2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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小林雅氏(以下、小林):じゃあ、青い服の彼。みんな大丈夫ですか。こんな昼の眠い時に。もっとぶっちゃけたほうがいいですよ。
質問者:この前SFCを卒業して、5日ぐらいから働きはじめる○○と申します。
今死ぬことを意識して、ということをおっしゃっていたんですけど、最初にやっぱり、自分のやりたくないことをやった先に自分のやりたいことにたどり着いた場合が多いと共通しておっしゃったんですけど、やっぱり死ぬってことを意識した場合に、今が楽しくないと。
もちろん今までの経験じゃ、辛い時期を乗り越えた先には何かを達成できたりっていう達成感があると思うんですけど、それと同時に死ぬってことを意識すると、今に生きていることを楽しみながら生きていきたいっていう欲求もあって。
そのところについて、そのバランス感についてよく考えているんですけれども。
小林:いい質問ですね。それね、京セラの創業者の稲盛さんとかのインタビューを見ると必ず言ってるんですけど「今やってることを好きになる」っていうね。
あれね、いいと思うんですよね。なんか、つまんないと思うな。好きになろうと。好きになっていくと楽しくなってくんで。それが一番いいんじゃないかなと思います。
加藤:先生(琴坂氏)も趙さんもそうだったと思うんですけど、電通の仕事って超楽しかった?
琴坂・趙:(うなずく)
加藤:……ですよね。私も基本的に目の前の仕事がすごく楽しいタイプなので。矛盾しない気がしてて。どうですか?
琴坂将広氏(以下、琴坂):3日間やっててつまんなかったら何か間違ってると思うから、やめたほうがいい。
趙正美氏(以下、趙):超賛成ですね。変えたほうがいい。それは楽しくならないと思う。
質問者:3日間だけでも大丈夫……?
琴坂:それは自分で調べたほうがいい。
質問者:そうですね(笑)。もちろんそうですけど。
加藤史子氏(以下、加藤):でも、そうですね。25以下の場合は1年ぐらいやってもらったほうがいいですかね。25以上の場合は3日間でいいかなっていう……(笑)。
質問者:ちょうど今、稲盛さんの話があったんですけれど、ちょうど先日、本を読みまして、稲盛さんは最初全然研究が楽しくなかったけれども、それを本気でやってくことによって、周りから評価されはじめて、楽しくなったというプロセスで仕事を好きになってたんですけれども。
みなさんももともと最初に配属された日から仕事が楽しかったのか、それとも若干、最初はちょっとつまらなかったけど、本気で打ち込むうちに楽しくなったのかっていうのをお聞かせ願います。
趙:私は後者ですね、完全に。広告に全く興味がなくて。同期は広告にすごい興味があったから(自分は)超違和感があって浮いてたんですけど、いろんなことをやれって先輩に言われるじゃないですか。
とにかく黙々とやる以外に選択肢がないから、黙々とやった。でも確かに、評価されてからおもしろく感じるようになりましたね。
ほめられるんですよ。すんごい一生懸命、ある一定の期間、3ヵ月とか1年とかやってれば、これはお前の功績であるとか「お前が頑張ったのでこれに勝てたのである」とかと言われると、意外と悪い気はしなくて、そしたら次も頑張っちゃおうかな? みたいな感じで、そうすると、だんだんだんだん楽しくなっていく。
小林:それをマネジメントというんですよ(笑)。みんなだまされてるんですよ! わかってます?
