【3行要約】・プラントベース&グルテンフリースイーツを提供するTREASURE IN STOMACHは、食物アレルギーを持つ人々に選択肢を提供する一方、大量生産と流通の課題に直面しています。
・創業者の柴田愛里沙氏は「海外もケーキ分野では強者がいない」と指摘し、催事出店から常設店舗展開へと段階的に市場を開拓中。
・同社は北海道から全国へと展開を進め、ECの強化や人材募集を行いながら「楽しく仕事を進め、優しい世界を作る」という理念を大切にしています。
前回の記事はこちら 海外市場の見立て「ケーキはまだ強者がいない」
稲荷田和也氏(以下、稲荷田):先ほど橋田さんは「日本発でやる人はあんまりいないだろう」という話がありました。ぜひ柴田さんに聞いてみたいんですけど。
海外のグルテンフリーやスイーツの市場の中で、「おいしいものっていっぱいあったりしないのかな」とか。そういうところで、どれぐらい戦っていけそうなのか。どんなふうに考えているんですか?
柴田愛里沙氏(以下、柴田):実は海外も事業としてすごくやっている方って、現状いないんです。
稲荷田:えっ、いないんですか?
柴田:ほぼいないんですよ。例えば、レストランにお惣菜を卸しているところが「プラントベースの冷凍スイーツをちょっと開発してみました」とかはあるんですけれど、やはり味の課題とかいろいろあるし、欧米の場合はグルテンを避ける方が非常に多いので、プラントベース&グルテンフリーを両立させているパターンがなかなかないんです。
なおかつケーキとなると、やはり製造のハードルとか、いっぱい作ろうにも委託先がなかなかない。製造ラインを空けてもらえない、みたいな難しさがあって。
稲荷田:しかも混ぜられないですもんね。
柴田:そうなんですよ。「ここがめちゃくちゃ強くなっています」みたいなところは、現状ケーキに関してはないんですよね。
ただ、名前はちょっとド忘れしちゃったんですけど、ドイツに卵や乳製品は使うけれど、グルテンフリーのパンケーキでチェーン展開しているカフェがあって。そこは今すごく伸びている印象を抱いています。
地方都市に行き渡らせる戦略
稲荷田:じゃあ、もうけっこう勝ち筋というか、いける感じはしていますけど。現時点で、すでにけっこうグローバルでも出している、ないしは食べてもらっているのか。それとも、まず北海道から東京に出てきて、という話なのか。どんな現状ですか?
柴田:海外で食品を出す場合、けっこう量をゴソッと動かさないと非効率過ぎてキャッシュフローが悪過ぎるので、とにかく量を作れるようになることが大事です。
海外ももちろんやりたいけれど、商談会に出たり、バイヤーを引っ張ってきたり、そういう点のハードルがちょっと高そうなので。量を作るということの準備をしながら、国内のマーケットにも力を入れていきます。
やはり日本の国内の地方都市にも、食べられないものがある人がいっぱいいる中で、東京はだいぶ便利になりましたけど、それ以外のエリアは、やはりマーケットがあるのに足りていないんですよね。
札幌もそうですし、私たちがこれからお店を出す福岡もそうです。なので、地方都市戦略というか、そういうところに行き渡らせたいなというのもあって、まずは国内ですね。
在庫をちょっと多めに作っておいて、海外もそれを持って商談して、出すということをやっていこうとしています。
在庫と販路の工夫
稲荷田:スイーツ、食べ物の在庫をいっぱい持つって想像しにくい部分があると思うんですけど、ここはどう工夫されているんですか?
柴田:今後、本店も含めると3ヶ所お店ができるので、売り口はいくつかあるかなと思います。あとオンライン、ネットショップですね。そこも増やしていけば、月に100万円とか200万円とかの出口を作れそうだなというのと。
あと国内の場合、催事ですね。駅ナカの催事とか百貨店とか、よく見かけるじゃないですか。
稲荷田:ありますね。
柴田:そういうのを通年で走らせるんですよ。常にどこかでやっている、みたいな(笑)。せっかく福岡に拠点ができるのだから、福岡でドミナント(ドミナント戦略)でできたらいいなと思っていて。福岡・九州エリアと、あとやはり売上的には東京はすごく作りやすいので、東京で。
稲荷田:それはやはり感度が高いとか?
柴田:やはりシンプルに人口が多いですよね(笑)。ヴィーガンやプラントベースを知っている人がすごく多いのと、自分は違っても友人がアレルギーで、とか。お土産需要もすごく高いですね。
稲荷田:なるほど。今、催事の話もいただきましたけど、札幌三越に関しては構えているんですよね?
