2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
孫泰蔵氏×ピーター・ヴェステルバッカ×校條浩(全1記事)
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孫泰蔵氏(以下、孫):私の名前は孫泰蔵、セッションのモデレーターで、このSlushムーブメントを東京やアジア各所で紹介するボランティアの1人です。
今日は「シリコンバレー以外でどのようにエコシステムを育てるか」をテーマにお送りしたいと思います。全世界にたくさんの起業家が点在しますが、シリコンバレーがイノベーションと起業、アントレプレナーシップの中心です。
私はシリコンバレーのようなエコシステムをシリコンバレー以外の土地、例えば日本、フィンランド、その他の国でもつくることができると強く信じているんです。
それについてディスカッションをする前にお二人に自己紹介をお願いします。特にピーター、彼はヘルシンキのSlushムーブメントの創設者の1人でもあります。お願いします。
ピーター・ヴェステルバッカ氏(以下、ピーター):またここに来ることができてとてもうれしいです。私はヘルシンキで友人数人と2008年にSlushを始めました。
孫:校條さんは私の素晴らしいメンターです。そして素晴らしいベンチャー・キャピタリストでもいらっしゃいまして、シリコンバレーを含むアメリカと日本でご活躍されております。彼は起業家の醍醐味を真に理解していらっしゃる方です。では、お願いします。
校條浩氏(以下、校條):ありがとうございます。校條浩と申します。私は日本で生まれ育って、24年前にアメリカのシリコンバレーに移住しました。これは今日ここにいらっしゃる若い方がまだ生まれていなかった頃の話になるのではないでしょうか。つまりこれまでのシリコンバレーと日本のアップダウンをこの目で見てきました。今日はこの場に来ることができて、とてもワクワクしています。
これまでインキュベーション、エンジェル投資だとか、さまざまなことをしてきました。今は大阪で新しいベンチャー・キャピタルを確立するための仕上げをしているところです。
孫:ありがとうございます。ピーター、フィンランドでは、特にヘルシンキやその他都市でたくさんの草の根運動が起きていると思います。そのことについてはいかがでしょうか?
ピーター:Slushの歴史を見ていただければおわかりいただけると思います。2007年に大学生にアンケートを取りました「アントレプレナーシップについてどう考えるか」「学校を卒業したら自分で会社を始めたいと思うか」と。あまり手ごたえある反応が返ってこなかったものですから、友人たちと「どうにかせねばならない、もっと起業家コミュニティを広めたい」と立ち上がりました。
そこで「アントレプレナーシップに関するイベントをしますから、ちょっと見てみてくださいよ」と大学生を誘い、起業についてのイベントを開始。2008年11月のその時点では200〜300人ほどの方にお集まりいただきました。コミュニティを作り、何かを一緒にするということ、オープンにアイディアをシェアするということ、誰かにアイディアを盗まれてしまうかもしれないと恐れない、このようなことはヘルシンキではごく当たり前のことなのです。
Slushは以来継続しており、ヘルシンキでは昨年14000人規模となりました。重要なのは、昨年改めて大学生に「会社を始めてみたいと思いますか」とアンケートを取ってみると、半数以上がイエスと答えた。このように変化が生まれたことです。
ほとんど起業することに興味を持たなかった学生達の起業への意識を高めることができました。我々の国にはコミュニティ作り、皆で協力して何かをするという伝統があるのです。
フィンランドの11月はとても寒くて暗く、シリコンバレーとは程遠い。つまり、そこにイノベーションがあればどこでもイベント作りやエコシステム作りは可能であるということを示しています。ヘルシンキでできるのであれば、ここ東京でもできるでしょうし、大阪でも可能でしょう。シリコンバレーがイノベーションを独占する理由はどこにもありません。
孫:校條さん、今新たな大きな挑戦をしようとしていらっしゃるでしょう。
校條:はい、大阪市から招待され、2年間イノベーション特別参与することになりました。挑戦は、そこに何もなかったことでした。「東京はダメだ」と文句がある人もいるかもしれませんが、大阪はそれ以上に何もない、砂漠ですよ! この何もない土地でアントレプレナーシップをどのように育成しようというのか、誰もがそんなことはできるはずがないと思っていました。私はその話をもらった時に「おもしろいな」と思ったものですから、そのオファーを受けました。
その1年後、これは最近のハック大阪です、今年の初めにやったイベントですね。全て英語で行われました。イベントタイトルは「HACK OSAKA」、大阪をハッキングしてやろうというコンセプトです。これは大阪市長も承認したタイトルですよ。
(会場笑)
そして我々はやりました。開始して1年でこれだけ多くのことを成し遂げました。時間がないので、この全てについて語ることはできません。1つだけご紹介すると「ものアプリハッカソン」、IoTハッカソン、ハードウェア、ソフトウェアのハッカソンです。
