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世界に挑む日本のスマホ・サービス(全5記事)

なぜいまグローバルなのか? スマニュー・メルカリらそれぞれの海外戦略と、勝機の在り処

日本での成功もそこそこに、世界進出を急ぐスマートニュースとメルカリ。一方、グローバル展開はプロダクトへの反応を見てから決めたとするユナイテッド。異なる立場を取りながら日本発のアプリサービスを牽引する5名の事業家たちが、日本で、世界で戦うために必要だと考える事業姿勢について語りました。(IVS 2014 Fallより)

海外で火がついたのでグローバル事業化

荒木:ここから是非、パネルディスカッションの形に入っていきたいのですけれども、各社、皆さんにどういう風に海外展開をしているのかと、どういうプロダクトをやっているのかということを説明いただきましたけれども、結構違いが各社あるのかなという風に思ってまして。

是非その違いに焦点を当てつつ、何故そういう選択をしたのかとか、そこにおける良かった点とか、難しい点はどこなのかみたいなところについて、掘り下げていければと思っております。まず1個目のディスカッショントピックなんですけれども、そもそもなぜグローバル展開しようと思ったのか、というところから入りたいなと思ってます。手嶋さんからお願いします。

手嶋:当社の場合結構特殊で、まず元々フィーチャーフォンの広告事業が中心の会社だったのですけれども、大雑把にいうと、スマホ時代だからアプリの事業に転換しようと。まずは、生き残っていかなくてはならないと、その中で事業を立ち上げていかなくてはならないというところの中から、CocoPPaのアイディアが出てきて、これ何かユニークだしいけそうだからやってみようと。

世界中を調べても実は、iOSの着せ替えサービスはなかったので、一応英語化もしよう、みたいな。ただ英語化のコストは「翻訳費は数万ね」みたいな、(クラウド翻訳サービスの)コニャックさんとか使ってやるぐらいのレベル感で、チームも女の子を中心に3人ぐらいで立ち上げたんです。最初の半年ぐらいは何も起こらなかったのですけれども、半年経ったら突然爆発し始めたんですね。

なんだこれといって、女の子たちも泣きそうになりながら、半分徹夜しながら対応したり、俺も頑張るよって弁当を買ってきたりとか、そういう修羅場があって。その時に頭切り替えて、これはグローバル事業にしようと、自分の中で1回決めたんです。

それまで何となくやっていたのが、バーンと当たっちゃったんで、これはモノにしなきゃいけないと、突然地球儀を買ってきたりとか、自分からその気になろうと世界時計とか買ってきて「うーん、今イギリスは何時だね」とか会議で突然言い始めたりだとか。なので、ビジョンより先にサービスが伸びていっちゃったから、グローバル事業にしようと決めました。

今は、山田(進太郎)さんとか、(鈴木)健さんとも交流させて頂く中、自分の目線も上がっているので、ちょうど志と事業の状況が一体化して、グローバル事業をやるぞという風に思えている段階です。

荒木:なるほど、ありがとうございます。結構ユニークな、まずプロダクトありきの、流行っちゃったからグローバル化するという。

手嶋:プロダクトが勝手に成長しちゃったという。

「なんとか勝負に間に合った」メルカリの世界戦略

荒木:なるほど。多分それと対照的に、メルカリやスマートニュースは巨額調達してそれを海外事業に全部突っ込むという、極めて戦略的に海外事業ありきの方針で動いているように見えるのですけれども。では、山田さん。

山田:僕らはというかどちらかというと、僕が海外をやりたいというのが結構大きいです。僕は会社を1回売却した後に世界一周旅行をして、帰国して何をやろうかなというタイミングだった時に、ちょうど世界的にスマートフォンが流行り始めていました。

それまでパソコンって全ての人が使う物ではなかったと思うのですが、これからはスマートフォンが初めて全員が持つコンピューターになってくるんだろうと予感しました。その中でアプリで世界的な物が何か作れるんじゃないかと思ったんですね。そこから「どこでやるか」という話になって、やっぱり日本のほうが地の利もあるということで日本で始めました。

