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ファッションEコマースの立ち上げ方(全2記事)

10年後にショッピングはどう変わる? ミューズ・コー久保氏が語る、ECサイトとリアル店舗の未来

女性向けのECサイトを運営する、ザ・リアルリアルの藤井清考氏、ミューズ・コーの久保裕丈氏が意見を交わしたトークセッション。久保氏は10年後のECサイトの課題として、実店舗と同じような、感情を揺さぶる購入体験を与えるサービスが必要であると語りました。(IVS 2014 Fallより)

ECはオペレーションが肝

藤田功博(以下、藤田):実際お客さんをどんどん増やす中で、Eコマースの側面もあるので。物流であるとか、システムであるとか、開発ってところにも結構お金が必要になってくると思うんですが。そういった面の資金というか、投資費用はどのように捉えていらっしゃいますか。

久保裕丈(以下、久保):おっしゃる通りECである以上は、オペレーションって肝中の肝だと思っています。当然、商品っていうサービスのコンテンツとして設備がちゃんとそろってるっていうのは大前提ではあるんですけど。

その後のサービスの勝ち負けを決めていくのって、やっぱり物流だったりとかシステム側の強さだったりするので、ここのプロセスを作り込む投資は惜しんではいかんなと。

我々スタートアップなので、そんなにそこに投下できる資金ってのがものすごくあるわけじゃないんですけども、ここは肝中の肝だと思っています。

藤井清孝(以下、藤井):おっしゃる通りでね。オペレーションがシームレスにできるっていうのはすごく大事です。あと、うちの場合はお客様の信用を得る為に真贋(しんがん)ってのがあります。本物であるかどうかの証明はブランド品のEコマースでは信用の源泉です。

そういったところもしっかりしてるってことが。じゃないと、みなさん1対1でCtoCでやればいいわけだから。我々が入っている理由っていうのがそういう真贋とかキュレーションとかね。そういったものをやっていると。それがあったうえで、きちんと決済ができる。物流が速くて正確。そのための裏のシステムが大切です。

もともと当社の場合は根っこにあるのが他のEコマースの会社だったので。非常にすぐれたITの連中がこっちに移ってきてるので、わりと証明されたチームがやってるっていう安心感はあります。

藤田:実際に普段接しておられて、こういうものが売れてる、売れ筋ってのはどういうものになるんですか。

久保:難しいですね。

藤田:こういうブランドでもいいですし、こういうアイテムでもいいですし。あるいはそういうヒットってのは、ある程度狙って仕掛けていくのか、それとも売れ行きを見ながら、動きがあったらそれを思い切って前面に押し出していくっていう戦略なのか。

それともある程度、さきほど言われたように、これは売りたいというものに力を入れるのか。どういう感じでいつも品揃えとか管理されているんでしょうか。

他社のランキングとブログを常にチェックする

久保:売れる商品の発掘みたいなところで言うと、やっぱり世間でどういうものが売れてるかっていうのを常にウォッチをします。各ECサイトだったりとか、バイマさんみたいなところを見てもランキングだとかブランド単位だったり、アイテム単位だったりとかで載ってるので。

基本的に我々っていうのは、そういう外部の情報っていうのをウォッチをしています。その中から当然、我々の対象するお客様にヒットする商品って何だろうとか。ピンポイントではなくて、その周辺でこういうものを揃えたらクロスセルが発生するんじゃないかとか。そんなところはよく見ていますね。

我々のサイトのひとつの特徴としては、今、楽天さんだったらこういうものを買うとか、ZOZOTOWNさんだったらこういうものを買うだとかっていう、女性ってきちんとモノの価値を決めて賢くお買い物をしていると思うんですね。

いろんなラグジュアリーなブランドも買えば、ファストファッションもここで買ってっていう、そんな購買行動をしてると思うんですけども。

ある程度テイストを損なわない中で他に回遊することなく、うちにくればターゲットとしているお客様が欲しい商品っていうのがほぼワンストップで揃う商品揃えっていうのをすごく意識しているんですね。

なのでかなり幅広に、いろんなサイトを見て、そこのランキング情報だったり、そういうところで僕もブログを読んだりするんですね。ブログで推されてる商品ってやっぱりそのとき売れやすい商品だったりするので。そういうのをすごく上手くハイブリッドしてるっていうのがうちのサイトの特徴だと思います。

藤田:いわゆるランキングみたいな定量的なものもご覧になりつつ、ブログとかでイチオシされているようなものも混ぜていく。ミックスで上手に売れ筋をつかんでおられると。

久保:そうですね。

藤井:うちは高級ブランドっていうのを全面に出してるので、ひとつのビジネスで、定番でみんなが欲しがる高額商品が少し安く出ていると。エルメスとかシャネルとかヴィトンとか、みなさんだいたいどんな物かわかるわけですね。特にカバン系統っていうのはね。