趙:そうですね(笑)。
小林:そんなね、入った瞬間つまんなかったら、辞めるじゃないですか。教育に大量のコストをかけてそんなことをする企業はないんですよ。
だいたい、おもしろいことをさせるんですよ。はじめはね。はじめの3ヵ月くらい。楽しいんですよ。お前何やったら楽しいの? って聞いて、こういうことやりたいですって聞いて。
だいたいね、よほどの、就職で100人に採用する会社で、よほどの下のほうで採用されない限りは、自由なことができるんですよ。
そこで結果を出したら上ってって、そうじゃないとどんどん、辞めてもいいよみたいになっていくんですね。だから初めが肝心だという。
加藤:私が楽しくなってきたのは、全体像が見えた時ですね。やっぱり学生の時ってすごく万能感があって。ちょっとしたグループワークだとかプロジェクトでも、自分と友達のその範囲で全部やるじゃないですか。
なんかちょっと学生でフリーペーパー出しちゃったとか、起業しちゃったとか、こんなサービスをやって企業のなんとかコンテストに入賞しちゃったとか。
「自分ってすごい!」っていう万能感を持って会社に入ると、すごい巨大な利益創出システムの一部を任される。
そこって、全体像のなんなのかもよくわからなくて、でもそのわりに負荷は高いし、いつも怒られるし。すごいつまんないし、辛いなっていう感じなんですけど。
1年ぐらいそれを必死にやってると、これってこの仕組みの中のここで、っていう全体像が見えてくる。
見えてきた瞬間に、じゃあここを変えようとか、このシステムは古くさいから別のシステムを作ろうとか、なってきて。
コントロール感というんですかね。展望を見渡せるかどうかで、楽しさというか、快適さが変わってきたかなと。
琴坂:想像力ですよね。僕が尊敬する人たちっていうのが、トイレ掃除をしていても、そのトイレが汚かったら人がどんな思いをするか、綺麗だったらどういうふうに感じるかっていうことがわかる人。
タクシー運転手でも自分が乗っていたらどういう運転してほしいかとか、想像してできるんです。
それが想像できる人で、自分がやってる仕事、つまり、価値を得て、何かの金銭的な見返りを得ている人で、やってる人の中で「つまらない」という人を見たことがない。
それを想像してできる人ですね。
加藤:石の教会の話ですね。
琴坂:石の教会。あー、そうですね。
加藤:石の教会の話って、石を切り出してる3人の男の人がいて。1人目に何をしているのか聞いたら「石を切り出してる。すごくしんどい」と話している。
2人目の人に「何してるの」と聞いたら、そしたらなんか、あそこに何か建物を作るらしい。その人も苦しそうで。
3人目の、同じ作業をしてる人に「何してるの」って聞いたら、この丘の上に人々の安息の場である教会をつくるので、自分の仕事が楽しいです、という有名な話なんですけど。
要するに最終的に自分がやっている仕事がどんな価値になるのかというのは、想像力だったりとか、全体像が見えてると、目の前のしんどいことも楽しくなるんじゃないかな。
琴坂:最近は実力主義なので、石を切る人でもすごいきれいに切れる人と、すごいでかい教会(を作る)。バチカンとか行って企業とかになるはずなんですよ。
タクシー運転手はすごいできる人は首相の運転手になるはずなんですよ。方向(が大事)。突き詰めていくとおもしろくなるんじゃないかなと思いますね。
小林:そんな感じですかね。大丈夫ですか。
質問者:あと、続けてもうひとつ質問がありまして。琴坂先生にもうひとつ質問があるんですけれども。琴坂先生は海外の経験が長いと思うんですけども。
琴坂:はい。
質問者:自分もワクワクしながらこの前、留学して帰ってきたんですけど。実は思い描いていたのとは全然違って、もちろん楽しいこともたくさんあったんですけども。
全然帰国子女でもなんでもないんで、もう日本では経験し得ないような大変なことがあって。
琴坂:ありますよね、いろいろ。
質問者:その時に、さっきと同じ話で、確かに成長実感はあったので、辛いことも頑張れるなというのはあったんですけども。
そのバランスというか、たとえば人生が80歳までしか生きられないとして、どこまで成長を求めて海外に行くのか、とか。確実に日本のほうが快適だったんですよ。でも成長は海外はするっていうので、成長と快適さのバランスというか。
琴坂:なるほど。
質問者:変な話なんですけども。そういったところはもう、先生は海外も長くいらっしゃると思うんですけど。
琴坂:7年ぐらいいましたね。
質問者:どのようにお考えだったのかな…と。
琴坂:海外は辛いと思わない人間なので、7年もいたというのがまず第一にあるんですけど…今のに対する直接的な答えとしては、無理はしないこと。
