2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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林信行氏(以下、林):フリーのジャーナリストの林信行です。このセッションは「クリエイティブ・デザインを経営に活かす」というものなんですけども、ちょうど私は今朝、今度日経BPから出る、アップルのデザイン部門トップのジョナサン・アイブの本、『ジョナサン・アイブ』の翻訳本の日本語版序文を書いてまして。
ここからパネラーの方ひとりひとりに用意してきてもらったお題で話していただきます。まずは、日本ではデザインエンジニアリングをやっている唯一の会社であり、最初の会社でもあるtakramの田川代表、お話をよろしくお願いします。
田川欣哉氏(以下、田川):こんにちは、takramの田川です。よろしくお願いします。ちょっと自己紹介をパパッとして、経営とデザインについて少し話ができればと思います。
takram design engineeringという会社は、東京とロンドンに拠点を持ち、35人くらいの人間が仕事をしています。デザイン系のプロフェッショナルファームです。
僕は元々はエンジニアリングがバックグラウンドだったんですけど、デザインと両方やるというデザインエンジニアリングに移行し、職業としてはデザインエンジニアを名乗ってやってます。最近はイギリスのアート系スクールの客員教授も兼任でやってます。
最近やってきた事例を、パラパラみていただきつつ。ひとつ来月にローンチするプロダクトがあるので、それだけ1分くらいのムービーを見ていただいて、経営とデザインの話ができればと思います。
来年アップルからスマートウォッチが出るんですけど、それにちょっと先駆けて今月の12日から売り出される、日本のとあるベンチャーが出してるVELDT社の「Serendipity」というスマートウォッチです。
これは商品のプランニングから、最終的にハードウェアを作って、スマホのアプリ作って、サーバーのサービス作って、値段決めて、ローンチして、コミュニケーションするというところまでをフルでサポートした、デザインエンジニアリングが豊富に詰まった事例なのでちょっと見ていただきました。
今日のテーマで僕がいただいているパートは「なんでデザインなの、今?」というところなんですけど、たぶんこのセッションにいらっしゃってる皆さんは感度の高い方なので、なんで今デザインなのかを今さら言う必要はないかと思っています。
ここはもうはしょって飛ばしたいんですけど、それを簡単におさらいすると「商品の価値がエクスペリエンスで判断される時代になったよ」ということ。「商品は様々な要素をインテグレーションして作られる時代になったよ」ということ。
「プロダクトのクオリティがいわゆるトッププライオリティになっちゃったよ」ということ。
田川:もう1回、「なんでデザインなの?」ということですけど、この質問はちょっとリフレームする必要があるかと思います。そして、リフレームした質問がこれです。
「なんで、ビジネス・テクノロジー・デザインの3要素のコンビネーションが必要になっているの、今?」こういうふうに読み替えると、皆さんに近い話題になってくるかなと思います。ビジネスとテクノロジーを無視して、デザインを単体で語ることはあんまり意味がないんじゃないかというのが、僕の立場です。
ビジネス・テクノロジー・クリエイティブ、この3要素が良いものを作るには必須です。
ただ、この3つは基本的にはバラバラ。大学でいうと文系・理系・芸術系というふうに教育的にも分かれていて、溝があるし、お互いに理解がない。これをどうやって混ぜていけるかというのが、現場の今日的な問題です。あと経営者もどうやってこの3つを統合的に考えていけるか。
経営者のケイパビリティという意味では、クリエイティブ視点はこれからすごく大事になってくるだろうと思います。一般的にIVSにいらっしゃってる方々というのは、ビジネスとテクノロジーを融合して仕事をしているという方が大半で、クリエイティブを上手く活用できているのはたぶんごく限られた方々だと思います。
今日のテーマが「クリエイティブ・デザインの力を経営に活かすには?」ということなので、今日は皆さんに具体的なアクションとして「次、ウチもこれやってみよう」となるように、シンプルに伝えられたらいいかなと思ってまとめてきました。
「デザイナーを雇ってみようか」「クリエイターを雇ってみようか」というときに、世の中には2通りのタイプのデザイナーがいるということを、まず伝えたいなと思ってます。
どういうことかというと、さっきのビジネス・テクノロジー・クリエイティブの三角形があると思うんですけど、僕はあれをゴールデントライアングルだと思っています。あの三角形をバチッと調和的に運用できる会社やチームは、良いものを高い確率で生み出しやすくなっていると思うんですね。
クリエイティブ側のデザイナーも実は2パターンいて、「BTCトライアングルが頭に入っているデザイナー」と「頭に入っていないデザイナー」とはっきり分けられます。まず前提としてこれがあると。
田川:ベンチャーが経営にデザインを活かすために、一番最初にやらなきゃいけないステップ1。これはHOWの部分ですが、まずクリエイティブディレクターをHIREする。
これは社外で委託するというのも可能だし、インハウスで雇うというのもできるんだけども、まずクリエイティブディレクターは絶対に必要。
ただし、カッコ書きでありますけど、「BTCタイプに限る」。BTCタイプのクリエイティブディレクターをまずは社内に入れる。これがたぶん必須になってくると思います。
BTCタイプのクリエイティブディレクターがいると社内でどういうチーム構成が作れるかというと、エクゼクティブのチームに直結する形でクリエイティブディレクターを置いて。
このクリエイティブディレクターはビジネス・テクノロジー・クリエイティブの話を1人の頭の中である程度把握ができるタイプの人なんですけど、その下にデザイナーとかクリエイティブをやる人たちをバーッとラインナップしていく。そうすることで、短期間でチームを作っていくことが可能になります。
