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今後のメディアビジネスはどうなっていくのか?(全5記事)

新聞は無駄な取材をしている--現代ビジネス編集長「年間4億円の予算で、もっと良質なメディアは作れる」

スマホ時代に突入し、勃興期を迎えた新興メディア界。従来のマスメディアと異なるビジネスモデルを探る各社が明かした腹の中とは? ヤフーニュース・片岡裕氏、講談社・瀬尾傑氏、スマニュー・松浦茂樹氏、NewsPicks・佐々木紀彦氏と4名のキーマンが語りました。(IVS2014 Fallより)

メディアはスケールを目指すべきか否か

藤代:同じニュースメディアといっても、NewsPicksは紙を作ったり、スマートニュースはスマートフォンで先陣を切っていたり、ヤフーは個人の活動を支援したり、それから(講談社の)瀬尾さんはいろんな今ある既存メディアのデジタル化を進めていたりとか、立場によっていろんなニュースがあるんだな、ということがおわかりいただけたんじゃないかなと思います。

最近のニュースに関連するベンチャーは、資金調達額も大きくなってきていまして。私はもともと地方の新聞社からこのIT業界に入った人間なんですけれども、10年前には考えられなかったようなニュースベンチャーを立ち上げる環境というのが、ついに日本でも生まれてきているなというふうに思うんです。

当然ですけれども、投資家の皆さんから資金を調達するということは、スケールすることが前提になると思いますが、そこでちょっと皆さんにぜひ聞きたいんですけれども。

昨日LINEの舛田さんが「言っちゃっていいのかな」とか言いながら「(LINE NEWSの)マンスリーのアクティブは500万」と、この壇上でお話していただいて、先日、スマートニュースさんは400万と発表されてます。どこまで拡大できるんですか、というのをまず率直に聞いてみたいです。どうでしょうか。

松浦:直近で発表させていただいたんですけれども、まだまだ通過点かなと。今後控えている日本国内の市場だって、スマートフォンをお持ちの方々の数からすればまだまだ成長過程の数字だと思っていますし。

グローバルな観点でいえば、アメリカ版を出しましたけれど、今度インターナショナル版で、英語圏の全ての皆さまに対しても我々は価値提供をしていきたいなと思っていますので、数字的にはまだまだ増えていく市場かなと考えています。

藤代:どのくらいまでいくんですか。国内でどのくらいまでいきますか。

松浦:国内……さっきヤフーさんも2000万という数字で、実際ヤフーさん全体でいうと3000万?

片岡:実はスマホがPCを超えていまして、スマホで2370万人、PCが2280万人というのがニールセンの発表です。

松浦:とはいえ、今の日本の普及率を考えればまだ倍ぐらいいっても、全然おかしくないと思うんです。そういうところに対して、いかに企画も含めてアプローチしていくか、ここがポイントかなと思います。

藤代:なるほど。佐々木さんはどうですか。

佐々木:我々ももちろん、もう今の数字は全然満足してなくて、例えばダウンロード数でいうと、来年中には早く100万ぐらいいかなければいけないなと思っているんですけれど、あまり数字ばかりを追おうとは思ってないんです。やっぱりネット界で今必要なのは、クオリティメディアというか、本当に質の高いメディアだなと思っていて。まだそこに我々はなれていないんですけれど。

そこに経済で特化するというところが一つの1番の我々の差別化と、さらにすごいクオリティが高いコンテンツで、有料課金までできるくらい、お金を払ってもらえるレベルぐらいのを作るっていうところが、我々のポリシーで。そう考えたときに、今1500円じゃないですか。ビジネス書の今のベストセラーって、売れて10万部なんですよね。

藤代:ベストセラーが10万部。

佐々木:ぐらいですよね。本を読む人の人口って100万くらいかなと。ミリオンセラーとか出るときに。なので、わざわざ課金していた時に最大でいけるのは、数十万ぐらいですかね、ビジネスに限ると。というような感じがしているんですが、まずそこまでいかないと。

藤代:まずは課金で数十万。

佐々木:いかないと、話にならないなっていうふうには思っています。

藤代:なるほど。瀬尾さんどうですか。どれくらいまでいくんでしょうか?

