2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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田久保善彦氏(以下、田久保):皆さま、改めましてこんにちは。このセッションは「起業をしながら失敗力をつける」というタイトルになっていますので、皆さんの中で起業をすでにされていらっしゃる方と、これから起業を真剣に考えていらっしゃるっていう方の数を確認させていただきたいなと思うんですが。
もうすでに起業済みっていう方どれぐらいいらっしゃいますか? 起業家である方? おおっ! こちらの筋の方々が多いようですね。これから起業を真剣に考えているっていう方? 8割近くはもうそういう感じなんですね。ありがとうございます。じゃあ、それを前提に、まずお2人の自己紹介からしていただければと思います。佐々木さんよろしくお願いします。
佐々木大輔(以下、佐々木):freeeの佐々木と申します。私たちはスモールビジネスに携わる皆さんが、創造的な活動にだけフォーカスできるような、そんな社会を実現したいということで事業を行っております。
そのために小さなビジネスのバックオフィス業務を自動化、最適化しようということをやっていまして、クラウド型の会計ソフト、それから給与計算ソフトのfreeeというものを提供しております。
これまでにシリコンバレーのベンチャーキャピタルですとか、シンガポール政府の投資会社ですとか、そういったところから17億円以上を調達して事業を展開しておりまして、今、従業員が80名を超えるような体制となってサービスを提供しているという形です。
私自身の紹介なんですけれども、学生の頃からベンチャー企業でインターンっていうようなことをやっていたんですけれども、その後新卒で広告代理店に入りました。
その後今度大きく方向を変えてですね、投資ファンド、プライベート・エクイティのファンドに転職した後に、ベンチャー企業でCFOをやったりとか、こんなことをやっていたんですが、28歳の時にすでに4社目ということでGoogleに転職をして、Googleでは中小企業向けのマーケティングっていうのをやっていて、最初は日本でやっていたんですけれども、その後アジアパシフィック地域全部の統括をするようになりました。
ここから中小企業向けに新しいテクノロジーを日本で推進することをやってみたいなということを思って、今の会社を始めたという経緯です。
佐々木:実際にやっているのがfreeeっていうものなんですけれども、クラウド型の会計ソフト、簿記の知識がなくても誰でも使えるし、自動で会計帳簿をつけることができると。こういうサービスになっています。
今まで中小企業の経理の仕事っていうのは、とっても手作業で、ひたすら入力をするというようなことが続けられていたんですけれども、こちらをなんとか自動化できないかということで、オンラインの銀行のWebの明細とか、クレジットカードのWebの明細を利用して会計帳簿を自動で作ろうというようなことをやっています。
具体的にはfreeeの中に銀行ですとかクレジットカードの口座情報っていうのを入れていただくと、自動で銀行とかカードの明細を取ってきますので、そこから会計帳簿を自動で作成します。例えばこういった形で銀行カードの明細っていうのを取っていただくと、そこからどんな会計帳簿を作っていったらいいのか。
東京ガスだったら水道光熱費っていう分類だよねってことを推測しますので、あとはクリックしていただくだけで会計帳簿が作れる、こんな形のサービスになっています。モバイルからも簡単に使うことができるというような仕組みです。
こういったことを提供しているんですけれども、これを使うと経理の業務が約50倍速くなるというのが実験の結果として出ておりまして、非常に低価格でお使いいただくことができます。
最新の数字ですと16万を超える事業所で利用いただくという形で成長することができて、最近ですけれども社員の調査によると、クラウド会計ソフトの市場で圧倒的なトップシェアを獲得するといったことができております。こういったビジネスを展開しております。
田久保:ありがとうございます。
田久保:では続いて吉田さんなんですが、なんと吉田さんの会社であるクラウドワークスさんが、先日IPOされまして。おめでとうございます。
吉田浩一郎氏(以下、吉田):クラウドワークス吉田と申します。本日はよろしくお願いします。先ほどご紹介いただいたようにこのたび上場ということで、今回の上場は非常に特徴的でございまして、申請期、上場の手前の直前期ですね、直前に申請した期が赤字と。で、上場後の予想で今出している決算も赤字ということで、完全な赤字でのIT業界、TMTセクターでの上場ですね。
実に先ほど登壇いただいたサイバーエージェントの藤田さん以来14年ぶりという形で、このたび新しく株式市場に挑戦させていただくことになりました。今から3、4分ぐらいで会社の内容をですね、なにぶん先週の上場で今日なんで、話せる内容が会社に関しては限定的かなと(笑)、という所はちょっとご了承いただければと。一方で今日の登壇者の中ではいちばん親しみやすい上場企業の社長じゃないかなと思っております。
クラウドワークスはですね、マザーズで時価総額今トップのサイバーダインと並んで経済産業大臣の資料にもビジネスイノベーションを起こす4社のうちの1社という形で取り上げていただいています。
ミッションとしては21世紀の新しいワークスタイルを提供するという形で、20世紀は国、企業の側から働き方は最適化されていたんですが、21世紀は個の側から働き方を最大限活性化して最適化していくという形で、社会をより良くしていくということをミッションに置いています。
クラウドソーシングは新しい外注方法です。今まで企業への外注が中心だった日本企業に対して、個という新しい労働力を提供しています。
