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漫画が紡ぐ物語とスタートアップの幸せな関係 「ストーリーテリング」が進める新規事業の社会実装(全3記事)

ビジネスに“エモいストーリー”が必要な理由 心をつかむ物語の力を『ドラゴン桜』作者らが語る

【3行要約】
・「IVS 2025」にて、「漫画が紡ぐ物語とスタートアップの幸せな関係」をテーマにしたトークセッションが実施されました。
・株式会社コルクの佐渡島庸平氏らが、「物語」を活用したビジネスの取り組みを紹介します。
・宇宙スタートアップALEの岡島氏は「科学の重要性だけでは一般に刺さらない」と指摘し、幅広い人とのつながりを生むストーリーテリングの重要性を語りました。

ストーリーテリング × スタートアップの可能性

佐渡島庸平氏(以下、佐渡島):「漫画が紡ぐ物語とスタートアップの幸せな関係 - 『ストーリーテリング』が進める新規事業の社会実装」ということですけれども、登壇者の紹介から始めたいと思います。まずは、岡島さん。

岡島礼奈氏(以下、岡島):こんにちは、ALEの岡島と申します。私は宇宙スタートアップの会社をやっています。スタートアップと言いつつも創業したのが2011年なので、もう14年ぐらいやっています。流れ星の元となる粒がたくさん詰まっている人工衛星を打ち上げて、それを宇宙空間から放出すると流れ星になる。そういうことをやろうとしている会社です。

流れ星の粒は1センチぐらいで、宇宙空間から粒を放出します。今まで人工衛星を2基打ち上げたんですけれど、最後の最後で1ヶ所、動作不良が起きていて、まだ流れ星を流せていません。

さらに、流れ星を流す装置は宇宙空間でものを放出する装置なんですけど、今度2029年に「アポフィス」という小惑星が地球のすごく近くに来るんです。これに向かって流れ星の粒をポーンと撃ってクレーターを作ろう、みたいなこともやろうとしています。なので流れ星を作るのと一緒に、科学探究が同時にできるというものです。

私はこのあとすぐ(大阪・関西)万博会場に戻らないといけないんですけれども。ちょうど7月3日から7日まで万博会場のギャラリーウエストで、竹あかりとコラボレーションして素敵なインスタレーションをやっているので、ぜひみなさん来てください。

『ドラゴン桜』作者と元編集者の不思議な縁

佐渡島:ありがとうございます。僕はクリエイターのエージェント会社、コルク代表の佐渡島です。『ドラゴン桜』とか『宇宙兄弟』の編集をしておりました。

じゃあ三田さん、自己紹介をお願いしてもよろしいでしょうか。

三田紀房氏(以下、三田):どうも、みなさんこんにちは。三田紀房です。ご案内のとおり漫画家で、漫画を描いております(笑)。作品は『ドラゴン桜』とか『インベスターZ』と、ここ(スライド)にズラズラッと並んでいます。

佐渡島さんは、もともと『ドラゴン桜』パート1を立ち上げる際の編集者でした。彼はまだ講談社に入社したての22歳で、東大を出たばっかりの学生みたいな感じだったんですが、一緒に『ドラゴン桜』を興しました。

そうしたら2012年ぐらいに、いきなり僕のところに訪ねてきて「講談社を辞めます」みたいなことを言っていて。「え、辞めてどうすんの?」と言ったら、「三田さんのエージェントになります」って言うんですよ。

漫画以外のさまざまなプロジェクトを手がける

三田:彼も一応企画書を持ってきたんですけど、何を書いているかさっぱりわからないんです。「エージェントって何?」「これで商売になんのか?」と言って(笑)。

でも「(講談社を)辞める、辞める」と言うので、じゃあもう「やろう」と言って、彼は辞めました。それからコルクと一緒に『インベスターZ』という作品を始めた、だいたいそういう経緯です。

作品はたくさんあるんですが、今日は漫画もさることながら、僕は漫画以外にいろんな活動をしていまして。この地下1階に「旧尾崎テオドラ邸」というブースが出ています。そこで複製原画の現物、いわゆる原画を売ります。世界に1点しかないです。完全オリジナルの、作者の1点ものの原画。

ここを出た先に旧尾崎テオドラ邸のブースがありまして、そこに飾っている8点の原画を販売していますので、ぜひ。漫画家の描いた1点ものの原画をいろんなかたちで売っていこうという取り組みもしています。

今、(お客さまの)手元に旧尾崎テオドラ邸のパンフレットがあります。あとで詳しく説明しますが、そういう活動もしています。

あと「アジア甲子園」といって、インドネシアで子どもたちの野球大会を主催したり、漫画以外にもいろんな活動をしていますので、今日はそのへんのお話も少しできたらなと思います。よろしくお願いします。

ビジネスに「エモさ」が求められる時代

佐渡島:やはり今までのビジネスだと、どう多くの人の役に立つのかという基準で、起業家の人たちもすごいと思われることを目指し、儲かるのかどうかを考えていたんだと思うんですけれども。

だんだんと「エモい」だったり、「かっこいい」だったり、「かわいい」ということがビジネスをする上でも欠かせなくなってきている。そのためには「自分の会社がどんなエモいことを実現するのか」を語ることが重要になっているかなと思うんです。

でも岡島さんは、創業した時からずっと「流れ星」と言っているじゃないですか。当時はまだ打ち上げるのにもむちゃくちゃお金がかかって「そんなの無理だろう」と言われた時から、なぜそこにこだわったのか。あるいは、どんな創業の思いがあったんですか?

