2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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秋好陽介氏(以下、秋好):袴田さん、日本って1980年代ぐらいから、産業ロボットにおいては自動車業界が引っ張っていて、シェアも稼働体制っていう意味でかなりあったと思うんです。ただ昨今の、いわゆる先進的なロボット産業っていうところに関して言うと、例えばメディアの報道ベースで言うと、東大の学生さんにGoogleさんが大量にファイアリングしてみたり、東大ベンチャーをGoogleさんが買収したりと、日本のロボットってどうなるんだろうっていうのがあると思うんですけれど、現場で見られていてどうですか? そしてGoogleさんといろいろとされてきまして。
袴田武史氏(以下、袴田):そうですね。まず第1に言えるのは、やはり日本って非常にロボットが盛んかなというふうには思います。ただ、今後気を付けなきゃいけないこととして自分が考えているのは、日本は非常にハードウェアが強いですね。モノづくりのところが、やはり非常に強いと思います。
今回、我々のロボットも日本の製造業の、町工場を中心とした製造業の技術がないと、なかなかこのサイズで作り上げるっていうのも難しいというふうに思っています。ただ一方、ロボット、宇宙もそうなんですけれども、今ハードウェアだけで問題解決をするわけではなくて、ソフトウェアを上手く活用して問題解決をしているというふうに思っています。
なので、このロボット単体で、1つ何か大きな機能、または複数の機能を実現するというよりは、ソフトウェアを上位概念としてサービスを作って、その中でロボットが、その1つのコンポーネント、機能を果たすコンポーネントとして、大きなサービスを構築していくというふうに向かっているかなと思っています。
秋好:これもまさにハードミドルソフトがあると。
袴田:そうですね。我々は非常に小さなロボットを開発しているんですが、やはりこの1台では、できることは限られていくんです。なので今後の方向性として、大型化していくっていう方法もあると思います。
ただこれ、ハードウェア的な解決だと思っていて、我々は小型なロボットを複数台、ネットワークを繋げて、協調を制御することで、大きな機能を実現していきたいっていう、ソフトウェア的な問題解決のほうにシフトをしていきたいと思っています。
秋好:わかりました。ありがとうございます。チャーリーさん、今、同じ質問になってしまうんですけれども、日本は昔は産業ロボット中心に栄えていたけれど、最近はシリコンバレーのGoogle、Amazonといったような企業が、いろいろ買収等、ロボットのところを仕掛けていっていて、アメリカから見た日本のロボット産業っていうのは、どう捉えられていますか?
チャーリー・ダンチョン氏(以下、チャーリー):Google、それからAmazonは、ロボティクスで非常にいい企業体として、アクティブに従事しております。特にこのAmazonの意図は、Googleと比べて、よりわかりやすいと思います。
ただ、そうは言いましたけれども、日本が世界を引っ張っている。特に1人当たりのロボットの導入数というのは、日本がどこの国よりも先に進んでいる。私はシリコンバレー出身の人間でございますけれども、私たちのイノベーションは、実はイノベーションのあと、実際にそのプロダクトが機能していなければいけないというディテールに入っていくわけです。
そういう意味では、この点を忘れてはいけないと思います。実はそこが日本のロボットコミュニティのメリットだと、私は言っていいと思います。ロボットの信頼性、そして、実際の投資に対して、本当にリターンを提供することができるのか。この点に関しまして日本は、世界のどの国よりも進んでいると、私は考えています。
秋好:続いてチャーリーさんにもう1つ聞きたいんですけれども、シンギュラリティっていう言葉にあるように、このままAI、人工知能、ロボットが進んでいくと、便利になる一方で、ある特異点を超えると、ロボットに支配されるんじゃないかと。もしかすると、さっきの3つのルールに従えば大丈夫だということかもしれないんですが、その点はどうお考えですか?
