2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
世界のベンチャーキャピタル最前線(全1記事)
リンクをコピー
記事をブックマーク
※英語版はこちらから
ヤン・デ・ブリース:おはようございます。インタビューにご招待してくださりありがとうございます。私はヤン・デ・ブリースと申しまして、ブラジルの(ベンチャーキャピタルの)Redpoint e. ventures の共同創業者です。昨年会社を立ち上げて、ブラジルのインターネット・スタートアップにフォーカスした投資活動を行っています。
私たちは、シリコンバレー有数のベンチャーキャピタルであるRedpoint Ventures とグローバルにベンチャー投資を行うe.venturesの2社の支援をいただき、1.3億ドル(約130億円)のベンチャーキャピタル・ファンドを立ち上げました。私たちは今後、創業初期段階のコンシューマー・インターネット、B to B、モバイル、eコマース、メディア、それからSaaSといった分野に投資していく予定です。
私たちの投資戦略は1社あたり300万ドル~500万ドル(約3億円~5億円)の投資金額を、シリーズAと呼ばれる創業段階において投資します。Redpoint e.vneturesは大きなファンド規模であるため、創業初期段階から投資もできますし、シリーズBやシリーズCといった創業時から成長している会社にも投資することができます。
――ブリースさんはフランスの方ですよね?
ブリース:はい、フランス人です。2年半前にブラジルに移住しました。
――なぜブラジルへ?
ブリース:以前 私はシスコ・システムズのCorporate Developmentという買収や投資を行う部署で働いていました。その頃、よく中南米に行っていたんですが、その時ブラジルで素晴らしい事業機会を見つけました。ざっと1億人ほどのインターネットユーザーがいる巨大なマーケットです。それもまだ始まったばかりの市場であり、投資家にとってはとてもエキサイティングな場所です。
ブラジルのスタートアップは、一般的なインターネット・スタッフから大きく成長する新しいエキサイティングな分野まで、あらゆる機会がある。Redpoint Venturesとe.venturesの後ろ盾があるおかげで、私たちの会社はブラジルのベンチャーキャピタルとしてグローバル・プラットフォームを活用できる、ユニークなバリュー・プロポジション(差別化できる強み)を持つことができる。だから、ブラジルに移住しようと決めたんですよ。
――あなたの行動方針の全体像はどのようなものですか? アメリカからインターネット企業のビジネスを研究し、「タイムマシン」モデルでブラジルの企業を作るのか、それともブラジルからグローバル市場に羽ばたくようなブラジルの企業を作るのか、どちらでしょうか?
ブリース:良い質問ですね。私たちはブラジルの素晴らしい起業家を見つけることにフォーカスしていますが、私たちにはRedpoint Ventures とe.venturesというグローバル・プラットフォームがあります。シリコンバレー、ニューヨーク、中国、日本、ロシア、そして今はブラジルにもオフィスがあり、世界中で著しく変化し、動き続けているビジネスモデルやテクノロジーに関して、グローバルな知見は私たちの強みです。
その知見を活用して、ブラジルでの事業機会を見極め、時にはブラジルに進出したいと思っている企業を支援しています。たとえばブラジルに進出したいアジア系企業と提携し、私はブラジルのローカルチームを見つけ、共同でブラジルにおいて事業を立ち上げるといったことす。私たちはブラジル市場のインターネット・スタートアップにフォーカスしていますが、ブラジルで力を発揮するようなアイデアを海外から取り入れる、いわば二刀流のアプローチをしています。
――ブラジルのインターネットビジネスは始まったばかりで、多くの機会に恵まれているとおっしゃいましたね。具体的にどういった機会なのでしょう?
ブリース:10~15年前には既にアメリカで始まっていた初期段階のeコマース企業など、まだブラジルではこれからです。それからまだ確立されていない分野において、一気に飛躍するような事業機会もあります。そして競争はそんなにないんですよ。
モバイル、インターネットサービス、SaaSといった分野に新しいプレイヤーたちが参入して、非効率的な既存の産業をDistrupt(破壊)するチャンスがあります。また、金融サービス、教育、医療などの分野ではまだインターネットは十分に活用された新しいサービスがありません。だから基本的なインターネットサービスもそうですが、欧米の成熟したアイデアを直接ブラジルに持ち込もんで投資を行うこともできるなど、ブラジルはとても興味深い場所なんですよ。
――今現在、どんな分野に興味があるんですか?
ブリース:様々な分野を挙げましたが、なかでも私たちがフォーカスしているのは既存の産業のなかでも非常に効率の悪い分野です。市場は細分化され、競争が少ない、新しく、しかも非常にスケーラブル(規模拡張性のある)なビジネスモデルに注目しています。
――教育分野ですか?
