【3行要約】
・「納得いくまで試したいユーザー」と「効率的に販売したいディーラー」。両者の理想がすれ違う現状が、自動車業界に根深い「押し売りのジレンマ」を生んでいます。
・Carjanyの渡邊裕太氏は「第三者の立場だからこそ業界構造の変革ができる」と語り、営業を受けずにブランド横断で試乗できる新サービスを立ち上げました。
・試乗プロセスを再定義し、ユーザー・ディーラー双方の課題を同時に解決する「クルマ選びの新しいスタイル」を提案します。
自動車ディーラーで「押し売りされた」と感じる根深い構造
渡邊裕太氏:東京海上日動発スピンアウトベンチャーのCarjanyです。本日は私たちが挑戦している「クルマ選びの新しいスタイル」の創造について、ご説明をしたいと思います。
まず、私の自己紹介です。私は東京海上日動に入社したあと、20年にわたって国内外の自動車販売業界に従事してきました。そこで感じた課題感。これは当事者だけだと解決できないなと思いました。「第三者の立場だから解決ができる」と考え、24年2月に出向起業モデルを活用して当社を創業しています。
私たちがフォーカスしているシーンは、日常にありふれた自動車購入のシーンです。自動車ディーラーへ行って、クルマを購入していく。ここに私達は大きな業界の課題があると思っています。
何か。業界構造のジレンマがあります。ユーザー、ディーラー双方が理想とする購買行動、販売行動がほぼほぼ実現できていません。よく「押し売り」という言葉で形容されますが、長年続く根深い課題があると思っています。
私たちは第三者の立場であるからこそ、ユーザー、ディーラー双方の理想を実現できるサービスを作れるのではないか、新しいクルマ選びのスタイルを作れるのではないか。そのような思想のもと「クルマ選びをらしく、楽しく、スマートに」をミッションに、業界構造の変革にチャレンジしています。
そんな私たちが最初にアプローチを始めているのが、試乗プロセスの再定義です。ユーザーとディーラーをオンラインでつなぎながら、新しい試乗のスタイルを作っていく。こんな取り組みを進めています。
“納得いくまで試したいユーザー”と“効率的に販売したいディーラー”のすれ違い
試乗におけるユーザー・ディーラーの悩みも根深いです。「ディーラーに行くと押し売りされるかもしれない」「あまり時間と距離を乗れない」、ディーラーからすると「お客さんが来ない」「業務効率が悪い」。こんなことを悩みとしてよく聞きます。

我々は通常ディーラーで行われていた試乗業務を、ショッピングモールで当社が運営するビジネスモデルを展開しています。ユーザーからはご料金をいただき、ディーラーからは試乗車と登録料をいただきます。完全に新しい試乗のモデルだと思っています。

どんなベネフィットが双方に提供できるか。ユーザーはオンラインで予約をし、ショッピングモールに来ていただければ最大7日間、ご自身のユースケースで、セールスを受けることなくブランド横断で車に乗れます。

ディーラーにとっては、試乗車と登録料さえ預けていただければ試乗の機会を増やすことができますし、業務効率も上げることができます。これが我々が双方に提供しているベネフィットです。

イメージは投影している写真のような形です。ユーザーは、ショッピングモールに来ていただければ最新の車が、営業を受けることなく乗れるというようなモデルです。最近は電気自動車等がよく利用されています。

また、我々はディーラーに様々なデータも提供しています。投影しているのは、ユーザーがサービスを利用した後のブランド横断の比較データです。これを提供することによって、ディーラーの営業効率を上げていただくようなサポートもしています。

ユーザー・ディーラー双方の課題を同時に解決しているのが、私たちのサービスの特徴だと考えています。
ユーザー・ディーラー双方の課題を同時に解決
次に、グロース戦略についてご説明いたします。我々のサービスがグロースするためには、場所、試乗車、ユーザーの3つの要素が必要です。時間の関係もあるのでユーザーの獲得方法は割愛させていただきますが、残りの2つは、イオンモールと東京海上日動とのオープンイノベーションで取組みを進めています。

まず場所です。既に当社はイオンモールと資本提携を結んでいますが、彼らは、全国に160ヶ所ショッピングモールがあります。、我々はすでに40ヶ所に展開しており、彼らとの関係を生かせば、残りの120ヶ所も容易に展開ができます。

次に試乗車の調達です。東京海上日動という会社は全国、全ブランドのディーラーと付き合いがあります。彼らと連携することによって、進出する県でほぼ大半のブランドの試乗車が調達できるのが我々の強みです。

加えて東京海上日動発のスピンアウトベンチャーだからこその信頼感、そして「万が一何かあった時にどうするのか」というリスクマネジメント能力です。ここが我々の大きな競争優位性になっています。

このようなアライアンスを通じて、我々のサービスは確実に全国に広がっています。現在は、関東・関西エリアでの展開で、売今年度売上約4億円くらいの予想ですが、エリアを広げれば広げるほど事業が拡大していく。こんな好循環なフェーズにすでに入っています。
「クルマをリアルに試したい」というニーズは残り続ける
最後に、私たちのサービスの将来性です。よくこんなお話をいただきます。「自動車販売業はシュリンクしていく産業なのではないか」と。「今後サービスのニーズがないのではないか」というお話をいただくんですが、私たちの答えは「ノー」です。

私たちは、新しい車の技術、販売方法が出れば出るほど「リアルに試したい」というニーズは残り続けるのではないかと考えています。
例えば自動運転機能を有した電気自動車がオンラインで発売される場合。みなさんポチっとパソコンでクルマを買いますか? おそらく買わないと思います。ここに我々のサービスの勝機があると思っています。

事実、某自動車メーカーとはこの取り組みをもう実装しています。また我々が事業を広げれば広げるほど、ブランド横断の相対的なユーザーの声をベースとしたデータが貯まります。これは誰も持っていないと思います。これを人工知能と組み合わせることによって、toC、toB双方に新しいサービスを作っていくチャンスがあると思っています。
そして最終的には、私たちは交通事故の削減という社会課題に本気で挑んでいます。我々が扱っている車は自動車メーカーが作っている、最先端の安全機能を持ったクルマです。
事実、我々のサービスは2年間で1万人以上の貸し出しをしていますが、人身事故は1件も発生していません。これは何を意味するか。我々のサービスを通じてお客さまが新しいクルマに買い替えていただければいただけるほど、交通事故の削減という社会課題の解決に近づいていくということです。

ここにいるみなさんならお気づきだと思います。これが私たちが所属している損保業界にどういう影響を与えるかを。
私たちは決してディープテックを使ったような華々しいサービスではないですが、既存の企業の中に眠っているネットワーク、そしてリソースをふんだんに使った、身近な課題解決をしている事業だと思っています。
「クルマ選びを らしく、楽しく、スマートに」。新しいクルマ選びのスタイルを作りつつ、業界の構造を変革し、社会課題の解決も実現していく。そんな取り組みをメンバー一丸となって進めていきたいと思っています。本日はご清聴どうもありがとうございました。