チャーリー:何点かありますが、AIはセンシングによって、マシンビジョンによって、人工知能というものが生まれるということを考えなければいけないと思います。私はマーキュリーマシンのビジョン、アルバート、実は15000ドルでこのロボットを購入しました。
高解像度のそのカメラはどうでしょうか。実際の携帯電話に使われているカメラは25ドルで購入できるようになりました。マシンビジョン、そしてソフトウェアの開発がやられますけれども、実はこうした一連の活動によって、AIというものが鍵になってきます。また、高額のマクロ膜のセンサー技術も重要になってくると思います。そういう意味では、非常に素晴らしい未来が待っていると思います。
それから先ほど、人間型のロボットというイメージを皆さん持っているかもしれませんが、ロボットのテクノロジーは必ずしもヒューマノイドである必要はないんです。このテクノロジー、先進的なローコストのアクチュエーションはデバイスを使うことによって、例えばこのディッシュウォッシャーから皿を出すとか、またはハンバーガーのお店におきまして、このハンバーガーを運ぶとか、そういう意味では、ヒューマノイドだけでなく、こうしたロボットテクノロジー、一般のロボットテクノロジーが、製造、そしてサービス業界でどんどん普及していくと思います。
秋好:同じ質問ですが、どうでしょう。
袴田:シンギュラリティ・ポイントをこえると、人間が制御できない領域に入っていくという意味合いも込められているのかなとは思うんですけれども、確かにそういったストーリーも考えられなくはないとは思います。
特にAIだと、今までは人間がプログラミングをする範囲で、人間の立てた仮説の中で、インテリジェンスを実現してきたわけですが、それが今、人間の思考の範囲外。
秋好:人間の仮説を超えてっていうことですか?
袴田:仮説を超えて発展をしようというところも出てきているということで、そういうのが発展してくると、シンギュラリティ・ポイントを超える部分が出てきてしまう可能性もあるかなとは思っています。
秋好:そうなる可能性もある。
袴田:はい。ただチャーリーさんのおっしゃるように、ちょっと行きすぎかもしれません。原発の利用もあったように、人間の行動指針みたいなのが、最終的には必要になってくるかなと思っていまして。
その観点では、もう既にアシモフの、ロボットの三原則というのが数十年前にできていまして、そういった原則を人間としてはフォローしていくべきなのではないかなというふうには思っています。
秋好:わかりました。もっとたくさん質問をさせていただきたい、セッションをしたいんですけれども、時間がそろそろまいりましたので、会場からぜひ質疑応答をさせていただきたいなと思いますので、よろしいですか?
質問者:どうもありがとうございます。ロボットは日本が世界をリードしているという話なんですけれども、実際にロボットベンチャーが、将来的に上場する可能性があるのかということと、そういったベンチャーキャピタル、ちゃんと資金がつくかの可能性について教えてください。
秋好:ありがとうございます。後ろの方も同時によろしいでしょうか。
質問者:ありがとうございます。ハードウェアは日本が強いということで、これからはそうしたハードウェアとソフトウェアが両方必要になってくる時代が来るんじゃないかということで、その両方を強くしていくために、何か企業とか教育でしていくべきこととか、そういうことがあれば教えていただきたいなというふうに思います。
秋好:ありがとうございます。ちょっと先に2問目のほうから、チャーリーさんに質問したいと思いますが、ハードウェアとソフトウェアの教育の観点でできることというところで、よろしいでしょうか?