日本で初めて、東京よりも先に大阪でやることができました。「あなた、そんなのクレイジーですよ、あなたがアドバイザーであることは知っていますがそんなことできるはずがありません」と言われてきましたが、現実にすることができました。
実際私はこれをやらざるを得ない状況に追い込まれたのです。皮肉なことに東京の多くの人々からサポートを受けることとなり、多くの方からハッカソン実現を手伝ってくれるという申し出を受けました。スピーカーの1人でもあった(Cerevo代表の)岩佐さんが、ハッカソンのアイディアを出して献身的に協力してくれました。
Googleジャパンにもイベントをサポートしてほしいと相談しましたが、イベントを会社として支援することはできないと言われてしまいました。しかしGoogleからハッカソンをサポートするために2人のボランティアが自費で大阪まで足を運んでくれました。
私がここで言いたいことは、オープンであることがとても重要であるということです。「人民の、人民による、人民のための」というよりも「グローバルな人の、全ての人による、全ての人のための」であると考えます。1年後、12000人もの投資家、起業家たちが大阪の小さな一角まではるばるやってきてくれるまでになりました。
孫:素晴らしいですね。新しいことに今挑戦する時ですね。ここで新たな試みをやってみたいと思います。これから30秒間ドローンを飛ばして、我々の動画を撮影します。ドローンはそんなに大きくありません。ゴムでカバーされているので、危険ではありません。
(会場笑)
たまに周波数の関係で皆さんの頭の上に落下してくるかもしれないです。気を付けてくださいね。ドローンが目の前に落ちてきたらぶった切ってください(笑)。
(会場笑)
では、ドローン発動! あれ?(ドローン出てこず)。オッケー、じゃあ話を続けましょうか? (笑)
(会場笑)
お二人はすでにエコシステムを育成するために多くの功績を残して来られた訳ですが、コミュニティとエコシステムを作るにあたり、最も重要なポイントはなんでしょうか?
ピーター:重要なのは誰の力でイベントを実現することができたか、と考えることだと思います。400人のボランティアがいましたが「皆さんのおかげでこのイベントを成功させることができました」と感謝すること、これが大切です。誰かに言われてカンファレンスを始めるわけではない草の根運動的精神がサスティナブルなイベントをつくる唯一の鍵だと思います。
フィンランドで始めたSlushは数人の友人と、世界中で最も大きなスタートアップのお祭り、イベントにするつもりで始めました。しかし当時はそれを周囲に言っても、誰も真剣に捉えてくれませんでした。むしろ多くの人には「こんな寒くて暗い土地で?」と笑われましたが、今ではSlushは世界で最も大きなイベントになりました。これは誰に言われたわけでもなく自分たちのやりたい、という意思で始めたからだと思います。その意思が基盤となって始めてサスティナブルな変化が起きると思います。
「政府に言われたから」だとか「政策の一環で」これではサスティナブルにはなりにくい。人が自らの意思で動くこと、草の根運動が始まりさえすれば、その後はスノーボール効果でどんどん拡大していきます。Slush Asiaもこのままいけば10万人規模になるかもしれませんね。今日のこのイベントも今後どんどん大きくなっていくための足掛かりだと思っています。
校條:私は熱狂的なサッカーのファンです。若い頃は自分もサッカーをやっていました。当時は野球のほうが人気があり競争率が高かったのですが、サッカーは誰もやっていなかったのですぐに試合に出ることができたからです。
若い人はその時のことは知らないでしょうが、1993年、日本で初めてのサッカーのプロリーグが始まりました。プロサッカーが日本で生まれたなんてとても信じられなかったものです。
不可能なこと、あり得ないことは何もないのです。何でも現実にできる可能性がある。Slushもそうです。初めてフィンランドで開催されようとする時、誰もそんなことは成功しないと思っていた。今日のこのイベントは今後の日本のアントレプレナーシップで起きる大きな変化への大きな第一歩だと思います。改めて、フィンランドの皆さんがこのムーブメントを始めてくれたことをうれしく思っています。
ピーター:イベントの成功は皆さんのおかげです。ボランティアと参加者の皆さんにかかっています。皆の力を合わせればどんなことでも可能です。
校條:もう1つだけ言わせてください。私は今日この場に日本の年長者代表としてやってきました。若い人々へのメッセージです。皆さんが生き生きと仕事ができるように、年長者が若者に道を譲り、あまりごちゃごちゃ口出ししないよう私が見張っていましょう。これが新たなエコシステム作りの鍵だと思うのです。
(会場拍手)
孫:皆さんご存知の通りこのイベントは多くの人々のお力添えに支えられています。不可能なことは何もない。お楽しみいただけたでしょうか? ありがとうございました。
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