2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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※投資家のシャナ・フィッシャー氏によるスピーチの後に行われた対談
アーロン・ハリス氏(以下、ハリス):みなさん、こんにちは。私の名前はアーロン・ハリスです。私はYコンビネーターのパートナーです。
パートナーになる前、2011年の冬に、Yコンビネーターを通してTutorSpreeという会社を立ち上げました。そして今日、これから迎える人を紹介できることを光栄に思います。
彼は紹介などいらない人ですが、とにかく紹介したいと思います。フレッド・ウィルソンは30年間近く、テクノロジーに投資をしています。その間、彼はふたつのベンチャー企業を設立しました。
最初のフラティロン・パートナーズは1996年に設立され、ふたつ目のユニオン・スクエア・ベンチャーズは2004年に設立されました。東海岸でフレッドが最も有名な投資家のひとりであること、世界でも消費者向けテクノロジーへの投資家であることは疑う余地はありません。
また彼は、自身のブログAVCを通して、財政、テクノロジー、政府、音楽の好みなどについて幅広いディスカッションができる活気のあるコミュニティを作りました。フレッド・ウィルソンを一緒に迎えましょう。
(会場から歓声、拍手)
フレッド・ウィルソン氏(以下、ウィルソン):(私たちの前のスピーカーであった)シャナの話は素晴らしかったですね。私がシャナを好きなところは、彼女が意見を持っていて、それを共有することを怖れていないことです。
それが素晴らしい投資家になるために必要なものです。私は投資家に必要なものは信念だと思っています。そして彼女は信念を持っています。
ハリス:あなたは投資の決定についてどっちつかずのように見え、何か良いものにたどり着いたようには見えませんでしたが……。
ウィルソン:ベンチャービジネスには、大きな損失が出ないように投資し、人に従い、そのとき何がホットなのかを見つけようとし、自分の意見を持たない人がたくさんいます。
私はシャナが語ったことのうち、半分は同意していませんが、私たちはそれについて議論することも大切だと思っています。私が間違っていると思う部分で彼女が正しいと思っていたり、またその逆もあるでしょう。
でもそれでいいのです。投資家にはそれが必要だと思っています。起業家はときにはそれにうんざりするでしょう。
会議に出向き「この人はまったく理解していないな」と感じるような投資家に会わなければいけないからです。でもそれは、何も言ってこない人に売り込むよりましだと思うのです。
ハリス:おもしろいですよね。もし投資家全員がお互いの意見に同意したら、価格は無限に高騰し、結果的にどんな契約も結ばれません。
投資家と一緒にいて、ある人が売り込みに来たとき、何があなたに「これでは成功しないよ」ではなく「彼らがやっていることを信じることができる」のだと感じさせますか? そのとき何を探していますか?
ウィルソン:私たちはみな意見を持っていますよね? だから私がシャナについて言っていたことに戻るのです。
私たちは興味を持っていることに対して意見を持っています。だから私たちは求めているもの、興味をそそるもの、興味をそそられないものについて先入観を持って会議に挑みます。だから起業家は私たちがすでに持つ先入観をつなぐという面もあります。
2003年、私とブラッドが最初にユニオン・スクエア・ベンチャーズの資金を集めていたとき、ブラッドは私に「どうして求人のためのGoogleがないんだ?」と言いました。
「Hot JobやCraigslistやMonsterなどの求人Webサイトにわざわざ行かず、ひとつの場所でインターネット上のすべての求人を、自分のためにフィルターがかかった状態で見ることができないのだろうか?」という意味です。
そして私は「そうだな。それは良いアイディアだな」と答えました。そしてある日、私は友人であるジョン・バッテル氏のブログを読んでいました。その中で、彼は自分の立ち上げたIndeedという会社の話をしていました。
私は「ブラッド、あったよ! これが君が探していたものだ!」と言いました。そして私たちは彼に電話をかけ「僕たちに投資させてくれ」と言いました。
彼らは「いいや、私たちはベンチャー企業とは仕事をしないんだ」と答えました。私は電話をかけ続け、そしてついに当初考えていた5倍の査定額で、投資することができました。
ハリス:それは興味深いですね。それはすでに特定のアイディア、成功してほしい特定の会社があった例ですよね。それがどうやって投資先を決めるかの典型的な例ですか? それともそういう傾向ですか?
