【3行要約】・高額商品の購入に悩む消費者が多い中、積立決済という新しい選択肢が注目されています。
・起業家の黍田氏は「海外では一般的な積立決済が日本にはなかった」と指摘し、コロナ禍での事業ピボットを経て、待つことでお得になる購入体験を提供しています。
・実証実験では数千万円の積立実績があり、消費者は特典のために3〜7ヶ月待てることが判明。新たな購買体験として今後の広がりが期待されています。
前回の記事はこちら 関心が向いたのは社会の空気や同調圧力
稲荷田和也氏(以下、稲荷田):へぇ。大学や学部はどうやって決めたんですか?
黍田龍平氏(以下、黍田):当時は「場の空気」みたいなところが興味分野ではあって、「なんで生まれちゃうんだっけ?」みたいな疑問があったので、「どうせ行くなら興味があるところがいいな」というところで社会学部や文学部や人文学科をメインで選んでいました。
稲荷田:大学の勉強もけっこう熱心だったんですか? それともいわゆるインターンとか起業みたいなほうがどんどん濃くなっていったんですか?
黍田:けっこう後者です。勉強はしていたんですけど、結局は大学も入学してすぐ休学しているので、特段大学生活はやっていないですね。コロナ禍だったこともあって、体育の授業はZoomの前でヨガをする感じだったので(笑)、何も楽しくなくて。
稲荷田:へぇ、そうなるんだ。
黍田:そうだったので、インターンとかをしていました。
働きながら起業の手触りを確かめた
稲荷田:じゃあ、「どういう会社でどういうことをしていた」みたいなところだと、どんな感じなんですか?
黍田:けっこういろんな会社で働かせてもらました。シンクタンク系の会社でも働きましたし、ザ・スタートアップの会社でも主に2社で働きました。
1つはデザイナーとして、もう1つは「開発以外は何でもします」みたいなところで働かせていただきました。スタートアップ2社と、シンクタンク系で働いていた感じです。
稲荷田:インターンをする時は、「もう数年後に自分で起業するぞ」という前提でやっていたんですか?
黍田:そうですね。「いつかはするんだろうな」とは思ってはいたんです。当時は別に法人登記とかはしていなかったんですけど、仲の良い友だちと2人で事業を作ってみる、みたいなことをやっていました。
ノーコードで作るとか、営業をしてみるとか、プロダクトサービスを2個ぐらい作ったんですけど、本当に無風で。「いや、これは勉強しないとダメだな」と思って、スタートアップで働き始めました。
稲荷田:そうなんですね。
黍田:2~3年後はまったく決めていなくて、「いつかはするんだろうな」みたいなかたちで、人生プランは何も考えていませんでした。とはいえ、フルタイムでずっと働いていたんですけど。
稲荷田:フル(タイム)。そうか、休学しているからですね。
黍田:そうですね。フルタイムで、たぶん社員以上に働きながら事業もちょっと作っていたら、その事業で「資金調達できそうだな」みたいなところがあったので、そこから引き継ぎして、辞める準備をして起業しました。
稲荷田:起業した時に資金調達をできそうだったサービスは、今のRespoのサービスではない?
黍田:そうですね。今とは違うもので、接客業向けのデジタルチップサービスです。いわゆる飲食店のスタッフにチップを投げられますよ、というサービスをオンラインで提供していました。
今だと、ダイニーさんが「推しエール」というサービス名でやっていると思いますが、そういうものを作っていました。コロナ禍がひどくなって、導入企業が閉まってしまったり、緊急事態宣言で何も検証できなくなっちゃってピボットしました。
原動力は楽しいと感じること
稲荷田:いわゆるチップや投げ銭のサービスに着手したというところへの思いはどういうところにあったんですか?
黍田:何だろうな、アクセラっぽいプログラムがあって、そこで会った友だちとノリと勢いで来たという感じが強くて、楽しかったから作ったみたいな。
稲荷田:いいですね。
黍田:もちろんいろんな背景はあるんですよね。「お金というもので、もっと世の中を良くできないのか?」みたいなところは、ずっと僕が持っていた問いでもあったので、それにすごくフィットしたというのはありつつ、けっこう楽しかったからやったみたいな感じです。
稲荷田:いいですね、ピュアな感じで。
黍田:理由やがんばる原動力は、過去のところからすごく強く来ているだけなので、あとは楽しいかどうかというところが大きいですね。
稲荷田:それをピボットして、すぐにRespoですか?
