2024.12.23
大量の問い合わせにデスクはお手上げ、現場はブチギレ…… 崩壊したチームを立て直した、kintoneによる業務改善の道のり
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武田純人氏(以下、武田):前提として「後から振り返った時に、もしかしたら今の状況がバブルなのかもしれない」っていうのをイメージして今日のセッションも進んでいたと思うんですけど。
「もしかしたらバブルが弾けるかもしれない」っていう中で、事業会社であると同時に投資家でもある青柳さんたちが今どんな準備をしているのかということについてぜひ教えてほしいです。
青柳直樹氏(以下、青柳):そうですね。まずこういう局面においてはよりセレクティブに行ったほうがいいっていうのは過去からの学びなのかなと思っています。
やっぱりその時だけ見てるとわからないですけど、バリュエーションの過熱感っていうのは、歴史を見ると現実のものとしてあるので、「ボールを見送る」っていうことを意識的にやるようにはしています。
同時に戦略投資家からすると、こういう相場が読みにくい時ってチャンスだなという風にも思っています。ある種どんな相場でも、それなりの投資戦略があるわけで、バリュエーション水準が変化してきたら、それに応じたやり方を取る。
中長期のリスクを取れて、イグジットをVCさんとは違う形で考えられる。事業で回収すればいいとか、10年~20年で回収すればいいっていう立場を取れるので、逆にどこか入るいいタイミングはないかなとか、考えています。
武田:まさに。逆に株主をはじめとするステークホルダーの数を限定させて長期間での事業戦略遂行にコミットする、みたいな準備の仕方も、今とるべきストラテジーとしてはありなのかなと思うんですよね。
青柳:そうですね。これは後で歴史が証明してくれるものだと思いますけれども、私もグリーも、結構この夏ぐらいから上昇相場の終わりみたいなところを理解してセレクティブになっているところです。
一時期は100億ぐらい投資しようという話をしてたんですけれども、バリュエーション水準の変化を感じ取りまして、実際に日本国内のストラテジック投資という意味で、グリーベンチャーズを除いて投資したのはスマートニュースだけでした。
アジアで「Hotel Quickly」という会社に投資しましたけれども、そういう形で結構セレクティブにしてきていて。投資予算を今年全て使わなくてもいいんですよ、それはファンドも同じだと思うんですけど。
という意味では、待つ仕事というか。もちろん打席には立って見ていくんだけれども、今は「見逃す」っていうことも大事な局面なのかなと思っていたりはします。
武田:ありがとうございます。
小泉文明氏(以下、小泉):大型のファイナンスに限ると、VCからは今年(2014年)の前半は10億以上が結構多かったかなと思っていて。
ラクスルとかアカツキとか、結構10億以上がポンポンポンと、メルカリも含めて6社ぐらいあったのかな? 夏以降ぐらいからちょっとVC側の大型ファイナンスは少し減ってきていて、どちらかと言うとKDDIさんとかDeNAさんが自分たちの戦略に合うところを買っていくっていう感じに変わってきている。
VC側がどこまで本当にハイバリュエーションを追ってるのかっていうところは、ちょっと見えづらいなとは思っています、夏以降は。どこまでみなさんが、今わからないところで交渉してるのかなとか。
佐俣アンリ氏(以下、佐俣):投資家の中で明らかに3ヵ月前ぐらいから、まさに先ほど言われていた「セレクティブ」というワードがすごく出てきたなと思っています。来年の前半もこの言葉を中心に動くんじゃないかなと。
逆にメルカリさんみたいに明らかに伸びている会社は、正直直近のバリュエーションについて、極論、例えば150億か200億か300億かっていうのは関係ない。1000億、2000億いくんだったら、みたいな話にむしろ未上場のファンドのマネが寄っていく気はしますね。
青柳:なるほど、やっぱりよりセレクティブになっていくっていうのがテーマなんですね。一方で、ベンチャーキャピタルファンドに対してお金がまだ流れ込み続けている現実があって、政府系のファンドというか投資家っていうのも存在感を高めてきています。
投資家サイドの投資意欲はまだ終わってない感じがするんですけれども、これは来年の前半ぐらいから潮目が変わってくるのか、それとも、意外とゆるりゆるりと「でも10億円規模のファイナンスも多く見かけるね」っていう感じで続いていくのか。その辺はどんな風にご覧になっていますか?