先ほども話した通り、2013年2月に会社を作ったんですけども、すぐにアメリカにいくぞということで、石塚を創業メンバーとして誘いました。彼を誘ったのも、将来的にアメリカでやるっていうことを決めていたので、彼のような能力と人脈と経験を持った人材が必要だったからです。

2013年11月には、とりあえず行くぞみたいな形で海外視察を繰り返していたりして。2014年4月の段階で、日本でもまだ200万ダウンロードとかそのぐらいだったんですけど、そこまで立ち上がっていないという段階でもアメリカをやろうということで、サンフランシスコにオフィスを設立しました。

現実的なビジネスの観点からすると、やはりアメリカって市場が非常に大きくて、例えばヤフオク! とイーベイとを比べると、ワールドワイドで大体10倍ぐらいの流通の差があります。イーベイのアメリカだけの流通と比べても、日本のヤフオク! と5倍くらいの差があります。

こういうビジネスをやるのであれば、当然、海外を取っていかないとビジネスとしての限界というのが見えてくるんじゃないかと思います。でも背景には自分がやりたいというのが結構大きいところでしょうね。

荒木:何かCocoPPaとかスマートニュースとかって、リアルなロジスティクス等が絡まないピュアなネットサービスなので、作ってApp Storeで配信するという形でグローバル展開しやすいところかなと思うのですが。

僕の目から見るとメルカリについては、まずファンベースがあって、支払いとか配送とかのロジスティクスもあるから、必ずしも日本版の成功と海外版の成功とが同じではない、全然別物なのかなと思っているんですけれども。

山田:それは、やって気付いたという感じですね(笑)。ゲームとかだったらある意味、ローカライズしてストアに出して、マネタイズのところはアップルとグーグルがラップしてくれているので、楽な部分もあるかなと思うのですけれども。

僕らはやってみたら、法律とかも全部対応しなきゃならないということで、大変苦労をしているという感じです(笑)。

荒木:ですよね。あとオークションのマーケットサイズが、もちろんアメリカのほうが大きいというのがありつつも、とはいえオークションとかって完全にネットワーク効果が働くタイプのビジネスだなと思っていて。

ある種意地悪な見方をすると、どっかのマーケットで1位にならないと意味がないビジネスで、日本とアメリカで同時にやるというのはリソースとかアテンションとかがどうしても割かれちゃうから、その辺はどうしているのかなと。

山田:そうですね。そこは悩んだところではあるんですけれども、最悪日本を落としても世界取ったほうがいいんじゃないかというような感じですね。

結局今までってそういうチャンスがなかったのですが、スマートフォンの時代になり、日本のモバイルの環境は世界の中でもすごく進んでいて、そもそもガラケーで物を買うとかいう人がいるっていう文化も元々ある中で、僕らのアドバンテージって結構大きいんですよね。

アメリカでもダイレクトのコンペティターというのは未だにいなくて、そういう意味ではアメリカで勝つにはまだ遅くないなと思っており、今の状況を考えると、もっともっとインベストしていく段階で、勝負に間に合ったかなという感じはあります。

スマニュー鈴木氏「もともとアメリカでやりたかった」

荒木:ありがとうございます。ではスマートニュースさんお願いします

鈴木:はい。かなり、山田進太郎さんと近いんですけれども、僕も個人的にグローバルでやりたかったというのがあって、そもそも何度も何度も挑戦しています。実はご存知の方いらっしゃるかどうかわかりませんけれども、昔、NOTAというので、Launch Padの第1回において満点で優勝しているのですけれども(笑)。

あれもアメリカの会社ですし、それからスマートニュースの前身になったCrowsnestっていうサービスもあるのですけれども、あまりに日本でうまくいかなかったので、最後の数十万円の予算でSxSWに出展して玉砕して帰ってくる経験を3年前にやったりとか。

NOTAは別の事業にピボットして、海外ですごくうまくいっているのですけれども、ぼく個人は何度か挑戦して失敗している経験があります。僕自身がアメリカでやりたいという気持ちがもともとあったのです。