カバン系統ってのはみなさん欲しいものがわかってて、それを狙い撃ちしているみたいな感じです。

お洋服の場、ファッションがわかってないと、キュレーションもできないし、価格づけもできません。リセール業にとって、ここはハードルが高いところです。価格で勝負する定番商品と、こちらから提案型のファッション性の高い商品のバランスが大切で、それをフラッシュという手法で実現しようとしています。

女性はカバンもコーディネートの一部

藤田:余談ですが、何で女性はあんなにカバンが好きなんですかね。平均所持個数が男性に比べて圧倒的に多いですよね。

藤井:そうですよね、ヴィトンのときもヴィトンのいろんな大帝国を作ったじゃないですか。あれって日本人の女の人がカバンを買ったからできたようなものですよね。女性のカバンのあれってすごいですよね。何でなんですかね。

藤田:しかもブランドを横断してますよね。ヴィトンが好きだからルイ・ヴィトンのカバンばっかり買うかっていうと、こういうときのカバンはルイ・ヴィトンだけども、こういうカバンはエルメスですとか。グッチですとか。横断して行きますよね。何でなんですかね。久保さん的に分析すると、何でなんですかね。

久保:男って持ち物少なくないですか? 

藤井:女性は必ずね、一式持ってますよね。

久保:男って結構、ちょろって出るとき手ぶらですもんね。となると、仕事のときに持っていく物と、ちょっと荷物が多いときに持ってくカバンと、2つくらい。女性はちょっと出るときでも、バッグが必要になるので、やっぱりファッションに合わせて揃えたいんでしょうね、きっと。完全に僕の推測ですけども。

藤田:だから、デートのときにカバン持ってあげるよみたいなことってあんま良くない。みたいなことをデートマニュアルみたいなのに書いてあるんですよね。

要はそれも考えてトータルでコーディネートしてるから、カバンがなくて手ぶらになったときのファッションと同じファッションでも、そのカバン持ってる自分みたいなのをイメージしてるから、要はそのファッションを崩すことになってしまうから駄目です。みたいなことがよく書いてあるんですけども。

久保:どうですか。相手によって使い分けると思いますけれども。

藤井:僕は女性のカバンを持ってあげるっていう発想はないですね。重たいものなら別だけど。

藤田:次の質問で、新しいことにチャレンジして作り込んでいくおもしろさっていうのがどの辺にあるのかっていう質問に移りたいと思うんですが。

藤井:ファッションもそうなんですけどね。ネットが可能にしてることは言い方を変えると個人のアセットをね、マネタイズする場を提供しているわけじゃないですか。

英語が上手な人だったら、英会話を教えるっていうのがネット上でできます。自分が持ってる能力とか、自分が持ってるものは元来自分の世界で閉じてたけれども、それをマネタイズして市場に出すってことを可能にするのがネットですよね。

自分が持ってて使ってないようなブランドとか服ってのは、普通マネタイズしないわけですよね。するときは質屋に売るみたいな感じで少し後ろめたい感じがあるんだけど、そうじゃない。

それを積極的に還元していって断捨離をして、若い人にそれを提供するっていうのは良いことなんだという意識をつくっていきたいです。ファッションもマネタイズできるパーソナルなアセットの一部になってきているということですね。

ECであればワンストップで買い物が出来る

久保:私に関して言えば、ファッションに限らず、IT全般に関わる話だと思うんですけど、まずITって新しい価値観だったりとか行動を生むための道具だと思っています。

例えばそれがファッションになるとどういう行動が生まれてくるかっていうと、さっきお話したように例えばリアルに買い物するときってH&Mに行ってその後ヴィトンにハシゴして、その後ルミネに行ってみたいな。

ぐるぐる回っていかなきゃいけなかったものっていうのが、これがECになった瞬間に女性の買い物の多様化されているものが全てワンストップで買い物できるようになると思います。あとはそれこそスマホ片手に電車の中だろうが、育児中だろうが、そこで買い物がすぐに終わってしまうだとか。

新しい価値観を生む可能性があるっていう意味では、ECっていう仕事に関われて良かったかなって思っています。

もうひとつのファッションっていうキーワードで言うとですね、さっき売れ筋の話が出たんですけど。売れる商品っていうのが本当にそれこそ、1ヵ月2ヵ月単位で変わっていくっていう。

トレンドだったりとか、売れ筋の移り変わりの早さみたいなところが、これがやっぱり事業をやっていて緊張感もありつつ、女性の購買行動みたいなのが読み取れるってのがおもしろいですね。

