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新設100億円ファンドから、日本を再興する起業家を生み出す物語/Theta Times Ventures 北尾 崇さん(全4記事)

【スタートアップ】日本で次の巨大企業は生まれるか 100億円ファンドが賭ける成長領域 [1/2]

【3行要約】
・SaaS偏重の時代が終わりを告げ、今は「売上・利益・成長率」が冷徹に評価されるリアル産業への逆襲が始まっています。
・Theta Times Ventures社の北尾崇氏は、AIと事業承継を武器に「700兆円の巨大なリアル市場」へ挑む勝機を語ります。
・多重下請け構造や後継者不在という日本の歪みを、いかにして世界で戦えるユニコーン企業へと変貌させるべきなのでしょうか。

新設100億円ファンドの立ち上げ直後に聞く、Theta Times Venturesの現在地

稲荷田和也氏(以下、稲荷田):声で届ける起業家の物語「Startup Now」。MCのおいなりです。本日は、スタートアップの起業家ではなく、それを支えるベンチャーキャピタル、その中でも2025年の11月、100億円規模の新設を発表されたばかりのTheta Times Ventures、ジェネラルパートナーの北尾崇さんにお越しいただきました。北尾さん、よろしくお願いします。

北尾崇氏(以下、北尾):よろしくお願いします。

稲荷田:実はこの収録は(ファンド新設)発表直後の今、させていただいております。たぶんめちゃめちゃいろんな方々からの連絡も来てお忙しいかなぁとは思うんですけれど、どんな日々ですか(笑)。

北尾:ありがたいことにかなり反響がありました。やり取りだけで、確かに時間が過ぎちゃうぐらいの連絡をいただいたりしています。立ち上げたばかりですので、そういう意味ではカオスな状態で、3人でバタバタしながらやっています。

稲荷田:ありがとうございます。そんな中でありますが、Thetaさんおよび北尾さんの過去の話なんかも今日はたくさん深掘りさせていただきたいなと思います。いろいろ聞かせていただければと思います。

北尾:ありがとうございます。

「成長の角度」と「出口設計の角度」を掛け合わせるファンド構想

稲荷田:本日は北尾さんの人生の物語もひもといていきたいなと思っています。その前に、Theta Times Venturesを気になっている方も多いと思いますので、まず概要のところから簡単にご紹介いただいてもいいでしょうか。

北尾:
はい。ファンド自体は7月に立ち上げ、スタートした会社です。Thetaは「角度」という意味で、Timesは「掛け算」のようなイメージを意識してつけた名前です。

1つ目の意味は、スタートアップの成長角度を上げていく、本当に大きな会社を起業家と作ろうという思いを込めた「角度」です。

もう1つは、しっかりIPOしていくような会社に投資していく、という意味です。僕らはふだんシード・アーリーに投資しています。このステージでは、IPOを目指す会社とM&Aを目指す会社の両方に出会います。

そういう意味では、IPOを目指す会社に投資していきつつ、M&Aについては、ある意味でLP企業さんや大企業さんにつなげられるような出口も意識しています。つまり、出口の設計を意識している、ということです。

そうした「成長の角度」と「出口設計の角度」、その掛け算によってインパクトを出していく。そこが、なんとなくの名前の由来です。シード・アーリーで投資し、リードで投資していくファンドになります。

(共同GPの)中垣はSHIFTに初期から関わってきましたし、私はタイミーさんに携わってきました。(共同GPの)小池も、サイバーエージェントの中で大きな事業を作ってきました。そういう意味では、ユニコーン、あるいはもっと言えばデカコーン級の会社を作ってきたメンバーです。売上規模で見ても、ユニコーンなら500億円規模、デカコーンならその10倍くらい、という感覚です。

そうした規模の会社を本当に作るためには、シード・アーリーの段階から一定のチケットサイズを持って取り組まなければいけないよね、というところで集まったチームになります。


それぞれの構想が重なって生まれた、3人の共同GP体制

稲荷田:ありがとうございます。いろいろ深掘りしたいポイントがたくさんあるので、一つひとつ聞けたらなと思います。共同GPでやられていると思うんですけど、どういう感じでチームが組成されていったのでしょうか。

北尾:みんなそれぞれ個人でこうやろうと考えていた中で、最初は中垣が私に「どこかで一緒にできたらいいね」みたいな、ゆるい話をしていました。一方で、小池と中垣も話していた、というかたちです。

私と小池はサイバーエージェント時代、そこまで接点がなかったので、ある意味「一緒にやりたいですね」となった後に、中垣に紹介してもらうかたちでスタートしました。

特に中垣と小池で言うと、小池は2023年にサイバーエージェントの専務を退任していて、そのタイミングで「次は何か事業をやるんじゃないか」という話がある中、中垣は「何か投資したいな」と思っていた、という流れです(笑)。