その原点をたどると、未踏ソフトウェア創造事業に僕が採択された時、早稲田大学の当時副学長だった村岡先生という方がPMだったのですけれども、副学長になっちゃったが故に、急がしくて何もしてくれなかったのですよ、PMなのに(笑)。

何もしてくれなかったのだけれども、その時に採択されたメンバー全員でいくシリコンバレー・ツアーを企画してくださったんですね。サンフランシスコにカンファレンスとかは行ったことがあったんだけども、もう全然違っていて。

そこでAdobeの創業者でPostscriptの発明者でもあるJohn Warnockのの息子さんがわざわざ来てくれて、スピーチをしたのですね。自分が今やろうとしているスタートアップについて。

その人の巨大なデジタル図書館をつくるというビジョンがすごくて、ああこんな人がいるのだと感動しちゃって、いつかここでやりたいなと思ったんですね。梅田望夫さんが言っていた人たちというのはやはりいるのだなと、リアルに感じるわけですよね。

そういうのがもう12年前、2002年ぐらいにあって、いつかやりたいと思っていて、山田進太郎と一緒にモントレーにドライブにいっては世界に通用するサービスのブレストをやったりしたわけなんです。

そんな個人的な思いだけで、さすがに会社をグローバル展開出来ないじゃないですか(笑)。それでやっぱりスマートフォンが出てきた時に僕も調べたのですけれども、2000年以降創業している日本のネット企業で、ゲームを除くと、時価総額が1,000億円以上になっている会社ってないんですよ。

荒木:なるほど。

鈴木:ゲームはありますよ。ゲームを除くとないんです。2000年以前にはじまっている会社だけなんですよね。スマートフォン時代になって、グローバルに1,000万ダウンロードを超えるような日本の会社が作ったアプリがどんどん出てきたじゃないですか。

WEBの時代とスマートフォンアプリ時代とは、完全にパラダイムが変わってるんだなと思って、やはりアプリをやるんだったら、最初からグローバルを目指すべきだと思っていました。スマートニュースというアプリ、その基盤になるテクロノジーというのは、基本的には全世界共通なわけです。

グーグルの検索エンジンのテクノロジーというのは当然、各言語ごとの特殊な部分というのはありますけれども、基本になるところは一緒ですよね。それと同じで、機械学習とか言語処理とか基盤になるところは一緒なわけです。だからこれは、ちゃんとグローバル展開出来るであろうと考えていました。

ネットメディアの勃興期に、ジャーナリズムに貢献したい

鈴木:そういう中でまずはアメリカという風になったのは、世界のメディア産業の中心というのはやはりアメリカで、アメリカから通っていくというのがメディアを中心とするスマートニュースとしては必要な近道であろうと思ったからです。

今20億人以上の人達がスマートフォンを世界中で使っているので、おそらくその何十億人もの人達が毎日毎日スマートフォンでニュースを読む時代というのが来ると思うのですよね。その時にそれだけの人達に使ってもらえるものをやりたいという気持ちがあります。

最近インドネシアの新聞記者さんと話したことがあるんですけども、インドネシアで一番売れている紙の新聞って20万部とか30万部とかしかないらしいのですよ。なんでと聞いたら、20年前まで独裁国家だったからって話で、なるほど! と思ったのですね。

つまり、今が"明治20年"なわけですよ。明治20年ってちょうど日本でいうと、新聞が勃興してきた時なんですよね。朝日新聞(明治12年創業)とか読売新聞(明治7年創業)とか、それこそ福沢諭吉の時事新報(明治15年創業)とかいう時代だったわけですよ。新興国では今は紙の新聞はすっ飛ばして、スマートフォンとブログの時代が始まっているわけですよね。

グローバルにおけるジャーナリズムであるとか、それから民主主義にどうやって影響を与えていくかという、すごく重要な仕事に挑戦したいなという風に思っております。

荒木:なるほど、ありがとうございます。

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