2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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山本正喜氏:皆さんこんにちは。お昼明けでちょっと眠くなってきますけれども、よろしくお願いします。AWSさんから何か話をしてくれということで、AWSさんからはもう「何でもいい」と。
新商品に関わる企画でも、マネジメントでも何でもいい、AWSの宣伝も特にしなくてもいいという、わりとフワッとしたボールを投げられたので、何の話をしようかなと考えたんですけど(笑)。
たぶん他のCTOの人とかはイベントの中で、マネジメントの話とか技術の話とかが濃いセッションになると思います。僕のほうではCTOの役割として「プロダクトを成功させる」っていうところも大事なミッションだと思うので、そこにフォーカスした話ができればなと思っています。
チャットワークの前に1個派手に大失敗したサービスがありまして、そこから学んだ知見がチャットワークに生かされているので、その話をお伝えできればなと思います。よろしくお願いします。
簡単に自己紹介させてください。チャットワークの専務取締役CTOの山本です。実は結構古い会社でして、2000年に創業しています。
兄弟で創業していまして、僕は弟で兄がCEOをやっています。株式会社EC studioという名前で大学生の頃に学生起業しました。
そこから11年ぐらいいろんなサービスをやっていて、紆余曲折ありながら2011年にチャットワークというのを僕が企画開発しました。
それがおかげさまで結構当たったので、これ1本でいこうということで、2011年に「ChatWork株式会社」に社名変更して、これに集中していこうということをやっている会社です。
ちょっと慌ててスライドに追加したんですけど、好きなAWSサービスはRDSです(笑)。RDSがなかったらChatWorkはできなかったですね。
こちらがメディアに取り上げられた時の僕の兄ですね。CEOをやってる山本敏行です。2年ぐらい前から1歳の娘を連れてシリコンバレーにChatWork Inc.という子会社を作って、そこに移住して海外戦略を頑張っています。
左下がアメリカのピッチイベントでピッチしている時の写真で、右下がインドのマーケティングチームですね。
チャットワークについては皆さん、情報感度の高い人たちなのでご存知の方も多いと思うんですけど、クラウド型のビジネスチャットツールです。「チャットの効率性・シンプルさをビジネスへ」というコンセプトでやっています。
特長としては、チャットってただのタイムラインで、会話が流れていってしまうと思うんですけど、ビジネス向けのチャットなので大事なところはタスク管理として横に置いておくことで、依頼とかが流れないみたいな形で、ビジネス的になっているのが特長です。
これに加えて、知らない方もたまにいらっしゃるんですが、ビデオ通話機能がWebRTCで実装されていて、ブラウザ上で通話ができるみたいなサービスになっております。これがクラウドになっていて、いろんなブラウザやモバイルアプリもありますというようなサービスになっています。
今は導入企業数が51,000社を超えている状況で、結構な規模感になってきたかなと思っています。代表的な事例としては、ヤマダ電機さんで1,000台のAndroid端末とともに導入させていただきました。
テック界隈だと、HipChatとかSlackとかを使っている方もいらっしゃるかもしれないんですけど、チャットワークはエンジニア特化というよりはいろんな職種の方とコミュニケーションを取るようなところにフォーカスしているので、ちょっとマーケットは違いますね。
「Slack出てるけど大丈夫なの?」とかよく言われるんですけど、Slackが出ても、僕らのサービスの申込数や売上はずっと伸び続けているので問題ないですね。エンジニア向けにも力を入れていくので、今後も期待しておいてください。
チャットワークの運営体制について軽くご説明させてください。まず技術の方は、Webが今9人ですね、サーバサイドのバックエンドでPHPを扱うチームが9名ほど。モバイルのチームが結構増えていますけど、8人ぐらいがアプリケーションを作っています。それにインフラのエンジニアが3人で、合計が20人ぐらい。
そこにUIデザインをするUIエンジニア・UIデザイナーが2人いて、そこにサポートを含めてサービス開発・運営として25人ぐらいのところを僕が統括しています。パートナーとしてKDDIさんと組んでいて、そことのアライアンスの統括も僕がやっています。
この部門とグロースを担当する役員がもう1人いて、そこのチームがWebデザインとかマーケをやったり、グループ会社のChatWork Academyというリアルのコンサルをやる会社があるんですけども、そことのアライアンスもやっています。そこに代表の山本が全体を統括していて、グローバルを見ているというような体制でやっている会社です。
本日は、チャットワークをやる前に大失敗したサービスから学んだことということでお話しさせていただきます。
まずそのサービスをやったのは……。時は2009年です、何があったでしょうか? ちょっと思い出していただきたいんですけれども、こんなことがありましたね。民主党が政権を取ったりとか、ドラクエ9が3DSで出たりとか、マイケル・ジャクソンが亡くなったり、桜島が噴火したり、草彅くんが全裸になったりとか……。
(会場笑)
そういう時代ですね。その頃、僕らは当然まだチャットワークはやっていなくて、当時の主力サービスはSEOツールでした。僕らはおそらく日本で1番最初にSEOの有料サービスをやった会社なんです。