瀬尾:そうですね。今僕の抱えているゲキサカとか現代ビジネス、これは大きくしたいというのはあります。ただ一番は何かというと、僕は目的があって、目的が何かというと、先程佐々木さんがおっしゃったみたいにいいコンテンツ、いい記事をつくれる形を作りたいと。

やっぱりいい記事を書く人、あるいはいい作品を作った人には、漫画であれジャーナリズムであれ、ちゃんとした報酬が回るような仕組みを作りたいというのがあるわけです。特にその中でも、僕自身はジャーナリズムというものにこだわりを持ってやっているんです。ジャーナリズムとはいろいろ批判もありますけど、一方でやっぱり社会的に必要なものだと思っていて。

やっぱり民主主義の中で一定の役割を果たすものとして、ジャーナリズムとは必要だし、これをまさに2020年にどういう形で残していくのかが僕らの役割だと思っています。その中で言うと実は最近、そんなにスケールはいらないのではないかとちょっと思っているんですよね。

僕の感覚でいうと、本当にいい調査報道とかいいジャーナリズムを維持していこうと思うと、そんなにお金はいらない。例えば朝日新聞みたいなものとか、あるいはテレビ局のようなああいう規模のものを、そのまま持っておこうと思うと、やっぱり1000億円ぐらいのもう大変なビジネスモデルがないとできない。

けれども、例えば調査報道だけに特化したモデル、アメリカにもプロパブリカとかありますけれど、こういうものって実は、そんなにお金はかからない。具体的にいうと、年間2億円の予算があれば相当いいものができます。4億円あったらたぶん、いま新聞社がやっている仕事よりもいいメディアができる、というような感じがでているんですよね。

だから、冨山和彦さんが「GとLの理論」というのを出しましたよね。(※参考:『なぜローカル経済から日本は甦るのか GとLの経済成長戦略』)プロットフォームの場合、グローバルで勝負しなくてはいけないし、大きなメディアとした規模を目指していかなきゃいけないんですけれども、ジャーナリズムとはローカルなもので成立するので、そんなに拡大を目指さないほうが、実は成立するのではないかと最近思っています。

スマホでの成功には課金が不可欠

藤代:なるほどなるほど。結構面白いですね。ヤフーさん、スマートニュースさん、グノシーさん、LINEさんみたいなところは、マスを相手にしていると思うんですけれど、どうですか。

松浦:やっぱり送り手のところをやらなきゃいけないので、作り手のところの部分をさらにどういうふうな形で皆様のところに送り届けるか。良質な情報をすべての人に送り届けたいので、今我々が担保している部分は送り届けるところです。

かつ、さっきのスライドにはなかったんですけれど、我々は来年、課金事業もやろうかなって思っていますし、そういう課金、そして良質なコンテンツを、もちろんそれぞれのメディアさん自身でやられる課金もあると思うんですけれど、サポートもしていきたいと思っています。

佐々木:課金とは月々幾らぐらいですか。

松浦:いやもう、それは各社さんに。

藤代:聞きたいですね。(会場の)あの辺からしゃべるなみたいな光線が……(笑)。

松浦:まだですね。いろいろ、すごいプレッシャーがかかってくるので……怒られるので(笑)。そこはいろんな各社さんとお話させていただいて、我々がコンテンツをつくるわけではないので。仕組みはつくりますけれど。

値付けその他の問題、いろんな権利の問題もあったり、月額課金、ショットの課金もあったりするので、今のニーズに合わせた形で設計できればと思っています。もし課金に対して、コンテンツ提供したいという方がいらっしゃれば、ぜひご連絡いただければ。

藤代:宣伝じゃないですか(笑)。もう1個、今の流れでいくと、どのくらい儲かるかという話はすごく大事だと思うんです。瀬尾さんがさっき「良質なジャーナリズム」みたいな話をされてましたが、儲からないとジャーナリズムはできないと思うんですよね。

ここには既存メディア出身の人が、僕と瀬尾さん。佐々木さんは早く抜けたからあんまりその香りがしない感じですけれど。このセッションで新聞やテレビの人がいないというのが、すごい変化を表しているなと思います。

でも彼らのビジネスモデルは、ものすごく実はよく出来ていて……読売とか朝日だと1000万部とか700万部。700万を3000円以上で買ってもらうという、とんでもないビジネスモデルを作ったわけです。

PC時代は、ヤフーさんがニュースを使って大きな王国をつくり上げたと思うんですけれど、スマートフォン時代のニュースはどのように、どれくらい儲かるんですかというのを、ぜひ聞きたいんです。佐々木さんでもいいですけれど。

佐々木:PCとスマホはやっぱり全然違いますよね。PCは課金が難しかったので、PV至上モデルなってしまって、ある種。ヤフーが悪い意味ではなく、王者になってみんなヤフーに尽くすみたいな構図になっちゃったわけです。

