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Kyusyu Startup Night!(全3記事)

受託と自社開発のバランスをどう解決するか? ヌーラボ創業者が自社サービスへシフトする際に実践したこと

ヌーラボ・橋本正徳氏、アラタナ・濱渦伸次氏、アマゾンデータサービスジャパン・畑浩史氏がAWS Cloud Roadshowに登壇。東京ではなく九州でスタートアップをする豊富なメリットについて、3名が意見を交わしています。(AWS Cloud Roadshow 2014 福岡より)

九州のスタートアップはとにかく潰れにくい

畑浩史氏(以下、畑):次のテーマに行きたいと思います。「九州スタートアップのメリット、デメリット」で、九州でスタートアップすること、それが「本当にいいことあるの?」みたいな、「悪いことあるの?」みたいな。

よく東京との比較とか。東京と比較するのがいいのか、グローバルとの比較がいいのかちょっとわからないですけれど、何かその辺あればぜひぜひ。どっちからいきますか、橋本さんは(寿司を)食べていらっしゃるので、まず濱渦さん。

濱渦伸次氏(以下、濱渦):僕、さっき言ったことそのまんまなんですけれど、潰れない、潰れにくいっていうのが本当にあって、それがデメリットでもあるって。

:潰れにくい要素ってなんですか。

濱渦:やっぱり固定費が低いですよね。あと、みんないい人なんでSOHOがめちゃめちゃ多いんですよ。

:なるほど。

濱渦:フリーランスのほうが。

:はい。

濱渦:その人たち同士でゆるく繋がって仕事をやっていくっていうのが絶対あって、ひとつのことに対してみんなでやろうみたいな風土よりかは、楽しければいいじゃんみたいな。ハングリー精神がある意味薄いと思うんですけど。

:なるほど。メリットであり、デメリットであると。

濱渦:ですね。でも潰れないというのは本当に思いますね。

:生きていく上でもそうですね。

濱渦:生きていく上では。

東京は出会いが多すぎて良くない

:橋本さんいかがですか?

橋本正徳氏(以下、橋本):そうですね、感心して聞いていました(笑)。メリットもデメリットも特に……どうですか?

:さっき話されていたので「特に無い」っていうのも、ひとつヌーラボさんの立ち位置かなと思うんですよね。

橋本:そうですね。特に無いは無い。でも東京にいるとすごく出会いが多くて、良くないなあと思いますね。

:良くない。良くないというのはおもしろいですね。

橋本:何て言うんですか。例えばテクニカルロックスターズさんとかっていうのは、この後プレゼンするようなものをサービスとしてやるんですけれど、それに出会いが必要かっていったらあんまり出会いが必要なくて、何か出会うことで仕事が増えちゃうじゃないですか。

:逆にいらない仕事とか。

橋本:僕すごく嫌なんですよ。うちがサービスをやっていて、僕らと同じ目をしていないセールスチックな人から、何か一緒にやりましょうよって言ってこられても。

:面倒くさいと。

橋本:面倒くさいな。で、むげに断るのもなあっていう。

:いい人なので。

橋本:良心の呵責があるじゃないですか。なんか、面倒くさい。

濱渦:提携リリースめっちゃ多いですよね。リリース目的みたいな。友達同士で、じゃあ東京でいっぱい会って「そうですよ、やりましょうよ」みたいな軽いノリで経営者同士で飲んで決まって……。

:キョトンて。

濱渦:キョトンで、リリースして終わりみたいな。

:なるほど。その先は特に進まないと。

濱渦:余計な仕事がめっちゃ多いと思います。

橋本:なんかそういうのが増えるのが……東京もそうかもしれないし、福岡も一部そうなってきているところもありますけれど、なんか面倒くさいなって。

:なるほど。特にメリット、デメリットも。出会いを必要とするようなものであれば。

橋本:どちらかというと、本当に引きこもっていたほうがいいかなと。

:むしろいいと。

受託開発は精神が鍛えられる

橋本:あとはアイデアとかの着想の部分というフェーズがあるんですけど、アイデアを着想する部分は極力、人と会ったほうがいいんですよね。テストフェーズじゃないけど、このアイデアどうかなって話していくと、実際に手を掛ける前にエラーが上がってきたりするんで、それは先にやっておいたほうがいいんですけど、さぁ、サービスを作りました、これからマーケティングですっていう時には、人にもう会うと辛いことがあるんで。

:それは別に東京である必要はないですし、むしろ逆にそこは集中してできると。なるほど、わかりました、ありがとうございます。じゃあ次のテーマとしては「受託開発から自社サービスへ」ということで。