黍田:そうですね。関係者や対象になりそうなユーザーに、2個のサービスのヒアリングをしました。今のものともう1個、子ども向けの金融教育サービスです。
稲荷田:まさに、さっきの話だ。
黍田:そうですね。それこそスマートバンクがやっているサービスには、個人のカードと、ペアカードと、ジュニアカードの3つがあるんですね。そのジュニアカードを単体でやろうとしたんですけど、市場とかをいろいろ調べたら厳しそうだなというのがあって、最終的に今の事業にしました。
高額商品の買いづらさが着眼点
稲荷田:なるほど。そこでいろいろ検証する中で、創業の原点というか、ぐっとハマる感覚もきっとあったんだと思うんですが、着目した理由や思いなども教えてください。
黍田:そうですね。先ほど、2つまで絞ったと言ったんですが、それ以外も海外事例とかを含めてずっと見てはいました。
当時サウンドクリエイターをやっている友だちがいて、MacBookを新調する時に、いろいろ付け足して、80万円ぐらいになってしまったんです。金融機関の少額ローンを使おうとしたんですけど、審査に落ちちゃって、結局一括で買っていて。だけど、買った後にめっちゃ後悔するみたいな。
稲荷田:後悔までしちゃったんですね。
黍田:そう。(その姿を見ていて)「いや、商品の購入の手段ってもっとあるよな」と。それこそ、商品が高額すぎる場合、後払いの分割の与信のオーソリが通らないので、購入手段ってすごく限られているんですよね。「もっと何かできそうだな」という中で、検証している事業でそれがあったので、今はそれをやっている感じです。
海外事例の積立決済を日本に持ち込む発想
稲荷田:高額な商品があり、もっと今よりいい方法で買えないかという着眼点があったということですね。とはいえ選択肢はいろいろあった気がしますが、積立購入に至ったのはどうしてなんですか? そこの勝ち筋だとか感じていたことは?
黍田:もともと高額商品の積立購入という部類は事業としてあって。
稲荷田:それは海外にあったということですね?
黍田:そうです。「貯金を良くします」「UXを磨きます」みたいなものは日本にもあるんですけど、「それを決済として入れます」というのは海外にはあっても日本にはなかったですね。
ずっと海外リサーチをしている中で、「日本で一定はありそうだな」と思いつつ、「とはいえ今すぐ欲しいよな」って、イチ消費者としては思っていたんです。なので、積立決済自体はずっと見ていて、最後はたまたま、身近にそういった人がいたからこれにしたという感じです。
最終的に決めたのは、ユーザーインタビューをしたり、公式LINEでデモを作ってみて回したりする中で、「(勝ち筋が)ありそうだな」と思ったというのがありました。
細かい機能の修正はあったんですけど、基本的なコンセプトは変わっていません。積立して貯金して買ったら何か特典が付くというのは初期の頃から変わっていないですね。
まずは概念検証で需要を確かめた
稲荷田:でも日本にはそれまでなかったわけじゃないですか。いざやるとなっても、そこまでユーザーがつかないこともあり得ちゃうんじゃないかなと。そのあたりはどうだったんですか?
黍田:そうですね。それは僕もけっこう感じていて、やはりメタファーとして、貯金のUX改善サービスは死ぬほどあるので、そこのユーザーをインタビューして(需要を)聞いてみるとかはしていました。
とはいえ「商品が固定されて買うのか?」とかはあったので、公式LINEで、お買い物代行みたいなかたちで、「買いたい商品を投げてください」「投げてお得になります。その代わり、3ヶ月以上待ってください」みたいなことをやっていました。要は「待ってお得に買う」をただ検証するだけのサービスみたいなことをずっとやっていたんです。
その時は提携企業も何もないので、ユーザー特典も僕たちがお金を身銭を切って出していました。最初はそういったことを検証としてやっていました。
稲荷田:へぇ。それで「欲しいものがあって、安くなったりとかお得だったら3ヶ月間待てるのか?」という体験だけを検証したんですね。
黍田:そうです。その概念検証だけやったら、めっちゃ積み立てられたんですよね。数千万円単位でけっこう積み立てられて、「みんな待つんだ」という発見がありました。しかもミニマムは3ヶ月なんですけど、「引っ越しに合わせてやっています」とか、6ヶ月や7ヶ月の人もいて。「(需要)ありそうだな」と思ったんです。