しかしSEOツールにも先がないよねと。もうGoogle先生の進化が半端なくて、パーソナライズだとかいろいろあって。
「これから先SEOだけじゃちょっと厳しいよね」というところで、SEOツールの有料ユーザーがかなりいたので、その受け皿となるようなWebサイトの支援サービスが必要だよね、ということを考えていました。
そこで企画したのが、もしかしたら知ってる方もいらっしゃるかもしれないんですけども「Web Analyst」というアクセス解析のサービスでした。
このWeb Analystのコンセプトは、Google Analyticsって当時からフリーであったんですけど「これみんな使ってるけど、ぶっちゃけ使いこなせてないよね?」と。「最初の1ページ目のセッションを見てるだけだよね?」と。
実際アクセス解析って詳しく分析するといろんなことがわかるので、美味しいところを簡単に、詳しい人じゃなくとも使えるようなサービスがあるといいよね、というところがコンセプトで、キャッチコピーは「社長に見せるアクセス解析」。
もう社長にそのまま画面を見せればいいよね、報告書作んなくていいよね、みたいなサービスを考えていました。
ざっくりと機能説明をさせていただくと、レポートはもう3つだけです。この簡単さが特長なんですね。1つ目が成果レポート。これはもうそのまま印刷すれば社長に提出できるようなまとまったレポートになっています。
2つ目は目標レポートといって、月末の着地がどのぐらいになるっていう予測が出て、月々の目標管理ができるような機能です。
3つ目が対策レポートという、今後のアクションを考えていくようなレポート。この3つだけを見ればいいよ、みたいなコンセプトで作りました。
その下の特長的なのがコンバージョン管理ですね。資料請求とかお申込み、そういういわゆるWebサイトのコンバージョンと言われるもの単位で、レポートを絞り込みして表示することができます。
このグラフはFlashで作り込んだんですけれども、急激に上がったところに緑の旗が立って、急激に下がったところに赤い旗が立って、そこをクリックするとなんで上がったかとか、なんで下がったかとかの詳細が見えるっていうようなツールでした。そこに自動コメントが入るという。
さっきの3つ目の対策レポートのマップがおもしろいのでここだけ紹介したいんですけど、これが十字の四象限のマップになってるんですけど、右に行けば行くほどアクセス数が多い、上に行けば行くほどコンバージョン数が高いっていうもので、検索キーワードとか参照サイトがマッピングされている。
これで何がわかるかというと「アクセス数が多いのにコンバージョン数が少ない」っていうのが右下の領域。これが効率が悪いので成果が出にくいですよということ。
左上が「アクセス数が少ないのにコンバージョン数が高い」っていう、コンバージョン率が高いものなので成果が出やすいですよね。
なので、要は左上にあるものに注力してPPCを打つとか広告予算を突っ込むとか、他にいいLPOを作っていくということをやって、右下のほうにもし有料で広告を作ってたら、そこをちょっと減らしたほうがいいんじゃないかっていう、今後の対策すべきアクションがわかるレポートみたいなもので、これが売りでした。よくできていると今でも思うんですけど、これを頑張って作りました。
社内のエースメンバーを僕も含めて5、6人ぐらい集めてチームを作って開発して、初のAWSの本格採用のプロジェクトで、当時は2009年ぐらいで東京リージョンも当然なくて、RDSもまだなかったような時代ですね。開発に約1年半かけて、結構紆余曲折あって時間がかかってしまったんですけれども、2009年9月に満を持してリリースしました。
これが当時出していたWebサイトですね。動画とかも作って、社運を賭けてチャレンジみたいなところで頑張ってやりました。
展示会などにも出して、大阪と東京でスタッフが分かれているんですけど、全員東京に呼んでビッグサイトに集めて展示会とかをやって、プロモーションも頑張りました。
こうやって社運を賭けて頑張って作ったプロダクトだったんですけど、その後どうなったか。
約3年後、サービス終了することになりました。これ、ご経験ある方は共感いただけると思うんですけど、この「サービス提供終了のお知らせ」をサイトに載せる、これをデプロイする時の切なさ。
(会場笑)
大変残念な思いをしながらも、断腸の思いでサービス停止することになりました。2012年10月15日をもって、提供終了しました。人気がなかったわけじゃないんですよ。10,000サイトを超える多くの利用者があったんですけれども、結局有料率が低く、継続を断念することになりました。
最終的に3年後には、売上が月々のサーバコストとトントンぐらいでしたね。オペレーションコストとか開発コストを考えると、全然赤字という状況です。
もちろん何も手を打たなかったわけではなくて、最初は3ヵ月無料でやっていたのをフリーミアムにして、一定のPV数以下だったらずっと無料で使えるよっていうのをやったりとか、アクセス解析だけ入れて何もしない方が多いので、もう僕らのサポートのチームがWebサイトのコンサルティングをしてあげて、手動でアドバイスするというサービスを有料プランに導入したりとか。
2回の大きなピボットをしたんですけれども、成果につながらずもう撤退しようという話になりました。3年の運営と1年半の開発で合計4年超の開発コストを考えると、もう数億の赤字になりました。
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