チャーリー:ロボット業界で、メカニカルエンジニアなんですけれども、またはプログラマなんですけれども、非常に素晴らしい方に出会ったことがあります。そこで唯一アドバイスを皆さんに提供したいんですけれども、ロボット業界におきましては、ただソフトウェアの専門家になっては駄目だということです。または機械工学の専門家だけ、または電気工学の専門家だけに限定しては駄目と。
ロボットっていうのは、実はいろいろな専門分野で構成されている。だから、私はこれが好きなんです。ソフト、ハード、そしてダイレクトドライブ、駆動だとか、またはマニックドライブだとか、またはネットワーキングも関わってきます。
ロボットがインターネット・オブ・シングスの一部になりつつあると、私は考えております。そういうことを、ぜひ皆さんに考えていただきたい。さっきの質問ですけれども、そういう意味では、このいろいろな学際的なエデュケーションが、ベストエデュケーションだと考えています。
袴田:宇宙工学っていうのも、非常にマルチディシプリナリーな、多領域の学問になってきまして、実は私アメリカの大学院に最終的に行ったんですが、そこで個人的に問題意識を持っていて、日本の研究室を見た時に、すごい狭い領域の、最先端の研究をされていた。
それは必要なんですけれども、そのシステムを作り上げるところでは、統合していくところが必要で、日本はそういった研究というか、活動はされていない。あまり枠組みとしてできていないというふうに思います。
アメリカでは私は、クロスセクショナルデザインと言われるような、デザイン、設計、ディシジョンメイキングの仕方とか、そういったものを航空宇宙という学問の中で研究をしていました。そういったマルチディシプリナリーな観点から物事を考えられる人が必要になってくるかなと。
秋好:袴田さん。まさに今Googleのプロジェクトに参画されていて、ロボットで資金調達できるかとか、上場する企業が出てくるのか、今後というところで、実際もしかすると資金調達活動とかもされたことがあるのかもしれないんですが、どうでしょう。
袴田:そうですね。まだロボットのスタートアップベンチャーっていうのは、上場のステージにあるところは、あまりないかなというふうに思っています。シリコンバレーでも非常に騒がれてはいますけれども、まだ開発の途中であるというものが多いかなとは思います。
ただそれが上場に向いていないかというと、そうではないとは思っています。確実にこの社会にとって必要になってくるものですので、そういった会社をパブリックにして、社会の1つのシステムの中に組み込んで、人間の生活をより良くしていくということは必要かなというふうに思っています。
秋好:資金調達という観点で、上場はもう少し先かもしれないんですけれども、資金調達すること自体は、日本においてもそんなに困難ではないですか?
袴田:そうですね。正直に言うと難しいとは思います。一昔前までIT業界でも、スタートアップって非常に難しい状態で、今、非常に良くなってきているとは思いますが、さらにロボットですとか、我々は宇宙もやっていますけれども、もう1段階大きなお金が必要になってくるところです。
そういったお金が、日本にリスクマネーとしてあるかというと、海外に比べてしまうと、特にシリコンバレーに比べてしまうと、やはり小さいかなというのと、あともう1つは技術を目利きができる人が少ないとは思います。
秋好:投資家サイド。
袴田:はい。アメリカとかですと、やはり技術でやってきた、またはビジネスとしてやってきた人が投資判断をしているケースも多いかなというふうに考えています。
秋好:ありがとうございます。もう1名ぐらい。
質問者:まず最初にお聞きしたいのが、両社さまともに、どういったことが主要な市場用途になるんでしょうか。2つ目にお聞きしたいのは、主要な技術上、またビジネス上の課題で今どういったところに直面しておられますか?
