2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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フレッド・ウィルソン氏(以下、ウィルソン):(Turntable.fmへの投資について)もう少しひも解いてみましょう。私はビリー・チェイセンとは6年間知り合いで、セス・ゴールドスタインのことは15年から20年近く知っています。
だから彼らのチームのことは良く知っていました。そして彼らはとてもホットなものを持っていて、良いコンビでした。
私は長い間、ビリーのプロジェクトのひとつに投資することを考えていました。彼の才能を知っていたからです。性格も好きで、ずっと尊敬してきて、一緒に仕事をしたいと思っていました。
彼はすでにプロダクトで成功した起業家だったのです。私にとってビリーを知っていたということが、投資に対して熱心に分析しなかったということにつながったのかもしれません。
アーロン・ハリス氏(以下、ハリス):会社に投資することを決めて、A、Bラウンドの段階になったとき、投資した人に対してはあなたのお金を使ってどこに向かって、何をすることを期待しますか?
ウィルソン:基本的にスタートアップとはビジネスを立ち上げることですから、彼らにしてほしいことはビジネスの立ち上げに取り掛かることです。今日、私はそれを階段に例えてブログ記事を書きました。
ステップ1は、プロダクトを作り、そのプロダクトを市場に合うように作りこみ、それこそがシードマネーが使われるべきことだと思います。
初めは2、3人であった創設チームが3人、4人。そして10人、12人、14人のチームとなり、ビジネスの要素をすべて得られるようになるためにシリーズAを終えることが大きな成長へとつながり、それがプロダクトへの継続的な投資へとつながります。
そして、それができるのだと証明できたところで、シリーズBは本格的なビジネス作りとチームの調整を行い、市場に進出し、それが市場において主要なプロダクトとなるのです。第三フェーズでは利益を得て、それから会社を上場させ、または売却し、さらに新たなことを始めるのです。
これらすべてのステップは、最終的には本物の会社を作ることにつながり、私はそれらの道は前進を続けるために必要な流れだと思っています。そして私は、彼らがこれらすべてのこと成し遂げるためにビジネスに全力を捧げてほしいのです。
だから大抵はプロダクトに投資し続け、チームを作り上げ、ビジネスモデルを作り、それを実行し、収益を得て、消費者を得る。そしてチーム作りを続けることが重要になります。
もし起業家が集中力をなくしてしまったり、たくさんのサイドプロジェクトを始めてしまったり、チームを作りあげることを渋っていたり、理由は何であれビジネスに全力を捧げていないのを見たときは、なんとかしなければならないですね。
ハリス:30年間もの間、あなたは企業が資金を得て、それを使うところを見ていますよね。今はスタートアップを始めるのが今までで一番簡単だという話があります。アレクシスは、今スタートアップを始めるのに必要なことは、ノートパソコンを開くことだけだと言っています。
アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)を使えば、コストも大幅に抑えることができますが、シードラウンドはますます大きくなってきています。何が起こっていると思いますか?
ウィルソン:エンジェル・インベスター、シード・インベスター、ベンチャー企業などの投資家から多くの需要があるということだと思います。そして他の多くのタイプもスタートアップに投資しているため、起業家は売り手市場におり、多くの資金を得ることができ、多くの起業家はそれを選択しています。
資金は「ランウェイ」と一致し、「ランウェイ」は成功確率の増加と一致するからです。しかし私はそれはちょっとした罠だと思います。なぜなら、少なすぎる資金は失敗につながり、資金が多すぎても同じだからです。
もし十分な資金があれば、自分のやりたいことに集中できますが、限られた資金しかなかった場合、あなたができたかもしれないすべての可能性を抑制し、あなたやパートナーは難しい決断が強いられます。
「これをやったほうがいいかな? それともこっちをやったほうがいいかな? 両方はできないから、ひとつを選ばなければダメだ。よし、こっちにしよう」となります。
多すぎても少なすぎてもいけませんが、十分な資金は、最も重要なことに対して最大限に利用できますし、自分の望む方向へ導いてくれるきっかけになります。私はそう思います。
市場は今、250万ドルのものシードマネーを獲得できるステージにあると思いますが、私はその金額を獲得することは設立者には勧めていません。
ハリス:低金利の環境と成長できる環境とインフレがある今、その環境はすぐに終わらないだろうということを考えると、このような資本関係はもう少し続くと考えるのが合理的です。
少し先のことを考える投資家として、ラウンドの大きさやラウンドで支払う金額が、あなたにとって理にかなわない場所へ行ってしまうことについては心配ではないのですか?
