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リクルートの強さの秘密(全2記事)

リクルートのヤバさの秘密は「失敗のマネジメント術」 現役&元リクによる、ぶっちゃけ座談会

「リクルートはなぜ強いのか?」をテーマに、リクルートホールディングスで執行役員を務める傍ら、IndeedのCEOとしても活躍する出木場氏と、リクルートライフスタイルでAirレジを手がける大宮氏が、リクルートを卒業後KAIZEN platformを創業した須藤氏をモデレーターに迎えて対談。同社が持つ強みについて語り合いました。(IVS 2014 Fallより)

卒業生と現役が語る、リクルートの強さの秘密

須藤憲司氏(以下、須藤):今回は「リクルートの強さの秘密」ということで、現役リクルートのこのお二方と一緒にお話をしたいと思います。

出木場久征氏(以下、出木場):現役なのかな?(笑) 現役か。IndeedでCEOやってます、出木場と申します。一応、現役リクルート。

大宮英紀氏(以下、大宮):リクルートライフスタイルでAirレジをおもに担当してます、大宮です。現役です。よろしくお願いします。

出木場:大宮君はバリバリ現役で。

大宮:はい。現役です。

須藤:私は去年、2013年にリクルートを卒業してます、須藤です。今回はリクルートの強さの秘密ということで話をしてくれと。かつ、サブタイトルが「痛快オフトーク」という、結構……。

出木場:(笑)。だいたい、「痛快」って付くやつは痛快じゃないんだよね。

須藤:そうなんですよ。しかも、優秀なリクルートの広報の監視下の中、痛快オフトークを……。

出木場:オフにならねえよ(笑)。

須藤:繰り広げていきたいと思うんですけども、「リクルートの強さの秘密」とタイトルがついて、いろんな人が語ったりするんですけど、いつも僕は違和感があって。リクルートの外の人はリクルートのことをすごく強いと思ってるんですけど、リクルートの中の人か元リクルートの人って、リクルートのことを聞かれるといつも「いや、やばいっす」みたいな。

出木場:「もうダメだ!」。

須藤:「もうダメだ」っていう話をするんで、どうなのかなと思って。

出木場:飲み会で文句しかいわないですもんね、みんな。「もうダメだ、5年後10年後にはないだろう」って。でも逆に、5年後がもうやばいんじゃないかってこれだけ言うってのが、良いところなのかもしれないなと思うけどね。どうですか?

大宮:あと「俺こそは」みたいな勢いで「あれやりたい、これやりたい」って言うと結構受け止めてくれるとか。

出木場:「もうダメだ」から「俺はこれやりたい」に? ……そうね、それはあるかもしれない。

大宮:「じゃあやればいいじゃん」みたいな。

出木場:確かにそうだ。俺、「出木場さん、ここがダメなんすよ、あそこがダメなんすよ」(って言われて)、「じゃあお前がやれば」っていうのは確かに何回か言ったことある。

大宮:僕も何回か言われました。

出木場:お前に直接? 言った言った(笑)。

大宮:「これやりたいんですけど」って言ったら、「とりあえずやりゃいいじゃん」って言われて放置されたっていう。

須藤:……全然リクルートの強さが伝わらないんですけど。

出木場・大宮:(笑)。

リクルートが「やばい」理由

須藤:もうちょっと、一応真面目に聞いてみようかなと思うんですけど。「やばいやばい」ってのはずっと言ってるじゃないですか。僕も言ってたし。ただ外に出ると、全然違った感覚というか。なんて言うんですかね。「今やってる人、超大変だろうな」みたいな。

自分がやってたからすごく思うんですけど、そのときに「やばい」と言ってること自体が強いのかなと思ったりするんですけど。これまで、二人が本当にやばいと思った瞬間の話とかしてもらうといいかなと思ってて。