ウィルソン:いいや、それは珍しいですよ。起業家たちが素晴らしいアイディアを考えつき、私たちがそれに反応する。大抵は、私たちはこれから来るものや起こるべきものがわかっていて、私たちはそれを探すべきだ、という状態です。これが今の傾向だと思います。
そして時には、このようなアイディアは半分だけ完成していて、まだ完璧ではないというときもあります。そこに起業家がやってきて、投資家たちは「そう、そう、そう! それこそ私が考えていたことだよ」となるのです。彼らはそのアイディアを格段に具体化させているのです。
それについて投資家よりもたくさん考えているからです。会社を作るとき、あるひとつのことをします。そのひとつのことに取りつかれ、それに本当に夢中になり、その状況を投資家よりもよく理解しているのです。
ハリス:今触れている話題は興味深いですね。それは私たちが履歴書を見るときによく話すことです。それは設立者が自分のアイディアをはっきり、上手に伝えることができるかという能力です。
それはとても重要です。なぜならそれらのことについて深く考えたことのある人はたくさんいるからです。どうして特定の人はそれを上手く伝えることができるのだと思いますか? そのコミュニケーションや目立った明確さという点で、どのような反応をしますか?
ウィルソン:そうですね、これは多くの投資家に言えると思いますが、私はとても歯切れよく、とても単純に説明されることが好きです。彼らはすぐに重要なことを説明してくれます。
でも急いで要点へいくのではなく、説明を単純にし、理解するのを簡単にしてくれるのです。
その才能を持って生まれた人もいますし、あとから学んだ人もいると思います。私は長い期間を経て、それを学んできました。そして自分がどんどん向上していくのを感じました。
私は次のラウンドのため、ポートフォリオを作るときにその訓練をたくさんしましたし、起業家が売り込みをするときに手伝ったりしました。
そして私は、電話の相手であれ誰であれ、受け取る側に魅力的な方法で、素早く状況を位置づけることが上手くなっていることに気付きました。
自分が何をしているか、専門的な言葉を使わずに説明できるというのはとても重要なスキルです。
専門的な言葉や3文字のCRMのような略語などに頼ることは簡単ですが、それを聞いた人はボーっとしてしまいます。
たまに「私はXにXなんです」つまり「私は電子機器が得意なんです」とか「私はヘリコプターに精通しているんです」などという言葉を使ってしまう人もいます。
ある意味では、それはとても素晴らしいテクニックですが、ときには自分がしていることを平凡化してしまうこともあります。でも私は歯切れよく、単純にコミュニケーションをとれることがとても重要だと思います。
ハリス:「これにはあれ」というのはおもしろいですね。私たちがTutorSpreeでYコンビネーターに応募したとき、私たちは家庭教師版のAirbnb(自宅などを宿泊施設として提供するサービス)だと売り込みました。
私たちがそうした理由は、とても短い文章にたくさんの情報を詰め込むことができたからです。
でも私たちは全く見当違いだったことがわかりました。私たちは家庭教師版のAirbnbではないのです。それは私たちのビジネスに対する間違った見方でした。
ウィルソン:ポール・グラハム氏は「私たちは家庭教師版のAirbnbです」と言ったときに、何と言いましたか?
ハリス:「素晴らしい。それはおもしろいね」と言い、興味を持っていました。彼は「あぁAirbnbね」といった感じで……。
ウィルソン:ということは、彼の反応は良かったわけですね。
ハリス:その場合、彼の反応は良かったです。おもしろいですね。彼は私たちのことを設立チームとして見ていて、その後にその会社に何が起こるだろうと考えていたのだと思います。
これは4年前のことですが、Airbnbは確実に素早い成長を遂げています。あなたは彼らを拒否しましたが……。
ウィルソン:思い出させてくれてありがとう。
(会場笑)
ハリス:でも彼らは確かにチャンスを与えられました。
ウィルソン:僕が持っている傷口に、もっと塩を塗り込みたいの(笑)?
ハリス:そうですね。あなたと話すたびにそれを持ち出さないといけないんですよ(笑)。
ウィルソン:何がおもしろいかわかりますか? あなたは、良いチームがあるアイディアを使ってできることのポテンシャルについて話していましたよね? それはシード・インベスターが得意なことだと思うのです。
シード・インベスターはチームのポテンシャルと大きなアイディアのポテンシャルをつなぐことができ、それ以上のことにとらわれることがありません。
私たちも時々シードラウンドに投資しますが、大抵それらは会社向けのシードラウンドで、それらの会社はすでに製品を制作していました。
これはユニオン・スクエア・ベンチャーズの批判か観察結果ですが、私たちは今あなたが言ったこと、シード・インベスターがすることを得意としていません。
私たちは作られた製品を持っているチームを評価することにおいては優れていると思います。
今、ザック・シムズ氏が裏に入っていくのが見えましたが、ザックとライアンがCodecademy(プログラミング学習サービス)を作ったとき、私たちは「くそ、あれはすごいな! これに投資しないとな」と思いました。そうでしょ?