今日会場にお越しの方にお伺いしたいのですけれども、今すでにスタートアップもしくは起業家、そういうところに勤めている方も含めてどれだけいらっしゃいますか。手を挙げていただいて。

すでにスタートアップであるという方、いらっしゃいますね。これから起業を目指したいとか、そういう方。なんかいいですね、軽い感じの。あと今、受託開発がメインでやっている方はいらっしゃいますか。何名かいらっしゃいますね。ありがとうございます。

もともとアラタナさんもヌーラボさんもその受託の部分があり、自社サービスで特化して、スタートアップ的というか、一般的に見たときですけれども、それがあると思うので、その辺の転換の過程であったり、良かったこと悪かったこと、なんかこれに絡めたところをちょっとお話しいただければと。

濱渦:そうですね。僕らは今でも受託をやっているんですよね。基本的には月3,000円とか1万円の利用料金のストックモデルなんですよ。僕らってそのストックの売り上げと固定費を合わせているんですよ、経営的には。それで受託の分が全部利益みたいな感じにしていて、わりと固めの感じでやっているんですけれども、受託っていい面がすごく多くて、鍛えられるんですよね、精神的にも。

:もうちょっと具体的に、どういうことですか。

濱渦:クライアントから死ね! みたいなこと言われるんですよ。

(会場笑)

「お前死ね!」と言われるのを、そこへの耐性というのがありますし、締切に対するマインドだったり、あと新しい技術を使わないと解決できなかったりとか。そういう意味では鍛えられるんですよね。ですから適度にやっていくのがいいなと思って。なくしたいかというと、できればないほうが楽なんですけれども。今は両方やっていますね。

自社サービスはローンチしてからが本当のスタート

:橋本さんどうぞ。

橋本:気づいたら会場に男しかいない、すごい恵まれた環境。今、濱渦さんが話している間、ギルガメッシュナイトの反省をずっとしていて。

(会場笑)

橋本:問題なかったかなと思って。男しかいない。

濱渦:全然大丈夫。

橋本:受託開発、うちは1年半ちょい前ぐらい、2013年3月ぐらいに受託開発の事業部を閉じちゃって、今は自社サービスだけをやっています。他の会社さんも随分前から相談を受けるんですけれども、受託開発をやって自社サービスにやっていきたいと。

それで相談を受けたところは、僕は逐一オンラインでチェックをしているんですけれども。さっきの僕のプレゼンの話なんですけれども、なんかローンチしたらすぐ辞めちゃうみたいな。受託マインドが強すぎて、マーケティングがあるんだということに……。

:なるほど。そういう達成感というか、サービスインしたみたいな。

橋本:ローンチしたというところで達成感を感じちゃって、その後……みたいなところが多くて、それって良くなくて。ちゃんと自社サービスでいくんだったら、自社サービスを出しているということでマーケティングして受託開発を受けていく分にはそれで全然問題はないんですけれども、自社サービスをちゃんとやっていくんだったらそれは問題で、ちょっと固い話ですけれども、やっぱり事業計画は書いたほうが良くて。

濱渦:書いているんですか!?

橋本:書いていますよ! めっちゃ書きますよ!

濱渦:本当に?(笑)

橋本:ロジック! ロジックで!

濱渦:そんな適当なのに、書いているんですか? 超意外(笑)。

橋本:書きますよ! 1円単位で書いていますよ、僕!

濱渦:本当に?(笑) それはすごいですね。

橋本:ちゃんと書いたほうがよくて。やっぱり受託開発は意外と季節商売だったりするので、波が激しいんですよ。そっちはちょっと柔軟にしておいて。自社サービスのほうは完全にちゃんとひとり付けておくと。

あとマーケティングの予算も決めておいて、自社サービスのマーケティングもちゃんと入れ込んだ事業計画。最低3年間、長くて5年間ぐらいの事業計画を作って、ぶらさない。

それでよくあるのが、受託開発で大きいのを受けちゃって、じゃあちょっとこれは儲かるから自社サービス止めちゃって、受託開発やろうかみたいな感じのほうに流れて自社サービスが進まないとかあるんですけれども、そういうのはやめといたほうがよくて。

その自社サービスのほうに人を付けたんだったら、受託開発がいくら大きいのを受注しても、自社サービスの人を使うんじゃなくて、そのときは協力会社さんとかパートナーさんを入れて、できるだけ自社サービスのところを邪魔しないように。

受託開発から自社サービス開発へ転換したきっかけ

:途中でヌーラボさんが受託開発をやめて自社サービスに特化したところって、転機というか転換のところはどういった経緯なんですか。

橋本:どうやって決めたか?

:何がきっかけ?