出木場:……それは言いにくいね(笑)。

大宮:(笑)。

須藤:痛快オフトークなんで(笑)。

出木場:そうか。お前からいってよ。

大宮:僕からですか。振られましたね。今でもやばいと思ってて、それでいうとAirレジ……。

須藤:Airレジはあれじゃないですか。今をときめく……。

大宮:1周年イベントで話をさせてもらったんですけど、本当はもっとこんなことやりたいとか、もっとこんなふうにしたいってすごくあるんですよ。なんだけど、それができてないし。例えば他の競合、Squareさんとか世界各国でこんなにインパクト残してんのに、日本のこの(小さい)中で「1周年頑張りました」「すげえだろ」って思ってるのが自分でかっこ悪いなって。

なので、日本もそうだし海外もそうだし、もっとやんないとダメだなとか。それが原動力かなと思って。本当にこのままだと沈んじゃう、傾きをもっと上げていかないといつか沈んじゃうじゃないかって危機感はめっちゃありますね。

出木場:でも、ここ5年だか10年だか15年だか、特にネットに関してとかテクノロジーに関してとか、そういうやばさみたいなのはずっとあったと思うんですよね。営業が強い会社で、ネットはダメなんじゃないかみたいな。そういうやばさみたいなことはずっと言ってた気がするし、今でも言ってるのかな。

だけれども、そこを本当に何とか変えたいという……(須藤氏と自分を指す)俺らもそうやってもがいてきたんだけども、その中で俺でいうと、世界のテクノロジーで勝っていけるということを考えたときに「だったらアメリカのテクノロジーで本当に強い会社を何とかリクルートに取り込めないか」みたいな決断をしたんだけど。

考え方としては、5年とか10年を見て、ゴール設定が本当に世界で一番のレベルになりたいみたいなところから見てるから、たぶんやばいんじゃないかなと思うところがあって。「こんなんでどうすんだ」「これで世界に勝てるのか」と。でも、自分の今の実力レベルはまったくそこにないと。そういうこと自体がやばくて。

それはもう、両面なのかもしれないですね。ゴール設定が高過ぎるとか、5年10年とか遠すぎる、そして実力がないっていう両方あるのかもしれないですよね。

須藤:なるほど。聞いててもあんまり……すげえなと思うんですけど、本当に臨場感あふれる「やばかった」というのを聞かないと、皆さん「かっこいいけどさ、そういうんじゃないんだよ、期待してることは」と。本当に仕事上で超ピンチなことみたいなのがほしいんですけど。

出木場:聞き出すねえ!(笑)

須藤:全然、こんな綺麗事で終わってたらもう。

生かさず殺さず、リクルートのマネージ術

出木場:俺はやっぱり、リアルに命がやばかったのが1回あって。

須藤:胃に穴が開いたの?

出木場:そうそう。

須藤:お見舞い行ったもん、だって(笑)。

出木場:あれは28、9歳だから10年前くらいだと思うんですけど。よく考えたら28、9歳で最初の買収するってのも頭がおかしいと思うんだけど、そのときは「この会社は買収したほうがいい」と思う会社があって、かつ、あの時は何十億円のじゃらんnet開発のプロジェクトのマネージャーだったんですよね。

それを両方やんなきゃいけなくなっちゃったから、システムを全部作り直してっていうのと、会社の買収で全員面接して再雇用してみたいな中で、本当に1時間くらいしか寝る時間がなくて。それでずっとお腹が痛かったんだけど、ある日の朝5時くらいにいきなり血を吐き、そのまま入院っていう。

十二指腸潰瘍で普通はそれでは死なないんだけど、俺はあまりにほっといたから穿孔、穴が開いてて、腹膜炎になってたらしいんですよね。それでも、いま冷静に考えると28、9歳のやつとかに何十億円の買収の話とか、何十億円の開発の話を両方責任持ってやれとか、それ自体がやっぱり仕事の与え方としてバカだと思う(笑)。

須藤・大宮:(笑)。

出木場:「乗り越えてこい」みたいな。それはリアルに死にかけたけど、3週間入院していろいろ考える機会にもなったし、いまだにいろんなときに「あのときに比べれば大変じゃねえな」っていうのがあるから。

須藤:僕、覚えてるんですよ。病院に漫画を買ってって、出木場さんはブツブツ「申し訳ねえ」ってずっと言ってて、これやべえなって思った記憶はあるんですけど。よくリクルートの強さのひとつってコミットメントだって言うじゃないですか。みんなそれぞれ「仕事のコミットメント」って言うんですけど、打席の立たせ方とか結構すごいみたいな。

