるかもしれないですよね。しかしながら、複合的なものを重ねていくものとしては、少し設計がしづらいっていうのはあるかもしれないです。
古川:ユーザーの日常利用頻度みたいなのがやっぱり必須であって、そこはスティッキネスでないといけないから、ユーザーが行動するようなものでないと自分の居場所感がない、と。なのでそういうものを作ろうということでさっきの3つをやったっていうことですね。
うちの会社でもメディアをいくつかやっていますが、やっぱり接点があるだけでは、ユーザーのサービスを使っている感が低いんですよね。なので、プラットフォームになるには、毎日使って、アクションをしなければいけない、という話はすごくしっくりきます。
舛田:ノってくれば経済合理的なんです。メディアは自分たちで更新してなんとか回していかなければいけないですし、ユーザーも呼んでこなきゃいけないですけど、例えばメッセンジャーみたいなものって、ここ(コミュニティ内)でユーザーが勝手にコンテンツを供給してくれるわけじゃないですか。
ある種リアルグラフがメディアであって、この中に流れるコミュニケーション、スタンプもそうですけど「おはよう」っていう言葉がコンテンツになるわけじゃないですか。
古川:そうですね。
舛田:それができるっていうことは、計算上は無尽蔵になっていくので、そうするとコスト効率は下がっていきますよね。当然サーバーのものは上がっていきますけど、プラットフォームのストロングポイントということではそこがリーズナブルということに、結果的にはなっている。
古川:彼氏からの「おはよう」っていう言葉とニュースコンテンツって「おはよう」のほうがコンテンツ価値高かったりしますからね。それはわかりますね。
古川:逆に、何か時代の変化のタイミングでしか、先ほどの3つのようなものはユーザーシェアが取れないかなと思ったんですけれども、もし今やるとしたら、何か可能性ってあると思いますか? このタイミングで。
舛田:現状でもあるとは思うんですよ、コミュニケーションという領域の中でもあるんじゃないかなぁと思っています。
古川:今からLINEをひっくり返すみたいなのって、すごい大変じゃないですか?
舛田:大変だとは思いますが変化は必ずある。ただ、私が言うのもなんですが、未来永劫続くプラットフォームって理屈上はないじゃないですか。
あとは全ての人をカバーできるものもないですし、トレンドや時代によって旬もあるじゃないですか。魔法がかかってる・かかってないみたいなのがあると思うんですけど。
あと、よく言うんですけど、不可逆な流れがあって、そこの中で今はAというものがいいとされていれば、まぁBにはなるよねと。逆張りは当然存在するよねと。
例えばFacebookやTwitterを皆さんが使ってる中で、我々が「オープンWebではなくてクローズドWebだ」って言い出したのもこれは逆張りで。
LINEがここまで来たので、逆にその後ろにチャンスがあるっていうのはありますよね。なんでこんなことを言ってるのかというと、私もLINEの社内でそういうことをよく考えるからなんですね。
古川:「今LINEの裏を突くとしたら」っていうことですか?
舛田:そうです。頭のトレーニングという意味でもそうですし、あとは実際にLINEというものを倒せるサービスが自ら考えついたとしたらLINEという会社としても素晴らしいし。新しくLINEに入ってきたメンバーにはその野心すら持ってほしいと思っていて。
古川:次のサービスまで作る、と。
舛田:LINEは私たち最初のメンバーが作って成功させてますけども、新しく入ってくるメンバーは当然LINEを伸ばすっていうこともそうだし、もう1つのプラットフォームを作れるんだとしたらおもしろいなぁと思うんですよね。
古川:差し支えなければ、その辺のアイデアで出てきたものって何か教えてもらうことはできますか?
舛田:そうですね……、でもそうするとひっくり返されてしまう可能性があるので。
古川:ははは(笑)。では秘密ということで。
古川:先ほどのセッションでもあったんですけど、アプリが中心だった時代から、やっぱりまたブラウザとかに戻ってきてるんじゃないか? というお話があったんですけれども、その辺で注目してる流れとかってあったりしますか?
舛田:Facebookがそうですよね。Facebookが「Facebookの中にニュースを持ちましょう」とか「記事を持ちましょう」って言っているのはその流れだと思いますし。例えばゲームって言ってもブラウザベースのゲームをやろうとしていたり。
実はこれって、数年前に「HTML5で書いたらいいじゃないか」みたいなのあったじゃないですか?