ブリース:教育、医療、金融サービス、インターネット、モバイルなどです。モバイルはブラジルに今後大きな変化を及ぼすでしょう。たとえば、現在ブラジルには2億6500万人の携帯電話利用者がいて、その多くはいまだにフィーチャーフォンやプリペイドの携帯電話なんですが、スマートフォンユーザーが急増しています。
ブラジルには現在4000~5000万台のスマートフォンがあって、2~3年で倍増する見込みです。つまり、巨大なモバイル市場がこれから出現するんですよ。多くの人が初めてインターネットを経験するのがスマートフォンからなんです。これは、ものすごい事業機会を生み出しますね。ブラジルの人口分布はとても若く、彼らはテクノロジーにおいてアーリーアダプターです。
そしてインターネット上では、ソーシャル・ネットワーク・サービスなどをとてもよく利用しています。実際、Facebookユーザーが世界で2番目に多いのはブラジルだし、Twitterのユーザー数もブラジルが世界第2位なんですよ。ですから、人々が情報共有に積極的で、ソーシャルネットワーク上でとてもアクティブです。良い商品・サービスがあったら簡単に広めることができるプラットフォームがあるため、低いコストで新しい分野に参入できます。つまり、新しいサービスを始めるにはとても肥沃な土壌がブラジルにはあるんですよ。
――(インターネット)スタートアップにはどんなシーンがあるんですか? アメリカとブラジルのスタートアップでは違いはありますか?
ブリース:ブラジルと米国とは全然違いますね。ブラジルは本当に始まったばかりなんです。まだ本当に発生段階のスタートアップ・エコシステム(生態系)です。 アメリカにはベンチャー企業が何千社とある一方で、ブラジルにおいてベンチャーキャピタルが投資しているようなベンチャー会社はまだ数百社というレベルです。今日のブラジルのベンチャーキャピタルの投資額は、だいたい年間400~500億円ほどです。アメリカだとそれは何千億円という単位なんですよ。
シリコンバレーのようなベンチャーキャピタルの歴史もないし、シリアル・アントレプレナー(成功しても何度も起業するような起業家)たちもいないし、スタンフォード大学のような大学のエコシステム(生態系)もないし、インキュベーターたちもまだ初期段階です。しかし、ブラジルは市場が大きいので、今始めようとしている人たちは大きな会社を作るのにとても良いポジションにいます。だから、私のように海外からブラジルに来る人が増えてきているんですよ。
ヨーロッパ人、アメリカ人、アジア人たちが、この市場を活用しようとブラジルにやって来て、協力しあいながら頑張っています。私たち皆が協力し合っているのは、市場が成長するためにはそれぞれに成功してもらわないといけない、とわかっているからです。そしてそういった協力しあう環境だからこそ、アメリカほど競争が激しくないんです。起業家の間にも投資家の間にも、そんなに競争はありません。ベンチャーキャピタル・ファンドについてですが、ブラジルにあるベンチャーキャピタル・ファンドはひと握りですから、投資すうる上で企業価値(Valuation)のリーズナブル(妥当)です。投資判断においてセクレクティブ(選択的)に判断することができます。
――どうしてブラジルは外国人にとってオープンな環境なんですか? 他の地域はもっと閉鎖的で、自国民たちを育成しようとしているからでしょうか? ブラジルは外国人にとってもっと魅力的なのでしょうか?
ブリース:良い質問ですね。まず、ブラジル人は文化的にとてもオープンだと思います。とても社交的だし、多種多様な民族を受け入れています。次に、彼らは外国から来るビジネス・パーソンたちから多くのことを学ぶべきだということを理解しています。
彼らは、特にインターネットとテクノロジーの分野において、閉鎖的な環境で自分たちだけの力で行うと成長するのがとても大変だし、時間もかかるとわかっています。ですから彼らは変化に寛容で、シリコンバレーからも取り入れようとするのです。
新しいベンチャーキャピタル・ファンドや新しい経営幹部もよく受け入れています。おそらく市場が成熟してくると、彼らも閉鎖的になるのではないでしょうか。ブラジル経済そのものはとても閉鎖的ですからね。巨大な輸入障壁がありますし、それから税金の問題も。自国の産業を政府が守ろうとしているんです。でもインターネット分野においては、テクノロジーは実に多様なパラダイムに広がっていると私たちは捉えています。だからブラジルの人々は、海外からの変化を受け入れている。私はそう思いますね。
――日本は初めてですか?
ブリース:はい、ここへ来れてとても嬉しいです。日本に訪れてみたいとずっと思っていました。以前香港に3年ほど住んでいたのに、来る機会がなかったんですよね。
司会: Infinity Ventures Summit(以下、IVS)にいらした理由は?