濱渦:これすごく難しいし、いいテーマだと思いますけど、頭の切り替えがめちゃめちゃ難しいわけですよ。Cacooって300円でしたっけ?

橋本:500円です。

濱渦:500円か、ごめんなさい。500円ですよね。初月の売り上げってしょぼいじゃないですか絶対。

橋本:そうですね。

濱渦:ですよね。受託だと500万とか1,000万とかあると。その部署と自社サービスで共存しているわけですよ、部署が。同じ会社に。これがすごいしんどいんですよね、実は。

橋本:はい、そうですね。いろんな会社さんがそれで困っていて。

濱渦:こっちとこっちのPL(損益計算書)だと、こっちのほうが重かったりするんですよ。こっちは3人でやっていて、こっちは5人でやっていて、こっちがキラキラしちゃうんですよ。Cacooをやっているヌーラボみたいになっていて、でもこっちが99.9パーセント稼ぐわけですよ。多分そういうのあるだろうなと思いますね。

橋本:あります、全体の事業計画です。「やっぱり、こういうふうに進めていくので」みたいな話はちゃんとしておいたほうがよくて、そうじゃないと喧嘩ですよね。あいつらキラキラしている割には稼いでいないのに、俺らドロドロして何だよ、キラキラもしてないしみたいな。何て言うんでしょうかね、骨肉の争いですね。

:ヌーラボさんは社内のほうにちゃんと説明をしてコンセンサスを取るみたいな?

橋本:そうですね。そういうことです。一応、ハレーションみたいなのが起きましたけれども、でも懇切丁寧に説明するなどしてやってきましたね。

濱渦:これ新規事業でも絶対あるんですよ。

橋本:ありますね。

濱渦:生まれるたびに絶対あるんですよ。

社長が新規事業に手を出すと、立場が弱くなる

:濱渦さんのアラタナさんの中では、どういうふうにクリアされているのですか。

濱渦:だいたい、僕が直接見るプロジェクトにしています。

:新しいほうを?

濱渦:新しいほうですね。基本、社長決裁を全部やれるようにして、言われても守るというのはやっていますね。でも、次からはそれはできなくなるかなとは思っています。

橋本:社長じゃなくなるんですか?

濱渦:うーん……もう新しいことをするのは疲れたなと思って(笑)。

:衝撃的な発言なんですけれども(笑)。この先大丈夫なのかなみたいな。

濱渦:やっぱり新規事業をやると、社長の立場が弱くなるんですよね。

:というのは?

濱渦:ちゃんとしたジャッジができなくなるというか、会社全体が。

:思い入れが入っちゃったりとか?

濱渦:ちょっとひいき目に見ちゃったりとか。

橋本:ですよね。僕は新規事業にタッチしないですね。

濱渦:それが絶対にいいですね。

橋本:泥臭いところだけ。

:なるほど。

濱渦:絶対そのほうがやりやすいですよね。

新規事業が勝手にうまれる理由

:ありがとうございます。そろそろ時間もきましたので、会場からの質問に移りたいと思いますね。ぜひ、どうぞ。マイクがいきますので。

質問者:今さっきの話で、新規事業に橋本さんがタッチされないということだったのですが、それなのになぜ新規事業が起こり、そして今の橋本さんがいられるわけなんですか。

橋本:僕が聞きたいです。

(会場笑)

なんでいるんだろう。

:なぜ生まれるか。誰が生み出しているのか。

橋本:Typetalkとか社員が作ったんですよ。あとBacklog、Cacooとかも、誰かが作ったわけではなくて、何人かがわっと作ったんですよ。それに対していいね、いいねって言う係です。

(会場笑)

質問者:最初は受託で皆さん社員の方が作られて、その中で余った時間の中で勝手に作りだしちゃったみたいな?

橋本:そうです。

質問者:勝手に作り出しちゃうような環境を、橋本さんが何か意識して作られたことはあるんですか。

橋本:僕だけじゃないですけどね。社員全体的にそういうムードではありますよね。なんか勝手に。

質問者:コツとかありますか。

橋本:そういうのが好きな人だけを集めていくっていうところがポイントかなって。うちの最初のスタート時の社員は結構オープンソース活動やっていた人が多いんですよ。オープンソース活動って、本来の仕事の時間以外のところで趣味でプログラム書いて、世の中に公開するっていう活動をやっている人達なんですね。そういう人達なんで……。