出木場:俺もアメリカでインターネットの会社、ベンチャーみたいなのをマネージメントするようになってすごく意識してるのは、「失敗をどうさせるか」というか失敗のマネージメントみたいなのはすごく大事だと思ってて。

特にスタートアップはそうなんだけど、絶対失敗させないようにするっていうマネージメントが正解だったりするので、何とか失敗させないようにしようとするんだけど、でも10年とか(のスパン)で会社のどんなフィロソフィー、どんなカルチャーを作っていくのかみたいなことを考えたら、やっぱり各個人が自分の今の力量よりも高い仕事をコミットさせられてというか、仕事にチャレンジしてその中で学んでいく。

でも、会社としても転ぶくらい、骨折くらいだったらいいんだけど、本当にそこで死んじゃったらダメだよねっていうマネージを……売り上げも利益もそうだし、個人の成長もどうマネージできるのかっていうのが、リクルートは本当は上手いんじゃないかなと逆に思うようになってはいるんだよね。

「ブラック企業」ではない?

須藤:大宮さんは「さすがに俺やばいんだけど、こんな打席に立たされてきついんだけど」っていう経験は何か。

大宮:それで言うと、性格的なものなんですけど……。

出木場:お前はやっぱり、最初転職してきたときは本当に使えなかった。

大宮・須藤:(笑)。

出木場:本当に使えない(笑)。どうしてこんなに使えないんだろうと思ったから。

須藤:変わった瞬間って何なんですかって、ちょっと……。

大宮:さっき出木場さんが言ってたのと同じように、「ポンパレをやりたい」って言って、やりましたと。結構早いスピードで立ち上げて、自分が産んできた子どもができて、育てていったらグルーポンっていう強敵が現れて。

須藤:(グルーポンに投資した)IVPさんが大きく……(笑)。

大宮:いや、いろいろライバルと切磋琢磨してきましたからね(笑)。そのとき、どうやったら彼らよりも良いサービスを産み続けていけるのかって真剣に考えたときに、出木場さんと話をして「こんな役割でこう困ってるんです」って言うと、「知らねえからお前全部やれ」みたいな話をしてもらって。

ここまで期待されるのか、ここまでやっていいのかと思って、それこそ寝ずにというか、通勤するときも風呂でも寝る前もずっと考えてて。寝る前にメモを取っては朝に思い出してってずっとやってたら、やっぱり腹が据わってくるというか。

「俺が一番このサービスに対して真剣なんだ」って思ってきたときに、「もっとこれをやる、これをやる」と変わってきたと今だから思うって感じで。あのときは必死過ぎて。

出木場:ブラック企業と紙一重のところがあるのかもしれないけど、でもスタートアップの社長が何時間働いたって「ブラックなスタートアップだな」とは言わないわけで。

(大宮氏にも)聞いたかもしれないけど、俺がたまに聞いてたのは「お前は本当に自分でスタートアップをやったときでも、そのやり方をするのか」と。だって「○○部長に言ったんですけど、話が通らないんですわ~」(みたいなことを言う)。「ええ~!」みたいな。それはスタートアップで自分で自分の金をかけてやってて、「こんなんでダメですわ~」と言って飲み会でビール飲んでますと。

何の解決にもならないじゃん。稟議とかどうでもいいから、本当にこれやりたいって言うんだったら、自分のスタートアップを自分でやったら絶対違うやり方をやるはずで。大事なことの順番が変わると思うんですよね。

そこでオーナーシップが出るような打席の立たされ方をすると、進化できる人は進化するっていう。ブラック企業と言う人はブラック企業と言うのかもしれないですけど(笑)。これはまずいのかな(笑)。

須藤:わかんないです。「リクルートは上場企業です」って下に(テロップで)出るかもしれないです(笑)。「もう違います」って。

出木場:「スタッフで事前にチェックしております」「プロの監修のもとでやっております」って(笑)。

須藤:あとは「個人の感想なので、効果・効能には個人差があります」(笑)。

個人としての枠を外すことが、結果として会社を成長させる

須藤:でも、リクルートは個人の枠を外すみたいなことをすごくやってるんだろうなって。

実際僕も外に出て感じていて、例えばリクルートに入社して「お前どうしたいんだ」って必ず聞かれるじゃないですか。「こうしたほうがいいと思うんですけど」「だったらやればいいじゃん」。「お前どうしたいの」「なんでなんで」って聞かれるじゃないですか。

