2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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田中章雄氏(以下、田中):インフィニティ・ベンチャーズの田中です。今この時間は、AではこちらのグローバルなVCやそのスタートアップ、インキュベーターをやってるみなさんから、グローバルなスタートアップのトレンドを聞くというセッションがありまして、隣はもう年老いて死にかけてる人たちが健康について語るという、高齢化社会に必要な別のセッションやってますので、今死にそうな人は隣の部屋に行ってください。
若くてこれから新しいベンチャーを作ろうと思ってる方は、このままこの部屋に残っていただければと思います。それでは早速、順番に僕から隣から自己紹介をお願いしたいと思います。シリルからお願いします。
シリル・エーベルスヴァイラー氏(以下、シリル):ミナサン、コンバンハ。シリルトモウシマス。
田中:みんなにこれから英語で話します、って言ったばっかりなんだけど(笑)。
シリル:スミマセン。
田中:彼は実は京都に住んでたこともありまして、日本語少し話せます。っていうか、かなり話せるので危険人物です。
シリル:こんにちは、みなさん。シリルといいます。HAXR8Rという、ハードウェア・スタートアップのためのアクセラレータープログラムの創業者で、会社を立ち上げて3年ぐらいになります。
あとで詳しくお話します。アジアに来てもう15年になり、日本、韓国、中国で暮らしたことがあります。家電やロボット分野におけるスタートアップ・トレンドを説明いたします。
田中:ありがとう。いろいろやってますが、彼は「ハードウェアガイ」です。じゃあ、ジミー。
ジミー・リム氏(以下、ジミー):みなさん、こんにちは。IVSに参加できて光栄です。私は韓国から来ました。
ベンチャー・キャピタリストです。シード投資の段階からシリーズA投資までという、超初期の段階からベンチャー企業に投資をしています。韓国のスタートアップのエコシステムとトレンドについてお話したいと思います。ここに参加できてうれしいです。
田中:ありがとう、ジミー。アーマン?
アーマン・ザンド氏(以下、アーマン):ありがとう。シリコンバレーバンクから来ましたアーマッド・ザンドと申します。私もここに来られてうれしいです。IVSの参加は初めてですが、京都に来たのはこれが2回目です。ニホンゴワカリマセン(笑)。
シリコンバレーバンクは、シリコンバレー発の金融サービス会社ですが、インド、中国、イスラエル、イギリスにオフィスがあります。わが社はスタートアップと技術革新コミュニティに特化した金融サービス会社です。クライアントはみんなここにいらっしゃるみなさんのような方々です。
田中:どこを拠点にしているか言いましたか?
アーマン:上海に拠点を置いています。(中国語で)
田中:わお! オーケー、ケビン。
ケビン・ヘイル氏(以下、ケビン):ケビン・ヘイルといいます。Yコンビネーターのパートナーで、シリコンバレーに拠点を置くシード段階のファンドです。
パートナーの仕事というのは、スタートアップ企業を探してリクルートし、応募用紙に目を通し、スタートアップがバッチ(学期)を乗り切るのに協力して、卒業生がプログラム終了後のトラブルシューティングの手伝いもしています。
田中:ありがとう。日本にはリクルートでよく来るの?
ケビン:今年は何回も来たよ。これが3回目かな。
田中:詳しくは後で聞こうか。じゃあ、すみません、ここでちょっとビールをお願いします。今日は最後のセッションなので、少しゆるくしようと思って、今からちょっとビールを頼みたいと思います。ホテルのスタッフの方、ビールをお願いいたします。
ケビン:わお!
アーマン:アリガトウ。
田中:ビールください。
田中:じゃあ、ビールを飲んでいる間、シリルから中国のハードウェア・アクセラレーターについて簡単にプレゼンテーションをお願いします。じゃあ1番のスライドをお願いします。
シリル:では、中国の現状ということで話したいと思います。
田中:ところで、これ(HAXLR8R)ってどう発音するの?
シリル:ハクセラレーター。
田中:ハクセラレーター(以後、HAX)。
シリル:アクセラレーターを想像して、お腹をパンチして欲しいです(笑)。「リーン・ハードウェア」についても少し説明したいと思います。
HAXは新しい種類のアクセラレータープログラムです。中国の深圳(しんせん)で約3年前にこのプログラムを始めました。それ以来、ハードウェア・スタートアップの設立や製品販売の方法を再定義しようとしてきました。
『The Economist誌』から今年始めに取材が来て「この会社は違う」と評価してくれました。それは、うちが主にハードウェアに焦点を当てていること、非常に実践的であるからです。
HAXは約20人からなるチームが、スタートアップのために電気工学、機械工学、メーカーのためのデザイン、デザインなど、あらゆるハードウェアに関する問題を手助けしています。
HAXの創業当初からの目的の1つは、スタートアップがハードウェア製品を開発するためのハードルを下げることなんです。
起業家として、解決策を見いだせないまでも問題を解決することができるように、そしてソフトウェアもハードウェア、バイオロジーさえもできるように……。
田中:この後のスライドで説明があるかもしれないけど、どうして深圳がうってつけの場所なんでしょう?