人生はマラソンなので。1年が良くても1年では何も起きないわけです。結果をこの世の中に出すとしたら、10年とか20年必要で。
社会を変えるとか、世界にインパクトを! と言ったら「人生」が必要になってくるわけですよ。
そうすると、人生を使っても自分が死なない程度でやっていかなきゃダメで、無理はしない。自分のペースでやってくのが一番だと思います。
小林:そろそろ時間がきてしまったんですけども、最後に1問。じゃあパンフレット開けてる…後ろの女子がいい? マスクしてる人? ああ、すいません。断念? ごめんね! 個別に聞いてください。……多数決で負けました。
質問者:ありがとうございます。SFCの総合の新4年生の○○と申します。今日はありがとうございます。私、やりたいことはけっこう見つかってきているんですけど。
小林:すばらしい。
質問者:たとえばですけど、看護師になりたいとか決めてしまった瞬間に、思考って停止するじゃないですか。
だからやりたいことって言葉にできないものだと思っていて、かつ更新されていくのものだと思っていて、なんかそのブラッシュアップの方法とかがみなさんこう……。
私は次4年生なので、卒論を書くことで自分のやりたいことを文章にしていきながら落とし込んでいきたいなと思っているんですけど、起業家の方だったら自分で会社だったりプロトタイプを作っていくとか、あると思うんですけど、やりたいことを常に更新していく方法とかがもしあれば教えていただきたいと思いました。
よろしくお願いします。
小林:(セッションの)結びの言葉と交えて何か……。でも更新ね、僕から言っちゃうと、なんかね、普段テレビを見ていても(自分は)関心を持つ(タイプ)。
好奇心がもともと高いので。「マッサン」とか見ていても「ウイスキー作りって深いなー!」って思うわけですよね。普通に。
「なるほど、お酒ってこういうふうに作るのかみたいな。時間がかかるなー、熟成だ!」と。
俺って(なんて)短期間な仕事をしてるんだろうとか思いながら、もっと長期的に考えなきゃいけないなとか考えたりするんですけども。
やっぱこういうイベントもそうなんですけども、常にこう、刺激を受ける体験をいかに作るかっていうのが、すごい重要かなと思います。
看護師だったら、看護師になったら、看護しかやってなくてなんかすげえ忙しくて悶々とするみたいな…よく悩みがあると思うんですけれども。
コンビニのバイトをしててもね、夜中ずっとこう(レジ打ちばかり)やっててね、俺何やってるんだろうなってこともあると思うんですけども。
だから、結局そういうのをずっとやってると刺激がどんどん、同じことなんで、なくなっていくんですよね。なんでもそうだと思うんですよ。
野球とかサッカーやっててもそうだと思う。やっぱこう、新鮮な刺激っていうのは、たまには違うスポーツをやってみようとか、というのを取り入れていくっていうのがよいと思っています。
ダイナミックに自分の関心事というのを動かしていくっていうのが、常にフレッシュな気持ちを保てるんじゃないかなと思うんですけどね。
琴坂:その、フレッシュなところっていうのは私も全く小林さんに同意で、フレッシュなものをどんどん入れていくというのと同時に、古いものを大切にする。
で、私の場合は昔からの友人っていうものには絶対に何か頼まれたら応えることにしています。で、彼らに自分の今を伝えて、自分の考えていることを伝えると、昔の自分と合わせてですね、コメントをくれるわけです。
昔の自分を知っている他者とのつながりを大切にしながらしかし新しいものを取り入れていくってすごくいいんじゃないかなというふうに思います。
小林:人間、習慣って怖いもので、たとえば吉野家に行ったら「牛丼に卵!」みたいな。なんか毎回同じものしか食べてないじゃんみたいな。そうなるんだよね。だいたいね。
料理ってそういうもんでさ。自分の知ってるものとか、おいしかったものを食べるようになるんですよね。
で、たまに僕、こう「らでぃっしゅぼーや」っていう野菜とか届けてくれるサービスがあるんですけども、この果物いったいなんだろう? みたいなのってたまに届くわけですよ。
この果物、おいしい! とかって思うのは、実はすごいありがたい話なんですよ。まあ、そしたらりんごしか食べなかったのがそういうフルーツを初めて知ることによって、新しい味を知ることじゃないですか。
すごい楽しいっていうか、幸せだと思っているんですよね。そういうのを意図的に作れない場合は、何か送ってくれる人たち、ものを買う。定期購読でもなんでもいいんですけども、やるとかっていうのは非常にいいことだと思いますね。
琴坂:私の最後の言葉として。こう、何を見つけるかっていうのはまだみなさん見つかっていないと思うんですが、たぶん(学校を)卒業して10年とか経つとみなさんの周りでだんだん見つけはじめてですね。