古川:はい、ありましたね。
舛田:ネイティブアプリじゃなくて、って。ブラウザのほうがいいじゃないかって言って。なんでわざわざパッケージングされてるものをしなきゃいけないんだっていうのがあったじゃないですか。
その時はHTML5を使うことが難しかったし、クオリティも低かったし、表現すること自体がそもそも難しかった。なので、ネイティブアプリのほうがよかったんですよね。マーケットも2つしかなかったですし。ただ、今はアプリは山ほどあって、9割のアプリは死んでいて。
そういった流れの中で言えば、あとはスマートフォンというのをみんな持ち始めて、ホーム画面にはもう決まったアプリしか置いてなくて、っていうところでいくと、これは確率論でいけば、新しくアプリを出すよりも、今度は例えばブラウザのほうでまた何かを仕掛けるほうが、逆張りじゃないですけど、また何か可能性があるかもしれないですし。
例えば我々のLINEで言うと、LINEって今までApp to Appでプラットフォームを作ってたんですね。でも最近その傾向っていうのがハイブリッドになっていて。
例えば「LINE TAXI」はLINEというブラウザなんですよ、アプリ内ブラウザなんです。「LINE バイト」もアプリ内ブラウザなんですよ。「LINE NEWS」も、アプリもあるんですけども、基本的にはブラウザなんです。
みたいに、プラットフォームとしても全てをアプリに飛ばすんじゃなくて、アプリでしかできない表現のものはアプリでやりますし、そうでないものはブラウザでやったほうが更新性も高くなりますし、軽くもなりますし。
古川:確かにLINEさんのLINE Appsからいくと、スケジュールのところとか、あれは全部ブラウザですもんね。その辺はアプリでしかできないこと以外はブラウザでやったほうが便利だよねっていうところからですか? 単純に。
舛田:全てに対してアプリでやるっていう時代ではなくなって来ているのかなぁと、徐々にですが。
古川:1年前とかだと、どんどんアプリのページに飛ばして、ダウンロードをいかにさせるかっていうことが重要でしたよね。
今話したブラウザ戦略は、LINEにたくさんユーザーがいるからできているのか、それとも1からやるベンチャーでも、ブラウザからやるほうがチャンスありそうか、で言うとどうですか?
舛田:数年前、1年前であれば「アプリでしょう」っていろんなところでも言われてましたし、私としてもそう考えていたんですが、ただ、アプリを皆さんに知っていただく手段が……。
プラットフォームを作るための最初の基礎設計として、ユーザーがいなきゃいけないじゃないですか、ツールとして入るにしても。でも、今でも残念ながら、すごくいいアプリを作っても、なかなかユーザーの皆さんに知ってもらえないじゃないですか。
メディアの方も一生懸命そういったものを取材して記事にしてくださるとは思うんですけど、やっぱりフワッと消えちゃうというか、泡のようにその情報も消えちゃうだろうし。
ある種の寡占マーケットなわけで、2つしかないわけじゃないですか。その中でやるためには、じゃあアプリじゃなくてブラウザという選択肢もあるのかなというところですかね。「出始めてる」に近い。
古川:おもしろいですね。アプリの上位にいくには、本当に先ほどおっしゃられたようなものとか、あとは本当にLINEさんのような……。
舛田:プラットフォームと組んでいく。
古川:おもしろいですね。プラットフォームの今後としては、LINEさんがやっている流れがありつつも、また新しいものが出てくるんじゃないかと予測されているような感じですか?
舛田:テクノロジーの進化もそうだし、ユーザーの習熟度みたいなものもそうですし、通信環境によってもそうでしょうし。一定っていうことはありえないと思ってるんですね。
よく全てのものに対しても「タイミングが大事です」っていうのは社内でも言っていますし、私自身でもすごくそこを気にしてるんですね。
古川:タイミングを?
舛田:このサービスをいつ出すのかとか、この事業はいつアクセルを踏むんだとかいうのは。いっぱいアイデアの種はあったとして、いいプロダクトはあったとしても、出すタイミングを間違えれば、それって効果としてはもう9割減の時もあるわけですよね。
さっきおっしゃっていた「今からプラットフォームを作るんだ」っていうことに関して言えば、今からプラットフォームを作るタイミングであるものを出さなきゃいけないわけです。
古川:そうですね。
舛田:そこは全く固定じゃないはず。なのでいつも皆さんがいろんなことをやられていたり、LINEの中のユーザーがどう動いてたりっていう流れを見ながら「いつこれ出そうかなぁ」「いつ発表しようかなぁ」っていうのは思ってます。
古川:なるほど。タイミングを見計らってるプロダクトとかもあるんですね?