あれって個人の枠を外していってるというか、勝手に「役割がこうだからできません」とか「既存のルールがこうだからできません」っていうこと……とにかく枠を外すということをすげえやってる会社なんじゃないかと。そういうふうに外に出てからは感じていて。その辺は意識してるんですか、と逆に(聞きたい)。

出木場:俺は、逆に……。今は須藤も自分の会社を作って、どんな文化にしていくのかって中で、たぶん「リクルートを越えたい」と。俺も今Indeedって会社のCEOをやってて、Indeedがリクルートを越えたいというのがやっぱりあって。創業者への対抗心というか。頭がおかしいのかもしれないけど。

須藤:いやいや、ありますよね。

出木場:どうやったら作っていけるのかと思ったときに、個人の枠を外すっていうのもそうなのかもしれないけど、俺が「お前やりたいのかやりたくないのか」「なんでなんで」って聞くのって、本当にそれをやりたいのかっていうことを聞いてるんじゃないのかなと思ってて。

やっぱり人も組織も大きくなるとやらなきゃいけないこととかが増えるし、本当に売り上げとか利益を上げたい人ってどれくらいいるのかなって思うわけですよ。

須藤:ググっと踏み込みましたね。

出木場:社員として「俺、とにかく利益上げたいんすよ」ってやつはあんまりいないと思ってて。でも、やりたいことって本当は絶対もっと別にあるはずで、それを突き詰めていくと、例えばリクルートの営業マンでも本当にお客さんのこと、「どうやったらお客様にとって一番いいのか」ってことを考えてる。

(その結果)「よくよく考えたらウチの商品を売らないことにしました」ってことに対して、リクルートって「それはすごい」「お前よくそこまで考えたな」みたいな、それはそれで評価したりするじゃないですか。俺がよく思うのは、それが本当に個人がやりたいことなのかってことを、ベクトルを合わす作業みたいな気がしてて。それが個人の枠を越えるって表現になるのかもしれないけれども。

須藤:大宮さんがAirレジをやって、それこそさっき「5年や10年のスパンだと追いつかない」って言いながらも、例えば10万件超えたり新しいサービス足していったりとかされてるじゃないですか。そのときに個人のやりたいことと合致するみたいなのってあったんですか?

大宮:出木場さんがさっき言った「Indeedがリクルートを超える」っていう話の中で(あったように)、僕はAirっていうサービスを、リクルートライフスタイルから横に置いて、同じくらい対等なものにしたいっていうのがすごくあるんですよ。

そうするには、いろんな文化とかを自分で作りたいし、そこで一緒に働く仲間を集めたりとか、国内だけじゃなくて海外も含めて育ってって……自分たちの人生、青春を賭けてるので、「俺らこんなことをやった」と言えるものをとにかく何年か後に残したいと。

それを逆算して考えたとき、10年後にはたぶん普通にAirというサービスは多国籍になって、いろんなところにbranch(支社)もあってということをすごくイメージして仕事をしていて。そうしないといろんなプレッシャーとか(に負けるし)、「そもそも何がやりたかったか」に立ち戻らないといけないので。

それをすることが世の中にとってプラスになると自分で勝手に思ってるので、「だったら、俺がそれやるわ」みたいな感じで今チャレンジしています。ちゃんとするためには、さっき言った失敗とかが当たり前のように起こるので、死なない程度の失敗をやるような形の組織・文化を含めてやっていって、結果的にリクルートが変化していくというのはあるかもしれない。

「こういうマーケットでこういうインパクトを起こしたいから、こんなことをしたい」というのが第一にあるので、会社のためというよりは「俺はこういう母体を作ってこういうことをしたい」「ここでみんなと一緒に頑張りたい」みたいな話を突き詰めたいなというのがあります。

須藤:なるほど。

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