私たちは前からザックとライアンのことも知っていたので、彼らがどんなに素晴らしい人かも知っていました。私たちはおもしろいチームを見つけるためにコロンビア大学周辺にいたからです。
だからすでに市場に出してある作品もあり、その上チームのポテンシャルがあったのです。それが私たちが得意とすることだと思います。そして優れたシード・インベスターは製品を実際に見る必要はないと思います。
彼らは製品のポテンシャルを見ることができるのです。私たちにはそれは難しいです。
ハリス:Codecademyはそれの良い例ですね。彼らがCodecademyを始めたとき、彼らはほんの数週間しかその製品に時間を費やしていなかったのに、それを発表した途端……それは素晴らしい発表になりましたね。
ウィルソン:大当たりだったね。
ハリス:大当たりでしたね。すぐに大きな反響を呼びました。他の知っているものと比べると……。
ウィルソン:シャナが言っていたのは、何かほかの人と違うことをするということです。彼らはコーディングを教える方法として、ブラウザ上でコードを書いた最初の人たちだったと思います。
「ザック、そうですよね? あなたが最初でしょ?」「ええ」彼はそう言っています。
ハリス:彼が言っていることすべてを信じられるかわかりませんが(笑)。
ウィルソン:でもそれはコーディングを教えるというアイディアに対するユニークなひねりでしたね。それがすぐに成功した理由だったと思います。
彼らは利用者とってにとても魅力的でした。まるで「あぁ、これなら僕もできるぞ」という感じでした。
ハリス:その成功する瞬間を見ていたとき、どんな基準に注目していましたか? 何か特別に分析しているものがありましたか? それとも全体的な勢いですか?
ウィルソン:私たちは具体的な数字というものは持っていません。いつもみんな「月にどれくらいのアクティブユーザーがいれば、私の会社に投資してくれますか?」と聞いてきます。
私の反応は「まったく検討もつかないよ」です。それよりも市場、その製品、そのような製品に何を求めるかということに基づいています。
とても素早く広がるようなものの場合は大きな数字を見たいですし、実用性のあるものは小さい数字でもいいのです。
高価値のニッチサービスの場合は、それよりも小さい数字で構いません。私たちには公式はないのです。アルゴリズムなどもありません。
私たちはベンチャー企業のためのマネーボールというアイディアをいじくり、パートナーであるアルバートはこのアイディアに夢中です。
これは私たちがアルゴリズムを作って、インターネット上でアルゴリズムを実行すると、どの会社に投資するべきか教えてくれるというものです。
でもそんなに単純なものではないと思うのです。私はそれは科学というよりも、少し芸術寄りだと思います。
ハリス:その決定をするのにあなたに最もトリックを仕掛けるのは何ですか?
ウィルソン:いい例がTurntable(音楽ソーシャルサイト。2013年に閉鎖)です。Turntableは最初、モンスターのようでした。しかし結果としてそれは上手く動かず、彼らの問題は、顧客離れでした。
しかし、早い段階でTurntableは多くの顧客を獲得していたため、何を探すべきかわかっておらず、その顧客離れを見つけることができなくなってしまっていたのです。
長い時間をかけて、その顧客離れの問題が現れてきましたが、それより先に進むことはできませんでした。そして私はその顧客離れは、多くの人が受け身で音楽を聴くという事実に関係してると思います。
人々はソフトウェアを手にし、仕事に行き、音楽をかけたり、ヘッドフォンをして勉強したりします。でも実際に音楽をやっている人と同じ部屋にいたいわけではありませんよね?
Turntableは深刻すぎて、そしてユーザーは「これを使うのをやめなきゃ。Pandora(個人インターネット放送局)や前に音楽を聴くために使っていたアプリに戻ろう」となったのです。それが顧客離れの原因になったと思いますし、私たちはそれに騙されました。
ハリス:また同じような賭けをしますか? その背景には大きな勢いがありましたよね……。
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