佐俣:一般的にスタートアップが投資を受けてから上場するまで3〜4年かかります。ところが不思議なんですけど、ベンチャーキャピタルって上場マーケットが閉じると、3~4年タイムラグがあるのに投資も止めるっていう癖があるんです。
だから本当にサブプライムの時みたいに、上場マーケットがスパッと止まらない限りはゆるりと投資をし続けると思うので、ファンドレイズしてしまったからには、たぶん続くんだろうなと。ただベンチャーキャピタルに流れるお金自体がこれより増える感覚は僕はあんまりないですね。レイズが終わった人たちはまた別ですけど。
青柳:なるほど。レイズが終わったらそのままゆるりと投資を続けるだろうと。ただし、IPOマーケットの動向っていうのが影響を与えるので、そこのパフォーマンスがあまりにも軟調だと少しずつ控えていくだろうということですね。
特に日本の場合だとほとんどイグジットがIPOですからね。いろんな要因が重なりますけど、IPOマーケットが今年みたいに70数社上場というのが来年以降も同じペースで続いていくのであれば、過去数年間で新たに立ち上がっているファンドが投資する期間としては、ここから3年とかはあるわけですよね。
佐俣:ただ、今日本のベンチャーキャピタルはすごい試練に立たされています。
青柳:でも恵まれてる感じがしますけどね、お金がどんどん集まり始めて……。
佐俣:僕はすごい危機感があるんですね。99年にファンドレイズバブルがあって、それがまるごとコケたせいで、日本のベンチャーキャピタルのIRRの中央値はゼロからマイナス5%に振れてるんです。これのせいでグローバルの中で金融商品として見做されてないっていうのがあります。
青柳:なるほど。
佐俣:今レイズしたファンドがもし全部コケるとしたら、もう二度と世界のお金は日本のベンチャーキャピタルに来ない。短期的な、日本の中のちょっとした景気変動とかで集められる人しか生き残れなくなってしまうので。
ベンチャーキャピタルファンドという事業をやっている人間としては、ここでみんなが踊ってしまってベンチャーキャピタルのリターンが下がると、日本のベンチャーキャピタル産業が消滅してしまうという危機感はすごく感じています。
青柳:そういうアンリさんのような見方を持ってる方々はよりセレクティブになっていると。一方で、当面の市場環境やバリュエーションに対して強気な姿勢の投資家さんってまだまだいると思うんですけど、そこら辺ってどうご覧になっていますか?
そういう方々が、とは言え、まだ結構いらっしゃるとすると、そこがバリュエーションを維持するんじゃないか。もしくはその派生として「この会社がPSR X倍で評価されているので、うちのバリュエーションも同じでお願いします」みたいな案件がまだまだハングオーバー的に続くんじゃないか、とも思えるんですよね。ANRIの投資戦略としては、来年前半はあんまり投資しない?
佐俣:シードにはひたすら投資を続けます。シード投資家として、僕は10年結果が出るのを待つ気でいます。3~4年経って開花する人たちもいますし。
僕が変えた戦略っていうのは、逆にシードに振って、仮に今からクライシスが起きたとしても既存投資先投資をし続けられるくらいのファンドの体力はあるので、5年、10年でも戦う気概がある若い人間中心に張っていくということです。
小泉:でもアンリの戦略って、エンジェル投資家とどう付き合っていくかっていうのが極めて大事かなと思っていて。僕もまぁ少しは出せるし、青柳さんも辞めたら絶対出せるし、みたいな人たちがボコボコ出てくると、そういう人たちのアドバイスもありつつ、ファンドの償還もなく、すごくゆっくりと応援していけるお金に……。
武田:昨日のセッションでも、いみじくも「お金持ちからお金をもらったほうがいいよ」っていうアドバイスがありましたよね。
佐俣:おっしゃるとおり、来年からエンジェル投資が激増すると思っています。僕のファンドとしてはまさに小泉さんのおっしゃるとおり、エンジェル投資家とどうネットワークを組んでいくかが今一番大きいテーマですね。
青柳:アンリさんがシード投資をしていく中で、エンジェル投資家の方々はある種の競合かもしれないですけど、逆にタッグを組んでいくと?