シリル:深圳がうってつけの場所なのは、そこがまさに「ハードウェアのシリコンバレー」だからです。企業のプロトタイプ作成を支援するためのクリティカル・マスに達しています。あらゆる部品がそこで作られているし、柔軟性があり、価格も安い。
大企業によって超早いサプライヤーがここ15年で生まれ、育ってきている。巨大工場だけじゃなく、小規模の工場までが、これらのサプライチェーンを用いて、プロトタイプを速く製造することができるんです。
もう1つのステップが、プロトタイプ製造と製造デザインと製造とを調和させることです。結局のところ、ハードウェア・スタートアップの課題とはほとんどがキャッシュフローとキャッシュに尽きます。
市場へ出す期間を短縮することは非常に大事なので、一番最初から深圳を選びました。
HAXのポリシーは次の3つです。「正しい物を作る」とは基本的にはポジショニングです。なぜ物をインターネットに接続するべきなのか。「Whyfi?」と言い換えてもいいと思います。
いつもうまくいくとは限らないけど、時には業界を再定義することもあります。例えばWi-Fi接続に対応した冷蔵庫を考えてみてください。インターネットに自分の冷蔵庫を接続したいと考える人はいないと思うけど、会社の立ち上げという点からみると、非常におもしろく、業界再定義につながるかもしれない。
冷蔵庫を作る代わりに、会社が健康管理を考えたりなど、コンセプトに応じて物を変えることになります。2点目の「正しく物を作る」はわが社が深圳に拠点を置く主な理由です。起業家に物作りの方法を教え、物作りを手伝う。
なぜそれが大事かというと、起業家が初めて画期的な新製品を世に送り出すことは非常に難しいからです。だから、そのための経験を得て、後でもっと良い製品を作ることが大事。
だから初期の段階で、自分の商品と製造過程に自分自身が立ち向かうことが極めて重要です。最後に「出荷は迅速に、展開はゆっくりと」は、できるだけ早く収益を上げるために欠かせない。
ハードウェアはその意味でソフトウェアとは大きく異なっている。なぜなら……。
田中:普通は「素早く展開」と言うけど「展開はゆっくり」なんですね。
シリル:「展開はゆっくり」ですね。なぜなら、クラウドファンディングを使って自社の商品を出荷できたとしても、出荷して戦いが終わったわけではなく、実際はその後組立ラインとも挌闘しなければなりません。
初めから完全な製品を作ることは困難です。例えばApple社でさえ、初めてiPhoneを世に出すときは、完璧な製品を作るために1年間かけて何度も組立ラインを見直し、改善しなければならなかった。
スタートアップならなおさらで、製造の知識の力は日々増えますが、それでも時間がかかります。ディストリビューションするのが早すぎると、実際問題が生じます。
5%の返品が発生すれば、6ヵ月で破綻してしまう。その代わりに、直接販売やAmazonを通じて展開したほうが、マージンを最大化できる。ディストリビューションするのは非常に高くつきますからね。
田中:シリル、意地悪なことを言って申し訳ないけど、この後17枚もスライドがあるみたいだから、ちょっと急いでくれますか。
シリル:じゃあ、スピードアップします。なぜ深圳かというと、スライドにもいろいろコメントを載せているけど、一番の理由は「毎週、1ヵ月分の生産量がある」こと。1つ覚えておいてほしいのは、今日の深圳市のエコシステムは10年前とは全く別物だということです。以前はひどかったけど、今は非常におもしろくなっています。
HAXが支援しているスタートアップのトレンドについて説明すると、50スタートアップを支援していて、そのほとんどはまだ健在です。30がアメリカ、10がヨーロッパ、10はアジアの企業です。
これらの企業が存続しているのは、HAXが最初から収益を上げ、事業を継続できるように手助けしているからです。KickstarterやIndiegogoなどのクラウドファンディングでキャンペーンを行った企業は25社で、全て成功しています。
ゼロからスタートして平均で25万ドル(約3,000万円)の資金を集めています。プログラムに参加して3ヵ月後に25万ドルの収益を上げています。もちろんこれは30日間のキャンペーン期間中の数字なので、実際にはもっと多くの金額を集めていることになります。
田中:じゃあ、HAXのポートフォリオ企業の100パーセントが実際にクラウドファンディングで資金を集めているんですね。
シリル:いや、半分ですね。半数近くがロボットか、B to Bで、中には自力で発売するところがあります。今では何百万という製品を売り出しています。多くの商品を市場に送り出したからです。また75%が追加資金を得ています。
これによってHAXが「クラウドファンディングで資金を得たハードウェア・スタートアップに最も積極的に投資している投資家」として数ヵ月前にTechCrunch(IT系のスタートアップやWebに関するニュースを配信しているアメリカのブログサイト)で取り上げられました。
おもしろいのは、買収の結果です。25,000ドルから25万ドルに成長させています。また、キャッシュフローマネッジメントでも非常に大事なことも証明しています。製品出荷予想額は人々が期待するような数百万ドルでなく、実際は10万ドルなんです。
HAXはオートメーション、家庭用品、スポーツ、音楽、ライフスタイル、教育など非常にさまざまな企業と商品を取り扱っています。中には身の回りでお馴染みの商品もあるでしょう。
多くは取り上げられないので、詳細はHAXのWebサイトなどでチェックしてください。HAXは多数のいわゆる“enchanted objects”(http://enchantedobjects.com/参照)、つまり、刺激を与えるだけでなく、スマートで、普段使いの製品に埋め込まれている商品にも携わっています。
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