チャーリー:ロボットのサンドヒル、シリコンバレーで、ソーシャルメディアと一緒にやり出しました。企業によっては大きなアプリケーションがあれば、そういったような2つぐらい大きく投資をしてくださることがあります。
1つは、非常に近い将来、ヨーロッパとかアメリカ、この縫製の工場、これをもう一度国外に戻してくるというところがあります。中国でも今、どんどんと自動化をしようとしております。ベトナムに取られないようにするためにというかたちで。労働賃金が40パーセント上がっているというところから、そういったようなことが起きています。
電気接着というのは、ペラペラのものも扱えるということで、非常に期待が持たれています。もう1つ、バーティカル。要するに分野ごとの用途です。例えばオーダーフルフィルメントで注文を、製品を集めてくる。Amazonとかターゲットとか、そういったような小売販売のほうで商品のピックに使われるというふうになっております。
袴田:マーケットとしては冒頭に話した、今、国から民間に宇宙開発が移りつつあるということで、国が何かをやる時に、民間のサービスを買って、探査内にやっていくというマーケットがあります。
さらにそれに刺激をされて、民間のみのマーケットっていうのも、これから出てきています。特にアメリカは、もう民間でできるように法体系を整えようとしています。極端な例でいくと、小惑星の所有権を認めるような法律も、アメリカでは作成が進みつつあります。
そういったところでマーケットが出てきます。ビジネス、技術上のチャレンジというところで言いますと、特に宇宙の場合なんですけれども、実験を気軽にできないというのが難しさだというふうに思っています。ですので、一番最初に実行したところが非常に強いという、逆の強みもあります。
秋好:ありがとうございます。もう少し本当は質疑をさせていただきたいのですが、お時間にそろそろなるということで、最後お2人からひと言ずつ、今回のセッション、もしくはロボットの未来についていただけますか? チャーリーさんから。
チャーリー:私自身、ロボット業界に何十年も関わってきました。今ほどいい状況の時はありません。コストもどんどんと下がってきました。メカ的なアームなども、コモディティ化してきているぐらいです。
新しい技術、例えば人工筋肉みたいなところ、ギアとかモーターだけではなくて、ポリマーなどで作れるようになりました。これから様々なものが、サービスとか製造業で出てくると思います。
Googleのほうのダイナミックスで考えますと、まず最初にトヨタさんが出されたもの、そういったところから今、いろいろな地形を動けるようなものまで出てきました。こういったような様々なものが出てきて、非常に今は楽しみですし、しかもローコストになってきているということになっています。
ドローンも昔は、米国の国務省のほうで数百万ドルかかったものが、今は400ドルで買えるようになりました。ローコストで消費者向け、非常に大量に出てくるロボットが出てきておりますので、これによって、今まで以上にいい成長が望めると思います。そういった中で、今までの経験を活かしていただければ、日本には素晴らしいチャンスがあるんじゃないかと思います。ありがとうございます。
袴田:まず我々は今、Google Lunar XPRIZEに、HAKUTOという日本オリジナルのチームでチャレンジをしていまして、非常にいいところまで来ています。このチャレンジを上手く活用して、今後のビジネスを切り拓いていこうというチャレンジをしています。
ロボット産業について言うと、ロボットもいろいろなアプリケーションがあって、我々のこの人間が立ち入らないところに入って行って、アクセスをするロボットというのもその1つでしかない。逆にその1つでしかないというふうに思っています。
そういったいろいろなアプリケーションがある中で、本当にどの順番で、どのロボットが来るかというのを予測するのは、非常に難しいとは思うんですけれども、確実にロボットが人間の生活に入り込んでいって、そこでいきなりアトムみたいな、ドラえもんみたいな万能ロボットが出てくるとは思ってはいないんですが、ルンバみたいに身近なところからロボットが、どんどん生活の中に入り込んでいって、気付いたら周りにロボットがいるなというような社会になっていくかなというふうに思っています。
秋好:最後にGoogleのプロジェクトはいつごろ……?
袴田:そうですね。我々のこのGoogle Lunar XPRIZEの期限が2016年末までになっていまして、先日発表もしたんですが、アメリカの企業と組みまして、2016年の後半に打ち上げを予定しています。
秋好:チャーリーさん、袴田さん、本当にありがとうございます。まさにお2人がおっしゃっていたことっていうのは、人間の生活圏をロボットによって本当に広げていける。チャレンジがある。
働き方とか労働力がなくなって自分たちの仕事がなくなるっていうだけではないっていうことに、私自身も聞いていて、すごくワクワクしました。まさにこの日本が、労働力がなくなっていくっていうことが課題なんだと思うんですけれども、単純にその労働人口に対してロボットで価値貢献できるっていうことと、ロボットを使うことで、より幸せになるっていう両面を感じることができて、本当にエキサイティングで素晴らしいお話、ありがたい話でした。本当にありがとうございます。これにて、セッションを終了させていただきたいと思います。ご清聴ありがとうございました。
袴田:ありがとうございました。
チャーリー:どうもありがとうございました。
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