佐俣:競合というより、そもそもエンジェル投資マーケットがまだほぼ日本にはないと思っていまして、僕とか、僕の師匠でもあるEastVenturesの松山太河さんがエンジェル投資の市場を代わりにやっているという感覚が強いんです。
本来エンジェル投資家という大きいお金を持っている層が支えていなきゃいけないところを、一旦僕らが肩代わりしているというか。なので、来年はとうとう正しい姿のその人たちがやってくるっていう年じゃないかなっていう期待をしてますね。
青柳:なるほど。こういう時代を経て、新たにエンジェル投資家となられる人たちが増えていき……。
佐俣:まさにスマートニュースにおける川田(尚吾)さん(DeNA共同創業者、スマートニュースエンジェル投資家)なんて、どんどん次のラウンドも乗っかり続けていらっしゃいますし。
一同:そうそう。
佐俣:ああいう方がもっと増えると、日本はもっとバラエティが出てくるかなと。
青柳:非常に前向きな話になってきたんですが、残り時間も限られてきたので、2014年のスタートアップファイナンスに関して「これはどうだったかな?」とか、これは今後の健全なスタートアップファイナンス市場・IPO市場のためにちゃんと警鐘を鳴らしておいたほうがいいんじゃないか? というところがあれば、その前向きな思いとともに、これはこう良くしていこう、これは良くないみたいな話を、それぞれいただければなと。
武田:今日のセッションで青柳さんがお話されていた中ですごく印象に残ったのが「学んだ」っていうところなんですよね。バブルって、当然いつかまた起こるんだろうし。過去も起こってきたので。でも、そこからどう学ぶかだと思うんですよ。
具体的なファイナンスの事例に関して云々はなかなか申し上げられないですけれど、この2014年を見ていて、未上場市場における資金調達において、桁の競い合い、金額の競い合いという側面がやっぱりすごくあったと思うんですよ。
10億の後は12億、その次は15億、みたいに、大きければ大きいほどいいと。そういう風潮が。もちろんベンチャーの経営者はみんなものすごく大きなビジョン、やりたいことがあって。そしてもちろん、お金がたくさんあったらきっといろんなことができる。
それは事実だと思うんですけど、やっぱり資金使途が本当に明確にあって、ライトタイミングで、ライトバリュエーションで調達できてるのかっていうところの説明責任を本当に果たしてたのかどうかを見ると、僕はすごく反省もしなければならない年だったんじゃないかなとも思うんです。
ただ一方で、さっきもおっしゃっていたような、これまで限界だと思われていたところを突破するような会社やファイナンスが出てきたというのもすごく大事なことで。
そういう意味では、やっぱり経営者は常に学ばなきゃいけないし、お金の出し手もやっぱりやりながら学んでいくこと、その意識をもち続けることが必要なのかなと思うんですね。
青柳:小泉さんはどうですか?
小泉:表のセッションで話していたことに近いんですが、お金って貰うより使うほうが本当にセンス要るなと思っていて、経営者の全てがチェックされてるなと思ったりしていて。
使い方に関して本当に準備をしていない人たちが、大型のお金をまず集めたいって言い始めていることについては、ちょっと気をつけた方がいいかなと思っています。
特にマーケティングみたいな、ともすると溶かしちゃう可能性があるところに対して、テストであるとかいろんな戦略を持っていないところは少し気になるところではありますね。
青柳:そういう例ありました? 2014年。
小泉:いやいや、これはまあちょっと言いづらいところではありますけど(笑)。
青柳:ありがとうございました。じゃあアンリさん。
佐俣:2014年に話が出ていた10億円近辺のバリエーションのファイナンスの9割は、僕は投資しないほうがいいと思ってます。
青柳:おぉ~。
佐俣:だから僕はシードに振ったんですね。僕としては、投資する相場になっていない。特に後半は。明確にそう思いました。ただし、やっぱり始めも言ったとおり、本当に突き抜ける会社が出てきて、そこにお金がついてきて、人もついてくるという。
日本のインターネット史が1995年からだとしたら、過去20年の中で最高の状態だと思うんですね。なので、人もお金もついてくるこの最高の時代に、突き抜ける人たちが何人出るか。
もちろん潰れる会社もたくさん出るんですけど、この突き抜ける人たちが何人出てくれて、どこまで突き抜けるかっていうのが問われている年なのかなと思って、僕も身を引き締めないといけないなと思いますし、そういう会社を一緒に生み出していきたいなと思ってます。