ウィルソン:そうですね……。ユニオン・スクエア・ベンチャーズは今年で10年目になりますが、シードで払う金額を見てみると、2004年、2005年、ここで行われた2006年、2007年、2008年、またこの場所で行われた2009年、2010年、2011年、2012年と、それはどんどん増えてきています。そして私たちはいくつか変化をもたらすことで現在の地点に来ることができたのです。
私たちはアイオワ、ピッツバーグ、フィラデルフィア、ベルリン、他のヨーロッパのような場所へもより進んで投資するようになりました。それらの場所では需要と供給が平等ではなく、起業家にとっては有利とは言えません。シリコンバレーやニューヨークや他のアメリカの成長している地域ではそれが平等です。
私たちがしてきたことのひとつは、少しえり好みするようになったことです。それほどの金額を払うのなら、私たちが満足できるよう、リスクと結果が平等であり、もう少し魅力や高い質のチームを求めるようになりました。
それが私たちの運営の仕方です。私たちが利益を得られないときが来るかもしれませんが、その証拠はありません。シリーズAのシードは25年間、間違った価格がつけられていたのかもしれません。ついに市場が正しい価格を付け始めたのかもしれません。
ハリス:シード投資を、100ドル、1,000ドルまたは無価値かもしれないという長いオプションだと考えたときに、過去に人々が支払ってきた価値よりも、実際はより高い価値であったと言うこともできますよね。もしかしたらそれが今起こっていることではないですか?
ウィルソン:スタートアップの成功率が上がってきているからかもしれません。投資家が投資額を決めるとき、不運なことに起業家たちは多くの投資家の投資はうまくいかないという事実に対して対価を払っていますよね?
私たちが投資する3分の1はまったくうまくいかないということを私たちは理解しています。そして3分の1は成功はするけど、あまりうまくいかず、最後の3分の1が実際にすべての利益を作り出すのです。
だから私たちから投資を受ける、すべての利益を生み出している最後のグループの人たちは、他の人の失敗に対し対価を支払っているのです。なぜなら私たちは投資した企業のすべてを合わせた利益について考えているからです。
もし成功率を上げるYシードのようなもののおかげで失敗率が下がるなら、それが価格が高騰している理由のひとつかもしれませんね。もちろん私はYシードがそれをすると信じていますが……。
ハリス:世界がつながっている今、私たちにはインターネットがありますし、インターネットの向こう側の人たちは私たちを視聴していますが、投資家は世界中どこでも契約を見つけていますよね。先ほど仰ったように、フィラデルフィア、ベルリンなど世界中でです。
それを考えると、どこに居ようと価格にはパロディがあるように見えるので、本拠地がシリコンバレーであれニューヨーク、ベルリンであれ同じではないんですか……?
ウィルソン:それはまだです、まだ。AngelListはそれを変えるポテンシャルを持っているかもしれません。もしシード、シリーズA、シリーズBがNASDAQのようになれば、それも可能かもしれませんが、多くの投資家、特にシード投資家は、ローカルで行われており、起業家に実際に会い、売り込みを聞き、役員会の一員、少なくとも審議会の一員になり、起業家と定期的に会うこを望んでいます。
それは資金がたくさんあるシリコンバレーや、ニューヨークにいる起業家が、そんなに資金のない地域にいる起業家より有利なポジションにいるということです。それに投資家たちは、スタートアップ密度が高いところにいるスタートアップと仕事をするほうが居心地がよいというのもあると思います。理由はわかりませんが、それは事実だと思いますよ。
ハリス:私はそれには環境的理由があると思います。周りに同じくスタートアップをしている人がいて、テクノロジーについてその人たちと話せることは有益だと思うからです。
私が金融の世界を離れスタートアップで働き始めた頃……その時私はユニオン・スクエア・ベンチャーズの分析プログラムに応募し、即座に拒絶されましたが……。
ウィルソン:面接もなしに?
