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起業しながら失敗力をつける(全4記事)

「宮藤官九郎を見て、演劇の道をあきらめた」 クラウドワークス吉田社長、大人計画での挫折を振りかえる

「起業しながら失敗力をつける」をテーマに行われたパネルディスカッションに、クラウドワークス・吉田浩一郎氏とfreee・佐々木大輔氏が登壇し、自身が失敗から学んだ教訓を語ります。本パートでは、吉田氏が挫折だらけの人生を振り返り、なぜ経営の道で成功することができたのか、その成功哲学を語りました。

限界までいって気づいたこと

佐々木大輔氏(以下、佐々木):おもしろいなと思うのは、採用していると意外と元起業家でベンチャーから、VCから出資を受けて畳んだことありますみたいな、そういう人をどうしようかなっていうケースがあって。

必ず出資したことがあるVCの所に行って聞くんですよね、あの人どうでした? って。そうするとやっぱり圧倒的に評価が分かれて、彼は頑固で全然言うことを聞かないと、上手くいっていないのに直していくフレキシビリティーがなかったというような意見と、彼はよくやったと、あれはビジネスがちょっと早すぎたとか、タイミングが悪かったとか、あの方向性が実はなかったよねっていうことがこれで証明できたとか、そういうのがあって。

結局同じ失敗をするっていうのでも、頑固だみたいな形で学べなかった人と、いろんな人の意見を聞きながらうまくやっていったんだけど、方向性がなかったみたいなことを証明する人っていうのと、違いがあるなと思ったんです。

吉田浩一郎氏(以下、吉田):なるほど。そこは感覚的には別に頑固でもそのタイミングはいいんですけど、勝負のステージ、もう1回起業するっていうステージを降りるかどうかの違いのような気がしますけどね。

結局私も頑固だったんで、36歳になってまだ全然成功できなくてオフィスで1人ぼっちでいたっていう限界までいって、ようやく俺、結構浅いなみたいな(笑)。人間小っちゃいなとか、自分自身の器について、あるいは特性について自覚できるようになりましたね。そこまでは頑固だったんですね。

挫折を繰り返したなかで、諦めなかったもの

田久保善彦氏(以下、田久保):それ2つめですよね。器に気がつかれたって。

吉田:そうですね。私自身実はたくさんあきらめたことがあってですね。もともと劇団で食べていきたかったんですけど、契約のミスがあって200万くらい学生時代借金を抱えて、それを機に演劇をあきらめたんですね。

でも今から思うと、その時に続けていたら、当時私、大人計画って、クドカンさんとか阿部サダヲさんの、あそこの照明スタッフとかやっていたんですね。あの時、宮藤官九郎さんの『終わりなき日常』を見ていて、これを毎日続けるのは俺には無理だと思って、演劇をやめたりとか、カメラをやってみたんですけど全然評価されなかったりとか、同人誌書いたんですけどコミケで全然売れなかったりとか、結構あきらめたんですよ。

でも経営だけはあきらめなかったんですよね。20代の頃はずっとマネージャーに向いてないって言われていたんですよ、サラリーマン時代。

で、マネージャーやってみたら事務の女性が総スカンで、あなたの仕事はやりたくありませんってボイコットされたりとかですね(笑)。ドリコムに入って執行役員やっていたんですけど、お前は経営者に向いてないということで、上場後に執行役員から降ろされたりとかですね(笑)。結構挫折だらけなんですけど、経営だけは、どうしてももう1回チャレンジしたいみたいな感じで。なんかたまたま続けられたんですよね。

田久保:失敗をするたびにあきらめたものもあったけど、あきらめなかったことがやっぱりやりたいことなんだっていう気付きが。失敗によって気が付いたみたいな感じですかね。そう言っちゃうと綺麗すぎますか?