スマホになるとプラットフォームがもっといっぱいでてきて、スマニューがでてきたりグノシーが出てきたりということで、もっといろんな形が出てくる。あともっとパッケージ化されていくので、今までのオールドメディアにちょっと近い形になって、課金がもっとしやすくなるのじゃないかな、とは思います。

PV至上主義もちょっと変わってくると思いますし、広告一辺倒のモデルも変わってくると思いますし、なので課金で成功できるかどうかが、スマホの時代の勝負を分けるんじゃないかなと私は思います。

スマホにおいて、コンテンツと広告は限りなく近くなる

藤代:NewsPicksさんは課金を最初の方からやってらっしゃいますけど、スマートニュースさんやヤフーさんは今のところ無料モデルですよね。無料から有料にするのはとっても難しい気がするんですけれども、その辺松浦さん、来年はやりたいと言っていますけれど、どうしますか。

松浦:今、無料モデルで広告事業を展開ということで実際、我々メディアパートナーの皆様方と協業をやらせていただくという形で、40%をお戻しするというようなことも含めて発表させていただいていますが、、それ以外でもまだまだやりようはあるかなと思っています。

PCにおいては、広告単価は、どんどん下がってきてしまう現状もありますけど、モバイルにおいては価値を送り届ける部分で、いかに上乗せしてというか、そのコンテンツの価値を真摯にお伝えできるかどうかがポイントだと考えてます。

ちゃんとクライアントさんも今、認識いただいているようなところもあるかなと思いますし、我々のネイティブ広告や動画広告、目にされた方も多くいらっしゃるかと思いますが、コンテンツとして、やっぱり動画の部分で完成されていくこともあるかなという、そういう体験の部分が上乗せされることによって、まだ広告は生きてくることもあると思います。

かつその上で、課金的な部分で、ここは我々だけじゃないと思うんです。NewsPicksさんの取り組みもあって、多分ヤフーさんとかも、いろんなプラットフォームさんなりの課金のバリエーションがあって、完成されていくんじゃないかなと思うのですけれども。

片岡:現時点では、PCと比べて、スマホは単価が低くて課題だと言われていますが、一方で、可能性は非常に高いと思っています。

それはPC時代は、コンテンツがあって広告というのは別ポジションにあって、ここで見てねとか、ここでクリックしてねという形だったのが、スマホだと、コンテンツと広告が、限りなく近くなる。もちろん広告と明示した上でですけれど、体験自体も近くなって、良いものであればシェアもされるし、ユーザーとクライアントともに満足していただけるという仕組みになってくると思います。

むしろどっかのタイミングで、スマホの方が単価が上がって、よりよいコンテンツ、広告もつくれるのじゃないかなってことで、僕たちも今、取り組んでいるところです。

書き手の増加は好影響

藤代:瀬尾さんどうですか。

瀬尾:そうですね。

藤代:さっき、2億円ぐらいあったらいいと言っていましたが……。

瀬尾:それぐらいあればできる時代だから。2億円や4億円でいいジャーナリズムができるというのは、昔だったら考えられなかったと思うんですよね。例えば1つ雑誌をつくるというと、小さい雑誌でも10億円ぐらいの予算規模がないとできなかったわけです。

デジタルというものを使うことによって、余計な部分をそぎ落としたらそれぐらいでできる時代になったことは、すごくいいことだと思うんですよね。

いま改めて感じるのは、例えばヤフーさんだとか、スマートニュースさんとか、NewsPicksさんとか、いいコンテンツをつくれば届けてくれるところとか、すごく増えているわけですよね。しかもいろんなことにチャレンジしてくれていると。

その一方で、実はコンテンツをつくるということに関しては、意外に参入してくるところは少ないんですよ。例えば、ユーザー投稿みたいなものはできているけれども、取材もそうだし、あるいは他のクリエイティブな漫画の作品もそうですけれども、そこに結構お金かけてやっているというところは、実はまだ少ないわけですよね。

で、例えば漫画でもなんでもそうですけれど、結構そういう人育てるときは時間もお金もかかると。一時期、10年ぐらい前に漫画が儲かるととゲーム会社が漫画雑誌に参入したりしましたけれども、そこから、良質な作品が出来るまで10年ぐらいかかっていますよね。今、ようやくそれが実り出しているという感じがしますけれど。

売ってくれる方がどんどん増えているというのは、コンテンツをつくる側にとっていい状況になるんじゃないかと思っています。

ニコニコ超会議的ビジネスモデル

藤代:どこで儲かると考えているのかというのをすごく知りたいと思っていて、広告動画やネイティブ広告みたいなものですかね。それ以外に何かあるんですかね。なるべくいろんなバリエーションがあったほうが、収益はいいような気がするんですけれど。