岡島:それでいうと、実は私の根底には、やはり「科学をなんとかせねばならぬ」というパッションがあって。流れ星ってエモーショナルなほうで「きれい」みたいに思われていると思うんですけども。私はもともと天文学をずっと研究していて……。特に我々は「事業仕分け」とかを見てきた世代じゃないですか。

佐渡島:そうですね。

岡島:政権によっていろいろ政策が変わっちゃって、いろんなプロジェクトがストップしたのを目の当たりにしている。それに2025年も、ちょうどNASAの科学系の予算が大幅に削られたりして、宇宙系の人々が阿鼻叫喚の状況なんですけれども。

民間の力で推し進めたい

岡島:そんな感じで、国に頼っていると情勢の変化によってプロジェクトがストップしてしまうことがけっこうあるので。これを民間企業で推し進めることによって、自分たちも科学に貢献できるんじゃないか、プロジェクトがサステナブルに続くんじゃないか、という思いで創業しています。

でも流れ星はやっぱり、すごく見たいし、作ってみたいじゃないですか。で、絶対おもしろいと思っていて。だって200キロ圏内で見えるんですよ。みんなが空を見たら見える宇宙開発ってないじゃないですか。だからこれは絶対におもしろいと思って、やりました(笑)。

佐渡島:なるほどね。でも、本当によくそこからスタートできたなって。

岡島:確かに、ちょっと無知だったのもよかったなと思っています。私、バックグラウンドは天文学で、宇宙工学じゃないんですよ。宇宙工学とか宇宙開発に携わってきていたら、たぶんできなかったと思っています。やってから「あれ?」と思うことが多かったので(笑)。

なので、ほどよく無知だったのはすごくプラスになったなと思いますね。起業家の方々は共感していただけると思うんですけど、知っていたら踏み出せなかったことはあると思うので、無知は力だなと思います(笑)。

共感される物語はどのように生み出されるのか

佐渡島:なるほど(笑)。ALEはそういう岡島さんの思いやパッションから始まった会社だと思うんですけど、ちょっとここで三田さんにうかがいたいです。

今、まさに岡島さんは「流れ星を生み出す世界初の企業」という物語の中で生きている主人公だなと感じるんですけど、三田さんが物語を生み出す時に大切だと思っていること(はなんですか)。「人が共感してくれる」とか、どこから物語を発想しますか?

三田:「ふだんから考えているんだろう」と言われますが、確かに考えることは考えるんですけど、ほぼほぼ99パーセント、どんどん捨てていくんですよね。

基本、漫画家の生産能力は限られていますから、思いついたからってどんどんやれるわけでもなくて。だいたい発想する時は基本、何か興味のあることにちょっと出会った瞬間ですよね。

投資を描くために、あえて学校を描く

三田:例えば『インベスターZ』を描く時は、たまたまある私立学校に行って、そこの学校関係者としゃべっていたら「とにかく私立の学校の経営が厳しい」「お金がない」という話だったんですよね。

だったら「どうやったら学校を経営できるのかな」みたいな、そこから入ったんですよ。だから投資を描こうとしたのではなく、まずは学校を描こう、みたいな。そっちのほうが物語をおもしろく作れるというか。

投資の漫画を描こうすると、投資家が出てきて「100億円、儲けるぞ」みたいな話になりがちなんです。そういう個人が儲けるとか損するとかは、実は人ってあんまり興味がないんですよ。

別の目的があって投資を始めたほうが、投資は第三者的に描きやすいというか。キャラクターや主人公の欲望をバリバリ描くと、どうしても思い入れできないので、やはりちょっと違う視点から描くのが、僕が創作する時の1つのルーティーンになっていますね。

佐渡島:投資を描くために、あえて学校を描く。

三田:そうです。要するに、主人公やキャラクターたちって無欲なんです。儲かろうが損しようが、そんなに投資に意欲はないんですよ。そのほうが第三者的に投資に関わることができる。そっちのほうが、読者の方が主人公に思い入れしやすいというかね。

「科学は大事」だけでは広い層に刺さらない

佐渡島:自分の会社を語っていく時に、岡島さんはどうですか? 僕も確かにそこまで意識していなかったんですけど、(バックグラウンドが)宇宙工学じゃなくて天文学、ちょっとズレていたからこそできたという話だったんですけど。

今まで自分の会社を自分がどんなふうに語ってきたかとか、やっていく中でぶち当たった壁とか、どんなものがありますか?

岡島:今、三田先生のお話を聞いていて(思ったのが)、私が「やっぱり科学は大事だよね」みたいな話をすると、刺さる人には刺さるんですけど、一般の人には刺さらないんですよ。

クリエイターさんは「どうやったら一般の人に刺さるか」をすごく考えていらっしゃって。私、とあるクリエイターで映画監督の方に「こういう話があったらおもしろいと思うんですけど」って(話したら)、「それ、本当に一般にウケると思う?」みたいなことをけっこう聞かれて。

私はそういうものが自分にはまだ足りていないと思っています。自分自身が持っている必要はないかもしれないけれども、一般の人々と結びつけてくれるような、それこそストーリーはすごく大事だなと思っています。

実は万博もその一環ではあって、これからちゃんと流れ星を流すために、もっといろんな人と一緒に盛り上がっていったほうが絶対におもしろい。本当に流れ星が流れた時に、たくさんの人が上を見てくれるようにするにはどうすればいいかを考えています。

それで今回の万博に、まだ流れ星は流れないけれどもとりあえず出して。例えばみんなに短冊に願い事を書いてもらうとか、いろいろ考えていたりします。なので先生の視点がすごく(わかる)……どうやったらたくさんの人に伝えられるかをずっと考えています。

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