誰しも社会の中に器がある

吉田:いや、そうだと思います。例えば私、中学、高校とカトリックで神父さんをずっと見ていたんですけど、神父さんって不可解で、何で毎日祈ってるんだ、これをずっとやっているんですかみたいな(笑)。

湾岸戦争の頃に平和のために祈りましょうとか言っていたんですけど、平和のために祈っても平和にならないでしょうとか言って。でも今はわかるんですよ。いまだにその神父のことを考え続けていますから。

祈るっていう自分が関わる人に対して考えるきっかけを与える役割の人なんですよね。っていうことでいくと、自分自身は社会の中で何か器があるはずなんだということをずっと探してきた中で、今回皆さまのおかげで上場の舞台に立たせていただいたんで、経営という器を通して社会に貢献できそうだと、初めて不惑というか、そんな感じに今なっているという。

田久保:自分を知るみたいな感じですかね。

吉田:そもそも私、20代IT業界にいないですからね。

田久保:もともとパイオニアですよね。

吉田:パイオニアにいて、その後リードジャパンっていう展示会の会社にいって。起業家っていうのは周りに誰もいなかったんで、大前研一さんの学校に通って、そこで孫泰蔵さんとかお会いさせていただいて、起業家っていうものを29歳で初めて生で見たみたいな(笑)。

佐々木さん、すみませんね(笑)。

ひとつに絞って、そこに全力を注ぐ

田久保:佐々木さん、Googleの時代とはいろいろおありだったというふうに聞きましたけど、今やられている仕事の失敗みたいなことも含めて、こちらも2つあげていただくとするとどうでしょう?

佐々木:1つは僕がGoogleに入った時に、最初日本で中小企業向けのマーケティングをやろうと。中小企業の広告主ですね、Googleのを増やそうというマーケティング活動を始めたんですけれども、やるといろいろ細かいやらなきゃいけないことがあって、Webサイトが古いから直さなきゃいけないだとか、これを更新しなきゃいけないみたいなものがあって、そんなことをやっていると本当にやらなきゃいけないことっていうのが全然できなくてですね。

しょうがないから代理店に回すとかして、いろいろ広告をばらまいてみるようなことをやると、簡単に何億円も吹っ飛んでしまうんですよね。

結局何にも動かなかったなっていう3カ月を過ごした後に、海外で似た仕事をしているGoogleの同僚に相談しに行って、何でお前はそういう小さいインパクトのないことばっかりやっているんだと。

こんなインターネットの世の中で、情報が錯乱している中でインパクトを出すには、少ないことにもフォーカスして徹底的にやるしかないんだというような話を受けて、なるほどその通りだなと思って。

帰ってきていろいろマーケティング活動をやっていたんですけど、それを一切やめて、中小企業に向けてダイレクトメールをとりあえず出そうと。そうしたらそれは事態が成功したし、それがいい学びになってきちんとひとつひとつやると。

日本人って精神力みたいなので、これもやってみる、これもやってみる、あれもできるからこれもやってみるってやっちゃうんですけど、そこをぐっと堪えて1つのことに100%力を注ぎ込むみたいなことをやってから、少し働き方が変わって、それは非常にいい経験だったなと思って、今でも活きていますね。

考えるよりもまずはアウトプット

佐々木:もう1つはfreeeっていう会社を2012年の7月に立ち上げたんですけども、会計ソフトをリリースしたのが去年の3月だったんですよね。これは実は大失敗で、僕たちの会計ソフトの業界っていうのは繁忙期が明確にあって、1月から3月までっていうのが繁忙期なんですよね。

田久保:そうですよね。

佐々木:僕たちは3月末にリリースをしたんですけど、これどういうことかって言うと、本当は1月に出したかったんだけど間に合わなかったってことなんですよ。この1年を逃すっていうのは結構ビジネスの成長の中では大きなことで、今でも思い出すぐらいすごい悔しい出来事だったんですよね。

何でこういうことが起こったかっていうと、実は戻って考えて防げてしまったという話で、7月に起業した時に僕たちは何を始めたかっていうと、それまでやりたいことはほとんど決まっていたし、ひたすらここからコード書いてプログラミングしてっていう段階だったんですけれども、そこでもう一度考え直そうっていってポストイットとホワイトボードでいろいろアイデアを出し合っちゃったんですね。