舛田:そうですね。
古川:逆にスマートフォンから離れたプラットフォームみたいなものも今後ありそうだなぁっていうのがあるんですけど、その辺って考えてたりしますか?
舛田:例えばウェアラブルみたいなことになってきているでしょうし、センサーみたいな話になってくると思うんですね。その中で言うと、もう全く違うプラットフォーム、その中で完結するプラットフォームは間違いなくできますよ。
古川:そうですよね。
舛田:やっぱりウェアラブルも、Apple Watchもそうですけど、今はただのスマホの補完にしかなってないですよね? でも補完じゃないやり方とかもあるのかなと思っていて。
ウォッチだからこそのつながりを使って、ある種の身体性を使ったものはできるんじゃないかなぁと思っているので、そこはチャンスかなと思ってます。
古川:ドローンとかその辺はどうですか?
舛田:ドローンをプラットフォームにする……。物流みたいなところまでいけば、おもしろいことはできると思いますよね。
古川:車とか?
舛田:車とか、家電もそうかもしれないですね。
古川:LINEさんだと「冷蔵庫と話せます」みたいなこともやられてると思うんですけど、その辺で何か新しい流れって来る予感ってしますか?
舛田:たぶんドローンをどうこうするとかは出てくるかもしれないですよね。あとは当然カーナビ的なこと、車ということもそうでしょうし、あとは鍵とか。スマートキーやスマートロックみたいなものありますよね、ああいったものは当然つながっていくべきものかなと思いますけどね。
古川:今LINEさんがやりたいけどできていないことってあったりしますか?
舛田:やりたいことはすごくたくさんあって、ほとんどできてないんですよね。
古川:そうなんですね。
舛田:やりたがりなんで。そのやりたがりをどう抑えるかっていうところでいつも葛藤しているんですけど(笑)。
古川:タイミングを図るってすごい難しいなぁと思っているんですけど、どういう判断で「これは今出すべきだ」とか「これは今じゃない」みたいなのを決めてるんですか?
舛田:例えばインターネットの勝者の法則とは違うかもしれないんですけど、一番先に出すことが正しいとも思っていないというか。やっぱり新しい文化とか、常識や習慣みたいなものを作っていく時には、1社で立ち向かうよりは、みんなで何社かでワーワーって盛り上がってるほうがいいと思うんですよね。
古川:そうですね。確かにGoogleとかFacebookも後発ですもんね。
舛田:そうですよね。例えばメッセンジャーもそうでしたよね。LINEがやらせていただく前には当然WhatsAppさんがいらっしゃいましたし、Viberさんがいらっしゃいましたし、カカオトークさんもいらっしゃったんですよね。
古くからはSkypeさんもいらっしゃったわけですし。その中で我々が参入させていただいて、その後commさんとか、Yahoo!さんとカカオトークさんが組まれてワーッとやってきた。そのことによって、メッセンジャーっていうもの自体の認知がすごく上がったと思うんですよね。
今はまさに音楽ストリーミングだと思うんですが、今日も我々も出しているので。これもApple Musicさんですとか、AWAさんですとか、LINE MUSIC、おそらくその後Googleさんも出てくるでしょうし、その他のプレイヤーの皆さんも出てくるんだと思うんですよね。
今までダウンロード一辺倒だったのをストリーミングにするっていうのは習慣を変えることなので「こっちのほうが時代として合ってるんですよ、新しい興味関心が出てくるんですよ」みたいなことをやるには、タイミングとしてはたぶん合わさったほうがいいと思うんですよね。
古川:そういうタイミングを図るとしたら、やっぱり他の人たちの動きも見つつ、なんか盛り上がっているという……。
舛田:アンテナは立てつつ。競合視するということではなくて、どういう社会的な流れに、どういう水の流れになってるのかということは本当によく気にしているというか。見ようと気をつけていますね。
古川:ずっとアンテナを張って。なるほど、わかりました。ありがとうございます。というわけでお時間になりました。「プラットフォームの今後はどうなるのか?」をお話ししました。ありがとうございました。
舛田:ありがとうございました。
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