稲荷田:あぁ、最初はそっちだったんですね。

北尾:僕と中垣は、逆に投資のところでもつながりがあって、僕の創業前、1社目のキャリアで関わっていた投資先が、当時DNXさんにいた中垣の投資先と重なっていたんです。

稲荷田:そうなんですね。

北尾:それで、そこからの関係で言うと、もう10年くらいになる、という感じです。みんなそれぞれやろうとしていたんですけど、中垣が両方を引き合わせてくれた、という出会い方でスタートしています。

SaaS偏重の時代を越え、リアル産業にベットする理由

稲荷田:なるほど。3人で創業された経緯をお話しいただきましたが、この2025年、本当にスタートアップおよびVCを取り巻く環境、トレンドがすごく変化していると思っています。

さっき挙げていただいた特徴もきっといろいろ議論しながら決めたのかなと思いますが、どんな背景で決めていったのかも教えてもらえますか。

北尾:やはりインターネット銘柄やSaaS銘柄は、長らく高いPERで 評価されてきたと思います。iPhone誕生以降、アプリやキュレーションメディアなどが次々に出てきて、そうしたものが評価される時代が続いてきましたが、その流れもだんだん落ち着いてきています。

特にコロナ禍の2021年、2022年は、SaaS銘柄の評価が最も高かった時期でした。ただ、そこから状況が変わり、今は「売上高」「利益」「成長率」が高い会社が評価される時代になってきたと思います。

そうした中では、単純に売上規模を伸ばすためにも、一定のマーケットサイズがないと厳しい。もともとIT産業そのものは、ソフトウェアやSaaSを含めて23兆円、23.5兆円くらいの市場があります。

一方で、リアル産業を見ると、製造業は360兆円、建設は67兆円、小売は150兆円、物流は24兆円といった規模があります。これらを全部足していくと、700兆円くらいの規模感になるわけです。

これまでは、スタートアップがそこに入ろうとすると、例えば物流会社向けのSaaSを作る会社のように、あくまで実業を担う人たちの支援ツールを提供する立場でした。ただ、そこが事業承継とAIによって、大きく変わったと感じています。

つまり、物流会社向けのSaaSをやるだけではなく、物流SaaSに加えて実運送業そのものを自社に取り込み、実運送業自体も担う会社をつくる。そうなると、この24兆円という市場の中でも、本当に実運送業そのものの24兆円の領域に入り込めるようになる。これが、事業承継による変化です。

ただ、売上があり、M&Aによって成長率を担保できたとしても、リアルビジネスは利益率が低いのではないか、とこれまでは言われてきました。そこに対して、AIやロボティクスによって、まだまだ利益率を改善できる余地がある。2025年は、そういう状況だと思っています。

中小企業庁のデータによると、2025年時点で、日本には社長や個人事業主を含めて約400万人の経営者がいます。そのうち240万人、つまり6割が70歳以上です。それくらい、経営者の高齢化が進んでいます。

さらに、その中の127万人は後継者が未定です。つまり、400万人のうち240万人が70歳以上で、そのうちさらに127万人には後継者がいない、ということです。

このまま放っておけば、雇用も失われるし、GDPを含めたビジネスそのものも失われていく。そこを失わせないために、今まさに向き合わなければならない社会的な課題があるわけです。

そういうタイミングで、「東証100億円問題」のように、より大きな会社を作らなければいけない、という流れも重なってきている。同時に、テクノロジーの面でもAIが出てきている。そうした社会的、経済的、技術的な文脈がいくつも重なって、今、このリアル産業にどうベットできるかが1つの大きなテーマになっていると思います。


海外売上と国家基盤を見据えた、3つの投資テーマ

北尾:もう1つは、日本のITやSaaSは、実は海外売上比率があまり高くない、ということです。上場している日本のSaaS企業の海外売上比率を見ていただくとわかるんですけど、5パーセントを超えている会社は、ほとんどありません。

一方で、プライム市場の企業や自動車業界を見ると、例えばトヨタでも海外売上比率が70〜80パーセントあったりします。中央値で見ても60パーセントくらいあるんですね。それくらい、プライム企業では海外売上比率が高い。グロース市場やSaaS企業では、そうではない、ということです。

やはりITやSaaSは米国にかなり取られてしまいましたが、リアルな産業になると、日本はけっこう世界で通用している。そういう意味では、外貨を稼ぐというのが、僕が2つ目に意識している文脈です。グローバルという意味では、やはりIPやブランド、エンタメに限らず、広い意味でのIPのようなものを意識していこう、ということです。

最後の3つ目は、日本の国家基盤に関わる領域です。金融インフラ、セキュリティ、防衛、エネルギー、ESGといった分野は、やはり日本企業が担うべきだという考えがあるので、そういうところも見ていこうと。

とはいえ、起業家の方にビジネスの感度や視野を広げてもらう立場でもあると思っているので、その3領域だけだと決め切っているわけではありません。ただ、大きな方向性を意識した時には、そうしたキーワードを見ながらやっていこう、ということはかなり話し合っていますね。

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