ブリース:インフィニティ・ベンチャーの田中章雄さんと私は、とても密接に仕事をしています。私たちはe.venturesという共通のグローバル・プラットフォームをもっていますので、様々な場所で3ヶ月に1回は会っていますね。田中章雄さんはすでにブラジルに2回も来ているんですよ。私たちはそれぞれの地域からのアイデアを交換することに力を入れているのですが、私たちのパートナーシップを強化してくれます。
日本を訪問することは私にとってアジア、特に日本のエコシステムを学ぶ良い機会になりました。たくさんのイノベーションが起こっていて、それは日本、中国、それにブラジルの今後の動きを考える上で、とても役立つと思うんです。
アジア企業とブラジル企業の交流を、すでにたくさん見てきました。ブラジルを戦略的に重要な市場と見ているアジア企業は、多くあります。Baidu(百度。Tyuu中国の検索エンジン最大手)や楽天などブラジルに投資をしています。5~10年後、アジア企業とブラジル企業の間でM&Aの動きが活発になっていても、おかしくないと思いますね。
――京都の印象はどうでしたか?
ブリース:街、文化遺産、それから人も魅力的ですね。とても楽しいです。先日レストランで座っていたらとても素晴らしい出来事がありました。バーのところで、カップルが挨拶をしてきて、それからお酒をおごってくれたんですよ。とても友好的な人達ですよね。そして街の美しさに驚かされました。
――今朝の瞑想セッション(座禅)には参加されたんですか?
ブリース:参加しましたよ。
――どうでしたか?
ブリース:非常に興味深いものがありました。(座禅では)お坊さんに棒で肩を叩かれましたよ。とても想像をかき立てられて、ちょっと自分を見つめ直すのにいい場所ですね、誰にとっても。
――外国からIVSに参加しようとしている人に対して、何かメッセージは?
ブリース:IVSに参加するのを、とてもおすすめしますよ。堅苦しくないから、いい人間関係を構築しやすい環境になっていると思う。インターネット分野で最も優秀な人たちもこのイベントに参加しているから、彼らと繋がる良い機会だし、他の分野の勉強にもなりますね。ここで過ごした数日間だけで、すでに私はかけがえのない人たちに出会ったし、視野がすごく広がったと思います。
――IVSで面白い人に会いましたか?
ブリース:もちろん。さっきも言ったように、インターネット分野で最も優秀な人たちの何人かがここにいるんですよ。彼らは皆、最前線に立っていて、新しいアイデアを模索しています。私がブラジルに戻ったときには、大きな助けになると思います。
――IVSで何か学んだことはありましたか?
ブリース:イベントがまだ始まっていないので何とも言えませんが、田中章雄さんが運営している姿を見るだけで言えることもあります。彼らは最前線に立っていて、日本と中国の影響力のある人物たちとのコネクションがあります。彼らは起業家たちととても親密な関係だから、強力なコンビになると思いますね。田中章雄さんはすでに素晴らしい投資をしてきていますが、彼が日本および中国のチームと一緒にどうやってそれを成し遂げたかを見るのは、とても刺激的です。できれば、私たちもその成功をぜひ再現したいと思いますね。
――この放送を見ている日本人に何かメッセージはありますか?
ブリース:お招きいただいたことに、あらためてお礼させていただきます。これまでとても素晴らしい経験になりましたし、ぜひまた戻ってきたいです。
――ありがとうございました。
関連タグ:
2024.11.13
週3日働いて年収2,000万稼ぐ元印刷屋のおじさん 好きなことだけして楽に稼ぐ3つのパターン
2024.11.11
自分の「本質的な才能」が見つかる一番簡単な質問 他者から「すごい」と思われても意外と気づかないのが才能
2024.11.13
“退職者が出た時の会社の対応”を従業員は見ている 離職防止策の前に見つめ直したい、部下との向き合い方
2024.11.12
自分の人生にプラスに働く「イライラ」は才能 自分の強みや才能につながる“良いイライラ”を見分けるポイント
2023.03.21
民間宇宙開発で高まる「飛行機とロケットの衝突」の危機...どうやって回避する?
2024.11.11
気づいたら借金、倒産して身ぐるみを剥がされる経営者 起業に「立派な動機」を求められる恐ろしさ
2024.11.11
「退職代行」を使われた管理職の本音と葛藤 メディアで話題、利用者が右肩上がり…企業が置かれている現状とは
2024.11.18
20名の会社でGoogleの採用を真似するのはもったいない 人手不足の時代における「脱能力主義」のヒント
2024.11.12
先週まで元気だったのに、突然辞める「びっくり退職」 退職代行サービスの影響も?上司と部下の“すれ違い”が起きる原因
2024.11.14
よってたかってハイリスクのビジネスモデルに仕立て上げるステークホルダー 「社会的理由」が求められる時代の起業戦略