ハリス:面接もありませんでした。
ウィルソン:わぉ。
ハリス:ありがとうございますと言っておくべきですかね。結果的にうまく行きました。
ウィルソン:(笑)。
ハリス:でもこれがYコンビネーターが考える、なぜどこにいても素晴らしいスタートアップを見つけられるかという理由の一部です。私たちは、彼らにシリコンバレーに来て、そこでどのようにことが進んでいるか見て、それを持ち帰ってほしいのです。
ウィルソン:そうですね。または帰らなくてもいいですね。
ハリス:そう、帰らなくてもいいのです。自分のビジネスにとって一番の場所にいるべきです。
ウィルソン:その意見に同意します。何でも自分にとって最高のものを選ぶべきですよね? 私は家庭を持ちたい場所に会社を立ち上げたいという何人かの起業家を知っています。それはシリコンバレーかもしれませんし、ニューヨーク、ボストン、ボルダーかもしれませんよね。
自分にとって最適の場所でスタートアップを始めることに賛成ですが、同時に……世界には十分なスタートアップが集中している地域、十分な投資家が集中している地域が少なくとも12はあります。
それらの場所は会社を立ち上げるには妥当な場所だと思います。私ならそれらの地域を選んだほうがいいと言いますね。マネジメント担当を雇うのが大変な場所には行かないほうがいいです。
ハリス:なるほど。いくら家賃が安くてもですね。
ウィルソン:もしモンタナ州のボーズマンで誰かを雇おうとしたら難しいですよね。ボーズマンを悪く言うつもりはなくて、ボーズマンは素晴らしい場所ですが、そこではレベルの高いスキルを持った、才能のある人をを雇うことは難しいのではないかと思います。そこで才能を見つけられなければ行き詰ってしまいます。
ハリス:数週間前、私はイスラエルのテルアビブにいました。
(ひとりの観客から歓声)
ハリス:おお。テルアビブのファンがいますね。私はその場所がとても活気にあふれていて驚きました。テルアビブには素晴らしいテクノロジーがあるのは知っていましたし、素晴らしい投資家がいるのも知っていました。まるでサンフランシスコやニューヨークで起こっていることがテルアビブでも起きているようでした。
ウィルソン:イスラエルは長い間、スタートアップのハブですからね。以前、ボストンで起こったことを思い出しました。ボストンよりも力強くなってしまった気がしますが……。
何が起こったかというと、インフラや企業中心から消費者中心へという変遷がありました。ユニオン・スクエア・ベンチャーズを始めた頃に、それが起こり始めました。イスラエルとボストンの起業家やベンチャー企業は、シリコンバレーやニューヨークの起業家に比べてこの変遷に苦しみました。
ハリス:ニューヨークはこの変遷に簡単に対応しました。彼らにとっては初めからそうだったからです。シリコンバレーの対応の速さにはとても感心しました。イスラエルは少し苦しんだ期間もありましたが、やる気を取り戻しました。
イスラエル、とくにテルアビブでのスタートアップは少なくても20年、30年と行われているため、そこにはたくさんの起業家、才能、知識が集まっています。チームをシリコンバレーに連れて行き、そこでどういうことが行われているか見せることもできますが、イスラエルの人たちはどうやってスタートアップをするかすでに知っています。そこには文化があり、素晴らしい場所です。
ハリス:残念ですが、もう時間があまりありません。しかしもう1度だけニューヨークの話に戻らせてください。私たちが今いる場所ですし、私たちがもっと企業を見つけたいと願っている場所だからです。ここ数年で起こったことを考えると、これからの数年で何が起こるのかとても興味があります。あなたもきっと興味を持っているとは思いますが、これからニューヨークで起こることは何だと思いますか?
ウィルソン:今現在、ニューヨークでは起業家やSaaSタイプのビジネスモデルが力強くなってきています。私たちの投資先にも少しいますが、彼らはどこにでもいます。そしてそのような企業がここで作られています。
2009年、2010年のニューヨークにはそんな傾向はありませんでした。バランスだと思います。未だに消費者中心のものもたくさんありますが、企業間取引が積極的にできるスタートアップ環境もここにあります。それはニューヨークにとってとても良いことです。
なぜなら両方のタイプの企業が必要だからです。ベンチャー企業にとって、投資先に両方のタイプの会社があるのはいいことです。そしてニューヨークにある才能はどちらでも生かすことができると思います。
それが一番の変化ですね。それにここには他と比べて多くの資金がありますね。それもニューヨークにとっていいことです。
ハリス:フレッド、今日はどうもありがとうございました。
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