田川:じゃあ、具体的にこういうクリエイティブディレクションがあるチームができると、ものづくりの中で何が発生するか。4ステップで見ていきます。
まず、何か製品を作ろうとかサービスを作ろうとなると、最初に戦略・プランニング・コンセプトメイクみたいなものがあるんですけど、クリエイティブの人たちはこれを超右脳的・感覚的に、ロジックではない側の人間が持っているエモーショナルな部分で解いていきます。
これをストラテジー(戦略)とどうやって合わせ込んでいくか。そこが肝になってきます。この時点で「ちょっと仕事するの難しいな」という感じだったら、もうやめたほうがいい、人を変えたほうがいいという感じだと思います。
コンセプトができると、次はプロトタイピングに入っていきます。たぶん後で須藤さんからも話があると思うんですけど、プロトタイピングも3つあるかなというところです。1つは「ものを考える」Creationのためのプロトタイピング。
2つ目が「改善をする」Improvementのためのプロトタイピング。質を上げていくっていうプロトタイプ。3つ目ですごく重要なのが「コミュニケーション」のためのプロトタイプ。これを作って世の中に出したいと。Kickstarterなんかは、このプロトタイプをコミュニケーションのために使っている良い例だと思います。
田川:具体的なソフトウェアとハードウェアの事例ですけど、こんなものができてきます。
3番目に「PRODUCTION」。ある程度プロトタイプの形ができたら、それを量産する。ソフトウェアであれば、最終的にコードフィックスまで持っていくというプロセスが来ます。
最後は「COMMUNICATION」ということで、作ったものをどうユーザーに伝えていくか。これはtakramがやったドン・ペリニヨンの仕事なんですけど、ユーザーに対してブランドイメージであったりコミュニケーションを上手くやっていくと。
ここもクリエイションがかなり効くところです。この4段階のそれぞれについて、C(クリエイティブ)があるチームとないチームで、完全に質が違ってくる。これは当然売り上げにも効いてくるということです。
おさらいです。ステップ1として、クリエイティブディレクター(BTCタイプに限る)を社内で雇う、社外から迎え入れる。「こんなの当たり前だよ」と思ってらっしゃる方々も、この中にはいらっしゃると思います。
ステップ2なんですけど、ここまでいくとたいしたものというのがここで、「BTC ASSIMILATION」。いわゆるBTCをチームとしてバラバラにやるのではなくて、例えば1人の経営者の頭の中に「BとTとC」が共存する状態、もしくはひとつのチームの中で「ビジネス・テクノロジー・クリエイティブ」をそもそも分けずに考えられるような状態になっていく。これが最強のチーム構成なかなと思ってます。ありがとうございます。
林:ありがとうございます。takramの田川さんでした。続いて、最初のセッションでも出ていたPARTYの中村さん、お願いします。
中村洋基氏(以下、中村):PARTYの中村です。田川さん、そんな人います? 在野に。あとで話したいんですけど、在野にいないから頑張って育てようとしてるんですけど。
田川:いるいる。
中村:本当? ちょっと教えてくださいよ、具体的な名前を(笑)。
じゃあ、ちょっと話をさせてください。PARTYは「デザインと技術とストーリーテリングで、新しい体験をつくる会社」です。
私のパートでお話ししたかったことは「クリエイティブと経営」なんですが、世の中で行われている「クリエイティブ」の名が付くものは、ほとんど「課題の解決」というふうに訳せるんじゃないかなと思うんです。
その中で、さらに狭義においてはこう分割できる。「クリエイティブというのは、問題を発見する能力のこと。そしてデザインというのは、それを解決する手法のことだ」と。
経営におけるクリエイティブというのは何か。別にウチの会社は、ユニークな経営アイデアをしてるわけではまったくない。
普通の経営をしてますが、人をどうやって育てていくかというか、それが経営の中ではクリエイティブ資本として大事なんですね。チームでの制作フローが、どういうふうに問題が解決されれば、それぞれのメンバーが今までより良いベスト、更なるベスト……と上回る結果を出せるかということ。
これがすごく難しくて、ずっと悩んでました。ウチの会社は4年目なんですけど、ようやっと形ができてきたかなというところなので、その中途の状態を皆さんにシェアしたいかなと。
中村:話したいのは、要するに「つくりかたをつくる」ということなんです。わかりやすい話でいうと、こんな図があります。「ウォーターフォール」と「アジャイル」という言葉ですね。
ソフトウェア開発で使われますけど、いわゆるウォーターフォールは、型を決めていって「ここはもうできたから戻りません」と。「分析、設計のところまでいったら仕様は変えません」と杓子定規にやっていくやり方。
アジャイルは、ある程度タームを決めて、そこまでに開発してレビューして、もしかしたらその途中で振り返るというやり方。
ウチの会社は、自主開発とクライアントワークが両方あるんですね。で、クライアントワークは、かなりウォーターフォール型なんですよ。どうしてかっていうと、限られたスケジュールを落としちゃいけないし、それなりに結果が出るものを作らなきゃいけない。
ということなので、基本的にはウォーターフォール。全部のフローがウォーターフォールだと窮屈になる。
一方、全員アジャイルでやるとダレるんです。特に自主開発はめちゃくちゃダレる。「自主開発より、締切があるクライアントの案件のほうが先だ」みたいな。
なので、ウォーターフォールの中にアジャイルを作るということ。ウチの会社は大体、前例のないことを締切付きでやるんですね。なので、これが非常に大事だなと思ってます。
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