藤田:急に売れなくなっていくんですか。

久保:それもありますね。当然、いらっしゃるお客様のプールっていうのが限定的である以上は、いったん浸透しちゃったら売れなくなる。こういう理由もあるんですけれども、今まで人気で売れていたようなブランドさんが半年後にはちょっと苦しんでいて、うちでもなかなか売れなくなっちゃったりとか。そんなことも結構あり得るのでそこはおもしろいですね。

藤井:ECの変遷を定番的に言うと、はじめはみなさん欲しいものがわかってて検索にいくと。それから向こうが品揃えしてくる。キュレーションを向こうにやってもらって、キュレーションしたやつをやって、究極的にはパーソナライズできますよね。

そうすると、人が見たときにサイトが自分用にパーソナライズされる時代だし、リアルな世界でヴィトンをやっていたときはいろんな制限があったけど、究極のパーソナライゼーションが一瞬にしてできるのはネットならではですね。

あともうひとつは試行錯誤できますよね。物理的にお店があると、なかなかウインドウを変えられないわけですよ。ところがECであればどんどんできるじゃないですか。そのスピード感っていうのは、どんどん細分化されていって、カスタマイズされていくって方向、これはすごいと思いますね。

ECの発展でリアル店舗はなくなってしまうのか

藤田:私からの最後の質問は、5年後10年後にいわゆるEC、ファッションに限定でもいいんですが、ECの世界がどこまで広がるのかと。よく極端に言う人は「もうリアルなショップは無くなっていく」と。

ショールーム化していって、ほとんどリアルな買い物っていうのがなくなるんじゃないかっていうのと、意外と両立していくんじゃないかっていうのと、いろんな意見があると思うんです。

お二人が見る、10年後ぐらいですね。将来的にこうなるんじゃないかっていう。ECの発展によって街はどうなるか。リアルのショッピングってのはどうなっていくのか。もしくはどうなっていくべきなのか。

久保:そこを考えるにあたっては、そもそもECっていうののできる事の幅っていうのが10年後に果たしてどこまで広がっているのかなっていうのがすごく大事だなって思います。

例えばすごくプラクティカルなところでいくと、試着ができないとか、サイズ感がわからないとかっていう問題が常に付きまとっていますけども、これが10年後までにどの程度解決されているのかっていうのがひとつ。

もうひとつが、どこまで感情価値って言うんですかね、それを付与できるサービスになっているのか。やっぱり実店舗にお買い物に行くときって、消費行動だけじゃなくてひとつのイベントだと思うんですよね。

例えばデートで買い物に行ったりだとか、自分1人で翌日コンパがあるからそこのショップで買ってやろうみたいな。何かイベントだったりがあって、行ったら楽しいっていう感情価値が揺り動かされるからお買い物に行くってところもあると思います。

なので、ECがまだあくまでも消費行動でしかない側面が強いところを、どこまでその感情価値を揺さぶれるような存在になっているのかによって変わると思っています。

それができてくればECのポーションってのがどんどん大きくなってくるでしょうし、でもやっぱり一転リアルなお店っていうのはそういうイベント感だったりワクワク感が強い存在であると思うので、無くなるってことはないと思います。

ECであればワンストップで買い物が出来る

藤田:個人的には複数で買い物に行くときに、まだまだEコマースは、1人で買い物。静かに集中して買うにはインターフェースだったり強みがあると思うんですけど。

2人あるいはグループで1個のアマゾンのサイトをこう、なかなかスマホやタブレットで一緒に買い物をするってのは多分難しいと思うので、そこがどう変わっていくのかがポイントなのかなって思ってるんですけどね。

久保:今のすごいおもしろい話だと思うんですけど、ITの力を使ってしまえばすごく簡単に解決できちゃうじゃないですか。でも、ちゃんとワークをしながらみんなでゲームですらスマホで4人とか対戦できたりするので、原理としてはあれと全く同じことだと思うので、それも容易にできちゃうと思います。

藤井:高級ブランドからすると、彼らの優位性っていうのはすごい大きな街のすごくいい土地を押さえてることなんですよ。銀座4丁目の一角、ニューヨークの5番街の一角とか。そこって普通の人では押さえられない。

高級ブランドの投資がものすごい不動産やロケーションにいっています。ネットはそれらの投資を無駄にするような側面があります。自分たちの投資を無駄にするようなビジネスをやるってのは自殺的なので、必ずそこはブレーキを踏みながらくると思うんです。

藤田:じゃ、百貨店も同じような。

藤井:百貨店も同じだし、あとは例えばVOGUEの表紙から3枚目のところぐらいまでに載るようなとこって、あれもメディアの不動産なわけですね。ロケーションをベースにして戦ってきた人たちって、それを諦めるってのはすごい勇気いると思う。

藤田:その辺が大きなポイントになりそうですね。ありがとうございました。時間が参りましたので終わりたいと思います。

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