ソフトバンクの孫さんがこの前、近日発売するソフトバンクの新型ロボット「pepper(ペッパー)」で、ロボットが新しい労働力になるということをプレゼンされていましたが、我々からするとまだまだ使ってない労働力が日本にはたくさん眠っていて、労働をオンラインで提供すると。「労働のオンライン革命」という形で我々言っております。対象の労働力人口6千万人あると、対象の市場としても22兆円広がっていると。
クラウドワークスはですね、上場時の社員数で29名。わずか29名でクライアント数4万社、登録ユーザー数22万人、最新で26万人まで伸びております。といった形でサービス展開しております。
実際に個人に発注するっていうと、なんか大企業だと使いにくいんじゃないのというお声もあったんですが、実際にドコモさんですとか、ボンカレーさん、サブウェイさんとかが我々をご利用いただいていると。
実際に業種別でみても、電通、リクルート、ヤフー、ドコモ、トヨタ、ユニ・チャーム、ベネッセということで幅広い大企業さんにご活用いただいております。
また、経済産業省、外務省をはじめとして政府4省が活用する唯一のクラウドソーシングとなっており、20以上の地方自治体がご活用いただいております。
吉田:市場規模としては、そもそもインターネットオークション、ヤフオクってあったと思うんですけど、あのヤフオクでいう物が役務、サービスになったのがクラウドソーシングだというふうに思っています。今子供が寝た後で2時間だけ空いているといった、この2時間の隙間時間をインターネットオークションで売れるというようなイメージが、クラウドソーシングかなと思っています。
このような形で正社員から28年前派遣という概念、人材の月貸しという概念が生まれました。これ6兆円市場になっています。それに対していよいよクラウドソーシングということで、使った分だけ人材にお金を払うという新しい人材調達のあり方が生まれたということですね。
これの対象市場22兆円ということで、現在アドバイザーとしてJeff Howeさん、これがクラウドソーシングという概念を提唱された方、元祖でございます。この方がなんと我々のアドバイザーに就いていただいたということで、グローバルから見てもクラウドソーシング=クラウドワークスという構図が出来上がり始めております。
長期的には三木谷さんのeコマースの市場は98年から15年で急速に立ち上がってきました。98年の当時インターネットで洋服って買うの? みたいな時代だったと思います。
そこから15年かけて15兆円市場になってきた、その98年の状況が今だと思っておりまして、収入があるから消費をするわけなんですけど、収入に関して、そんなインターネットでお小遣い稼ぎでしょ? っていう声がある中、クラウドワークスだけで年収1千万円を実現しているという方がすでに登場しているんですね。
ですので収入をインターネットで得るということが、すごくカジュアルなものに今後なっていくというふうに考えています。
仕事だけではなくて、個人が安心して働けるインフラということで、教育や社会保障、両側から、3軸から整備していって、正社員じゃない人でも安心して働ける世の中を作っていきたいというのが我々の中長期の戦略でございまして、第一段階としてクラウドソーシングを普及して、我々の総契約額100億を短期で実現すると考えています。
その後、教育や社会保障を整備して、3軸から個人が安心して働けるインフラを作る。そして最後ですね、正社員や派遣社員を含めて例えば介護、子育て、そういった人生のシチュエーションの時に、ある時はクラウドソーシング、ある時は派遣、ある時は正社員に戻るといったようなことが柔軟にできる世の中を実現したいというふうに考えております。
最後にこのような形でクラウドワーカー、オンラインで働いている方々が2周年記念で集まっていただいて、みんなからありがとうと言われたと。今日の失敗の話でいきますと36歳の時に私自身1回目の起業に失敗しまして、オフィスに1人ぼっちになりました。
そこから37歳で起業して現在40歳という形で、たった1人から今ここまで、こういったクラウドワーカーの皆さんにありがとうをいただけるようになったというところで、今後も働くを通して人々に笑顔を頑張って参りたいと思います。
田久保:ありがとうございます。
田久保:こんな吉田さんなんですけれども、先日初めてお目にかかった時の第一声がですね、どんな感じだったか……。
吉田:(笑)。忘れちゃった、ちょっと言っていただいてもいいですか。
田久保:初めてお目にかかった時の第一声が、クラウドワークスに関しては僕1個も失敗してないんですよねっていう。「あれっ」て思いまして。失敗力のセミナーの打ち合わせのはずだったんですけど。でもその前にいろいろやらかしてしまったことが、今回すごい生きているっていうお話しをすごく熱っぽく語っていただいたんですけど。
吉田:そうですね。逆に37歳で起業って言うとDeNAの南場さんぐらいですので、IT業界ではかなり遅い方なんですね。そういった意味合いではかなりいろいろな失敗、ドリコムの役員として赤字決算とか、リストラとか、新卒内定取り消しとか、あるいは1回目の起業をして、結局1億ぐらい赤字を出して役員が取引先持って出て行った、というところまで経験したおかげでいろんな勘所がわかりまして。
クラウドワークス創業から3年で上場承認いただきましたが、今まで法的トラブルは0件、社員の退社も2人だけ、役員も創業から全員一緒に戦ってきている。社員が辞めないことが良いことかどうかわからないですけど、非常に働きやすい環境でここまで来れているというのは、逆に言うと失敗力のおかげかなと(笑)。
田久保:なせる業であると。ちなみに例えばドリコムの話から、1回目の起業そしてクラウドワークスへっていうこの、クラウドワークスの前のプロセスから大きく学んだこと2つって言われたら、何と何をあげられますか?