そうするとこっちの方がいいんじゃないか、あっちの方がいいんじゃないかっていうので平気で2カ月経って。2カ月経ってみると何も進んでないし、結局2カ月前と同じことをやっぱりやりたいなと思ったんですよね。それさえなかったらきちんと2カ月早く、1月にリリースすることができて、間に合っていたんじゃないかと。

だったので、これはもう会社の座右の銘的にもしているんですけど、アウトプット思考というふうに言っていて、とりあえず考えるよりもまずアウトプットしてみると。世の中に出しその結果を見てチューニングしていけば、考えていけばそれでいいよねというようなことを言っていて。これはあらゆることに今当てはまるんじゃないかなと。

要はアウトプットっていうのは、先ほどの石渡さんの話にもあったんですけど、うまくいこうがうまくいかないが、失敗ではなくてまずアウトプットしてみると。それはフィードバックであって、そのフィードバックを得たうえで軌道修正していくっていうのを徹底的に繰り返していくっていうのが、スタートアップっていう形で、早いスピード感で事業を実現していくうえではとても大事でなんじゃないかなと思ってやっています。

情報共有の仕組化

田久保:ちなみに佐々木さんの起業家の仲間の中でも、やっぱりなんとなくポストイットとホワイトボードっていうのは魔力があったりするんですかね?

佐々木:そうですね。やっぱりスタートアップっていうと、最初に社員が面接しに来た時も、やっぱりホワイトボードがあって、ポストイットとかあるんですか? みたいなことを面接する時にも言われるんですけれども(笑)。ポストイットを貼ることがスタートアップではないっていうのは、一番最初に学んだことでありましたね。

田久保:吉田さんはその辺の感覚はいかがでしょう?

吉田:そうですね、今実は私、取締役会以外の定例会議って1件もないんですよね。これは今までの経験の失敗から学んできたことなんですけど、会議の多くが情報共有なんですよね、でも情報共有って本当に仕組化すれば全部ネットで出来ちゃうんですよ。

例えばうちの会社でいくと口頭での業務依頼っていうのは原則禁止しているんです。言った言わないを防ぐために、チャット化したりメールとかベースで、全部メール上にすべてが残る。

もしくは「デットライン」っていうタスク管理ツールかチャットツールのところに何か残ると。だから私はそこにいなくてもその流れさえ全部見ておけば社内の業務の流れって全部把握できるわけですね。

サービスリリースも、実は半分ぐらいのリソースを割いて管理画面を作ったんですけど、これ結構重要なところで、昔、月商2億ぐらいのeコマースを受託でやったことがあるんですよ。0から2億になっちゃったんで、フロントサイドだけ作っていたら途中から、クライアントから分析したいんだけどって言われて、すみませんフロントしか作ってなかったですって昔あってですね、そこから管理画面作るのって超大変なんですね。

データベースの設計もしてないですし、タグ入れられていないしっていうので、3カ月かけて作って3カ月継続してっていうと、7カ月後ぐらいですね改善。ということでいうと、管理画面というのは最初からかなりパワーをかけて作ったほうがいいということで、創業時に作ったものが今も動いているんですけど。

多くの一部上場企業のメディアの運営をされているようなグロースハッカーの人たちが見に来るようなレベルの物。これはやっぱり最初に設計したからなんですよね。というのも、2億のeコマースで炎上寸前まで管理画面が作れなかったっていう経験の中でやっぱりやっている。だから常に経験しているんですね、失敗を。

Google社内では仕事を人に聞くと怒られる

佐々木:情報共有と効率化っておもしろいですよね。僕Googleに入った時にびっくりしたんですけど、人に聞くと怒られるんですよ。

田久保:怒られるんですか?

佐々木:何でそんなこと聞くんだと。Webサイトに書いてあるんだからそんなこと聞くなっていうんですよね。あれってエンジニアのカルチャーで、エンジニアってドキュメントとかオープンソースのコミュニティだったら全部Webに公開して、それ見てないのに質問投げてくる人はマナー違反だっていうような、オープンソースコミュニティのカルチャーがある。

それを社内でも実践していて、ただやっぱり実践するとすごく効率がいいし、とってもいいことだなっていうのを思い出しました。

田久保:なるほどね。ありがとうございます。

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