:もともとマインドがそういう人達。

橋本:はい、そもそもが。

濱渦:でもこんな綺麗に言ってますけど。

:来ましたね。

濱渦:そんなことないですよ。僕らふたりのLINEは見せられないですよね、暗すぎて。本当1年半とか2年ぐらい前は酷かったですよね。

橋本:そうですね、やっぱり辛いです。

濱渦:やっぱり辛いですよね。

:大丈夫ですか。

質問者:わかりました。ありがとうございます。

エンジニアによる細かな改善は差別化要因になる

:じゃあもうひとりぐらい……先に手が上がったんで、はい。

質問者:私、福岡で医療系の会社をやっているんですけれども、すごくオールドテクノロジーな会社で、ついこの間、開発会社に逃げられまして。社内に開発人員を抱えるべきかどうか悩んでいるんですけれども、1つ聞きたくて。

開発のほうを採用するときに、まずどういう観点で人を見るのかっていうと、そもそもうちみたいな、要は開発がメインではない会社というのが内部に開発を抱えるべきなのか、それとも外部のアウトソースを頼りきっていくべきなのか、そこを聞きたいです。

濱渦:ぼくは絶対抱えるべきかなとは思いますね。そこしか差別化できないと思うんですよね。アイデアって誰でも同じように出したりするんで、すぐ真似されちゃうし。じゃあ細かいアップデートに価値が出てきたりとか、さっき集中してやったほうがいいっていう話になってくると思うんですけど、絶対必要だなと。で、採用はやっぱり素直な人ですね。振り返るとそんな素直な人いたかな……?(笑)

橋本:伸次が素直じゃないもんね。

濱渦:そうですね。まあ福岡で採用した方とか。

橋本:そこは素直じゃないところを話してるんですか?

濱渦:素直ですよ、意外と。いい人がいいですよね、やっぱり。

橋本:そりゃいい人がいいでしょう(笑)。答えになってないですよ。

濱渦:ここは橋本さんのほうが喋れると思うんで。

橋本:僕はそもそもエンジニアなんで、多分参考にならないと思います。エンジニアは抱えたほうがいいと思います。なぜかっていうと、エンジニアっていうのは別に作ってるわけじゃなくて、業務処理を作ってるっていうか、なんて説明すればいいのかな。

実際に仕事上である程度転がしてみて、これっていいねみたいなものを形式化してプログラム化して運用しているだけに過ぎないんで、その作業は自社のメンバーのほうがわかるでしょうというところが、当たり前にありますね。

だから新規事業に関しても、例えば今まで洋服の販売をやったことがない人達が洋服のスタートアップやっても絶対に上手くいくわけなくて、今まで洋服を販売したっていう経験があって、そこの暗黙知みたいなのをごにょごにょやってると形式知になってプログラムになってロジカルなものができて、それがサービスになったりするわけじゃないですか。そんな流れの中、いきなり作る部分をよそに頼んで大丈夫? っていうのはありますね。

開発をすべて外注でうまくいくスタートアップもある

濱渦:逆に、全部外注で上手くいったスタートアップってあるんですかね?

橋本:そうですね。ああ、名前は言えないかな。でもあるんです。「俺、スタートアップ」みたいな。「俺、スタートアップだよ!」みたいな感じで「何作ったの?」って見せてもらって、「こいつ自分達で作ったの?」って言ったら「後は外注で……」みたいな感じで。

濱渦:そんな喋り方じゃないでしょ(笑)。でも確かにね。

橋本:それで「この後こういうアイデアがあるんですけど」みたいな。「あ、そう」みたいな感じ。

濱渦:でも一部は外注に出したりはしますよね。橋本さんのところはデザインとか出したりするでしょ。

橋本:デザインとかは出しましたね。でもほぼ社員みたいな扱いでやってますね。

:時間もきたので、最後にふたりから一言で短めに。もう何でもいいです。

濱渦:腕相撲で右腕折った話はできなかったですね。

:それ最後の一言ですか(笑)。

橋本:鉄板ネタ。

濱渦:それできなかったですけれど。

:じゃあまた別の機会に。

濱渦:はい、また。今日はありがとうございました。

:じゃあ橋本さんも。

橋本:今日はありがとうございましたで終わり?

:何か一言。

橋本:これだけはtwitterでツイートしてほしいものとか。

:一言ですよ、一言。

濱渦:寿司はいらなかったかもしれないですね。

:めっちゃ食ってますけど(笑)。

濱渦:でも九州なんで、熱く盛り上げていきたいと思うんで、よろしくお願いします。ありがとうございました。

:ありがとうございます。じゃあ締めの言葉を橋本さんから。

橋本:この後プレゼンされるんですよね? よく見ときます。よろしくお願いします。

:はい、じゃあこれでですね、パネルディスカッションのほうは終わりにしたいと思います。皆さんどうもありがとうございました。

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