吉田:2つですか。2つ……。
田久保:3つだと時間足りなくなっちゃうので(笑)。
吉田:わかりました。あえて全然違う角度から。最近気づいたんですけど、起業家ってサラリーマン力が重要だと私は思います。これ結構逆説的で、多くの起業家って自分がやりたいようにやるんですよね。なんですけど、私のターニングポイントは明確に2つあって。
ひとつめが、元楽天でYJキャピタルの社長を今やられている小澤さんに投資いただいたことですね。小澤さんの言うことは、時として理不尽なことが多かったんですね。
例えばいきなり投資を受けたのに、今後おまえはクラウドソーシングって言うなって言われたんですよ。おかしくないですかこれ(笑)。クラウドソーシングで起業しているのに、クラウドソーシングって言うなと。
この話の本質は、要はクラウドソーシングっていう市場は存在しないと。外注っていう市場しか存在しないから、おまえがやるのは受託だと(笑)。だからまず受託頑張れと。だから受託の仕事くださいって言ってこいというようなことですね。
これはやっぱり多くの起業家は、いやいやクラウドソーシングってこう付加価値でとか、新しい価値でとか言うんですけど、ここをきっちり小澤さんの言うことに従ってやったら、どんどんうまくいったと。
その後、シリーズAで3億調達した後、10%、20%伸びていたんですけど、このままいくと、あれ、これエクセルで計算しても三木谷さんのようにならないなみたいな(笑)。この差は何なんだみたいな感じで悩んでですね。
ふたつめが、いろいろ悩んだ挙句、サイバーエージェントベンチャーズに投資いただいたことです。藤田さんのもとを訪れて、大きく勝負しなさいということで、サイバーエージェント含めて10億投資いただいて、そこから藤田さんもメンターで、もう完全に藤田さんの言った通りにやりました。藤田さんの言われることは、自分ではピンとこないことって結構あったんですけど。
実はクラウドワークスがうまくいったのって、初期は小澤さんの言うことをそのまま聞いて、次は藤田さんの言うことをそのまま聞いたと。これが起業家はなかなかできないんですよね。いやいやそれちょっと僕納得いかないんで、自分なりのやり方でしばらくやりますみたいな(笑)。
田久保:それって、このフェーズに入るまでは吉田さん自身もそういう感じだったってことですか?
吉田:全然わかんなかったですね(笑)。なんせ私お恥ずかしながら自社事業として1社目でやった事業って、メンズスカートっていう男性用スカートのeコマース事業っていうのをですね……。今聞くと笑うじゃないですか。当時は見つけた! みたいな(笑)。
田久保:やりたいことやろうみたいな。
吉田:メンズスカートって検索しても、誰も専門サイトやってなかったんですよね(笑)。しかもファッション好きの社員が、表参道行ってくださいよとか言って、アパレルブランド絶対男性用スカート1点はありますからって。これを一堂に会して集めるサイトはないですよと。で、やってその時はついに自社事業きたー! みたいな感じでやってみたんですけどね。
皆さんお察しの通り市場が小さいと(笑)。毎月30万ぐらい売れるんですけど、2割ぐらいが利益で6万円と。なのでこれサンクコストで、どんどんどんどん赤字と在庫が積み重なって、引くに引けないみたいなっていうことをやったおかげで、とびきり大きな市場でやらないと事業って成功しないんだなということがわかったりとか。
田久保:起業家が起業家たるものの本質みたいなことが、そこで見えてきたみたいな感じですかね。
吉田:そうですね。実は投資を受けるって、ひとつ例えると1千万、1千万、1千万、1千万、1千万で5社に1千万投資するじゃないですか。こっちから見たら同じなんですよ。誰が1千万に対して一番早く、最速で結果出せるかっていうものですね。
それができると次は5千万投資してもらえるっていう、1つのものなので。ということはこれは投資家は上司だというぐらいに思ってやるぐらいがちょうどいい。起業家はもともと頑固なんで、それぐらいのバランスが私はちょうどいいと思います。
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