松浦:ひとつは、こういうイベントもそうだと思うんですよね。メディアさんの部分でいうと、例えばこの場にはいらっしゃいませんけれどニコニコ動画さんとかは、ニコニコ超会議みたいな形で人の集客も実現してみせた。そういう実際のリアルな部分、接点のところで、最終的に何かしらの形でお金に少しずつ変えていくというモデルがあると思うんですよ。

実際にメディアをやっていると人の顔もなかなか見えづらいところがあるので、そこでリアルで会うことによって得られる価値というのが、ある意味ビジネスというところの部分に消化できるような形になってくれば、もう一つの道としてあり得るかなと、個人的には思いますね。

藤代:ヤフー個人の取り組みみたいなもの、さっき少し自己紹介のところで紹介いただきましたけれども、私も実は個人のオーサーとして書いていまして、大変興味深い取り組みだと思うんです。

インターネットが登場してよかったのはAmazonのアフィリエイトや楽天のアフィリエイトで、小さな収入を得ることができるようになったことです。

それでたくさん儲けている人もおりますけれども、いいもの書けばヤフーさんが取り上げてくれるかもしれない、それもヤフートピックスに取り上げてくれるかもしれないというのは、個人にはすごく面白くて。

メディア側から見れば、50%の広告手数料を書き手に分配することで、書き手を集めてコンテンツを取りに行くという、野心的な取り組みだと思うんですけれども。書き手はの人は被ってるじゃないですか。ブロゴスに書いたり、ヤフーに書いたり、どうやって書き手を掘り起こしたり、新しい書き手を育てていくのかというのは、何かお考えがあるのでしょうか。

片岡:まず、実はここで収益を上げようとは、ほぼ考えていないというのが本音です。さっき瀬尾さんがおっしゃられたような、僕たちはまず「届けること」をメインにやっているので、より多くのユーザーに届けて、ユーザーがそれで課題解決してもらうとか、アクションに繋がるのを僕たちは使命としているんです。

ですが、届けるもの自体が弱まってくるかもとか、もっとより良いものが他にもあるかもということを、やっぱり生み出したいというのがあるんですね。それができないと僕たちは届けられないので、そのためには、書き手が持続可能であるということが肝ということで、こういった環境や仕組みをつくって、まずは書き手の方たちが、ここで書くことがその人たちの認知により繋がるとか、ユーザーを動かせるとか、生活につながるとかということを発想して、やらせていただいています。

いろんなところから収益があるほうがいいということもあるので他メディアでも活動するというのはあると思うんですが、まず一番に書きたいとか、ここで書くと反応が得られて次につながると思っていただけると、ニュース個人がより価値の高い場所になっていくかなと思っています。

新聞社が切り捨てざるを得ないムダ

藤代:こういうものがたくさん増えてくると、瀬尾さんの会社のコンテンツとかいらない、みたいな話になるんではないですか。ならないですか。

瀬尾:決して対立的なものじゃなくて、こういったニュース個人などで情報発信できる人が育ってくれば、レガシーメディアで活躍する人も増えてえてくると思うんです。

ただ、僕はニュース個人とかすごく面白い試みだし、いろいろな人が出てくると思うんですけれど、すべての人がそこで活躍できるとは限らないと思うんです。やっぱりコンテンツを作る人を育てるという部分に関しては、例えば編集だとかプロデュースみたいなものが必要な人もいます。

そういう部分というのは、今出版社が持っていたり、あるいは映画会社が持っていたりしますけれど、そういう役割は必ず残ると思うんですよね。ただ、どうでもいいことをやっている部分っていうのは残らないと思うんですよ。

藤代:どうでもいいこと?

瀬尾:例えば新聞社が今なんで経営が大変かっていうと、あれは無駄な取材をするから経営が大変なんですよね。

藤代:どうでもいいことだと。

瀬尾:そうです。例えば通信社がやってるような発表を、霞ヶ関だとか企業の広報だとかで聞いてる新聞社がいっぱいいますけど、あんなものは別に共同から時事から買えばいい話で、そういうのを全部やめてしまえば、ビジネスモデルは再構築できると思うんですよね。

く今、メディアって無駄なことを結構やりすぎている。それはさっきの規模の話とも通じるんですけど、これまでは流通コストもマーケティングコストもかかるので規模を維持しなくちゃいけないから、いろんなことやって大きなモデル作ったけれども、実はこれデジタルの時代なんでもっともっとそぎ落としていって純化させていければ、才能のある人やいいコンテンツは残る可能性があると思います。

藤代:なるほど。

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