青柳:アンリさんの投資戦略が一貫していて、しかも自分だったら今の10億ファイナンスの10個のうち1つしか投資しなかったというのが、非常に考えさせられるおもしろい話だなと思いました。
お時間も迫ってきたので、最後に今までの話を踏まえて、2015年はこうしていきたいというところをみなさんにお伺いしたいと思います。じゃあまず武田さん、そして小泉さん、そして2015年こういう突き抜けた会社に投資していきたいっていうのを最後アンリさんに締めてもらいたいなと思います。
武田:自分は、本当に何度も出てきてますけれども、これまで限界だと思われていたところを突破した会社が出てきたという、この流れを本物にしていけるかどうかが2015年のベンチャーマーケットそしてインターネット業界の大きな仕事なのかなと思っています。
盛り上がって、かつ冷静に学んでいくっていうところも忘れずにやっていきたい。そういう2015年にしたいなと思っています。
青柳:ありがとうございます。
小泉:2015年は、今までメルカリのことを言ってきたのでそこをまず成功させるのはマストなんですけれども、個人的に思っていることは、産業ってやっぱり新陳代謝が全てかなと思っています。
やっぱりいかにいい会社が残って、ダメな会社っていう言い方はおかしいですけど、良くないところから辞めていく、もしくは人が出て行くということ。
新陳代謝の中で常に最高のものが残っていくみたいな、サバイバルな状況をもっと作っていく必要があるのかなと思っています。変な話、リビングデッドになってるベンチャーが多すぎるんですよね。そこに残っている従業員も多すぎる。
やっぱりその人、その人生、いろいろあると思うんですけれども、ベンチャーをやってる以上は大きな成功を勝ち取りたいと思っている人たちが多いと思うので、もっと新陳代謝を起こすべきだと思います。
来年はたぶんもっと激しく、セレクティブっていう言葉もありますけれども、まさしくいい会社と悪い会社の差が出ると思うので、僕らとしてはいい会社をどれだけ作れるかだと思っています。
ダメな会社はちゃんと出す、M&Aも含め、みんなでそういうことをやっていくのが大事かなぁと思っています。以上でございます。
青柳:じゃあ、アンリさん。
佐俣:僕らはグーグルを超える会社を生んでいって、世界の進化に貢献しなきゃいけないんですよね。
それがそもそも僕らの仕事なんです。僕らは経営者なので。そういう会社をまだ日本は生みきれていない。悔しいですけど、孫さんが唯一、世界の中で本当にトップを獲るというゲームを真剣に考えているんですね。
僕らは孫さんから遅れること20年、30年。年齢としては下ですけど、まだ孫さんを超えられてないんですよね。でも孫さんより先に、むしろジャック・マー的な人が上にいますし、僕らはそれを超えていかなきゃいけないんですよね。
僕はそういう起業家が生まれるのを一緒に携わりたいですし、僕は投資家としてそういう存在にまで行きたいと思います。そういうのを真摯に挑戦し続けるっていうのが、来年1年も僕らの使命なのかなと思っています。
青柳:ありがとうございます。
武田:ということで、青柳さん。
青柳:あっ、そうですね。今のアンリさんのお話を聞いていて、2015年はもっと盛り上げたいなと思いました。もちろん実際にセレクティブになっていくだろうし、上場後にいろいろ市場の審判を受ける会社が出てくるんだろうなという風に思います。
我々としてもそこからちゃんと学んで消化をしつつ、目線を上げていかなきゃなと。20年の歴史の中で今が一番いい環境なんだったら、じゃあ来年はそれを超える年にしていくと、僕らが思っていかなきゃなと思いました。
確かに孫さんや三木谷さん以降、1兆円企業というのはあんまり出てきていないなと。こういういい環境を活かして、ぜひグリーがそういう企業になりたいという思いがあって、私自身はそっちのほうで頑張っていく所存です。
同時に、今の若い経営者の中から次の孫さん三木谷さんに匹敵するような人を僕らが作り出していかなければなと思っています。
それでは、お時間にもなりましたので、今回は「スタートアップファイナンスの今後」というテーマについて豪華メンバーでお送りさせていただきました。どうもありがとうございました。
一同:ありがとうございました。
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