柴田:構えています。
稲荷田:2号店で、けっこう早めに出されていて。
柴田:早めに出しています。
催事から常設出店へ
稲荷田:これ、すごい意思決定というか、怖くなかったのかなとか思ったりするんですけど。どんな覚悟だったんでしょうか? 意外とできた、みたいな話なのかとか。
柴田:三越さんはそもそも催事出店を何度かさせていただいていたんです。最初はそもそもスイーツとかフードのフロアですらない、アパレルのフロアの隅っこのほうに長机2つ、みたいな感じで始めさせていただきました。
それで、日販でもそこそこ売上を作っていたんですよね。そこからフードの催事のほうに格上げになって、3ヶ月に1回、季節ごとに展開させていただけるようになりました。
売上が順調に乗せられているし、お客さまからも「百貨店で初めて食べられるものを買えた」とか、「子どもがアレルギーでネットして注文していたけど、仕事帰りにデパ地下で買えるってすごく楽」とか、そういう声をいっぱいいただいて、出店につながりました。
体調悪化と地方ならではの難しさ
稲荷田:ここまで聞いていると、商品開発、店舗出店、ECと、全部順調そうに聞こえますが、ご苦労したご経験とか、いわゆるハードシングスはありますか?
柴田:順調じゃなさ過ぎますね(笑)。
稲荷田:へぇ、そうなんですね(笑)。
柴田:私、起業して3年間は、アレルギーが悪化し過ぎて、免疫がおかしくなっちゃったんです。おしっこがぜんぜん出ないとか、病院に行って入院の一歩手前みたいな感じになってしまったりとか炎症を起こし過ぎて。3ヶ月間ぜんぜん動けない、みたいな時もありました。
その時に、「体調が悪くても会社を継続させるには?」みたいなことをめちゃくちゃ考えて(笑)。それはすごく良かったなって思うんですよね。従業員のマネジメントにも活かせるので。なので、そういう自分の体調的なところに1つ課題感がありました。
あと、やはり北海道って、どこに行くにしても距離がある。やはり会って話したほうがチャンスも増えるし進むんですよ。そういった意味では、地方都市ならではのやりにくさはめちゃくちゃありますね。
稲荷田:体力的にもしんどいですよね。催事で本当に毎週のようにいろんなところ(に行って)。
柴田:そうですね。でも体調がすごく良くなってからは、私、4分の1ゲルマン民族で狩猟民族だから、ベースとして農耕民族の日本人よりは動けるんですよ(笑)。
(一同笑)
橋田一秀氏(以下、橋田):そこ(笑)?
柴田:ですです。私、それ、めっちゃみんなに言っているんですよ。
橋田:そういう理由なの?
柴田:はい。そうだと思いますよ。狩猟民族って、とどまっていたら駄目なので。1ヶ所にいたら死ぬので、すぐ動かないと駄目って私は勝手に思っているんですけど(笑)。
催事はめっちゃ大変ですね。閉店後に準備するんですよ。夜21時から23時に準備して、翌朝7時に会場入りして準備して、10時オープンに気合いで間に合わせる。使い慣れていないレジや使い慣れていないバックヤードで道に迷いながらやる、みたいな感じなので(笑)。
稲荷田:そうか。慣れていないところですよね。
橋田:でも、催事って短いものだと数日から、長いものだと1ヶ月ぐらいやっているやつもあるじゃないですか。この前通りかかった時に、今、新宿でやっている大北海道展の看板を見たら「1ヶ月とかやっているの?」と思いました。
お店を持つのはコストがすごく高いかもしれないけど、そういう長さでやっている催事もあるから、そういうふうに催事を転々とすることで、一定の売上を上げるというのはあるなって僕も見ていて。
柴田:それと「あっ、この売り場、売れるな, 売れないな」なんかはめっちゃわかりますね。「うちと相性がいいな」とかね。
橋田:それはでも、福岡もそうだよね。催事出店からの本出店。
柴田:ですです。それで、「売れるな」というのがわかって、行く、みたいな感じですね。
稲荷田:福岡は他のエリアに比べて、やはり手応えがあったんですか?
柴田:そうですね。札幌よりちょっと大きいぐらいの街ですし、商圏がめちゃくちゃ広くて。なおかつプラントベースが、あまりまだないみたいな。私たちにとっては札幌と条件が似ていて、すごくやりやすい。
稲荷田:確かに。
柴田:そうなんですよ。