古いつながりが新しい刺激になったりするんですね。今のつながりを大切にしながら、だけど、10年スパンで新しいことを探し続けることが大事だと思いますね。
小林:締めの言葉いいですね。では最後の言葉、加藤さんで。
加藤:ひとつは。素直さってすごい大事だなと。更新し続けることでいうと。素直な人間でいることが、すごく。
というのは、だんだん凝り固まって同じものを食べて同じ服を着て。同じ価値観の人と仕事をしてっていうことになってしまうと、新しい刺激が入ってこなくなっちゃうので。
せっかくこういう場に来たりとか「らでぃっしゅぼーや」から新しいフルーツがきてもこれ食べつけなくなっちゃって捨てちゃお、と思うとそこで終わりで。
新しい刺激を得るということと、自分自身が違う価値観とか新たな経験に対して柔軟である、開いてある、ということを保つ。素直であることが大事かなと思います。
私、新卒で入社したリクルートって言う会社は、お前のその考えてるサービスは、誰の何を幸せするんだ? ターゲットを具体化するのが吉。正しいっていう世界なんですね。広告の世界もそうです。ターゲティングってやつ。
なんですけれども。国と仕事をするようになって、あるいとは行政と仕事をするようになって、ターゲティングというやつが悪なんだなっていうふうに感じました。
税金で働いている人たちにとっては、誰々を幸せにするんじゃなくて、みんなを幸せにしなきゃいけなくって、ぜんぜん違う価値観ですよね。
万人を向こう、万人を向こうという人たちと、万人を向いたら何も生み出せないから「19歳だけを向いていよう」という私と。
どっちが悪なんでも正しいんでもなくて、こういう新たな価値観。短期と長期とかですね。
そういうものに(向き合う)。自分がやってきたものにとらわれずに新しい価値観をいつも受け入れて「そっちもまた正しいな」というふうにしていくと、すごく自分のことを更新できるし、人間的にも成長できるんじゃないかなと思います。
趙:さっきのにお答えしつつ、で締めていいですか。自分の中で大事なことが2つあって。1つは、自分とよく会話する。
忙しいと、自分と会話することを忘れちゃうんです。あまりにいろんなことをやってると、なんていうのかな、自分の本当の気持ちがどこにあるんだっけ? ってことを忘れちゃうことが多くて。
なので、自分と会話する時間っていうのをきちんと持ち続けるっていうことが1つ。
あと、会話した結果、自分にウソをつかないっていうのもすごい大事にしていて。それは何かっていうと、日本って同調圧力が強い国だと思っていて。
自分が日本人じゃないから余計にそう思うのかもしれないんですけれども「こうしろ」っていうみんなからの圧力。
SFCにいた時は、みんな就職するよね! とか、当然総合職だよね! みたいな同調圧力、なかった?
加藤:高校までの同調圧力に比べて、SFCの同調圧力って弱いほうだったので。
趙:そうなんだ。そっか。でもなんとなく……。
加藤:でもそうだったかもしれない。
趙:でも一般職とか、なくない? とか。いわゆる、30過ぎたら結婚しないの? っていう親からの圧力、会社からの圧力、友達からの圧力とかいろんなものがかかってきて、自分に簡単にウソをついてしまう。
本当は仕事なんて辞めて結婚したいのに「いやいやいや」みたいな感じで仕事しちゃったりだとか。
いろんなことが起きると思うんですが、本当はこういうクレイジーな、新しいことをやってみたいんだけど「いや、その立場を捨てるのは馬鹿でしょ」みたいなことを社会から言われると、ああそうかなって不安になって踏み出せないとか。
でもそれは結局自分にウソを付き続けることなので。私以前にうつ病にかかって寝込んだことがあるんですけど、その時、自分にウソをつき続けるとこんな羽目に陥るんだなって思って。
だから自分と会話することを忘れない、自分にウソをつかない、ということ。それをおすすめします。好きなことはしょっちゅう変わる。変わります。
小林:あい。ということで、最後はうつ病対策まで(笑)。難民からうつ病対策まで、現代が抱える社会問題についてね。さすがヒューマン・ライツ・ウォッチですね。
今、この話がみなさんのやりたいことにつながったかどうかは全くわかんないんですけども。
全員:(笑)。
小林:人生ですね、短いと言いつつ長いので。気長にですね、あせらず、じっくりやってったら、いいこともあるんじゃなかろうかと。
ということで、今日1日中聞いていただける方は、ほかにもさらに輝いてる人たちがこれからも出てきますので。ぜひ積極的に質問いただければと思います。
どうもありがとうございました。
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