2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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ベン・ホロウィッツ氏(以下、ベン):さて、質問を受け付けます。
学生:役員を辞めさせる例をお話ししていたと思うのですが、役員本人や他の従業員と、どのようにしてコミュニケーションを取ればいいのでしょう?
ベン:素晴らしい質問ですね。役員を解雇する場合、本人にどのようにして話せばいいのか、他の人にどうやって説明すればいいのかということですね。
ここには当然、いくつかの失敗があります。あなたは雇用に失敗した。そして全体をまとめ上げることに失敗した。そして彼らは、担当する仕事に失敗した。これらは明確に失敗です。
まず誰かを解雇する場合は、誠実でなくてはならないということです。自分が失敗したと思うべきです。こうした場合にありがちな反応がいくつかあります。ひとつめはこうです。
「お前ダメだな。クビだ。失せろ」
これは非常によくありません。なぜなら本当ではないからです。あなたも失敗の一端を担っているはずです。もうひとつのダメな例は、湿っぽすぎる場合です。
「悪いのはあなたじゃない、私なんだ!」
これだと、まるでそんなに好きじゃなかった彼氏を振るときみたいですよね。
(会場笑)
一般的に、人を雇う時は最もいい人を雇おうとしているはずです。合格させ、雇用した人を仕事につけて、その人が失敗したとしたら、それは採用プロセスに問題があったがゆえに、会社のニーズに対応できなかったということです。これが全てとは言えないまでも、最も多い理由です。こうした場合、次のように切り出すのがいいでしょう。
「今、こういう現状になっているんだ。そして私が決断を下したときに、お互いについて見えていなかったこのような問題があった。残念ながらこうなってしまったけれど、次に進まなくてはならない」
そして他の従業員には、別の切り口から説明しましょう。
「実はポストが空いたんだ。この仕事を誰かやってはくれないか」
これはビル・キャンベルが教えてくれたことですが、仕事を取り上げるからと言って、その人の尊厳まで取り上げる必要はありません。会社で「あのクズ野郎を叩き出してやったぜ」なんて言うのは不適切です。
ただ仕事をしてくれたことに感謝し、他の人には次のステージに行くんだということを伝えましょう。個人的な詳細について話す必要はありません。尊厳を持ったまま送りだすことが大切です。
その日のミーティングであなたが話すことが、そのまま彼らの評判になるわけです。彼らが就職しようとしている次の会社からかかってきた電話を、社内の誰が取るかわかりません。それにも関わらず、悪い評判を流すことはありません。これは非常によくないことです。「我々が失敗した」という意味合いは伝わらず、ただ「彼が失敗した」ということだけが伝わってしまうでしょう。
つまるところ、重要なことはふたつです。ひとつはできるだけ誠実であること。そして彼らの尊厳を守ることです。
学生:昨日あなたの本を読んで動悸がしました。私の質問は、ストレスをどのように管理しているのかということです。薬を飲むのか、あるいはヒップホップを聞くのかとか。
(会場笑)
ベン:質問は、CEOとしてのプレッシャーにどのように耐えているのか、ということですね。私は昔、高身長のイケメンだったのです。今はそうでもないですが(笑)。これはよく聞かれる質問です。しかし明確な答えはありません。ここに私の美しい妻が座っています。彼女のおかげだということにしておきましょう。
(会場拍手)
自分を支えてくれる人と結婚すれば、1000倍くらい楽になります。そうでなければ私は間違いなく死んでいたでしょう。
(会場笑)
ストレスに抗う方法としては、何が起きたかではなく、何ができるかを常に考えるのがいいと思います。これは本当に難しいことです。常に周りの人がどうすればいいのかと詰め寄ってきます。
資金がなくなる、死んでしまうと。こうした言葉に囚われても仕方がありません。選択肢は何か、何ができるのか、どこに行けばいいのかを考えましょう。これがうまくできるなら、成功を手にする確率も大幅に上がるでしょう。
学生:トゥーサン・ルーヴェルチュールはどうやってフランスの将軍を自分のために働かせたのですか?
ベン:いい質問ですね。どうやってトゥーサン・ルーヴェルチュールが、フランスの将軍を味方につけたか? 理由は、将軍たちはトゥーサン・ルーヴェルチュールに殺されると思っていたため、そうでないとわかったときの衝撃が大きかったからです。フランス側からしてみれば、奴隷軍は蛮族のようなものでした。当然負ければ殺されると思っていたのです。
そこでトゥーサン・ルーヴェルチュールは、お前たちを殺す気はない、と言いました。これはもはやこれまでのシステムや考え方が全く再編されてしまうような出来事でした。これによって、フランスよりもむしろトゥーサン・ルーヴェルチュールに忠誠を誓うようになったのです。
興味深いことに、トゥーサン・ルーヴェルチュールはこの技術をユリウス・カエサルから学んだようです。彼は非凡な才能を持った奴隷でした。彼の主人はその頭の良さを見抜き、トゥーサン・ルーヴェルチュールにプランテーションの経営を任せるべく図書室の本を読ませたと言われています。
そして主人の図書室の本の中で、最もトゥーサン・ルーヴェルチュールがよく学んだのがユリウス・カエサルでした。彼はこの技術をカエサルから拝借し、さらに劇的な文脈で用いました。彼の軍にはイギリス人、フランス人、スペイン人、そして白人と黒人の混血であるムラートがいましたが、彼のリーダーシップがあまりにも優れていたために、誰もが彼の味方になりたがったのです。
学生:自分と異なるイデオロギーの人、今まで自分と対立していた人とどのようにして融和したのですか?
ベン:質問は、どうやってトゥーサン・ルーヴェルチュールのイデオロギーに、これまで対立していた人を取り込んだのかということですね。彼が何をやったのかというと、基本的には今よりいい形を提案することです。
あなたがリーダーで、敵がいるとして、こちらに寝返って欲しいと思っている。これはビジネスではよくある状況です。競合の相手から人材を引き抜いてきたい。しかし何度も裏切り続けて、つく側を変えるような倫理的に問題がある人間を雇いたくはないはずです。
だから文化が向上し、ミッションが向上し、全てのことがもっと上手く行くようになる。そうした状況を示すことが大切だと思います。
学生:どうやって文化を築いていったのですか? あなたと働く起業家は、どうして他のベンチャーキャピタルではなくあなたたちを選ぶのでしょう?
ベン:これは私よりもサムに聞いた方がいいかもしれませんが(笑)。質問は、私たちの会社アンドリーセン・ホロウィッツが、他のベンチャーキャピタルと差別化できるような文化をどのようにして築いたのかということですね? これまで5年ほどやってきましたが、世界中がなぜ我々を成功したと見なすに至ったのかを説明します。
これまでのベンチャーキャピタルであれば、起業家がある一定のところまで会社を育て上げたら、別のCEOを見つけてきて会社を譲ることが多かったように思います。しかし我々の考え方は、創立者は特別だというものです。創立者がCEOになれるようにするために、文化を育てることが大切だと考えています。さまざまなシステマティックな物事が、他のベンチャーキャピタルとは異なるわけです。
大きな違いはふたつあります。ひとつは我々のパートナーは、みんな創立者でありCEOだということです。経験者優遇というのは冗談ですが(笑)。CEOにアドバイスをするとしたら、CEOをやったことがあるほうが絶対にいいでしょう。これが私がサムを好きな理由です。彼はCEOでした。本人はあまり語りたがりませんが、CEOとしても優秀でした。
そしてもうひとつは、CEOのプロフェッショナルを連れてくる場合、あらゆる場所から人材を連れてきます。GoogleやFacebookのような名だたる大企業から、その領域の重要な人物を連れてきます。我々はそうした人脈を会社の中に作ろうとしているのです。こうした取り組みが、他のところよりよくできていたのだと思います。
学生:他の人の立場で考えることが重要というお話でした。どうしたらそれができるか、コツを教えてください。
ベン:自分を他の人の立場に置いて考えることは、マネジメントにおいては難しいことです。日常生活でも難しいことはすぐにわかるでしょう。マネジメントなら尚更です。なぜなら瞬間的にストレスが発生するからです。
例えば素晴らしい従業員が昇進を打診してきたとしたら、答えないわけにはいきませんよね。彼を失うわけにはいけませんし、ただ気まぐれに聞いてきているのではなく、きちんとした理由あってのことでしょう。しかしその場で制度がないからと行って、過去に戻って整備するわけにはいきません。
私はリーダーになる上で大切なことは、「一時停止」することだと思います。
誰かが重要だとわかっている事柄を持ってきます。そこでリーダーだから全てに対して最適な答えを返すことができる、と思うべきではありません。みなさんは今質問をしてきていますが、私は頭が良さそうに見せるために答えを知らなければ何かしらをでっちあげています(笑)。
最も重要なことは一度立ち止まることです。それは本当に重要だし、まだ十分に考えていないから一旦立ち止まらなくてはならない。全ての視点から検討を加えて熟考してから戻ってくる。
私はよくそうします。なぜならCEOに降りかかってくるのは、今まで見たこともないような問題ばかりだし、そこから学ぶことは難しいからです。3回か4回は同じ問題に直面します。こっそり誰にもわからないように昇進させても、それが3週間後、3ヶ月後、あるいは1年後に、突然巨大な問題となって降りかかってくるのです。
小さな感情的な問題だと思っていたものが、対処を誤ることで、巨大な山火事になってしまうのです。我々はこれを「キムチ問題」と呼んでいます。深く閉じ込めるほど、辛くなるからです。コリアン・ジョークです。
(会場笑)
これは練習が必要です。とても難しいことだからです。私の友人、ビル・キャンベルは、これがとても得意です。いろいろな人が私に、彼が何が得意かについて教えてくれますが、私に言わせれば、その多くは間違っています。ビルが優れているのは、まさにこの力なのです。会社を従業員の目で見ることなのです。
そしてもしそれが上手くできるなら、一流のリーダーになれるでしょう。
ご静聴ありがとうございました。
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